※この作品はR-18です。

せともの。~クラスの銀髪の美少女に、僕が攻略される話~   作:霧里

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宿題

 

 

退屈だ。

 

ベッドに身を投げだした凪の手から、スマホが零れ落ちる。

土日の休み。いつもなら、だらだらとショート動画を流していたのに、今日はそれすらも手につかない。

 

いっそ、エロゲでもプレイしようか。

 

インストールしたまでは良いが、面倒くさくなって止めてしまった。

繰り返しのクエストなんて、面白くもなんとも。大体のエロシーンを見終わった後なら尚更だ。それでも続けているのは、あっきーと話すための口実でしか無くなっている。

 

「僕以外にって、なにさ」

 

思い返して、顔が熱くなる。

 

向けられた独占欲がくすぐったい。お尻には少しの違和感。

肌の赤みはとっくに引いているのにな。まだ平手の跡が残ってるような気がして、どうにも落ち着かない。

 

「怖い顔……」

 

掲げたスマホには、真っ赤になった彼の顔がドアップで映っていた。

頬を舐める荒い吐息。大きく動いた喉仏が目に焼き付く。あのまま顔を近づけて、何をする気だったんだろう?

 

キス……?

 

そんな空気じゃなかったな。

牙を剥き出しにして、爪が伸びる。ビリビリに服を破られて、そのまま。

狼に変わる彼を、でも嫌だと思えない。むしろ、普段とのギャップの大きさが、あたしを狂わせる。

 

分かってんの?

 

僕以外にって言うなら……

 

「あたし以外にだって、ダメなんだから」

 

勝手な想像だ。誰に妬いてるのかも分からない。

少しだけ、ヒロインたちの気持ちが分かってしまった。あたしがどんなに無茶をやったって、助けてくれるのを疑えない。

 

無事でよかった。

 

勝手に飛び出したあたしを、咎める言葉はそれだけだ。

洞窟の奥で二人きり。他のヒロインたちが助けに来る間、やることと言えばそう。

 

湿っぽい空気の中、魔法の灯りが頼りなく揺れている。

「凪……」探るように名前を呼ばれた。「うん」あたしはただ頷いて、それを拒まない。

 

おっぱい……

 

小さくはないよね?

 

仰向けに寝たって、まだ山は出来ているし。

それでも、悩ましい。そもそも比較対象がおかしいんだ。あんな乳のデカい女がゴロゴロいてたまるか。この間引いた銀髪の子だって そこそこあったのに、間に挟まれれば貧乳に見えて怖い。

 

「はっ……」

 

バカバカしい。

 

鼻で笑ってしまった。

 

そもそも、あたしが気にするべきなのは、体型じゃないだろう。自覚はある。

ダルい、うざい、面倒の積み重ね。対人スキルは無いに等しい。今までの横暴が許されていたのは、見た目に恵まれていたこと。それに輪をかけて、彼が優しすぎたお陰だ。

 

怖い顔。

 

スマホに反射した しかめっ面が嫌になる。

もっと可愛く出来ないものか。ふわふわと、いかにも女の子らしい雰囲気を出せれば良いんだけど。軽く頬をもんだくらいじゃ、凝り固まった表情筋は解れてくれない。二人の時は自然とできていた気がするのに、一人になると全然だ。

 

どんな顔、してたんだろ?

 

スマホに残っているのは、男を見せた彼の顔だけ。

押し倒された自分の表情までは分からない。

 

「律……」

 

彼の名前を呼んで、胸が震える。

いつもの秘密基地と、どこにもない岩場の影。2つの世界が重なって、妄想の海に沈んでいく。押し倒されて、さらに深く。頬を撫でられ、まぶたを閉じた。

 

唇にキス。

 

2回、3回と、繰り返されて、愛情が雨のように降ってくる。

触れるだけ。確かめるように。優しいだけの口づけは、だんだんと熱を帯びてきて、あたしは彼を受け入れた。

 

ほとんど見様見真似。

 

それらしい経験もなければ、知識なんてヒロイン達からの受け売りでしかない。

勇者様ならきっと、舌を挿れてくるんだろう。だけど、違う。あたしにキスして良いのは律だけだ。好きだと言ってくれるのだって。勇者様(そんなやつ)いくらでもくれてやる。だけど、彼だけは……ダメ。絶対イヤ。

 

律もだよ。

 

よそ見したら、ダメなんだから。

 

薄く唇を開いただけじゃ、律はきっと動かない。

遠慮と、戸惑い。顔を真っ赤にして、おろおろしてる姿が目に浮かぶ。可愛いんだ。女の子みたいでさ。でも、今は襲いたいより襲われたい。

 

最初に舌先が触れ合った。

 

あたしが伸ばした舌に重ねるように、彼も舌を伸ばしてくる。ゆっくりと唇が落ちてきて、触れ合うよりも深く繋がる あたし達。

 

何をやってるんだろうなぁ……

 

気づけば、指を咥えていた。

スマホを片手に、キスの真似事を繰り返す。舌の代わりに舐め回した指先は、もうベチャベチャだ。それでも、止められない。だって、あたしは知っている。

ううん、多分あたししか知らないこと。

 

女の子みたいな彼の、男の子な部分。

叩かれたお尻のむず痒さを、今でも鮮明に思い出せた。気持ちよかったわけじゃないけど、癖にはなりそう。そういうプレイが好きならさ、あたしは受けに回っても構わない。

 

アゴを抑えつけられて、舌をねじ込まれる。

乱暴なキスの真似事。つい、指を奥まで入れすぎて、えづく。

 

「んっ……! ぅっ、ぇ……ほっ。はっ、はっ……はぁっ」

 

乱れた吐息に、湯気が立った。慌てて、引き抜いた指先から唾液が滴り落ちる。

スマホに映る写真は変わらない。欲の滾った律の視線が焼き付いたままだ。

 

想像したのは、あの時、何もしなかった世界のあたし。

急に押し倒されて、パニクった。キスまでされてたら、もうお手上げ。抵抗なんて考えられなかった。

 

キャミソールの肩紐をズラして、胸元を開く。

そっと、胸の膨らみに触れながら、頂きの手前で固まってしまう。

ただの妄想。いまのあたしは、制服だって着けてない。自撮りでもするようにスマホを掲げると、彼に見下されているみたいだ。

 

「んっ……」

 

強引に腕を剥がされるんだ。隠していた乳首がピンっと跳ねる。

さざ波のように広がる刺激を飲み込んだ。マッサージと言えば聞こえは良いが、実際はもっと雑。自分の喜ばせ方なんて分かっちゃいない。あたしの中にある経験は一つだけ。お尻を叩かれた時みたいにさ。もっと、きっと……。乱暴に胸を揉みしだかれる。見たこともない律の姿に、自分の欲望を預けるしか出来なかった。

 

優しくしてほしい。

 

反面、雑に扱われて興奮もする。

 

余裕をなくした彼が、あたしに夢中になってくれている。

チリチリとした焦燥感が足元に打ち寄せた。痛いやら、恥ずかしいやら。さざ波程度だった興奮は、寄せては返すたび大きくなる。

 

クチュリ……

 

聞こえる波の音は随分と穏やかだ。

胸からお腹へ、指を這わせた。まっさらな砂浜に残った跡が熱を持つ。浮かんだ汗が流れ込み、オヘソの窪みに溶けていく。

 

小指の先が、ショートパンツの手前でピタリと止まった。

ゴムをくぐっていかない。濡れた肌がイヤに冷たかった。急に頭が冷える。

 

一人で何やってんだろ?

 

あまりに空しい。

 

大きく息を吸って……吐き出す。胸の空気を入れ替えた後も、心の湿気は淀んだまま。岩場の陰で、いつもの場所で、今はベッドの上。思い描いた光景が、うつらうつらと切り替わり、自分の立ち位置を見失う。

 

あたしは……あたしは……

 

律の、なに?

 

彼女じゃない。そんな約束はしていない。

 

「なんで、やだ……」

 

抑えようとして止められない。意識するほどに、小指の先が泥濘んだ。

そんな目で見ないでほしい。掲げたスマホに映る律から目を逸らす。えっちって言わないで。勝手な妄想に罵倒される。何度も首を振っても、耳に絡む声はあたしから離れていかない。

 

せめて……

 

少しでいい……

 

声が聞きたくなった。あたしの律はそんな事言わない。

スマホを耳に当てる。コール音がもどかしい。早く、早く、気ばかり急いて、その後のことを全く考えていなかった。

 

ガチャリ……

 

でも、もし本当に「えっち」って言われたら。

彼と繋がったその瞬間、頭の中は真っ白だ。

 

「えと、瀬戸……さん?」

 

名前を呼ばれて、泣きそうにだってなる。

嬉しいのに、違う。いつも通りに呼ばれて、妄想がぱっと弾けた。耳に届いた律の声は、想像していたよりずっと「えっち」だった。

 

「あっきー……その、おはよう?」

「おはようって、もう昼前だよ?」

「あははっ。そう、なんだ……っ」

 

ぎこちない会話。普段ならもう少し胸が弾んでいるのに、今は鼓動の音が煩すぎて律の声が聞こえない。小指の先があたしを撫でた。腰が抜けそうだ。快感の熱が一気に燃え広がって、スマホを握る指に力が入る。

 

「大丈夫?」

 

頭の奥で響く声に、耳が蕩け落ちそうになる。

押し倒される自分の姿を強く思い描いた。足りないのは温もりだけ。興奮が重なる分だけ、寂しさが降り積もる。きっと、思いもしないんだろう。スマホの向こうで、あたしがオナニーしてるなんて。律に心配まで掛けてやることじゃ絶対ないのに、指は止まらない。それどころか、貪欲に続きがほしい。

 

「ぁ、ぇ、と。なんで?」

「電話だなんて珍しいし。初めてじゃない? それに、ちょっと声もさ。熱っぽいっていうか、風邪でも引いたなら、何か買ってこようか?」

 

惚けるしか出来なかった。あっきーの声を聞きながら やらかしてるなんて、言えるわけがない。じゃあ、ポカリ。言えばきっと来てくれる。みかん味のゼリーとかも、袋に入ってたりするんだ。

 

見られたら、どうしよう?

 

部屋に入ってきた律に、押し倒されちゃったりして。

 

小指でくすぐってるだけじゃもう。

薬指が入口を割り開く。なけなしの理性を拭い去るように、何度も何度も、溢れた愛液が指に絡みついた。次第に大きくなる水音が聞こえてしまうんじゃないか。心臓が今にも悲鳴を上げそうだ。

 

「平気」

 

嘘をついた。全然平気なんかじゃない。

律が悪いの。今すぐどうにかしてよ。理不尽に叫んでしまいそうになるのを、ぐっと噛み締めた。

 

「寝起きだから……あくびとかさ? はぁ……ん、ふぅっ。それより、あっきーは? っぁ、はぁ……ふぁ。何、してたの? 休みの日もやっぱりエロゲ?」

 

責任転嫁をしながらも、彼との会話を引き延ばす。

バレる事に怯えながら。バレてしまえと期待して。胸の振り子は大きく揺れて、グルグルと回りだしていた。

 

「普通に宿題だって。瀬戸さんは? もう終わったの?」

「なにそれ、真面目かよ。たまの休みに学生がさ、もっとやることないの?」

「後で見せてはないからね?」

「は? それとこれとは話が別じゃん」

「じゃあ、今からする? 分からない所があったら僕が……」

 

それもいい。だけど、今はそれどころじゃない。

こんな指でペンを握れない。問題用紙だって汚してしまう。

 

「今は……いい」

「そっか。じゃあ、僕まだ途中だし、そろそろ」

「やだ。このまま、繋いでて」

 

子供みたいに引き止めた。

 

遠のく気配が、困ったように立ち止まる。

「何でもない」は通じない。何かあったのだろうと察しても、答えに窮している。

「どうして?」聞かれたらおしまいだ。だからその前に「お願い」するしかなかった。

 

「じゃあ、このままにしておくね。何かあったら呼んで」

「うん」

 

「ありがとう」ぐらい言えばいいのに。

口に慣れない言葉は、急には出てこない。後ろめたさが圧し掛かる。彼の優しさに甘えてやることが、こんなのなんて。体と一緒に心まで、ベッドに沈み込むようだ。

 

聞こえるのは、紙を引っ掻くペンの音だけ。

 

スマホは手元にあるんだろうか? サっと撫でて、トンっと叩く。繰り返し、何度も。たまに悩むように指が止まって、同じ所を点々とした後、何かの拍子に滑り抜ける。

 

いつしか、指を重ねていた。

 

聞こえるペンの音にあわせて、あたしはあたしを慰める。

最初は、ただの気まぐれから。そうしている内に、あたしの指と律の指が重なり始めた。濡れた入口の前で繰り返し、浅い所で足踏みしていた中指が、泥濘に沈み込む。

 

「んふっ……あっ、はぁっ♥」

 

不意打ち気味に胸を突く衝動。唇から溢れた色を慌てて飲み込む。

訪れた静寂が怖い。繋ぎっぱなしのスマホの向こうで、一体彼はどんな顔をして、次に何を言われるのか。

 

ぐっと、押し付けるような音だった。

 

反射的に動いた指は真似をして、更に深くまで。

熱に包まれた中指が、キュゥっと締め付けられた。上も、下も。開いた口が噛み合わない。腰がガクガク震えだす。

 

それ、だめ……

 

イヤでも耳を澄ませてしまう。

多分、消しゴムの音だ。お尻を引いて、閉じた太ももをグリグリとこじ開けられていくようだ。逃げ出したいのか、何なのかも もう。とうとう、中指が根本まで入り込んだ。

 

なのに、あと一歩。

 

もどかしい、指先が空振りばかりを繰り返して触れたい所に触れられない。

 

「ふぅっ、ふぅっ……はぁっ、あぁぁぁ……♥」

 

声が、でも。抑えたくても無理だ。喉が震えてしょうがない。

じっとしていることすら辛い。身を捩って、シーツに背中を擦り付ける。

次は? ね、次は? どうするの? 消しカスを払う音に合わせて、水音が跳ねた。「いっ……」指が引き抜かれた一瞬、視界が霞む。胸が詰まって、目尻から流れた涙が頬を濡らす。

 

早く、早く……

 

再び走り出したペンに合わせて、入口を撫で回す。

もう少し、悩んでくれてもいいのに。撫でるだけじゃ物足りない。ようやくペンが止まって、人差し指にクリトリスを弾かれた。トントントンっ、それが律の癖なの? トイレを我慢してるような焦りが強くなる。もう何回も突いたら、下腹に抱えた熱が溢れ出しそう。

 

カラリ……

 

乾いた音が転がった。ちょうど、ペンが机に転がるような。息を呑む。

期待と、戸惑いで、体が固まった。今は、ダメ。今そんな事されたら。「ぁぁっ、ぁ……」漏れ出る吐息は言葉にならない。もうすぐ、今すぐに。いつ来るかも分からない。目に見えないことが、余計興奮に拍車をかけた。

 

グっ……

 

押し込まれ。

 

グリグリ……

 

削られる。

 

一気に根本まで。深い所に入ってきた中指が、奥で暴れだす。

次は、次にくるのは……。消しゴムの音が止まって、一瞬の静寂。ダメ、でも。高鳴る鼓動が期待を刻む。

 

「ん、あぁぁっ♥」

 

勢いよく指が引き抜かれた。掻き出された愛液が股間にドロリと広がり、耳に押し当てたスマホが汗で滑る。これでも、バレないなんてこと……。

 

なのに、彼は何も言ってくれないまま。

 

なんで? どうして? 分かんない。お尻叩いていた時もそうだけど、意地悪するのが好きな感じ? それとも、単にあたしには興味ないだけかな? 女の嬌声なんて、いくらでも聞いてるもんね。ただの雑音にしか思わない?

 

もう、いってしまおうか?

 

そうしたら、律も少しは本気になってさ。

 

口を開きかけた あたしの耳に届いたのは、ジっと金属が引っ掛かる音。

それは段々重ねに繋がって、大きく開いていくようだ。衣擦れと、微かな吐息。

彼の気配に耳をくすぐられる。コレが聞こえるならさ。あたしの嬌声は、どれだけ彼を追い詰めただろう。

 

息は乱れ、乾いた音が粘りを持つ。

 

プリントがクシャリと歪んだようだ。

 

もう、宿題どころじゃない。問題はなに? 答えはどこ?

文字を書いてる音じゃなくなった。黒塗りが、厚さを増していく。ペン先がパキっと折れて、苛立つようなノックの音が、カチカチと繰り返される。

 

もう、分かってやってるんだ。

 

聞こえる音は命令だ。ペンを動かされたら、言いなりになったあたしは声を上げるしかない。グルグルと、入口を乱暴に掻き回す。ノックに合わせてクリトリスを突き回した。でも、ほしい刺激はそれじゃない。彼のお許しはまだ出ない。

 

衣擦れ音に水気が混じる。

 

スピーカー越しに秘め事が見えるようだ。スマホの厚さなんて、無いも一緒。彼に合わせて指を動かす。間接、セックス? そんな風にも言ったっけ? 思いだして、吹き出してしまった。

 

「え、あっ!? な、なに、どうしたの……瀬戸さん?」

「にひっ♪ ううん、なんでも。ね、律? 今……なにしてる?」

 

慌てる声。取り繕うように名前を呼ばれて、気が緩む。

思わず、下の名前を口にしたのも気づかなかった。

 

「何って――だってっ」

 

問われて、一瞬。動きが止まった。

あたしも指を止めて、律の答えを待つ。スピーカーに乗るノイズは、滝のように荒れて、あたしたちの鼓動をかき消した。

 

 

煩いのに凄く静かだ。

 

 

カラリ……

 

ペンが机の上を転がった。

 

「ごめっ、瀬戸さん――っ。ぼくっ、もっ。ダメで。ほんとに、ごめんっ!!」

「いい、からっ。あやまらないでっ、そのまま、そのままが、いいっ。あたしと、いっしょ――にっ!」

 

止まらないし、もう止められない。我慢した分だけ、鬱憤を晴らすようだ。

スマホ越しにお互いを弄り合う。競い合うように情熱は増していき、その瞬間は唐突に訪れた。

 

勢い余って何を破ったのか聞くまでもない。紙を引き裂くようなその音が、直接頭に届くと、ただ一つの命令を下す。

 

「ぃ、っぁ、ぃぅぅぅぅぅぅ……♥」

 

焼け付くような、彼の吐息が耳に掛かる。

あられもない声を上げたのは、あたしも一緒。後ろめたさに縛られて、スマホを握りしめた。素直になれないあたしを、素直にする魔法。今なら「好き」だといえるんじゃないか。

 

ドクドクと下腹が震える度に、愛情が注がれているような気がして腰が浮き上がる。言いたいのに、言えない。頭、変なの。お腹、熱いの。高い絶頂の波に飲まれたあたしは、溺れないようにするので精一杯。

 

「あぁっ、あっ、あぃっ……ぅぅっ♥」

 

背筋が伸び切り……プッツリと。絶頂の波が引いていく。

緊張の糸が途切れた瞬間、ベッドに崩れ落ちた。汗で湿ったシーツが、火照った肌を冷ます。濡れた指先は僅かに甘酸っぱい。鼻をくすぐる爽やかな香りは、いつもの使ってるシャンプーのものだけ。男臭さなんて、まして律の匂いは何処にもない。

 

 

賢者タイム。

 

乱れた吐息が次第に落ち着いて、訪れた沈黙が辛くなる。

冷静になってしまえばなんてことはない。一つになれていたつもりだった。

あれだけ近くに感じていたのに、現実はこんなもの。スマホ越しに聞こえる彼の声すら作り物めいて嫌になる。

 

持て余した性欲を、変な形でぶつけてしまっただけ。

 

あれだけ会いたいと思っていたのに、途端に合わせる顔が無くなった。

 

息を呑む音が聞こえてくる。胸の鼓動まで察せてしまいそう。

後悔と罪悪感の漂う音色。素直になれなかった。結局は、また彼のせいにして有耶無耶に。こんな「ごめん」も言えない女なんて。

 

「……宿題、終わった?」

 

惚けた声で、問いかける。

 

「っ、ぁ、うん。ごめんね、瀬戸さん、僕」

「いいよ。後で写させてくれるなら、ね?」

「へ、あ……ぇと、それって。どういう?」

「にひっ♪ 知らない。あっきーのえっち」

 

苦し紛れに口をついた言葉は、可愛げのないものだった。

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