※この作品はR-18です。

夢のようなアルバイト   作:倉羅

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運命の採用面接:赤縁メガネのメイド長

 

 

「以上で、一通りの紹介は終わりとなります」

 

 

案内を終えた彼女が、凛とした所作で振り返る。

 

 

「あ、あの!」

 

 

思わず呼び止めてしまった僕に、彼女は「はい?」と不思議そうに小首を傾げた。その仕草一つをとっても、洗練された美しさが宿っている。

 

 

「メイド長さんの、お名前は……」

 

 

その質問に、彼女はふっと口角を上げ、丁寧に一礼した。

 

 

「失礼いたしました。私は不知火(しらぬい)沙矢(さや)と申します」

 

 

沙矢さん、か。

落ち着いた物腰から察するに、おそらく玲唖さんと同じくらいの年齢だろうか。

彼女の装いは、もちろん非の打ち所がないメイド服。

高めの位置で結い上げられたポニーテールが、彼女が動くたびに軽やかに揺れる。身長は165センチほどだろうか、すらりと伸びた背筋が美しい。

そして何より僕の目を釘付けにしたのは、知的な光を放つ赤縁のメガネだった。

 

 

(メイド服に赤縁メガネの組み合わせ……破壊力がすごすぎる……)

 

 

健康的なスタイル――おそらくCカップはあるだろう胸元が、タイトな衣装の上からもその存在感を主張している。というか、さっきから思っていたけれど、この屋敷の人たちはどうしてこうも美人ばかりなのだろう。

 

 

(もし、これで採用されたら……)

 

 

期待と緊張で、胸の鼓動が早くなる。

そこには、想像を絶するような「夢のアルバイト生活」が待っている気がしてならなかった。

 

 

「それでは、これより面接を開始いたします。お嬢様方、ご質問をどうぞ」

 

 

沙矢さんの凛とした声が広間に響き、面接の幕が上がった。

 

 

「お前」

 

 

口火を切ったのは綾芽様だった。鋭い視線が俺を射抜く。

 

 

「はい!」

 

「ケーキは作れるのか?」

 

(け、ケーキ……?)

 

 

一瞬拍子抜けしたが、すぐに自信が湧いてきた。何しろ俺は、大学でクッキングサークルに入るほどの料理好きだ。お菓子作りだって一通りは叩き込んである。

 

 

「はい、作れます。料理のことならお任せください!」

 

 

俺は胸を張って答えると、綾芽様は「ようやくケーキが作れる奴が来たか」と、どこか安堵したように息を漏らした。

 

 

「綾芽のその条件のせいで、今までの方々はみんな落ちちゃってたもんねぇ」

 

 

玲唖様が可笑しそうに付け加える。どうやら、俺のサークル活動は思わぬところで大きなアドバンテージになったらしい。

 

 

「次は私からの質問だ」

 

 

次に声を上げたのは、執事の哲也さんだった。その場の空気が一変し、重苦しいプレッシャーが肌を刺す。

 

 

「はい!」

 

「猪瀬から見て、執事の使命とは何だと思う?」

 

 

迷いはなかった。俺は真っ直ぐに彼を見据えて言い切った。

 

 

「何があっても、お嬢様方をお守りすることです!」

 

「……本当にできるのか?」

 

 

哲也さんの声が一段と低くなる。

 

 

「自分の命を捨てて守るということだぞ。これまでお嬢様方は、幾度となく命を狙われたことがある」

 

「えっ……」

 

 

思わず絶句した。命を狙われる? ここは日本のはずじゃ……。

横を見ると、玲唖様と綾芽様が(ないない……)と呆れたような顔で冷や汗を流しているのが見えたが、哲也さんの迫真の演技(?)に圧倒されてそれどころではない。

 

 

「どうだ? それでも守り抜く覚悟があるか?」

 

 

哲也さんの目が「怖くなって逃げ出すなら今のうちだぞ」と物語っている。

正直、めちゃくちゃ怖い。けれど……いざとなったら、このベテラン執事である哲也さんが何とかしてくれるはずだ!

 

 

「大丈夫です! できます!」

 

「なっ……!?」

 

 

予想外の即答に、今度は哲也さんが動揺して声を上げた。

 

 

「あら、頼もしいわね♪」

 

「本当か……? そう言っておいて、いざという時に背中を向けて逃げるんじゃないだろうな」

 

 

玲唖様の楽しげな声と、綾芽様の疑り深い視線が交差する。

滅多にそんな物騒なことは起きないはずだ……と言い聞かせながらも、俺は心の中で自分にエールを送るしかなかった。

 

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