イスタール年代記-快楽の修練者と藍色に染まる少女たち- 作:錫鹿とらちよ
「んはああああああぁぁぁっっっ……!!!!」
薄暗い部屋の静寂をポーターの艶を帯びた絶叫が残酷に引き裂いた。
グレイスという男の攻めは、ただただ「執拗」の一語に尽きた。
情け容赦のないその指先はひとたび彼女の肉体に自らの気に入る「急所」を見出せば、そこが焼き切れるまで徹底的に終わることなく責め立ててくるのだ。
それは獲物の自由を奪い、ゆっくりと時間をかけて相手の反応を愉しみながら「解体」し「捕食」していく、冷徹な捕食者の所業であった。
「んくっ!! そっ、そこっ……!!」
箇所を指す言葉をグレイスは見逃さない。
彼女のあからさまな反応とイスタール人特有の「読心」の技を組み合わせ、彼はポーターの頭の先からつま先までを舐めるように精査し、点在するあらゆる性感帯を根こそぎ暴いていく。
そして今、彼の狙いは彼女の最も敏感な弱点――秘丘の頂に位置するあの淫らな蕾「陰核」へと絞られていた。
「あっ、あっ、あぁっ!! ……だっ、ダメです……グレイス様っ……!!!」
クリトリスの先端を貫く狂おしい刺激。
最も隠しておきたいはずの、それでいて自分でも制御できないほど愛撫を渇望してしまうその場所。
かつてカナンによって心を読み解かれ明らかにされてしまった彼女の「狂う場所」は、例に漏れずこのグレイスにもあっさりと見つけ出されていた。
(ああ、私は…これからもイスタールの方とまみえる度にこうして頭の中を覗かれ同じ場所を何度も暴かれてしまうの?…)
ヌリッ……ヌルッ………。
思考が白濁するポーターの股間に、得体の知れない「何か」が這った。
「いっ! …あっ……!! ……な、何をっ…!!」
目隠しをされた暗闇の中で恐怖が彼女を支配する。
ただ分かるのは、先ほどまで執拗に弄られていた一番弱い部分に、何かが分厚くねちっこく塗りつけられているという感触だけだ。
グレイスは彼女の悲鳴を無視し、職人のような顔つきでその一点に集中していた。
透明の瓶から取り出した未知の液体を指に取り、丹念に、そして残酷なほど丁寧に彼女の陰核へ塗り込めていく。
「あっ……熱いっ……!! っ……グレイス様っ……!!!」
四肢に力を込めのけぞって逃げようとするが、器用に縛り上げられた手足はびくとも動かない。
一番感じる場所に粘度の高い何かが塗りたくられていく。
特に彼女が最も快感に狂う先端には執拗にその液体を組織の奥まで吸収させるかのように塗りつけられた。
火を押し当てられたような熱。四肢に力を込め、のけぞって逃げようとするが、精緻に縛り上げられた手足はびくとも動かない。
最も敏感な蕾の裏側まで、何度も、何度も。
皮膚が液を吸い尽くし奥底の神経にまで浸透していくのを待つかのように、執拗な愛撫が繰り返される。
熱の次に訪れたのは、細胞の一つ一つが震え出すような形容しがたい快感の重力波だった。
「あはっ……!! ……そ、そこっ……!! な、何かっ……疼きますっ……!!!」
熱が芯を持ち、陰核全体が膨張し硬く肥大していく。
ビクビクと脈打つほどに硬く勃起したそれを眺め、グレイスは満足げに呟いた。
イスタール北部の山脈に咲く濃浅葱の花から抽出される特殊な媚薬。一族が尋問に用いる秘伝の薬。
このような薬を使うことを好まない修行者もいるが、グレイスはむしろ積極的に取り入れ技術として昇華させる男だった。
視界を奪われたポーターにも自分のクリトリスがどれほど無様に、そして雄々しく勃起させられているかが嫌というほど理解できた。
おそらく包皮は無惨に剥き上げられ、過敏になった本体が剥き出しで空気に曝されているのだろう。
そして何より、その「疼き」が彼女を追い詰める。
「こ、怖いです……グレイス様……」
「大丈夫だよ。……きっと、『気持ちいい』から」
安心を与える言葉。しかしそれに続くのはより不安を煽り立てる甘美な響き。
淫らな芽をビクつかせ腰をくねらせるポーターを尻目に、グレイスは次の準備へと着手した。
シュルッ……シュルッ…………トプッ……。
音だけが部屋に響きポーターの想像力を恐怖で増幅させる。
「グレイス様……、な、何を……」
ゾリッ。
「ぁかっっ……!! ……あっ、ああああぁぁぁっっ……!!??」
瞬間、限界まで膨張した核の表面を濡れた摩擦が蹂躙した。
グレイスは両手を黒い革の手袋に通していたのだ。
指先に先ほどの媚薬をたっぷりと染み込ませ、その革特有のほどよくざらついた指の表面で彼女のクリトリスを丹念に擦り始めた。
ゾリッ……ゾリッ……ゾリッッッ…………。
「だっっ、ダメですっっ……! ……グレイス様っ……!! ……そ、それっ………あぐっっっ!!!?」
大きく身体がのけぞり、唐突な絶頂が彼女を襲った。
受け入れの準備もできていない身体にクリトリスから発する鋭角的なアクメが、ざらついた指先によってさらに尖りを磨かれ彼女の身体を無慈悲に突き抜ける。
「あっ……はぁっ……ご、ごめんなさい…い、イキました……」
快感の波に打ち震え息を荒くしながら彼女は謝罪と事後の報告を口にした。
絶頂の予感を感じたら『イク』と言う――。
以前カナンから教えられた、守らねばならない「しきたり」を果たせなかったことが、彼女の中に強い謝罪の念を生んでいた。
「謝れて偉いね。じゃあ次は、ちゃんと言えるようにしようね」
グレイスは慈悲を見せず、再び指を動かす。
ゾリッ……ゾリッッッ…………。
「くああああぁぁぁっっ、おっ、……そ……そこっっ……!!」
手袋にさらに媚薬を染み込ませ、彼女の弱点の中の弱点を集中的に擦り上げ、薬を塗り込んでいく。
(フェリオ家のポーターは、クリトリスの先端の裏側が弱い――)
そんな情報が修行者たちの間で共有されているのではないかと疑うほど、彼は迷いなく彼女の最も狂おしいポイントを狙い撃ちし、丹念に磨き上げていく。
「ぐ、グレイスさまっっっ……!! …そっ……こっっっ……!! …だめっ! ……んぐぁっっっっ…!!!」
またしても腰が跳ね上がり、後頭部が勢いよく後ろに折れる。
先ほどよりもさらに鋭く研がれた快感に貫かれ、黒い布の中で目を見開き断続的な絶頂を受け止めるしかなかった。
「また言えなかったね」
ゾリッ……。
「ごっっ……ごめんなさ…あぐっ……!!」
謝罪も言い終える間もなく再び摩擦と塗り込みが始まる。
次こそは甘美な弾丸が自分を撃ち抜く前に教えられた淫句を宣言しなければ。
そう思いながらポーターは自分の淫らな核へと全神経を集中させた。
感触こそカナンにされた時の柔らかな刺激とは違う凶悪なざらつきではあるが、それを見越して覚悟を決めれば――。
ヌルッッッッ……!!
「んぉっ……!!!??」
刹那、クリトリスだけに集中していた彼女の意識を嘲笑うかのように別方向から新たな刺激が顔を見せた。
もう片方の手、手袋を嵌め媚薬を塗りたくった指先二本が彼女の内部へと唐突に侵入したのだ。
また、頭の中を読まれている。
グレイスの行動は常にポーターの先を行く。
次こそはと守りを固め準備を整えると、彼は全く違う方向から無防備な箇所に一撃を叩き込んでくる。
ひどくぬるついた腟内にさらに粘度の高い薬液を纏った指が潜り込み、瞬間、本能的に彼女が「そこだけはダメだ」と頭によぎらせた箇所を読まれ、見つけ出された。
媚薬が腟内で分散する前に、彼女の最も敏感なポイント――Gスポットに無慈悲な塗りつけが行われる。
「だっっっっっっ………!!!!」
四肢を拘束するロープを引きちぎらんばかりに力を込め、精一杯の制止の声をあげようとする。
だが、それよりも一歩先に、彼のざらついた指先が彼女の淫らな丘を、媚薬を伴いながら無慈悲にこすり合わせ言葉の続きを言わせない。
(両方っっ……――っ……!!??)
クリトリスへの刺激は一秒たりとも止まってはいなかった。
その状態で、内部の秘密の丘まで暴かれ、擦られ、二つの性感帯に同時に媚薬を塗り込まれながら同じ強さで残酷に擦り上げられる。
カナンは彼女の知らない性感帯を一つ一つ丁寧に暴き、順番に愛してくれた。
だがこの青年は、ご馳走が目の前に二つ出されたら、迷わず両方を頬張るような貪欲な責めで彼女を一気に押し上げていく。
(ダメッッ……言わなきゃっっ…!!)
「イク」と言いたい。
優しいカナンに教えられた、この修練における唯一の約束事。
成すすべもなく快楽の海に飲まれるだけの情けない自分が、唯一任された誇らしい役目。
「グレイス様ぁっっっ!!! ……私っっ…!! ………イッっっ…!!!」
ゾリィッッッ……!!!
「んあおぉっっっ!!! ……!!!!」
クリトリスを人差し指で裏から支え、親指で激しく擦り上げる。
同時に、Gスポットを蹂躙する二本の指が腰が持ち上がるほどの力で上方向へと突き上げられた。
ビクッッ!! ビクッッ!! ビクンッッッ!!
もはやどちらでイかされたかも分からなかった。
外側の鮮烈な刺激と、内側の重く深い刺激。
その二律背反する絶頂に挟まれ、彼女はまたしてもたった一つの役目も果たせぬまま、宣告なしで絶頂を貪らされた。
「……んはっ……ご、ごめんなさい…ごめんなさい……あぅっ……」
彼女の謝罪は目の前のグレイスに、そして絶頂の報告という甘い役目を教えてくれたカナンに向けられたものだった。
「また言えなかったねえ。気持ちよくなれそうな時は、今度こそちゃんと『イク』って言おうね」
あなたのせいだ――
ポーターは心の中で叫ぶ。
自分は言いつけ通り、甘い絶頂を予感したら何度でもその淫句を宣言するつもりなのだ。
でも、心を読まれているから…。絶頂がそこまで迫りいざ報告をしようとする瞬間を見計らって、声も出ないような強い刺激を叩き込んでくる。
恨めしくも、グレイスの優しい呼びかけに、またしても心には温かさが灯る。
この青年もまたイスタールの男性らしく、口調だけは女性を甘やかすように響くのだ。
地獄の監獄で非道な扱いを受けていたポーターにとって、その甘やかさは、どんなに強烈な責めを受けていようとも、体に染み渡る救いとなってしまう。
「次はちゃんと言えるといいね。言えるまでは、終わらないからね」
「は……はぃ…頑張りま………んぐっっっ……!!」
ゾリッ……。
またしても、悪魔のような摩擦運動が再開された。
彼女はついにその淫らな宣言を果たせぬまま、常に先を越され、絶頂の沼へと突き落とされ続ける。
泣きながら、何度も謝罪を重ねながら、気づけば三十度目となるアクメの深淵を彼女はただひたすらに貪り続けるのだった。