イスタール年代記-快楽の修練者と藍色に染まる少女たち- 作:錫鹿とらちよ
「キルヴィっ……!?」
尋常ではない量の大粒の涙を流し、顔を覆う彼女を見てアロンは激しく狼狽する。
乱暴に突き進みすぎただろうか。
それとも、何か消し去りたい嫌な記憶を思い出させてしまったのか。
「違うの……アロン…。私……こんな……満たされるなんて…」
今まで、多くの無慈悲な男性たちに犯されてきた。
それを「男性経験」としてカウントするなら十数人にはなるだろう。
だが、今までの経験は一体何だったのか。
今、この瞬間、この身体を突き抜けている感覚こそが正真正銘の初めての「性交体験」なのだと。
身体と心が、魂の底から訴えかけていた。
「僕は、修行者の人たちに『愛される』みたいに抱かれて…それで、過去が上書きされたんだ」
赤髪の親友、ミニスが噛みしめるようにそう言っていたのを思い出す。
その時は、頭では理屈として理解したつもりでいたが心は到底ついていけなかった。
だが、今は――。
「アロン……ごめんなさい…。はしたないと思わないで……。わ、私…あなたのでいっぱいにされて……もう、イキそう……」
消え入りそうな声でそう告げて、キルヴィは両手で顔を覆い隠した。
一番奥まで挿入され、まだ一往復すらしていない。
なのに、膣内が愛しい男で満たされているというその絶対的な感覚だけで、嘘のように全身に快感が迫りくる。
今にも爆ぜそうなその衝撃を、彼女は必死に抑え込んでいた。
「キルヴィ……」
顔を隠す彼女の手を優しく取り、溢れる大粒の涙を指先で拭ってアロンは彼女の唇に熱く、静かに口付けた。
「っ………!」
先ほどまでのように互いの舌を絡め合うようなものではない。
初心に戻るような、ただ優しく押し付けるだけの純粋なキス。
一瞬、キルヴィの目の前が真っ白になった。
激しいわけでも、鋭く貫くような感覚でもない。
ただ、全身が宙に浮き上がるような、幸福そのものの絶頂感が彼女を優しく包み込んだ。
「んくっ……んん……」
今日、何度か味わったような叫び声を上げる激しい絶頂ではなかった。
だが、間違いなく、今まで生きてきて今この瞬間こそが最も幸福なのだと確信してしまうほどの多幸感に満ちたアクメだった。
「んはっ……いやだ…。私ってば……なんで、こんなに……」
いまだ続く甘やかな余韻に浸りながら、息を荒くして高揚している目の前の少年を見つめる。
先程の絶頂を迎えた際、悦びに満ちた彼女の膣内は激しく収縮し埋め込まれたままの彼の男根をもみくちゃに抱きしめた。
初めての性体験を迎えたばかりの少年にとって、それは抗いがたいほどの強烈な刺激を与えていたはずだ。
だが、彼はどこまでもキルヴィを気遣い、己の欲求を必死に抑え込んでいた。
熱い膣内で舐め回されているような快感に見舞われているであろうその怒張を、少しも動かすことなく彼は懸命に理性を保っている。
その献身的な愛しさに、キルヴィの胸はぎゅっと締め付けられた。
過去の経験上、男性というものは己の快感のためにその陰茎をひたすら擦り付け、快感を得たがるものだと知っていたから。
「アロン……私だけなんて、嫌よ…。あなたも、したいように……」
目の前で必死に耐えている少年の頬を両手で包み込み、彼女は促すように囁いた。
「キルヴィ……。僕は……自分の欲求に負けるようでは…」
修行者として、まだ未熟だとでも言いたいのだろうか。
こちらの身を何よりも案じ、衝動に負けないように耐えている少年を見て愛しさが胸いっぱいに広がる。
彼女はそんなアロンを見て困ったものだとばかりに微かに微笑み、最後の一押しをした。
「ねえ、アロン……。私ね、我慢なんかせずに、自分の欲求に素直になって……身勝手に私を責めてくるあなたも…………好きなの」
「ーーーーっっ!!」
またしても、修行前の未熟な少年は理性のタガを粉々に外した。
ガッチリと彼女の華奢な腰を両手で押さえつけ、彼女の体内で痛いほどに勃起した自らの昂りを、入口付近まで一気に引き抜く。
ズルルルルルッッッッ!!!
「んあっ……!!…あっ……!!……いやっ…!!?」
彼の背中を押し、少しばかりの余裕を見せていた彼女の顔が一瞬で苦悶と快楽に歪んだ。
先ほどまで待ち望んでいた来訪者の挿入を歓迎し、歓喜に沸いていた肉体が、心が、この「引き抜かれた」際のあまりの衝撃に一斉に危険信号を発信する。
膣内が彼の怒張を奥へ奥へと招き入れようと吸い付いていたためか、壁の凹凸が彼の「返し」に対して一方向止めのようになり、逆方向へ抜く際の摩擦がとてつもない刺激を生み出していた。
「やあっっ……!!…そ、それ……!!!」
ドチュッッ……!!
「あっ……!!あんっ……!!!」
再び最奥まで貫かれ、先程までの危険信号は一瞬にして幸福感へと置き換えられる。
彼女にとって最も強烈な刺激を生むこの「引き抜き」の感覚が、彼にとっても一番の快感を得られやすいポイントだったらしい。
理性を失いかけている少年は、膣全体を巻き込むその強烈な「引っ掛け」に再び執着し始めた。
ゴリッ……!!……ゴリッ……!!……ゴリッ……!!……
「んあああっっ……!?…ア、アロンッ……!!……それ……ダメッッ…!!!」
膣内のすべてが、内側からこそぎ落とされるような強烈な快感。
腰を掴まれ、凄まじい勢いで腰を前後に動かされそうになった刹那、彼女の脳裏には一瞬、あの牢獄で憎い男どもに無機質に突き続けられた光景が重なり、僅かな恐怖が首をもたげた。
だが、アロンの突き込みは――一往復ごとにそんな醜悪な記憶を根こそぎ削ぎ落としていくような。
今までで最も甘美で、そして最も強烈なストロークだった。
(かっ……かたちっ……形がっ………よくないっ!!)
よくないのではない。
むしろ、雌としての本能が警鐘を鳴らすほどに――「良すぎる」のだ。
ズルルルルッッッ……!!!
(あああああああぁぁぁ!!! っ……か、形っっっ!!!)
アロンの、そしてイスタール人の血を引く者の男根は、その太さもさることながらとにかく獲物を内側から「掻き出す」ことに適した、生物学的な必然性すら感じさせる形状を備えていた。
四方にせり出した突出したエラは、どの角度から突き入れられても、どの体位で迎え入れられても、膣壁の周囲を余さず抉り抜くことに特化している。
挿入の際には、膣内全体が歓喜に震えてその来訪者を迎え入れるような、この世のものとは思えない甘美な摩擦。
しかし、引き抜く際には一転して、心身ともに「奪われる」という緊急事態を発するような、凶悪なまでの巻き込み。
もし、あの忌まわしい監獄にいた男たちのうち、たった一人でもこれほどまでの「凶器」を備えた者がいたならば。
キルヴィはその限界を遥かに超えた激痛と物理的な破壊に耐えられず、再起不能になっていたかもしれない。
だが、今この状況においては。
彼女が本能的に恐れるその特異な「形」は、ただひたすらに、脳を焼き尽くすような強烈な快感を生み出すという役割にのみ完膚なきまでに徹していた。
ドチュッ……! ゴリッッ……!!……ドチッ!! ドチュッ!!!……ガリッッ!!!
「んぐっああっっ!! ……だっ……!! ……めっ……つ……!!!」
膣壁のあらゆる箇所を容赦なく引っ掻き回すような凶悪な動き。
その感触をより鮮明に刻みつけるかのように、腰の速度が徐々に、けれど確実に上がっていく。
アロンのものを受け入れるにあたり、彼女にはもう一つ肉体的な、そして深刻な問題があった。
それは彼女自身の、受け入れ側としての「形」の問題。
キルヴィには、ポーターやミニスが修行者によって開拓され、涙を流すほどに狂おしい快感を得るという「Gスポット」――あの快楽の秘丘は備わっていなかった。
一点のポイントとして存在するのではなく、彼女の急所は膣内で分散し、まるで地図を広げたかのように膣壁のあらゆる場所にスポットが広がっているという特異な形を有していたのだ。
それも、過敏なほどの感度を保ったまま――。
そのためか、天井側はもちろんのこと、左の側面も、右も、そして下も……。
どこを抉られても、どこを擦り抜けても、一定以上の、そして他では決して味わえないような比類なき熾烈な快感を得ることに特化した業の深い女性器であった。
あらゆる箇所を執拗に擦り抜いていく彼と、
あらゆる箇所に狂おしいほどの発情ポイントが点在する彼女。
これこそが、最悪にして、最良の相性。
内部に散らばる無数の快感のツボを、一度にまとめて高速で根こそぎ掻き取られるような暴力的な快感に、彼女はあっという間に精神の限界まで追い詰められていった。
「はっ……!! はぁっっ……!! ご、ごめんなさいっ……! わ、私っ……もうっ、イ、イクッ……!!」
アロンの背中に必死にしがみつき、もはや言葉にならない叫びを上げながらキルヴィは自らの限界を宣告した。
「キ、キルヴィッ……!! ……またっ……中が……締まるっ!」
絶頂を目前にして、この愛しき肉棒を片時も逃すまいと彼女の膣壁は細胞の一つ一つが総動員でアロンを締め付け、絡め取っていく。
「アロンッ!! ……お、お願いよ……! ……あ、あなたも……!!」
ありったけの力を込めて、彼の腰を自らの方へと引き寄せ、締め付ける。
性の知識など全く持たない彼女が、ただ「雌としての本能」に従い、愛する者に射精を促すために行う無意識の絶頂への誘い。
「でっ……出るっっ……!!」
執拗に絡みついてくる熱い肉の襞に抗いながら、激しいピストンを繰り出していたアロンもまた、雄の本能に突き動かされた。
より深い位置で、彼女の魂の奥底で果てようと、腰を強く密着させる。
「だっ……出してえええええ!!!」
彼の背に爪を立て、痕が残るほどに強く抱きしめながらキルヴィが絶叫した。
ドビュッッッ!!! ……ドビュッッッ!!! ……ドビュゥッッッ!!!!
内臓を焼き尽くさんばかりの灼熱が彼女の最奥で一気に吹き出した。
こじ開けられた子宮の口めがけ、大量に、そして脈打つたびに注ぎ込まれていく。
到底受け止めきれないほどの精液が逆流し、彼女の膣内すべてを白濁した熱で満たしながら逃げ場を失って結合部から溢れ出していく。
「あぐっっっ……!!!! ……あっ、あっ………ああああああぁぁぁ!!!」
腹部の最深部で感じる熱い決壊。
それが彼女を、一気に快楽の頂へと押し上げた。
ビクッッ!!……ビクッッッ!!……ビクッッッ!!!
挿入時に感じたものと同質の、しかし、その濃度と強度は比べ物にならないほどに深く、重い絶頂。
それがキルヴィの身体を断続的に、暴力的なまでの多幸感で打ちのめした。
腟内中の急所を擦られて爆ぜた閃光のような絶頂感は彼女の華奢な体躯を何度も突き刺し、一瞬で脳幹まで突き抜ける
大量の射精による深く重い絶頂感は彼女を突き抜けることなく、その小さな身体全体に染み渡り、灼熱の快楽でいつまでも全身を焼き尽くした。
一体、どれほどの情動を溜め込んでいたのか。
彼女が少年を強く、折れそうなほどに抱きしめ、絶頂の余韻に身を震わせている最中もドクドクと注がれ続ける熱い迸りを子宮の入り口で確かめながら。
彼女は、はっきりと感じていた。
あの暗い牢獄で、醜悪な男たちに無惨に汚され続けてきた、凍りつくような過酷な記憶。
それが今、たった一晩の、愛しくてたまらないこの少年との魂の交わりによって。
隅々まで白く、分厚く、そして鮮烈な輝きを伴って幸せな記憶へと書き換えられていくのを。