※この作品はR-18です。

護り人   作:倉羅

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早暁の変身と秘かな随伴

 

 

「ジーッ……」

 

 

隣から向けられる、見透かすような視線。陽は居心地が悪そうに声を漏らした。

 

 

「なんだよ」

 

「里奈?」

 

「……よくわかったな」

 

 

隠しごとは通用しなかった。澪は「ガキんちょの時から貴方の事見てきたからね」と、どこか自慢げに目を細める。その言葉の響きに、陽は不意に胸が熱くなった。

 

 

「……ほぅ……///」

 

「なーに照れてんのよ」

 

「はは……///」

 

 

照れ隠しに笑う陽を、澪は少し真面目な顔で見つめた。

 

 

「……明日、仕事になったの?」

 

「あぁいや。俺ら今日雰囲気悪かったのを、里奈ちゃんが勘付いたみたいでさ。大丈夫かって」

 

「なるほどね」

 

 

誤解が解けて安心したのか、陽は大きなあくびを一つ漏らすと、そのまま肩までこたつに潜り込み、横たわった。

 

 

「こたつの中で寝ちゃダメよ、風邪引くと面倒臭いんだから」

 

「おぅー……」

 

 

適当な返事を返しはしたものの、こたつの魔力には抗えない。意識は急速に遠のき、陽は深い眠りに落ちていった。

 

 

午前二時十四分。

 

 

「……。」

 

 

不自然な静寂に、陽は目を覚ました。

やってしまった、という後悔が真っ先に浮かぶ。汗ばんだ肌が、長く眠りすぎたことを物語っていた。

澪に怒られる。そう身構えながら辺りを見渡して、陽は違和感に気づいた。そこはこたつではなく、見慣れた布団の中だった。重い体を運んでくれた彼女の苦労を思い、申し訳なさが募る。

 

 

「……。」

 

 

澪はもう隣で寝ているのだろうか。

謝るついでに彼女の様子を伺おうと寝室に顔を覗かせたが、そこに人影はなかった。

 

 

「澪ー?」

 

 

暗闇の中で声をかけるが、返事はない。

家の中は静まり返り、自分以外の気配が全く感じられない。しかし、陽はある奇妙な点に気がついた。

 

 

「……。」

 

 

陽は再び、吸い込まれるように布団へと身を投じた。鼻をくすぐるのは、紛れもない澪の香りだ。その落ち着く匂いに包まれていると、先ほどまでの漠然とした不安が嘘のように消えていく。陽は安堵に身を委ね、深い眠りの底へと沈んでいった。

 

 

午前五時十二分。

 

 

「……る……はる……」

 

 

耳元で微かな声が響き、陽はゆっくりと意識を浮上させた。

 

 

「……ん」

 

「重いわ……」

 

 

その呟きに、陽は跳ねるように目を開けた。どうやら無意識のうちに、上から被さるような形で彼女を強く抱き締めていたらしい。

 

 

「……あぁ、ごめん! 汗」

 

 

慌てて腕をほどき、距離を取る。そんな陽の狼狽ぶりを見て、澪は可笑しそうに目を細めた。

 

 

「甘えん坊なんだから」

 

「……俺、甘えてたか?」

 

「私の名前、何回も呼んでたわよ。どんな夢を見てたの?」

 

「うーん、夢なんて見てない気がするんだけどな」

 

「そう。まあ、よくあることね」

 

 

澪は眠たげに、再びシーツの感触を楽しんでいる。

 

 

「朝ごはん、食べられそうか?」

 

「……もう少し寝るわ」

 

「わかった」

 

「陽はどうするの?」

 

「ちょいと事務所に行ってくる。帰りに何か買ってきてやるよ」

 

 

すると、澪が布団から顔を覗かせた。

 

 

「どこか行くなら、私も行く」

 

「じゃあ、小さなぬいぐるみか何かに化けて、俺のポケットの中で寝てなよ」

 

「そうするわ」

 

 

次の瞬間、澪の姿はふわりと愛らしい狐のぬいぐるみへと変わった。陽はその小さな体を優しく拾い上げ、ポケットに忍ばせる。

掌に伝わる微かな温もりを連れて、陽は静まり返った早朝の街へと歩き出した。

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