Teaching Sweet Feeling 作:こまごめピペット
ベッドの上。
お互いが別の方を向いて寝ている。
少し動けば足が当たり、布団が擦れる。
今までこのベッドがこんなに狭いとは思ってなかったな……。
背中越しに規則正しい呼吸が聞こえる。
起きているのか、眠っているのか……分からない。
夕食の間もいつもより口数が少なかった。
気まずいのとは違う。ただ、お互いに言葉の置き場を探していた。
……見られてしまった。
あんなところを。
貴方のことを想いながら、耽っていたところを。
貴方は扉の前で、先に「すまない」と……それから、「可愛かったよ」と。
……僕のことをどう見ているんだろう。
奴隷にしては余りにも自由がある。
愛玩用にしては、あの二度程で済んでいる。
襲われる覚悟はしていたのに……。
頭を撫でられた感触が、まだ残っている。
私は、ゆっくりと寝返りを打った。
暗がりに溶けた貴方の背中は、普段より大きく見える。
恐る恐る、手を伸ばす。 指先が、背中の布に触れた。温かい。
そのまま、額を寄せる。
「……んっ……」
布越しの体温。薬草と、乾いた紙の匂い。
規則正しい脈が額に伝わってくる。
優しいご主人様。
貴方は……僕に、私に……。
瞼が重い。
衣擦れが聞こえ、何かに包まれる感触と共に、意識が途切れた。
◇◆◇
……いたい。
息をするたび、傷跡が疼く。
鞭で裂かれ、薬品で溶かされた痕が、焼けるように痛い。
なのに。 一番価値のある声だけが出ない。
喉が詰まる。苦しくて、苦しくて——
「────……っ」
心臓がうるさい。
息は浅く、背中の汗が冷たい。
けれど、それは長くは続かなかった。
目の前に、彼の顔があった。こちらを見ている。
「……おはよう」
「おはようございます……」
「魘されていたな。大丈夫か?」
「……はい。大丈夫です」
しまった。見られていた。
彼は髪をそっと撫でてから、身を起こした。
「朝食にしよう、シルヴィ」
「はい、ご主人様」
トーストにはブルーベリーのジャムを塗った。
彼が温めたミルクには、砂糖が少し溶けている。
「……美味しいですね」
「ああ、そうだな」
カップを包む指先が、ゆっくり温まっていく。
その朝は、急ぐものが何もなかった。
◆◇◆
昼前は、彼の隣で本を開いていた。
一文字ずつ指でなぞり、読めた音を拾っていく。
分からない字で詰まるたびに、頭へ手が乗った。
読めた、と告げれば、もう一度。
そうしているうちに、陽が高くなっていた。
軽い昼食のあと、ご主人様がお茶を淹れてくださった。
「言ってくだされば、私が準備したのに……」
置かれたカップから、湯気が立つ。 爽やかな香りが、先に鼻へ届いた。
「まぁ、色々あってだな……この前のピンクの花とは別の、青いやつを香り付けに少し入れたんだが」
……思い出す。
あの森で採った青い花。確か、気持ちを落ち着かせる花だ。 前回はピンクの効能が強すぎた。彼も慎重になっているらしい。
「そうなんですね……私は、ご主人様が淹れてくださったものなら、何でも嬉しいです。きっと、美味しいです」
彼は「そうか」と言って、自分のカップを持ち上げた。
湯気の向こうで、視線が少しだけ泳いでいる。
私も、両手でカップを包んだ。
シルヴィになんて呼ばせよう……
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ご主人様
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先生
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貴方(様)
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旦那様
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グリス
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その他(コメントとかマシュマロから)