※この作品はR-18です。

せともの。~クラスの銀髪の美少女に、僕が攻略される話~   作:霧里

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沼る

 

家に帰った凪は、自分の部屋に戻ってそこまでだった。

緊張の糸が途切れる。扉に背を預けまま、へなへなとその場に座り込んでしまった。

 

「あはっ……あはははは。やっばっ。マジで触ってくるじゃん」

 

調子に乗っていた。エロゲなんてやってたせいだ。ちょっとからかっただけのはずが、つい勢いがつきすぎてしまって。他の誰かなら、あの場で無理矢理されていても全然おかしくなかったな。

 

秋月なら大丈夫だろう。

 

信頼からじゃない。そんな度胸はないと舐めていた。

 

あたしにエロゲを見られた後も、何も言えずソワソワしてただけ。

見た目通りのド陰キャ。オタク気質。可愛く言っても小動物だ。次の日の、安心しきった顔ときたらない。どうせ、自分になんて興味はないのだろうと、諦めて胸を撫で下ろす。からかってみたくもなるさ。ちょっと呼びつけただけで、泣きそうな顔になるんだもん。

 

大丈夫。怒ってはない。

 

イヤだったわけでは、もっと違う。

 

秋月のことだ。散々悩んだ挙句、何も選べないか、いいとこスカートの中を覗けるかどうか。そんな度胸があるなら、もう何回かとっくに見られてる。無理矢理顔を背けるのが面白くて、わざと足を開いて見せたりもした。

 

「明日から……どうっすかなぁ」

 

教室では平気だろう。元から会話なんてない。

秋月の方から話しかけてくることもなかった。彼だって分かってる。急に仲良くして見せたら、周りから何を言われるか。エロゲで繋がりました。なんて、流石のあたしも言えないや。

 

問題は放課後。

 

毎日呼びつけてた訳じゃない。

それでも、パッタリ呼ばなくなるのは変な感じ。いや、潮時なのかな?

秋月にとって、あの時間はなんだったんだろう? 弱みを握られて仕方なく?

あたしとしては、結構楽しかったつもりなんだけど。振り返れば独りよがりか、それはなんだか面白くない。

 

「くふっ……あははは。やっばっ。やっぱ笑うわ、あんなん」

 

おっぱいドーン。ちんこバーン。その衝撃たるや。作った奴ら絶対に頭悪いって。

でも、羨ましい。見たいものにド直球だ。何も言われずとも、こっちまで熱くなってくる。あたしはそれが好き。分かりやすくて良いと思う。

ストーリーがとか、キャラクターがとかさ。往生際の悪い。「でも、見たいんでしょ?」言った切り、秋月は黙り込んでしまった。

 

やっぱ、お邪魔だったかな?

 

今も一人でシテたりして。あたしの感触を思い返しながらイソイソと。

 

「それは……。キモいな、ちょっと。変態かよ」

 

瀬戸さん? いや、妄想の中でくらい「凪」って呼び捨てにしてるかも。

チャイム……あの時、鳴らなかったらさ。おっぱい揉まれながら、チンコ弄って……。完全にバカになっていた。勇者様と違って耐えるんだもん。あんまり我慢するもんだから、つい。

 

キス……したのかな。

 

あのまま続けていたら多分。顔を寄せられても、拒まなかった。

嫌だとは思えなくて、雰囲気に流されたのはある。頬に? それとも……。唇を撫でて、ふと気づく。

 

「うわ……くさ。何の匂い?」

 

鼻につく匂いだった。それも、妙に重さがある。

なんか変なの触ったっけ? 思い返せば、答えは一つだ。強がってはいたけれど、ホントの所は分からない。

 

「秋月。あっきー。律」

 

名前を呼んで、胸がざわついた。

膝を丸めて、頭を抱え込む。ヤバい。全然落ち着かない。胸元に落ちた溜息が、谷間の奥に潜り込んでくるみたいだ。

 

すんっ……

 

匂いを嗅ぐたび、頭にチラついた。

 

エロゲのワンシーン。変わらない一枚絵の中に塗り込められた情熱が、私の何処かを熱くする。何を、今更。最初はただ、デカいおっぱいが無駄に揺れてるのが面白かった。笑いのツボは小学生と同じ。困り果てている秋月が面白かったのも悪い。

 

理由のない退屈が、少しだけ晴れた。

 

こんなに簡単で良いんだっけ? ゲーム的な背景なんてほとんどしらない。

あんまり興味もわかなかった。ツンと澄ましたあの子も。笑顔の眩しいあの子だって。ベッドの中ではみんな一緒。

 

あたしも、同じになるのかな?

 

そんな訳ないじゃん。

 

ちょっと触られたくらいで、気持ちいいって。

でも、大げさなくらいに憧れる。だって、みんな本当に気持ちが良さそうだったから。もしかしたら……あたしも。つい考えてしまう。自分の体に興味が向かないわけがなかった。

 

「勇者さま……? ふふっ……」

 

呟いて、やっぱりダメだ。あたしにとっての勇者さまは、世界を救うヒーローなんかじゃなくて、顔も見えない誰か。分かってることと言えば、チンコがデカいくらい。そんな人のことを、思い浮かべろって方が無理。それなら、彼でいい。あんなに顔を真赤にして。戸惑いながら、あたしに触れることを選んでくれた。

 

「はい、行き止まり~。精子はいれませーん……。ひひっ、バカかよ、あたし」

 

呟いて、触れてみる。エロゲのやりすぎだ。照れ隠しにしても酷すぎる。

まぁ、でも? 手向けにはなったかな? このまま干からびるのも可哀想だし。

最後くらい良い目を見せてあげる。なんて言えばいい? 間接……セックス? ちがうちがう。言い換えたって誤魔化してるだけ。

 

「まじかぁ……。濡れてんじゃん、あたし」

 

触れてみて、初めて気づく。思い出すのは、ズボン越しに触れた彼のモノ。

立ち昇ってくる熱気に湿る指先。いいのか、あたし? 秋月だぞ? 今まで、自分が好ましいと思っていた男性像とは正反対だ。

 

極道。

 

とは言わないが、スーツの似合うしっかりした人がいい。

学校で絡んでくる男なんて、チンピラ臭すぎてダメだった。

 

男っ気の薄い容姿。可愛い顔をしてるとは思う。

チンピラよりはいいんじゃないか? 好きか嫌いかで言えばだ。でも、秋月の好みはきっと あたしじゃない。ホーム画面に居座ってたあの子。ほわんほわんしててお姉さんチックな? そのくせ天真爛漫で……なにより、胸がデカかった。

 

見比べて分かるほど。

 

高すぎる理想に溜息も出ない。

 

あたし みたいなツンケンドンした女が入り込む余地なんて……。

いや、まてまて。なんで落ち込んでんだ。失恋したみたいな空気をだすな。

そりゃ、ちょっと変な気分にはなったのは認める。オナニーのオカズに使うくらいはしてもいい。そもそも、ゲームの中の女と張り合ったって……。

 

でも、一つだけあるな。

 

あの子には絶対に越えられない壁。

触れること。触れられること。触れ合えること。この一つだけでも十分戦える。

 

「……あっきー。んっ、はぁ……ふぅっ」

 

指が勝手に動いていた。思い出して、体が熱くなる。

もうちょっとしたら、シャワーでも浴びてこよう。あと少し……。繰り返して、自分を慰める。

 

胸と、お腹にもう一つ、心臓があるみたいだ。

頭の中がうるさくてしょうがない。チグハグな鼓動が響いて、全然バランスが取れなくなった。

 

下着の上からちょっとだけ。窪みにそっと指を這わす。

いいこ、いいこ。ぐずる体を宥めるように。あるいは、バカな事をしてると笑うため。どっちでもよかった。壊れた機械をスパンと叩くみたいなもんだ。せめてどっちかに傾かないと、立ち上がるのも難しい。

 

予感はあった。

 

多分、ダメだなって。

 

笑えない。頬の熱だって引きやしない。

気持ちいいとは、まだ何も。痒い所を撫でるみたいな。触れていたら、気が紛れた。流石に、エロゲみたいにはならないか。期待してなかったと言えば嘘になる。

 

あんな夢中になれるくらい、あたしも誰かを好きになれたなら。

 

「あっきー……」

 

何か、物足りない。寂しい……呟いて、はっとなる。

嫌いじゃなかった。友人だとは思う。見え見えの視線を、必死に誤魔化してるのが可愛かった。今まで、あたしに絡んでくるやつは、あたしに絡んでくるようなやつばっかり。そういう意味でも、彼みたいなタイプは新鮮だ。

 

キモいなぁ……あたし。

 

セクハラじゃん、完璧。

 

投げたボールが跳ね返ってくる。壁の向こうでは、秋月があたしにボールを投げてる気がして。これでお相子。あたしがキモいなら。せめて、彼もキモくなって貰わないと。

 

いつもより大きく足を開いて、ブラウスのボタンを一つ外す。

見られる自分を想像して……沼る。次はどんな顔をさせてやろう? イケない遊びを覚えてしまった。

 

次? 次は……。

 

どうしたらもっと、秋月の視線を奪えるだろう?

 

優越感に華を咲かせながら、オナニーの手を止められない。

「はぁっ……はぁっ……」乱れた吐息が、遠くに聞こえる。次第に、考えがまとまらなくなった。ていうか、あたしエロくね? こんなん見せたら、あいつ鼻血だして倒れるんじゃないか。

 

「ぷふっ……」

 

マンガ的な絵面に、つい吹き出して。気が抜けた。頬に触れた床がひんやり冷たい。ただの思いつき。スマホのカメラを自分に向けていた

 

口元と、胸元。

 

ブラが見えるように、ちょっとだけ位置を直す。

 

「にひっ……ウケる」

 

爆速で既読が付いた。

 

だけど、返信は一向に返ってこない。

 

慌ててる姿が目に浮かぶ。何て返したものか。あたしの自撮りをチラチラ見ながら顔を赤くしてるんだ。いいよ、待っててあげる。秋月も沼ればいいんだ。もっとあたしに夢中になれ……。

 

「ばーか♥」

 

誰にでもなく呟いた。毛布のような倦怠感が体を包む。温かくて、柔らかい。

ほぅっと漏れた溜息が、なんだか心地よかった。

 




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