イスタール年代記-快楽の修練者と藍色に染まる少女たち- 作:錫鹿とらちよ
汗と、熱気と、そして何よりも雌としての本能が発する芳醇な匂いが充満した密室で、腰と腰を強く打ち付ける乾いた打撃音が絶え間なく鳴り響いていた。
「ぅっ……!!……っ……ぅぅっ……!!!……っ……!!」
銀髪の少女セイレンは今宵何度目かも分からぬほど自身を襲う苛烈な快楽の波に、真っ白になる意識の端を必死に繋ぎ止めて耐えていた。
ドスッ!!ドスッッ!!と、まるで彼女の胎内に何か深い恨みでもぶつけるかのような一切の容赦を排した強烈な突き込み。
レオンの剛直は、彼女の柔らかな膣奥の壁を真っ向から、そして最深部まで冷酷に叩き込んでいた。
「ふーっ……!……ふーーっ……!!……ぅっ……」
呼吸を必死で整え、全身を焼き尽くそうとする欲情に抗うセイレン。
しかし、彼の怒張を膣の奥まで飲み込んでから、彼女は幾度となく絶頂に押し上げられていた。
寸前でおあずけを食らい、羞恥にまみれながら情けなく懇願することで再開されたこの修練。
しかし、与えられたのは望んでいた指による緩やかな摩擦などではなく、太く逞しい彼自身だった。
媚薬を何度も塗り込まれ異常なまでに肥大し疼ききったGスポットを、その怒張が荒々しく削り取りながら彼女の最深部を幾度となく打ち抜いた。
許容を遥かに超えた暴力的な刺激。
爆発寸前で留め置かれていた彼女の劣情は最悪のタイミングで最大火力の爆ぜを見せ、彼女は一瞬にして脳を灼き切るような絶頂へと突き落とされた。
それからしばらくの間、室内には獣じみた水音と彼女の絶叫だけが響いた。
腟内で淫らに熟れた秘丘を執拗に擦っては、奥を突き回す。
奥を突き回しては、また秘丘を抉りながら戻るという悪夢のようなストローク。
セイレンはその奔流をまともに受け止め続け、何度も、何度も、甘く重い絶頂を無理やり胃の底まで押し込まれるように味わわされることとなった。
「んんっっ……!!……ぅっ……!!……ぁっ……イッ……!!」
渾身の力で快楽を押し殺し耐え続けていた彼女であったが、激しく打ち付けられる下腹部からまたしても逃げ場のない甘美な快感が広がり全身の神経を侵食していく。
「ん?……またイきそう?……じゃあ、最高に気持ちよくイこうね」
レオンはそう言うとただ彼女を壊すことだけに集中するように動きを変えた。
媚薬を丹念に塗り込まれ淫らに盛り上がった彼女のGスポット。
そこに、凶悪に張り出した自らの「エラ」を強く引っ掛けるようにして、何度も、何度も、抉り上げるように擦り上げる。
「んんんっっっ!!!!……そっ、それっ……嫌っっ!!」
セイレンは首を横に振り、狂おしい快感に身悶えた。
レオンが仕上げに繰り出すこの動きは絶頂へと促す刺激ではない。
ここまでくれば彼女はもう成すすべもなく、情けなく快楽に飲み込まれるだろう。
彼の動きはその際の快感を最大限まで高め、そして長く引き伸ばすための、残酷なまでの「余計なお世話」とも言える技であった。
ただ達するだけでは許されない。
絶頂を迎えるたびに、毎回、できるだけ深く、可能な限り強い快楽の泥沼に沈み込めるよう、彼女の肉体は徹底的に躾けられていく。
「いっっっ……イクッ……!!…イクッ……!!!……あぐっっっ!!!」
ビクンッッ!!……ビクッッ!!……ビクッッ!!!
今回もまた耐えきれず、彼女の細い身体が大きく跳ねた。
背筋を限界までのけぞらせ断続的な痙攣が彼女の四肢を襲う。
だが、レオンの手は緩まない。
彼女の絶頂に合わせ、すかさずGスポットを擦り抜いていた角度を調整し、さらに強く、深く、その芯を抉り抜いた。
「あーーっっ……!!…あっ!…あーーーっっっ!!!……それっ⋯⋯!!⋯やめっ……!!!」
身体中に充満した劣情が一気に爆ぜる。
快楽の頂きに無理やり押し上げられたままの状態で、その悦楽が強度を保ったまま、一秒でも長く居座り続けられるように。
執拗に淫らな丘を削られ続け、彼女は今の肉体が許容できる最大深度のアクメを強制的に脳へ刻み込まれた。
(お、降りられない……!!)
高みの絶頂感に晒されたままいつまでも敏感な箇所を擦られ続け、極度の快感を嫌になるほど引き伸ばされ、骨の髄まで快楽の毒で満たされていく。
絶頂したら負けという、それだけの単純なルールだったはずだ。
故に、一回一回の絶頂をこれほど深く、濃く味わわせる必要はないはずだ。
だが、この男は一度の「軽い絶頂」すら許さない。
セイレンが果てると知れば、律儀に、そして残酷にその強度を高める技を施し、彼女の魂に快楽の刻印を打ち込んでいった。
「あっっ……はっ………はあああぁぁぁぁ…………!!」
一際強く爆ぜた衝撃をいつまでも続くと錯覚するほどの長い時間味わわされ、ようやく強制的に高められた鮮烈な頂から降ろされた彼女を次に待っていたのは、全身に広がる圧倒的な幸福感だった。
(あ⋯⋯⋯ああああぁぁぁあ⋯⋯)
女に生まれたことを心の底から感謝したくなるような、最も悦楽にまみれたさざ波が、彼女の身体の隅々まで蝕んでいく。
身体が焼き切れるかと思うほどの猛烈な刺激を耐え抜いたご褒美のように、この世で最も甘い果実を口にしたかのような、芳醇な濃蜜が全身を駆け巡る。
その悪魔的なコントラストを絶頂を迎える度にしつこく、身体に、心に、丁寧に刻み込まれ。
彼は徹底的に彼女を「快楽の従僕」に堕とし込むよう、技を駆使していく。
(こんなの……気持ち……よすぎて……っ)
つい先程まで後悔と罪悪感にまみれていた荒んだ心を、一方的で容赦のない幸福が包み込んでくる。
それが悔しく、嫌で仕方がないのに、どこかでその感覚の虜になっている自分がいた。
「3分ちょっと、というところかな。頑張ったね」
悪魔のような男が、わざとらしく労うように声をかけてくる。
耐えなければいけないのだ。
5分耐えなければ、何もかもがお終いなのだ。
一時の幸福感が去ると同時に、彼女の心は再び、先ほどよりも深い絶望と激しい後悔に支配された。
(なぜ……私は…あの時……)
自分が憎くて仕方がない。
指で腟内を執拗に擦り抜かれていたあの時、自分は間違いなく約束の5分を耐え抜いた。
なのに、目の前にぶら下げられた快楽を獣のように欲し、掴み取った権利を自ら手放してしまった。
欲求に負けた、哀れな女。
レオンに告げられた「愚かだ」という言葉が、鋭い刃となって胸に突き刺さる。
喉から手が出るほど欲していた特大の絶頂は約束通り与えられた。
だが、その後に続く「責め」が、到底耐えられるものではなかった。
必死に堪えようとし、自らを罪悪感の沼に沈め、己を責め続けて快楽を遠ざけようとしても。
彼の逞しいものに貫かれるたび、身体は裏切るように快感を求め絶頂に向けて突き進んでしまう。
そして、仮初めの幸福に全身を包まれるたび、後悔も罪悪感も…愛しい彼の顔すら一瞬忘れ、情けなくもそれに溺れ悦んでしまう自分が何よりも許せなかった。
「いやあ……こんなの、…我慢……しないと…なのに……」
セイレンは罪悪感と快楽がごちゃ混ぜになった感情のまま、弱々しく呟いた。
「3分ちょっと」。それが、最大限まで我慢して得られた限界だ。
この魂を削り取るような刺激に5分耐えるなど到底不可能に思えた。
「そろそろ、次で……時間切れかな」
レオンは残酷なまでの宣告を突きつけた。
「………っ……!!」
あと1時間ある、そう告げられてから延々と我慢の心を折られ続け、何度もアクメを強制され、そのたびに深すぎる絶頂感を引き伸ばされてきた。
そして、その地獄のような悦楽にいつの間にか虜にされていた。
気づけば、もう残り時間は僅かになっていたのだ。
(次で……最後……)
彼女の顔が蒼白に染まる。
次こそ、耐えなければ。
でも、どうやって……?
考えがまとまらないうちに、レオンの動きが再開される。
ズルッッ……。
「ぁぅ……」
陰茎を入口付近まで引き抜き、次のピストン運動を予告するように最奥に狙いを定めた体勢になる。
「次が最後の5分だよ」
彼は、どこまでも優しく、そして残酷に告げた。
「次に俺がまた突き始めたら、5分経つまでは一切その動きを止めない。速度も速くなることはあっても遅くなることはない……耐えられなかったら君の負けだ」
今にも奥底を突き抜かれそうなその刹那、彼女の脳裏を一つの思考が掠める。
「ひっ……ひとつだけ、お願いがあります」
セイレンは処刑が開始される直前、搾り出すような声で言った。
「目隠しを……この目隠しを外してください」
視界を奪われることで、自分でも気づかないうちに他の感覚が研ぎ澄まされていた。
かつての失明時を思い出す恐怖もあったが、それ以上に、暗闇の中で恥部を刺激されるたびにそこへの集中力が極限まで高まり、必要以上に感度を跳ね上げていたのだ。
これを外せば視覚的な情報に意識が分散し、あるいは耐えられるかもしれない。
「うーん……それは……」
レオンが僅かに渋る。
「嫌なんです。両眼を潰された時のことを…どうしても思い出してしまい……怖いのです……」
セイレンはあえて自らの古傷を抉るような残酷な言い回しをして彼に訴えかけた。
そう言われてしまえばレオンも退けるわけにはいかない。
彼もまた、女性を敬う精神を持つイスタール人の端くれ。
軽い気持ちで目隠しを施してしまったが、彼女の過酷な過去を思い少しの後悔と共にその手に触れた。
「それは……そうだね。ごめん。怖い思いをさせて悪かった」
数刻ぶりに目を覆っていた布が取り外された。
薄暗い室内ではあったが、それでも僅かな照明の明かりが網膜に染みる。
セイレンはあの優しい青年グレイスが取り戻してくれたその瞳で、目の前のレオンをしっかりと見据え、決然と告げた。
「どうぞ。……次こそは、耐えて見せます」
ゴリッ!!……ゴリッッ!!……ドスッッ!!……ドチュッッ!!!
セイレンの宣告を挑戦的な挑発として受け取ったのか。
レオンは興奮気味な笑みを浮かべながら躍起になって彼女を深く刺し貫き始めた。
「うっ……!!…くぅっ………んぐっっ…!!!」
彼女はその苛烈な責めに耐えながら、必死に肺の空気を押し殺す。
ガリッッ!!……ゴリッッ!!……ドスッッ!!
「っっ……!!!……っ……!!…ぅ……」
Gスポットを滅茶苦茶に抉り、奥の壁を突き破らんばかりに叩きつける猛烈なピストン。
その衝撃の強さそのものに彼女の興奮が増幅され、またもや下腹部に強大な快楽の渦が充填されていく。
それでも――それが決して爆ぜぬよう、セイレンは奥歯を噛み締めて耐え抜いた。
視界を取り戻したのは最良の選択だった。
暗闇の中で感覚が研ぎ澄まされていた状態を分散させたのはもちろん、目の前のこの男を睨みつけるように見据えることで、彼女は心の中で叫び続けた。
(憎い……憎い! 憎い!!……この人が、憎い!!)
望んではいない強烈な悦楽を、止めどなく自身に与えてくる彼。
そして、最愛のグレイスとの仲を引き裂こうとしている目の前の悪魔。
セイレンはあえてレオンを純粋な「憎しみ」の対象として睨み続け、少しでも意識を快楽から逸らそうとした。
これなら……最後まで耐えられる。
(うわー……こりゃ、俺…すごい恨まれてるなあ)
読心の術に優れたレオンは、彼女の深層から向けられる苛烈な怨念を嫌というほど読み取っていた。
だが、だからこそ。
この「快楽の修練」において、その頑なな少女を快楽によって堕としてこそ本懐。
この先、修行を終えれば時には頑なに何もかもを拒絶する女性を尋問することもあるだろう。
そのような未来を想定しての修練。
これを超えなければ、今日の収穫も自身の成長もない。
どのような方法を用いても、今宵必ずこの女を堕とす。
レオンは、今日一日で隅々まで読み取った彼女の弱点を、容赦なく突きにかかった。
彼女が一番狂う角度で、彼女が一番悦ぶ強さで。
そして、彼女が最も絶望を感じる方法でその牙城を突き崩す。
シュルッッ……。
「っっ!!!」
彼は傍らに置いておいた琥珀色の布を手に取った。
そして、その布越しに指で彼女の陰核を摘んだ。
内部への刺激が続き、しばらく放置されていた淫らな芽。
たっぷりと塗りつけられた媚薬を全て吸収し、その乾いた身を懸命に震わせながら、雄々しく勃起し続けていたそこを。
(だめっっっっ!!!)
予想外の方向からの攻撃を察知し、彼女の表情が恐怖に強張る。
だがそれよりも早く、布に包まれた彼の指先が無慈悲に彼女のクリトリスを包み込んだ。
シュリッ……。
「あぐっっっ!!!……!!」
セイレンの頭が跳ね上がる。
寸前で覚悟ができていた分、思わぬ絶頂はかろうじて避けられた。
暗闇の中で不意打ちを食らっていたら今頃は尖りきった絶頂の最中にいただろう。
だが、ここに来て視界を取り戻したことによる弊害も生じていた。
先ほどまでは、何が起きているか分からない「正体不明の刺激」だったものが、今は「何をされているか」を、その目で克明に視認できてしまう。
女性を狂わせる薬を芯まで吸収し、自分のものではないかと思うほどに肥大して痛いほどいきり立った陰核。
それを、狂おしいまでの刺激を生むあの忌まわしい布で、執拗にしごかれている。
その血の気も引くような異常とも言える光景を目の当たりにし、彼女は根源的な戦慄を覚えてしまった。
(こんなことをされて……耐えられるわけ……)
シュリッッ……。
「かはっっっっ……!!!!」
ゴリッッ!!……ドチュッッ!!!
「んぉっっ……!!?……ぐっ……!!! ああっっ……!!」
(ど、同時に……!!?)
腟内に打ち込まれる非情な抉り抜きと、陰核をブラッシングするような残酷な擦り合わせ。
それらが、最悪のタイミングで、完璧な同期を持って行われた。
「あぐっっっ……!!……ああっっ……!!!……ああああぁぁぁっっっ!!!」
耐えられるわけがなかった。
何箇所もの弱点を同時に責め立てられる、悪夢のような同時攻撃。
しかもその内の一つは、彼女が1分と保たなかった、陰核に向けた悪魔の摩擦だ。
ここまで必死に、憎しみさえ糧にして堪えていた彼女が、一気に絶頂の彼方へと放り出されそうになる。
(だめっっ……!!……耐えてっっ……!!!)
歯を限界まで食いしばり、目の前の男を必死の形相で睨みつける。
(憎い!! 憎い!!……憎い!!!……イキたくない!!……気持ちよくない!……イかないっ!!)
ドゴッッ……!!……シュリッッ!!!
「ぉぐっっっ……!!……だっ………めっ……!!」
だが、憎しみも、忍耐も。
最奥を潰さんばかりの容赦のない突き込みと、乾ききった強烈な摩擦の同時奏功によって一瞬にして快楽へと変換されていく。
(だめ……もう…………イク……っ)
必死に抑え込んでいたガラスの壁に、一斉にヒビが入る。
彼女は大粒の涙を流し、目前に迫った強大な絶頂の津波を前にして、喉が裂けんばかりの悲鳴を上げた。
「い…いやあああああああ!!!!……助けてっ!! 助けてっっ!!……グ、グレイス様ぁあああ!!!」
どす黒い絶頂に身を攫われる予感に、最愛の男性の名を呼び叫んだ瞬間。
ドゴッッッ……!!!
「助けっっ……あがっっ……!!!」
命乞いをする少女にほんの僅かな情けも見せず、容赦のない無慈悲な一撃が、今日一番の強さで彼女のポルチオを真っ向から押し潰す。
それがトドメとなり、せき止めていた絶頂のダムが決壊した。
耐え続けた反動で、量も質も恐ろしいほどに膨れ上がった濁流のような快楽が一気に彼女を飲み込もうと襲いかかる。
(えっ……グレイス??)
一瞬、聞き覚えのある名前を耳にし、躍起になっていたレオンが正気に戻った。
慌てて彼は壁の時計を確認し、修練に夢中になっているうちに約束の5分が過ぎていたことを確認した。
(しまった……)
そして、今まさに壮絶な絶頂を迎えた彼女を見下ろす。
「ああーっっ!!!……あああーーーーっっ!!!……いっ……いやああああ!!!」
限界まで溜め込まれていた分、とてつもない濃度の快楽が濁流を超え激流となって彼女を飲み込んでいく。
「セ、セイレン……ごめんっ……時間、過ぎてた……」
「いやああああ!!!!……ああーーーっっ!!!……あああーーーーっっ!!!」
彼の声は、もはや彼女の耳には一切届かない。
耐えきれなかったという痛恨の無念と、最愛の彼を手放してしまうという絶望。
そして、それらを一瞬で洗い流してしまうほどに憎らしく、強烈な快楽の波に全身を震わせ――彼女はそのまま、意識を失った。
ほどなくして、彼女は目を覚ました。
どれほどの時間、意識を手放していたのだろうか。
先刻までの記憶を繋ぎ合わせ、事の次第を整理していくうちに、彼女の両眼から大量の涙が溢れ出した。
「お、目が覚めたかい? まずは水分を……って、うわあっ」
尋常ではない量の涙を流すセイレンを見て、レオンが驚きに声を上げる。
そんな彼を視界の隅に捉え、セイレンはか細い、今にも消えそうな声で呟いた。
「ゅるして……くださぃ……レオン様……もう一度……もう一度だけでも……機会を……」
もうグレイスに会うことはできない。
それも、すべては自分の選択ミスと、堪え性の無さのせいだ。
後悔してもしきれない。
彼女は涙ながらに、無理を承知でレオンに最後の慈悲を乞うた。
「あー……そのことだけど。ごめん、君の勝ちだったんだ」
「………ぇ?」
レオンの意外すぎる言葉に、彼女は大きく目を見開いた。
それから。
実は約束の5分はとうに過ぎており、自分は間違いなく耐えきっていたこと。
そもそも、自分の失態によってグレイスに会えなくなるという罰そのものが彼による悪趣味な虚言であり、行き過ぎた演出であったこと。
それらを聞かされるうちに、セイレンの顔は羞恥と怒りで朱に染まっていった。
「ひ、ひどっ……!!」
酷いです。
そう言いかけて、セイレンは言葉を飲み込んだ。
彼に対して先に非礼を働いたのは自分であった。
修行者を目の前にして他の男性に心を寄せるなど。
彼はその失態を拾い、咎めることなく彼なりの方法で修練に活用したに過ぎないのだ。
「でも……やっぱり……酷いです……」
セイレンは恨めしげな視線でレオンを射抜く。
だが同時に、この数時間の恐怖がすべて茶番であり、来週には何の問題もなくグレイスに会えるという爆発的な喜びが胸いっぱいに広がった。
「いやあ、ごめんごめん。……でも、最高に気持ちよかっただろ?」
悪びれる様子もなく、レオンはいつもの軽薄な調子で茶化した。
「……知りません」
セイレンは顔を真っ赤にして、うつむいた。
確かに、今日の修練は、これまで感じたこともないような強烈な刺激を何度も与えられた。
でも……。
「でもね、こんなまがい物の薬や道具より、グレイスに愛情を持って抱かれる方がずっと気持ちいいと思うよ」
彼はそう言って、悪戯っぽく笑った。
「グレイス様のこと……ご存知なのですか?」
「あー、うん。同期なんだよ。まさか君の想い人があいつだったとはね……今回のことを知られたら、あいつに本気で怒られそうだ…」
レオンは気まずそうに後頭部を掻く。
「い、言いません……。とても、言えません…」
セイレンは、今日自分が晒したあまりにも醜い姿を思い出し、その記憶に固く蓋をすることを決めた。
「そっか、ならよかった。じゃあ……俺はそろそろ行くよ。グレイスと、たっぷり楽しんでな」
レオンはそう言って手際よく荷物をまとめ、部屋の扉へと向かう。
その背中に、セイレンは声をかけ、頭を下げたた。
「レオン様、この度は……本当に失礼なことをしてしまい、申し訳ありませんでした」
彼女は、それでも自分が犯してしまった礼儀への欠如を最後にもう一度詫びた。
レオンは振り返らず、ただ手をひらひらと振って、部屋を出て行った。
酷い仕打ちをされたはずなのに、どこか憎めない印象を残した彼を見送り、独り部屋に取り残されたセイレン。
疲れ切った身体を癒すように、彼女はベッドに深く横たわった。
(グレイス様に……会える……。会える……っ!)
今度こそ、何の障壁もない純粋な喜びが、彼女の心身を優しく包み込んだ。
ロダンの屋敷を後にし、レオンは夜の闇の中、独り言を漏らした。
「んー、はあ……。誰か、俺の相手をしてくれる子はいないかな……」
自分の馴染みの女性か、あるいは夜の街で商売女を物色しようかと彼は考えていた。
実のところ、レオンの性欲もまた限界に達していた。
あれほどの美女の媚薬まみれの腟内に直接挿入していたのだ。
並の男性であればとても欲求を抑えられるものではないだろう。
修行者でも理性を保てない者がいるかもしれない。
とてつもない疼きが、彼の陰茎を蝕んでいた。
それでも。
彼は雄としての本能に屈し、欲望のままにセイレンを犯すようなことは決してしなかった。
自らの性欲は横に置き、射精という個人的な欲求を遂げることなく、最後まで女性にのみ快楽を与え続ける「修練」に徹したのだ。
これが、彼が一部で「やりすぎ」と評されながらも、一目置かれる存在である理由。
彼は紛れもなく優秀な修行者であり、その根底には、女性を尊ぶイスタールの血が流れる誇り高い男性としての矜持が息づいていた。