せともの。~クラスの銀髪の美少女に、僕が攻略される話~ 作:霧里
家に帰った凪は、自分の部屋に戻ってそこまでだった。
緊張の糸が途切れる。扉に背を預けまま、へなへなとその場に座り込んでしまった。
「あはっ……あはははは。やっばっ。マジで触ってくるじゃん」
調子に乗っていた。エロゲなんてやってたせいだ。ちょっとからかっただけのはずが、つい勢いがつきすぎてしまって。他の誰かなら、あの場で無理矢理されていても全然おかしくなかったな。
秋月なら大丈夫だろう。
信頼からじゃない。そんな度胸はないと舐めていた。
あたしにエロゲを見られた後も、何も言えずソワソワしてただけ。
見た目通りのド陰キャ。オタク気質。可愛く言っても小動物だ。次の日の、安心しきった顔ときたらない。どうせ、自分になんて興味はないのだろうと、諦めて胸を撫で下ろす。からかってみたくもなるさ。ちょっと呼びつけただけで、泣きそうな顔になるんだもん。
大丈夫。怒ってはない。
イヤだったわけでは、もっと違う。
秋月のことだ。散々悩んだ挙句、何も選べないか、いいとこスカートの中を覗けるかどうか。そんな度胸があるなら、もう何回かとっくに見られてる。無理矢理顔を背けるのが面白くて、わざと足を開いて見せたりもした。
「明日から……どうっすかなぁ」
教室では平気だろう。元から会話なんてない。
秋月の方から話しかけてくることもなかった。彼だって分かってる。急に仲良くして見せたら、周りから何を言われるか。エロゲで繋がりました。なんて、流石のあたしも言えないや。
問題は放課後。
毎日呼びつけてた訳じゃない。
それでも、パッタリ呼ばなくなるのは変な感じ。いや、潮時なのかな?
秋月にとって、あの時間はなんだったんだろう? 弱みを握られて仕方なく?
あたしとしては、結構楽しかったつもりなんだけど。振り返れば独りよがりか、それはなんだか面白くない。
「くふっ……あははは。やっばっ。やっぱ笑うわ、あんなん」
おっぱいドーン。ちんこバーン。その衝撃たるや。作った奴ら絶対に頭悪いって。
でも、羨ましい。見たいものにド直球だ。何も言われずとも、こっちまで熱くなってくる。あたしはそれが好き。分かりやすくて良いと思う。
ストーリーがとか、キャラクターがとかさ。往生際の悪い。「でも、見たいんでしょ?」言った切り、秋月は黙り込んでしまった。
やっぱ、お邪魔だったかな?
今も一人でシテたりして。あたしの感触を思い返しながらイソイソと。
「それは……。キモいな、ちょっと。変態かよ」
瀬戸さん? いや、妄想の中でくらい「凪」って呼び捨てにしてるかも。
チャイム……あの時、鳴らなかったらさ。おっぱい揉まれながら、チンコ弄って……。完全にバカになっていた。勇者様と違って耐えるんだもん。あんまり我慢するもんだから、つい。
キス……したのかな。
あのまま続けていたら多分。顔を寄せられても、拒まなかった。
嫌だとは思えなくて、雰囲気に流されたのはある。頬に? それとも……。唇を撫でて、ふと気づく。
「うわ……くさ。何の匂い?」
鼻につく匂いだった。それも、妙に重さがある。
なんか変なの触ったっけ? 思い返せば、答えは一つだ。強がってはいたけれど、ホントの所は分からない。
「秋月。あっきー。律」
名前を呼んで、胸がざわついた。
膝を丸めて、頭を抱え込む。ヤバい。全然落ち着かない。胸元に落ちた溜息が、谷間の奥に潜り込んでくるみたいだ。
すんっ……
匂いを嗅ぐたび、頭にチラついた。
エロゲのワンシーン。変わらない一枚絵の中に塗り込められた情熱が、私の何処かを熱くする。何を、今更。最初はただ、デカいおっぱいが無駄に揺れてるのが面白かった。笑いのツボは小学生と同じ。困り果てている秋月が面白かったのも悪い。
理由のない退屈が、少しだけ晴れた。
こんなに簡単で良いんだっけ? ゲーム的な背景なんてほとんどしらない。
あんまり興味もわかなかった。ツンと澄ましたあの子も。笑顔の眩しいあの子だって。ベッドの中ではみんな一緒。
あたしも、同じになるのかな?
そんな訳ないじゃん。
ちょっと触られたくらいで、気持ちいいって。
でも、大げさなくらいに憧れる。だって、みんな本当に気持ちが良さそうだったから。もしかしたら……あたしも。つい考えてしまう。自分の体に興味が向かないわけがなかった。
「勇者さま……? ふふっ……」
呟いて、やっぱりダメだ。あたしにとっての勇者さまは、世界を救うヒーローなんかじゃなくて、顔も見えない誰か。分かってることと言えば、チンコがデカいくらい。そんな人のことを、思い浮かべろって方が無理。それなら、彼でいい。あんなに顔を真赤にして。戸惑いながら、あたしに触れることを選んでくれた。
「はい、行き止まり~。精子はいれませーん……。ひひっ、バカかよ、あたし」
呟いて、触れてみる。エロゲのやりすぎだ。照れ隠しにしても酷すぎる。
まぁ、でも? 手向けにはなったかな? このまま干からびるのも可哀想だし。
最後くらい良い目を見せてあげる。なんて言えばいい? 間接……セックス? ちがうちがう。言い換えたって誤魔化してるだけ。
「まじかぁ……。濡れてんじゃん、あたし」
触れてみて、初めて気づく。思い出すのは、ズボン越しに触れた彼のモノ。
立ち昇ってくる熱気に湿る指先。いいのか、あたし? 秋月だぞ? 今まで、自分が好ましいと思っていた男性像とは正反対だ。
極道。
とは言わないが、スーツの似合うしっかりした人がいい。
学校で絡んでくる男なんて、チンピラ臭すぎてダメだった。
男っ気の薄い容姿。可愛い顔をしてるとは思う。
チンピラよりはいいんじゃないか? 好きか嫌いかで言えばだ。でも、秋月の好みはきっと あたしじゃない。ホーム画面に居座ってたあの子。ほわんほわんしててお姉さんチックな? そのくせ天真爛漫で……なにより、胸がデカかった。
見比べて分かるほど。
高すぎる理想に溜息も出ない。
あたし みたいなツンケンドンした女が入り込む余地なんて……。
いや、まてまて。なんで落ち込んでんだ。失恋したみたいな空気をだすな。
そりゃ、ちょっと変な気分にはなったのは認める。オナニーのオカズに使うくらいはしてもいい。そもそも、ゲームの中の女と張り合ったって……。
でも、一つだけあるな。
あの子には絶対に越えられない壁。
触れること。触れられること。触れ合えること。この一つだけでも十分戦える。
「……あっきー。んっ、はぁ……ふぅっ」
指が勝手に動いていた。思い出して、体が熱くなる。
もうちょっとしたら、シャワーでも浴びてこよう。あと少し……。繰り返して、自分を慰める。
胸と、お腹にもう一つ、心臓があるみたいだ。
頭の中がうるさくてしょうがない。チグハグな鼓動が響いて、全然バランスが取れなくなった。
下着の上からちょっとだけ。窪みにそっと指を這わす。
いいこ、いいこ。ぐずる体を宥めるように。あるいは、バカな事をしてると笑うため。どっちでもよかった。壊れた機械をスパンと叩くみたいなもんだ。せめてどっちかに傾かないと、立ち上がるのも難しい。
予感はあった。
多分、ダメだなって。
笑えない。頬の熱だって引きやしない。
気持ちいいとは、まだ何も。痒い所を撫でるみたいな。触れていたら、気が紛れた。流石に、エロゲみたいにはならないか。期待してなかったと言えば嘘になる。
あんな夢中になれるくらい、あたしも誰かを好きになれたなら。
「あっきー……」
何か、物足りない。寂しい……呟いて、はっとなる。
嫌いじゃなかった。友人だとは思う。見え見えの視線を、必死に誤魔化してるのが可愛かった。今まで、あたしに絡んでくるやつは、あたしに絡んでくるようなやつばっかり。そういう意味でも、彼みたいなタイプは新鮮だ。
キモいなぁ……あたし。
セクハラじゃん、完璧。
投げたボールが跳ね返ってくる。壁の向こうでは、秋月があたしにボールを投げてる気がして。これでお相子。あたしがキモいなら。せめて、彼もキモくなって貰わないと。
いつもより大きく足を開いて、ブラウスのボタンを一つ外す。
見られる自分を想像して……沼る。次はどんな顔をさせてやろう? イケない遊びを覚えてしまった。
次? 次は……。
どうしたらもっと、秋月の視線を奪えるだろう?
優越感に華を咲かせながら、オナニーの手を止められない。
「はぁっ……はぁっ……」乱れた吐息が、遠くに聞こえる。次第に、考えがまとまらなくなった。ていうか、あたしエロくね? こんなん見せたら、あいつ鼻血だして倒れるんじゃないか。
「ぷふっ……」
マンガ的な絵面に、つい吹き出して。気が抜けた。頬に触れた床がひんやり冷たい。ただの思いつき。スマホのカメラを自分に向けていた
口元と、胸元。
ブラが見えるように、ちょっとだけ位置を直す。
「にひっ……ウケる」
爆速で既読が付いた。
だけど、返信は一向に返ってこない。
慌ててる姿が目に浮かぶ。何て返したものか。あたしの自撮りをチラチラ見ながら顔を赤くしてるんだ。いいよ、待っててあげる。秋月も沼ればいいんだ。もっとあたしに夢中になれ……。
「ばーか♥」
誰にでもなく呟いた。毛布のような倦怠感が体を包む。温かくて、柔らかい。
ほぅっと漏れた溜息が、なんだか心地よかった。
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