イスタール年代記-快楽の修練者と藍色に染まる少女たち- 作:錫鹿とらちよ
ベッドの上でキルヴィは混乱と羞恥が入り混じった表情を浮かべ、荒い息を繰り返していた。
その上半身は無残にもはだけ、露わになった胸元にはつい先ほどまで徹底的に、そして執拗に愛されていた証として乾ききっていないアロンの唾液が光っている。
(……もう一度あの感覚を味わいたいとは言ったけれど……)
胸だけで、それも呆れるほどに何度もイカせてほしいなどとは口が裂けても言っていない。
限度を超えたアロンの苛烈な責めに対し恨み言の一つでもぶつけてやりたい心境だったが、
この惨劇とも呼べる事態を招いたのは、自分自身の見積もりの甘さでもあった。
アロンの、胸に対する執着は凄まじいものがあった。
序盤、胸全体を慈しむように包み込み、ゆっくりと解きほぐすようなマッサージを受けた時はキルヴィも気恥ずかしさの中に確かな心地よさを感じていた。
だが、その丁寧な工程の中でとある箇所に彼の手がふっと触れるたび……むず痒く、思わず腰が引けてしまうような奇妙な感覚が走る。
それは新たな快感へと繋がる導火線のように、彼女の内で緩やかに熱を高めていった。
キルヴィは本来、胸を晒すことに抵抗があった。
身近な比較対象がミニスしかいなかったためこれまでは特別に意識したことはなかったが、女性としては明らかに控えめで小ぶりなその膨らみ。
男性が……アロンがそれを目にした時に、果たしてがっかりさせないだろうかと彼女は生まれて初めて抱く「女」としての不安に胸を痛めていた。
だが、胸全体の愛撫がその先端への集中的な責めに切り替わろうとする頃、恥ずかしくて直視できなかった彼の様子を盗み見た瞬間、キルヴィは目を見開いた。
キスを交わしていた時はまだ余裕のあったはずのアロンが自身の小ぶりな胸を食い入るように凝視し、明らかに「雄」としての本能を剥き出しにして興奮し肩で息をしていたからだ。
「あの……アロン、その……ごめんなさい。触り甲斐がないわよね……私の、」
キルヴィは自信のなさを隠すように、謙遜してそう言葉を紡いだ。
しかし、アロンは顔を上げ昂ぶった声で即座に答える。
「いや……キルヴィの胸を見ているんだと思うと、自分でも驚くほど興奮してしまって……抑えが効かなくなりそうなんだ」
その言葉通り、アロンは明らかに制御不能なほどに熱を帯びていた。
「そ、そうなの?……その、えっと…思うようにして構わないわ」
男性の抑えが効かないというのが具体的にどういう状況を指すのか無知な彼女には知る由もなかった。
ただ、自分の貧相だと思っていた胸が彼をこれほどまでに良い状態にしているのなら、それは素直に嬉しい。
そんな純粋な献身の気持ちで彼を後押しした――。
それが、後になって後悔してもしきれない、取り返しのつかない一言だったのかもしれない。
彼女の許可を得た途端、アロンは飢えた獣のようにキルヴィの胸にむしゃぶりついた。
ざらりとした感触の舌で、小さな乳首を掬い上げられ、執拗にほじくり回される。
キルヴィはむず痒さを通り越し、鮮烈な性感が乳首の一点に灯るのを鮮明に感じ取った。
「アッ、アロンッ……!?、あ、あのっ…んくっ……!」
柔らかな舌の腹で優しく潰すように右の乳首を押し込まれ、そのままの状態で円を描くようにねっとりと舐めたくられる。
かと思えば、今度は左の乳首を口内に深く含まれ、根元から吸い上げるように強く引っ張り出された。
「あっ……あうっ……!!」
押し込まれ、引っ張り出され。
どちらの状態にあっても常に熱い舌が粘膜を蹂躙し続ける。
胸のサイズに見合った控えめで愛らしいその乳首は、健気にも精一杯の尖りを見せ、彼の寵愛を全身で受け止めようとさらに硬くいじらしく自己主張を始めた。
(気持ちいい……でも……っ)
少々荒々しいまでの舐めつけや吸引。
だが、アロンは決して痛みを与えない絶妙な力加減を完璧にコントロールしていた。
我を忘れたように興奮しながらも、彼はやはり修行者として彼女の快楽のポイントを探ることを片時も忘れてはいなかった。
口内を蹂躙していた時と同じように、ありとあらゆる刺激を乳首に与え彼女の奥底に眠る欲求を暴こうと探っていたアロンであったが、ふとその動きを止める。
心地よい快感に身を委ねていたキルヴィが、一瞬だけ強張った。
彼は再び彼女の本能が発する「声」を丹念に読み取りにかかる。
それを察したキルヴィは今回ばかりは必死に思考に蓋をした。
だが、何かを感じ取った彼はその愛撫を再び胸全体へと移していく。
その時、彼女の身体が一瞬、逃げるようにビクリと反応した。
「ここ……感じるんだね」
少しだけ冷静さを取り戻したような、けれど確かな確信を持った口調でアロンが呟く。
彼が指摘したポイントは、甘い快感を生む左右の尖りなどではなかった。
胸の膨らみが始まる、滑らかなカーブの起点。
小さな丘の「裾野」に位置する、最も無防備な部分。
「……っ」
見つけられた。
乳首への刺激は確かに甘く蕩けそうな快感があった。
しかし、胸全体をマッサージされている最中に彼の手が触れた際、彼女が本能的に「そこはダメかもしれない……」と直感し、そっと秘めておきたいと願って隠していた場所。
両胸の裾野の部分こそが、彼女自身、つい先ほど自覚したばかりの「最大の弱点」だった。
隠していた秘密を無惨にも暴き、その急所を完全に把握したアロンは何の躊躇もなくその「裾野」へと深くしゃぶりついた。
「っ……!!……あっ……あーーーーっ!!!」
思い切り腰が引けそうになるほどの、耐えがたいむず痒さ。
全身にゾワゾワとした異質な違和感が伝播し、それが不快なのか快感なのかも判別できないまま全身の産毛が逆立つ。
「あっ……つっ……!!?……ア、アロンッ……そこっ、……ダメッ……!!」
身の毛がよだつような、恐ろしいほどに異質な感覚。
彼女は必死に耐えようと両脚をねじるように固く組んだが、次の瞬間にはその脚を強引に広げられその間にアロン自身の腰を割り入れられた。
下腹部に力を込めて耐えることすら、今の彼女には許されなかった。
さらに、彼を制止しようと伸ばした両腕も自身の頭の上で封じられる。
文字通り手も足も出ない状態で、剥き出しの急所――胸の裾野をこれでもかと執拗に舐めしゃぶられた。
「んはあっ!……な、何か…だめっ……!!……そこっ……変なのっ…!!」
弱点を見つけたら徹底的に攻める。
至ってシンプルで、残酷な行為にキルヴィは成すすべなく追い詰められ首を何度も横に振った。
「お、お願いっ……!!……ち、乳首してっ……!!……乳首ならっ……好きなだけっ!!……い、いいからっ……」
ずぞぞっ!!ちゅくっっ!!…ぬるっっ……!!
「アロンッ…!!…き、聞いてっ…あぅっ……!!…ちくっ、…乳首してっっ!!…乳首が好きなのっ!!」
急所を責め抜かれるという危機から逃れるため、キルヴィは己の乳首を身代わりに捧げようと必死の交渉を試みる。
だが、アロンはその切実な訴えすら無視し、左右の弱点を交互に獲物を仕留めるように舐め回した。
ちゃっちゃっちゃっちゃっ……れるっ…!!
まるで喉を乾かした大型犬がしばらくぶりの水にありつき一心不乱に飲み干すように、一点に集中させ舌を乱舞させる。
「あーーーーっっっ!!!……あっ!!……やだっ……!!……アロンッ……!!!」
追い詰められた彼女の内に何かが迫りくる。
胸の膨らみと脇腹の境目を徹底的に舐めつけられ、くすぐったいという感覚が、強制的に「性感」へと書き換えられていく。
(い、イキそう……こんな場所を責められて……っ!!?…で、でもっ……その前に…こ、これっ……)
迫りくる絶頂の予感。
しかし、それ以上に恐ろしい青ざめるほどの「最悪の予兆」が彼女を襲った。
「ア、アロンッ……!!……とめっ……止めてっ!!……もっ…………、漏れちゃうっっ……!!」
性器ですらない箇所を極限まで責め抜かれ、彼女の中枢神経は未曾有の混乱をきたし、それが猛烈な尿意となって押し寄せてきたのだ。
「アロンッ……!!……きっ……聞いてっ!……も、漏れちゃうのっっ……!!許してっ……!!やだっ……!!」
思うようにして構わないなんて、言わなければよかった。
彼女の心に後悔の念が激しく渦巻く。
しかし、彼はキルヴィの最初の申し出通り、思うがままに欲望のままに急所を責め続け、止める素振りなど微塵も見せなかった。
「もっ……漏れっ……!!……いやあっ!!……漏れるっ……!!…も、漏れっ……!!…も、もうっ……!!むりっ……離れてっっ!!」
依然として彼女の股ぐらにはアロンの腰が割り込んでおり、このままでは最悪の事態を迎えてしまう。
普段、誰よりも毅然とした姿勢を崩さないキルヴィにとって、性行為による絶頂の姿を見られることよりも、何倍も、何十倍も人に見せたくない痴態。
この歳になって尿意を我慢できず人前で漏らしてしまうなど、到底耐えがたい恥辱であった。
せめて…耐えきれず漏れ出してしまったとしても、それを人様に浴びせるようなことだけは――。
「離れてええええ!!!……ぁがっっ……!!」
チョロ……
キルヴィの決死の訴えも虚しく、一心不乱に胸にしゃぶりつく男の腰のすぐ前で無情にも決壊が始まった。
その諦めと絶望に染まった気配を敏感に感じ取り、アロンはトドメの仕上げにかかる。
ずぞぞぞぞぞぞっっっ!!!!
触れただけで全身の毛が逆立つ彼女の最弱点を、品のない音を立てて一気に、力強く吸引した。
「いやあああああっっっっ……!!!!」
アロンの腰を万力のように締め付けていたキルヴィの両脚から、一瞬、ふっと力が抜けた。
完全な脱力と共に、大量の尿が堰を切ったように溢れ出し彼の腰を熱く濡らしていく。
ジョロッ……ジョロロロロロロロロロ……!!
「あぁーー!!……ああーー!!!……あああぁぁぁ…………」
腰に、腿に、脚に。
彼女の内側から溢れた熱い感触が染み渡っていくのを感じながら、それでもアロンは吸引と舐め回しを止めなかった。
ずぞぞ!!……ずぞぞぞぞっっっ!!!!
「はあああぁぁぁ…………!!……い、イク……」
限界まで溜め込んでいた熱を全て外へと放出する圧倒的な解放感。
そこに後追いで顔を出した強烈な絶頂が重なり、彼女の全身を激しく震わせる。
幼い頃に密かに感じていた粗相の際の解放感を十数年ぶりに突きつけられ、心配になるほど全身をガクガクと痙攣させ失禁アクメの味に酔いしれる。
一度目の全身を貫く雷撃のようなアクメとは全く違う。
全身の細胞が粒立ち、蒸発して、自分という存在が温かさの中で消えてなくなってしまうようなとてつもなく甘美で開放的な幸福感。
彼女が人生で二度目に迎えた絶頂は、大量の放尿と同時に味わう、彼女にとって最も罪深く、最も情けなく。
そして――おそらくはこれからの人生、一生つきまとう「癖」となってしまうような決して忘れることのできない最大最悪の快感だった。
それからも執拗に、膀胱が完全に空になるまで放尿とセットになった絶頂を幾度も迎えさせられたキルヴィ。
もう一滴も出ないと必死に訴えても、アロンはしばらく彼女の胸への責めを止めなかった。
疑り深い彼の徹底的な調査により、空っぽの膀胱がただヒクつくだけの乾いたアクメさえも何度も貪らされた。
出せるものなどもう一雫も無いと判明した頃、彼女はようやく解放された。
胸をアロンの唾液で濡らし、股とシーツと、そして彼のズボンを自身の尿ではしたなく重たく濡らして。
彼女は呆然とした顔でようやく荒い息を整えながら、先ほどまで「鬼」のような責めを見せていた少年に対して恨みがましい悪態をつく。
「こんなの……クセになったらどうするの……」
何度も胸の裾野を責め抜かれ、絶頂を迎える中で、彼女は嫌でも理解してしまった。
膀胱が空になってから迎える絶頂も申し分ない快楽であったが、やはり……初回に迎えたあの大量の放出と共に味わった全身が震えるような絶頂は彼女の身体に深く、深すぎるほどに刻み込まれてしまった。
あんな変態的な、恥辱にまみれた絶頂こそが一番凄かったのだと、認めざるを得ない。
だが、今後もしあれをまた味わいたいと思った時、一体全体どうすればいいというのか。
「ごめん……自分も夢中になって、止めるべきなのかそうじゃないのか分からなくなっていたのかも……」
真剣に申し訳なさそうに反省する少年の顔を見て、キルヴィは呆れたようにため息をついた。
「はぁ……こんなこと、絶対に他の人には言わないで。…特にミニスには」
おしっこを漏らしながら味わう絶頂が一番好きだわ。
…そんな事を告白したらあの親友は縁を切ってくるかもしれない。
「……それで、私が今のところ一番好きになってしまった…こんな恥ずかしい行為を知っているのは、あなただけなのだけど……」
「あー……うん」
アロンはどんな責でも受けると言わんばかりの覚悟を決めた面持ちで顔を上げる。
「次は、お風呂場でして」
そう言って、彼女は照れたように真っ赤な顔で視線を逸らした。