※この作品はR-18です。

護り人   作:倉羅

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絆創膏と胸の内

 

 

「もう麺類飽きたわ」

 

 

澪がぼやくようにそう言った。

 

 

「今日は寒いからおでんにしようかなって」

 

「そう」

 

 

そっけない返事。あれ、喜ぶと思ったんだけどな……。

その後、俺たちは一言も会話を交わすことなく具材をカゴに入れ、家に帰っておでんを作り始めた。

 

 

「……はぁ」

 

「……」

 

 

キッチンに立つ俺の背後で、澪はおこたに入ってスマホで映画を鑑賞している。いつもなら一緒に作ってくれるはずなのだが、今日はその気配すら感じられない。

 

 

「……ッ!!」

 

 

不意に走った鋭い痛み。

 

 

(ピクッ……)

 

 

映画を見ていたはずの澪の肩が、わずかに揺れた気がした。

 

 

「はぁ……」

 

 

やってしまった。指を切った、痛い……。

棚にしまってある救急箱を取りにいき、手当をしようと居間に戻ると、なぜか救急箱がすでに机の上に置いてあった。

 

 

「やりづら……」

 

 

片手で絆創膏を剥がそうとするが、思うようにいかない。

 

 

「……」

 

「……」

 

 

澪は何も言わず、ただじっとスマホを見ている。俺も何も言い出せず、沈黙だけが部屋の中に流れていた。

 

 

 

グイッ……。

 

 

「わっ……」

 

 

不意に腕を引かれ、よろめいた。気がつくと、いつの間にか隣に澪が立っていた。彼女は俺の腕を強く捕まえて引き寄せると、そのまま切った指を自分の口へと運ぶ。

 

 

「み、澪……///」

 

「……」

 

 

カプ、と指先に伝わる柔らかな感触に、心臓が跳ね上がる。澪は何も言わず、ただじっと俺の指を見つめていた。

 

 

「全く……。待ってなさい」

 

 

彼女はそう短く告げると、救急箱から消毒液と絆創膏を取り出し、手際よく手当てをしてくれた。

 

 

「おでんできたの?」

 

「できた」

 

「そう」

 

 

相変わらずの素っ気なさだったが、俺は思い切って心に引っかかっていたことを口にした。

 

 

「澪、ごめん……。もう耳噛んだりしないよ……」

 

「……誰かがいる時は絶対しないで。あの時は里奈が寝惚けてたから良いけど……あんな声、他の人に絶対聞かれたくないから」

 

「わかった……」

 

 

澪の言葉に、俺は小さく項垂れる。

 

 

「……どうしたの?」

 

「だって、夕飯をおでんにしても澪は喜んでくれないし、いつもと全然違う感じだったから……」

 

「……ふふ」

 

 

ギュゥ。

 

 

突然、俺は澪に力強く抱き締められた。顔が彼女の豊満な胸に深く押し当てられる。

 

 

「……っ///」

 

 

その温もりと柔らかな感触に包まれ、俺の思考は一瞬で真っ白になった。

 

 

「な、なんだよ……///」

 

「かわいい事言えるようになったじゃない」

 

 

腕の中でそう囁かれ、俺はさらに顔を赤くした。

 

 

「左様ですか……///」

 

「今日のおでん、楽しみよ」

 

「……ほんと?」

 

「えぇ、私の好物だし」

 

「そうか、良かった!」

 

「……ふふ」

 

 

さっきまでの不穏な空気が嘘みたいに解消され、俺たちは仲良く並んで夕飯を頂くことにした。

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