せともの。~クラスの銀髪の美少女に、僕が攻略される話~ 作:霧里
退屈だ。
ベッドに身を投げだした凪の手から、スマホが零れ落ちる。
土日の休み。いつもなら、だらだらとショート動画を流していたのに、今日はそれすらも手につかない。
いっそ、エロゲでもプレイしようか。
インストールしたまでは良いが、面倒くさくなって止めてしまった。
繰り返しのクエストなんて、面白くもなんとも。大体のエロシーンを見終わった後なら尚更だ。それでも続けているのは、あっきーと話すための口実でしか無くなっている。
「僕以外にって、なにさ」
思い返して、顔が熱くなる。
向けられた独占欲がくすぐったい。お尻には少しの違和感。
肌の赤みはとっくに引いているのにな。まだ平手の跡が残ってるような気がして、どうにも落ち着かない。
「怖い顔……」
掲げたスマホには、真っ赤になった彼の顔がドアップで映っていた。
頬を舐める荒い吐息。大きく動いた喉仏が目に焼き付く。あのまま顔を近づけて、何をする気だったんだろう?
キス……?
そんな空気じゃなかったな。
牙を剥き出しにして、爪が伸びる。ビリビリに服を破られて、そのまま。
狼に変わる彼を、でも嫌だと思えない。むしろ、普段とのギャップの大きさが、あたしを狂わせる。
分かってんの?
僕以外にって言うなら……
「あたし以外にだって、ダメなんだから」
勝手な想像だ。誰に妬いてるのかも分からない。
少しだけ、ヒロインたちの気持ちが分かってしまった。あたしがどんなに無茶をやったって、助けてくれるのを疑えない。
無事でよかった。
勝手に飛び出したあたしを、咎める言葉はそれだけだ。
洞窟の奥で二人きり。他のヒロインたちが助けに来る間、やることと言えばそう。
湿っぽい空気の中、魔法の灯りが頼りなく揺れている。
「凪……」探るように名前を呼ばれた。「うん」あたしはただ頷いて、それを拒まない。
おっぱい……
小さくはないよね?
仰向けに寝たって、まだ山は出来ているし。
それでも、悩ましい。そもそも比較対象がおかしいんだ。あんな乳のデカい女がゴロゴロいてたまるか。この間引いた銀髪の子だって そこそこあったのに、間に挟まれれば貧乳に見えて怖い。
「はっ……」
バカバカしい。
鼻で笑ってしまった。
そもそも、あたしが気にするべきなのは、体型じゃないだろう。自覚はある。
ダルい、うざい、面倒の積み重ね。対人スキルは無いに等しい。今までの横暴が許されていたのは、見た目に恵まれていたこと。それに輪をかけて、彼が優しすぎたお陰だ。
怖い顔。
スマホに反射した しかめっ面が嫌になる。
もっと可愛く出来ないものか。ふわふわと、いかにも女の子らしい雰囲気を出せれば良いんだけど。軽く頬をもんだくらいじゃ、凝り固まった表情筋は解れてくれない。二人の時は自然とできていた気がするのに、一人になると全然だ。
どんな顔、してたんだろ?
スマホに残っているのは、男を見せた彼の顔だけ。
押し倒された自分の表情までは分からない。
「律……」
彼の名前を呼んで、胸が震える。
いつもの秘密基地と、どこにもない岩場の影。2つの世界が重なって、妄想の海に沈んでいく。押し倒されて、さらに深く。頬を撫でられ、まぶたを閉じた。
唇にキス。
2回、3回と、繰り返されて、愛情が雨のように降ってくる。
触れるだけ。確かめるように。優しいだけの口づけは、だんだんと熱を帯びてきて、あたしは彼を受け入れた。
ほとんど見様見真似。
それらしい経験もなければ、知識なんてヒロイン達からの受け売りでしかない。
勇者様ならきっと、舌を挿れてくるんだろう。だけど、違う。あたしにキスして良いのは律だけだ。好きだと言ってくれるのだって。勇者様(そんなやつ)いくらでもくれてやる。だけど、彼だけは……ダメ。絶対イヤ。
律もだよ。
よそ見したら、ダメなんだから。
薄く唇を開いただけじゃ、律はきっと動かない。
遠慮と、戸惑い。顔を真っ赤にして、おろおろしてる姿が目に浮かぶ。可愛いんだ。女の子みたいでさ。でも、今は襲いたいより襲われたい。
最初に舌先が触れ合った。
あたしが伸ばした舌に重ねるように、彼も舌を伸ばしてくる。ゆっくりと唇が落ちてきて、触れ合うよりも深く繋がる あたし達。
何をやってるんだろうなぁ……
気づけば、指を咥えていた。
スマホを片手に、キスの真似事を繰り返す。舌の代わりに舐め回した指先は、もうベチャベチャだ。それでも、止められない。だって、あたしは知っている。
ううん、多分あたししか知らないこと。
女の子みたいな彼の、男の子な部分。
叩かれたお尻のむず痒さを、今でも鮮明に思い出せた。気持ちよかったわけじゃないけど、癖にはなりそう。そういうプレイが好きならさ、あたしは受けに回っても構わない。
アゴを抑えつけられて、舌をねじ込まれる。
乱暴なキスの真似事。つい、指を奥まで入れすぎて、えづく。
「んっ……! ぅっ、ぇ……ほっ。はっ、はっ……はぁっ」
乱れた吐息に、湯気が立った。慌てて、引き抜いた指先から唾液が滴り落ちる。
スマホに映る写真は変わらない。欲の滾った律の視線が焼き付いたままだ。
想像したのは、あの時、何もしなかった世界のあたし。
急に押し倒されて、パニクった。キスまでされてたら、もうお手上げ。抵抗なんて考えられなかった。
キャミソールの肩紐をズラして、胸元を開く。
そっと、胸の膨らみに触れながら、頂きの手前で固まってしまう。
ただの妄想。いまのあたしは、制服だって着けてない。自撮りでもするようにスマホを掲げると、彼に見下されているみたいだ。
「んっ……」
強引に腕を剥がされるんだ。隠していた乳首がピンっと跳ねる。
さざ波のように広がる刺激を飲み込んだ。マッサージと言えば聞こえは良いが、実際はもっと雑。自分の喜ばせ方なんて分かっちゃいない。あたしの中にある経験は一つだけ。お尻を叩かれた時みたいにさ。もっと、きっと……。乱暴に胸を揉みしだかれる。見たこともない律の姿に、自分の欲望を預けるしか出来なかった。
優しくしてほしい。
反面、雑に扱われて興奮もする。
余裕をなくした彼が、あたしに夢中になってくれている。
チリチリとした焦燥感が足元に打ち寄せた。痛いやら、恥ずかしいやら。さざ波程度だった興奮は、寄せては返すたび大きくなる。
クチュリ……
聞こえる波の音は随分と穏やかだ。
胸からお腹へ、指を這わせた。まっさらな砂浜に残った跡が熱を持つ。浮かんだ汗が流れ込み、オヘソの窪みに溶けていく。
小指の先が、ショートパンツの手前でピタリと止まった。
ゴムをくぐっていかない。濡れた肌がイヤに冷たかった。急に頭が冷える。
一人で何やってんだろ?
あまりに空しい。
大きく息を吸って……吐き出す。胸の空気を入れ替えた後も、心の湿気は淀んだまま。岩場の陰で、いつもの場所で、今はベッドの上。思い描いた光景が、うつらうつらと切り替わり、自分の立ち位置を見失う。
あたしは……あたしは……
律の、なに?
彼女じゃない。そんな約束はしていない。
「なんで、やだ……」
抑えようとして止められない。意識するほどに、小指の先が泥濘んだ。
そんな目で見ないでほしい。掲げたスマホに映る律から目を逸らす。えっちって言わないで。勝手な妄想に罵倒される。何度も首を振っても、耳に絡む声はあたしから離れていかない。
せめて……
少しでいい……
声が聞きたくなった。あたしの律はそんな事言わない。
スマホを耳に当てる。コール音がもどかしい。早く、早く、気ばかり急いて、その後のことを全く考えていなかった。
ガチャリ……
でも、もし本当に「えっち」って言われたら。
彼と繋がったその瞬間、頭の中は真っ白だ。
「えと、瀬戸……さん?」
名前を呼ばれて、泣きそうにだってなる。
嬉しいのに、違う。いつも通りに呼ばれて、妄想がぱっと弾けた。耳に届いた律の声は、想像していたよりずっと「えっち」だった。
「あっきー……その、おはよう?」
「おはようって、もう昼前だよ?」
「あははっ。そう、なんだ……っ」
ぎこちない会話。普段ならもう少し胸が弾んでいるのに、今は鼓動の音が煩すぎて律の声が聞こえない。小指の先があたしを撫でた。腰が抜けそうだ。快感の熱が一気に燃え広がって、スマホを握る指に力が入る。
「大丈夫?」
頭の奥で響く声に、耳が蕩け落ちそうになる。
押し倒される自分の姿を強く思い描いた。足りないのは温もりだけ。興奮が重なる分だけ、寂しさが降り積もる。きっと、思いもしないんだろう。スマホの向こうで、あたしがオナニーしてるなんて。律に心配まで掛けてやることじゃ絶対ないのに、指は止まらない。それどころか、貪欲に続きがほしい。
「ぁ、ぇ、と。なんで?」
「電話だなんて珍しいし。初めてじゃない? それに、ちょっと声もさ。熱っぽいっていうか、風邪でも引いたなら、何か買ってこようか?」
惚けるしか出来なかった。あっきーの声を聞きながら やらかしてるなんて、言えるわけがない。じゃあ、ポカリ。言えばきっと来てくれる。みかん味のゼリーとかも、袋に入ってたりするんだ。
見られたら、どうしよう?
部屋に入ってきた律に、押し倒されちゃったりして。
小指でくすぐってるだけじゃもう。
薬指が入口を割り開く。なけなしの理性を拭い去るように、何度も何度も、溢れた愛液が指に絡みついた。次第に大きくなる水音が聞こえてしまうんじゃないか。心臓が今にも悲鳴を上げそうだ。
「平気」
嘘をついた。全然平気なんかじゃない。
律が悪いの。今すぐどうにかしてよ。理不尽に叫んでしまいそうになるのを、ぐっと噛み締めた。
「寝起きだから……あくびとかさ? はぁ……ん、ふぅっ。それより、あっきーは? っぁ、はぁ……ふぁ。何、してたの? 休みの日もやっぱりエロゲ?」
責任転嫁をしながらも、彼との会話を引き延ばす。
バレる事に怯えながら。バレてしまえと期待して。胸の振り子は大きく揺れて、グルグルと回りだしていた。
「普通に宿題だって。瀬戸さんは? もう終わったの?」
「なにそれ、真面目かよ。たまの休みに学生がさ、もっとやることないの?」
「後で見せてはないからね?」
「は? それとこれとは話が別じゃん」
「じゃあ、今からする? 分からない所があったら僕が……」
それもいい。だけど、今はそれどころじゃない。
こんな指でペンを握れない。問題用紙だって汚してしまう。
「今は……いい」
「そっか。じゃあ、僕まだ途中だし、そろそろ」
「やだ。このまま、繋いでて」
子供みたいに引き止めた。
遠のく気配が、困ったように立ち止まる。
「何でもない」は通じない。何かあったのだろうと察しても、答えに窮している。
「どうして?」聞かれたらおしまいだ。だからその前に「お願い」するしかなかった。
「じゃあ、このままにしておくね。何かあったら呼んで」
「うん」
「ありがとう」ぐらい言えばいいのに。
口に慣れない言葉は、急には出てこない。後ろめたさが圧し掛かる。彼の優しさに甘えてやることが、こんなのなんて。体と一緒に心まで、ベッドに沈み込むようだ。
聞こえるのは、紙を引っ掻くペンの音だけ。
スマホは手元にあるんだろうか? サっと撫でて、トンっと叩く。繰り返し、何度も。たまに悩むように指が止まって、同じ所を点々とした後、何かの拍子に滑り抜ける。
いつしか、指を重ねていた。
聞こえるペンの音にあわせて、あたしはあたしを慰める。
最初は、ただの気まぐれから。そうしている内に、あたしの指と律の指が重なり始めた。濡れた入口の前で繰り返し、浅い所で足踏みしていた中指が、泥濘に沈み込む。
「んふっ……あっ、はぁっ♥」
不意打ち気味に胸を突く衝動。唇から溢れた色を慌てて飲み込む。
訪れた静寂が怖い。繋ぎっぱなしのスマホの向こうで、一体彼はどんな顔をして、次に何を言われるのか。
ぐっと、押し付けるような音だった。
反射的に動いた指は真似をして、更に深くまで。
熱に包まれた中指が、キュゥっと締め付けられた。上も、下も。開いた口が噛み合わない。腰がガクガク震えだす。
それ、だめ……
イヤでも耳を澄ませてしまう。
多分、消しゴムの音だ。お尻を引いて、閉じた太ももをグリグリとこじ開けられていくようだ。逃げ出したいのか、何なのかも もう。とうとう、中指が根本まで入り込んだ。
なのに、あと一歩。
もどかしい、指先が空振りばかりを繰り返して触れたい所に触れられない。
「ふぅっ、ふぅっ……はぁっ、あぁぁぁ……♥」
声が、でも。抑えたくても無理だ。喉が震えてしょうがない。
じっとしていることすら辛い。身を捩って、シーツに背中を擦り付ける。
次は? ね、次は? どうするの? 消しカスを払う音に合わせて、水音が跳ねた。「いっ……」指が引き抜かれた一瞬、視界が霞む。胸が詰まって、目尻から流れた涙が頬を濡らす。
早く、早く……
再び走り出したペンに合わせて、入口を撫で回す。
もう少し、悩んでくれてもいいのに。撫でるだけじゃ物足りない。ようやくペンが止まって、人差し指にクリトリスを弾かれた。トントントンっ、それが律の癖なの? トイレを我慢してるような焦りが強くなる。もう何回も突いたら、下腹に抱えた熱が溢れ出しそう。
カラリ……
乾いた音が転がった。ちょうど、ペンが机に転がるような。息を呑む。
期待と、戸惑いで、体が固まった。今は、ダメ。今そんな事されたら。「ぁぁっ、ぁ……」漏れ出る吐息は言葉にならない。もうすぐ、今すぐに。いつ来るかも分からない。目に見えないことが、余計興奮に拍車をかけた。
グっ……
押し込まれ。
グリグリ……
削られる。
一気に根本まで。深い所に入ってきた中指が、奥で暴れだす。
次は、次にくるのは……。消しゴムの音が止まって、一瞬の静寂。ダメ、でも。高鳴る鼓動が期待を刻む。
「ん、あぁぁっ♥」
勢いよく指が引き抜かれた。掻き出された愛液が股間にドロリと広がり、耳に押し当てたスマホが汗で滑る。これでも、バレないなんてこと……。
なのに、彼は何も言ってくれないまま。
なんで? どうして? 分かんない。お尻叩いていた時もそうだけど、意地悪するのが好きな感じ? それとも、単にあたしには興味ないだけかな? 女の嬌声なんて、いくらでも聞いてるもんね。ただの雑音にしか思わない?
もう、いってしまおうか?
そうしたら、律も少しは本気になってさ。
口を開きかけた あたしの耳に届いたのは、ジっと金属が引っ掛かる音。
それは段々重ねに繋がって、大きく開いていくようだ。衣擦れと、微かな吐息。
彼の気配に耳をくすぐられる。コレが聞こえるならさ。あたしの嬌声は、どれだけ彼を追い詰めただろう。
息は乱れ、乾いた音が粘りを持つ。
プリントがクシャリと歪んだようだ。
もう、宿題どころじゃない。問題はなに? 答えはどこ?
文字を書いてる音じゃなくなった。黒塗りが、厚さを増していく。ペン先がパキっと折れて、苛立つようなノックの音が、カチカチと繰り返される。
もう、分かってやってるんだ。
聞こえる音は命令だ。ペンを動かされたら、言いなりになったあたしは声を上げるしかない。グルグルと、入口を乱暴に掻き回す。ノックに合わせてクリトリスを突き回した。でも、ほしい刺激はそれじゃない。彼のお許しはまだ出ない。
衣擦れ音に水気が混じる。
スピーカー越しに秘め事が見えるようだ。スマホの厚さなんて、無いも一緒。彼に合わせて指を動かす。間接、セックス? そんな風にも言ったっけ? 思いだして、吹き出してしまった。
「え、あっ!? な、なに、どうしたの……瀬戸さん?」
「にひっ♪ ううん、なんでも。ね、律? 今……なにしてる?」
慌てる声。取り繕うように名前を呼ばれて、気が緩む。
思わず、下の名前を口にしたのも気づかなかった。
「何って――だってっ」
問われて、一瞬。動きが止まった。
あたしも指を止めて、律の答えを待つ。スピーカーに乗るノイズは、滝のように荒れて、あたしたちの鼓動をかき消した。
煩いのに凄く静かだ。
カラリ……
ペンが机の上を転がった。
「ごめっ、瀬戸さん――っ。ぼくっ、もっ。ダメで。ほんとに、ごめんっ!!」
「いい、からっ。あやまらないでっ、そのまま、そのままが、いいっ。あたしと、いっしょ――にっ!」
止まらないし、もう止められない。我慢した分だけ、鬱憤を晴らすようだ。
スマホ越しにお互いを弄り合う。競い合うように情熱は増していき、その瞬間は唐突に訪れた。
勢い余って何を破ったのか聞くまでもない。紙を引き裂くようなその音が、直接頭に届くと、ただ一つの命令を下す。
「ぃ、っぁ、ぃぅぅぅぅぅぅ……♥」
焼け付くような、彼の吐息が耳に掛かる。
あられもない声を上げたのは、あたしも一緒。後ろめたさに縛られて、スマホを握りしめた。素直になれないあたしを、素直にする魔法。今なら「好き」だといえるんじゃないか。
ドクドクと下腹が震える度に、愛情が注がれているような気がして腰が浮き上がる。言いたいのに、言えない。頭、変なの。お腹、熱いの。高い絶頂の波に飲まれたあたしは、溺れないようにするので精一杯。
「あぁっ、あっ、あぃっ……ぅぅっ♥」
背筋が伸び切り……プッツリと。絶頂の波が引いていく。
緊張の糸が途切れた瞬間、ベッドに崩れ落ちた。汗で湿ったシーツが、火照った肌を冷ます。濡れた指先は僅かに甘酸っぱい。鼻をくすぐる爽やかな香りは、いつもの使ってるシャンプーのものだけ。男臭さなんて、まして律の匂いは何処にもない。
賢者タイム。
乱れた吐息が次第に落ち着いて、訪れた沈黙が辛くなる。
冷静になってしまえばなんてことはない。一つになれていたつもりだった。
あれだけ近くに感じていたのに、現実はこんなもの。スマホ越しに聞こえる彼の声すら作り物めいて嫌になる。
持て余した性欲を、変な形でぶつけてしまっただけ。
あれだけ会いたいと思っていたのに、途端に合わせる顔が無くなった。
息を呑む音が聞こえてくる。胸の鼓動まで察せてしまいそう。
後悔と罪悪感の漂う音色。素直になれなかった。結局は、また彼のせいにして有耶無耶に。こんな「ごめん」も言えない女なんて。
「……宿題、終わった?」
惚けた声で、問いかける。
「っ、ぁ、うん。ごめんね、瀬戸さん、僕」
「いいよ。後で写させてくれるなら、ね?」
「へ、あ……ぇと、それって。どういう?」
「にひっ♪ 知らない。あっきーのえっち」
苦し紛れに口をついた言葉は、可愛げのないものだった。