※この作品はR-18です。

護り人   作:倉羅

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束の間の休息

 

 

午前六時、まだ眠気の残る空気の中、ドアが開く乾いた音が響いた。

 

 

「おはよー……」

 

 

のっそりと姿を現した陽に、先に起きていた義宗が声を返す。

 

 

「おう、どうした?」

 

「スマホの充電器忘れたんだよ」

 

「あぁ、これか」

 

 

義宗の手元では、陽の忘れ物がしっかりとスマートフォンに命を吹き込んでいた。

 

 

「あ、充電してていいよ。それより義宗たち、休みはいつなんだ?」

 

 

ふと思い出したように尋ねた陽に、義宗は少し顔をしかめて答えた。

 

 

「明日の予定なんだけどさ……。依頼を受けるかどうか、返事をうやむやにしてる客が二人いて。どうも明日も休めない気がしてきたんだ」

 

「なんでだよ。受付くらい、俺らに任せればいいじゃんか」

 

 

陽の提案に対し、義宗は無言で冷蔵庫を指さした。そこに貼られた一枚のシフト表。陽が歩み寄ってその内容を確認した瞬間、思わず変な声が漏れた。

 

 

「え……明日、二人だけかよ! 俺と大地か……」

 

「そうなんだ。しかも、大地はもう明日の依頼が決まってるから、そっちに専念してもらわなきゃならないしな」

 

 

人手不足の現実に、陽は明日への不安を隠せない。

その時、再びドアが開いた。

 

「あ、陽さんおはようございます♪」

 

 

買い物帰りの里奈が、弾んだ声で入ってきた。

 

 

「やほー」

 

「今、美味しいコーヒー豆を買ってきたので淹れますね。澪さんは?」

 

「ありがとう。澪なら、今は俺のポケットの中で寝てるよ」

 

 

陽が自分のポケットを軽く叩くと、里奈は愛おしそうに目を細めた。

 

 

「ふふ、じゃあ起きたら淹れますね」

 

「よろしく!」

 

 

里奈は軽やかな足取りでキッチンへ向かい、朝の静かな空間にコーヒーの香りが広がり始めた。

 

 

「まぁ、明日はせめて里奈だけでも休ませてやりたいんだがな」

 

 

義宗が溢した本音に、陽は迷いなく言葉を返した。

 

 

「受付も依頼も、明日は全部俺が引き受けるよ。お前らもたまには休めよ」

 

「んー……マジか?」

 

 

思わぬ申し出に、義宗が半信半疑といった様子で顔を覗き込む。

 

 

「おう。気休めにでも、二人でどこか出かけてこいって」

 

「……わかった。明日、任せるわ」

 

「任せろ」

 

 

二人の間で男の約束が交わされたところへ、里奈が湯気の立つカップを運んできた。

 

 

「何をお話ししてるんですか?」

芳醇な香りがテーブルに広がる。

 

「ありがとう」

 

 

陽が礼を言ってカップを受け取ると、里奈は「いえいえ」と控えめに微笑んだ。

 

 

「里奈、明日どこか行くか」

 

 

義宗の唐突な誘いに、里奈は驚いて目を丸くした。

 

 

「えっ、お仕事は大丈夫なんですか?」

 

「おう。頼もしい同僚が頑張ってくれるらしいからな」

 

「陽さん……ありがとうございます!」

 

 

パッと顔を輝かせる里奈に、陽は軽く手を振ってみせる。

 

 

「大丈夫、大丈夫。どうしても分からないことがあったら連絡するけど、なるべく自力でやるからさ」

 

「おう、何回でも電話してくれ」

 

「合点承知!」

 

 

陽は頼もしく頷くと、温かいコーヒーを一気に飲み干した。

結局、最後まで澪はポケットの中で眠ったまま。陽は静かな寝息を連れて買い物を済ませると、明日への活力を胸に、ゆっくりと帰路についた。

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