イスタール年代記-快楽の修練者と藍色に染まる少女たち- 作:錫鹿とらちよ
修行者カナンとの夜は、あまりに刺激的でどこか甘い香りがした。
ガトン収容所の石壁に染み付いた死臭とは無縁の、清潔な寝具の匂い。
ポーターは与えられた個室のベッドに腰掛け「修練」という未知の義務に身をすくませていた。 そんな彼女にカナンがこう微笑みかけ今日の修練内容を告げる。
「今夜は『快楽の修練』ではない。我々がいつか高貴な主を悦ばせるための仕事……その研鑽のための『愛情の修練』を行う」
紺色の髪を端正に整えた彼の声は、驚くほど穏やかだった。
愛情。その言葉は誰からも慈しまれることなく消費されてきたポーターにとって、痛みすら伴うほど眩しく響く。
イスタールの修練には「愛情」と「快楽」があるとルッツから聞いていた。
ポーターは男性から愛というものを受けたことがない。
もちろん快楽も未知であったが、愛情というその響きにとてつもない渇望があった。
彼女は潤んだ瞳を上げ、消え入りそうな声で答える。
「……お願いします。たとえこの夜だけの仮初めでも。カナン様に、愛されてみたいです……」
その謙虚な願いがカナンの内にある修行者としての火を灯した。
彼は「いい子だ」と囁き、不安に揺れる彼女を導くようにリードし始める。
指先で桃色の髪を優しく梳き、強張った背中を大きな掌でゆっくりと円を描くように擦る。
額から頬、首筋へと、熱を帯びた唇が慈しむように落とされ、やがて二人の唇が重なる。
考えてみれば唇を重ねるなど初めてのことだった。
丁寧に、一枚ずつ布を剥がされるように服を脱がされ真っ白なシーツの上に横たわったポーターは、己の肌を愛撫するカナンの手に意識を支配されていく。
胸、肩、そして柔らかな脚のラインをなぞるその手つきは、どこまでも紳士的でありながら内側に潜む欲望をじりじりと煽るような、蛇のような執拗さを持っていた。
「っ…んあぁっ……」
軽く下唇を吸われるだけで下腹部の奥に熱いものが溜まっていく。
そして次の瞬間、カナンの熱い舌が無防備なポーターの口内を深く侵犯した。
「っ!??」
初めて知る、粘膜同士が絡み合う湿った感触。
カナンは戸惑い逃げようとする彼女の口内にさらに侵入し、その小さな舌を逃がさぬように器用に絡め取り、舌の根元を優しくなぞり、側面を丹念に舐め上げた。
口内という内臓の入り口を征服される圧倒的な刺激に、ポーターの思考は白く霧散していく。
(この感覚…何なの…………っ!??)
朦朧とする彼女の意識を繋ぎ止めたのは、胸に走る鮮烈な熱だった。
カナンの大きな手が、薄桃色の瑞々しい乳首に触れる。
顔を紅潮させ、身体の奥で起きている激しい変化を瞳で訴えるポーターを、カナンは慈愛の笑みを浮かべて見つめていた。
唇を塞いだまま、彼は彼女の尖りを親指と人差し指の先で挟み込み、じりじりと捻るように圧をかける。
「ぷはっ……か、カナン様……っ! そこは……っ」
解放された唇から漏れたのは懇願に似た吐息だった。
乳首から胸の深淵まで、経験したことのないピリピリとしたむず痒さが、血管を伝って脈打つ股ぐらまで突き抜ける。
「気持ちいいかい?」
分からない。
こんな刺激は味わったことがない。
カナンは彼女の耳元で囁きながら、今度はその唇で硬く勃起した左の乳首を丸ごと熱い口内へ含み込んだ。
「んぁっ……あ、あひっ……!」
摩擦により尖りきったそれを熱い口腔に閉じ込められ、内部で荒く舌を転がされる。
先ほど自らの舌に受けた仕打ちをもっと敏感な突起に受けている。
その刺激は雷撃となって全身の神経を焼き、ポーターは人生で初めて自らの意思とは無関係な嬌声を上げた。
左の乳首を舌の腹でざらりと舐め取られている間、もう片方の乳首は指の腹で熱を帯びるほどゆっくり擦られる。
右の乳首を吸い上げられる時は、片方を爪先でいじめるように小さく引っかかれた。
絶え間なく襲いかかる、未体験の刺激。
カナンはいくつかの刺激をローテーションで試し、ある瞬間に「確信」を得たように、その手技を一つの型に固定した。
「そ、それっ…カナン様っ!それっ…!!」
(思考を……読まれている?)
それがイスタール人が誇る能力。
彼は愛撫の合間にポーターの脳内に芽生える朧げな「快感の波」を手に取るように覗き見ていたのだ。
左の乳首を深く口に含み、唾液まみれになったそれを舌の先でゆっくりと円を描くように舐め回す。
その傍ら、右の乳輪を親指と中指で強く引き伸ばし、無防備に晒された中心部を人差し指の腹で執拗に引っ掻く――。
両側の乳首にそれぞれ違った刺激が与えられる。
左はその全てを包まれ熱く溶けるほど粘度の高い快感。
右は逆にむき出しにされた快楽の芽を乾いた刺激で追い詰める無慈悲な刺激。
それが、ポーター自身ですら言語化できていなかった、自分を最も狂わせる「快楽の正解」だった。
正解を見つけたカナンはただひたすらにそれを固定し執行するターンに入る。
「カナン様っ! それダメです!……私、何かが…っ!」
両の尖りを徹底的に、執拗に、逃げ場のない正確さで蹂躙され、ポーターは涙を零して腰を浮かせた。
カナンの屈強な太腿はすでに彼女のスカートを分け入り、薄い下着越しに秘部を広い面積で強引に圧迫していた。
もがき、逃げ場を失ったポーターが限界を迎えると同時に、カナンの太腿に力がこもる。
しなやかな筋肉が股間をグイと押し上げ、同時に、指と唇が両乳首をそれぞれ別々の方向へゆっくり引き伸ばす。
「んぐっ…! あ、あぁぁーっ!」
右の乳首はより右に、左の乳首はそことは遠ざかるように逆方向に
熱い唇と乾いた指先にそれぞれ拘束されながら引き離され、ポーターは小さな顎を跳ね上げ一際大きな嬌声と共に背筋を弓なりにのけぞらせた。
次の瞬間、カナンのズボンの生地をじわりと濡らすほどに、ポーターの秘部から人生で最も熱い雫が溢れ出した。
胸を、股を、魂を。 すべてを「読まれ」、暴かれ、慈しまれたことで、彼女は人生で初めて、自分を奪い去るような絶頂の深淵へと叩き落とされた。
だが、カナンはまだその秘部に直接触れてすらいない。
イスタールの夜は、まだ始まったばかりであった。