※この作品はR-18です。

護り人   作:倉羅

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窓の外の喧騒、食卓の平和

 

 

午前10時15分。

 

 

「よし、洗濯終わり」

 

 

陽は、洗い終えたばかりの籠を抱えて小さく息を吐いた。いつもなら澪がこなしてくれる家事だが、今日はどうやら疲れが溜まっているらしい。珍しく、彼女はいつまでも深い眠りの中にいた。

 

 

「……おはよ」

 

 

噂をすれば、というタイミングで澪が寝室から姿を現す。寝ぼけ眼の彼女を見て、陽は自然と口角を上げた。

 

 

「おはよう。朝食できてるから食べな」

 

「事務所……、行ったの?」

 

「おう、早めに切り上げて帰ってきたんだ」

 

「そう」

 

 

短く答えると、彼女はまだ微睡みを引きずった足取りで洗面所へと向かった。しばらくして戻ってきた彼女は、椅子に座り、陽が用意した朝食をゆっくりと口に運び始める。

 

 

「明日の仕事、うちらだけで事務所に居る事になりそうなんだ」

 

 

陽が切り出すと、澪は手を止めて視線を上げた。

 

 

「他の全員は休みなの?」

 

「大地も出勤なんだが、あいつは既に依頼が入ってるんだってさ」

 

 

陽は、いつも慌ただしい義宗にゆっくり休んでほしいという本音を、彼女に漏らした。

 

 

「本当は休みなんでしょ? ならいいじゃない。」

 

 

澪は淡々と、けれどどこか慈しむように頷いた。

 

 

「だよな」

 

 

その一言に、陽の心は軽くなる。明日は二人きりで忙しくなるかもしれないが、彼女が納得してくれているのなら、それも悪くない。

 

 

「洗濯してくれたのね、ありがとう。夕飯は私が作るわ」

 

「お、楽しみにしてる」

 

 

午後の穏やかな時間が、部屋の中をゆったりと流れていく。何気ない会話を重ね、二人でまったりと過ごしているうちに、窓の外には茜色が広がり始めた。気が付けば、もう日が沈もうとしている。

 

 

午後5時45分。

 

 

部屋には、夕暮れ時特有の穏やかで少し物悲しい空気が流れていた。

 

 

「……」

 

「ん~っ…さて、作ろうかしら」

 

 

不意に澪が立ち上がり、キッチンへと視線を向けた。

 

 

「冷蔵庫にあるもので作るね、さっき覗いたとき材料もあったから」

 

「あいよー」

 

 

澪は台所に行き、手際よく料理を始める。トントンと野菜を刻む小気味よい音が、静かなリビングに響き渡った。

 

 

「俺も何か手伝おうか?」

 

「大丈夫、おこたに入ってテレビでも見てなさい」

 

「りょー」

 

 

陽はこたつの温もりに身を沈め、リモコンを手に取った。背中越しに、澪の独り言のような呟きが聞こえてくる。

 

 

「久々に真理子と料理したいわ」

 

「そういや前母さんと電話したけど、母さんも澪と料理作りたい言ってたよー」

 

「そう」

 

 

午後6時32分。

 

 

キッチンから香ばしい匂いが漂い始め、料理が完成したことを告げる。

 

 

「陽ー、机に運ぶの手伝ってー」

 

「おぅー」

 

 

しかし、陽の目はテレビの画面に釘付けになったまま動かない。

 

 

3分後……。

 

 

「はーるー手伝ってよー」

 

 

なかなか動かない陽にしびれを切らし、澪がエプロンを外してリビングへと戻ってくる。

 

 

「どうしたの?」

 

「澪、ちょいちょい」

 

「?」

 

 

陽に促され、澪がテレビを覗き込む。そこには、見慣れたはずの通りの風景が、警察車両のライトに照らし出されていた。

 

 

「ウチの近くで事件っぽい」

 

 

平和な夕食の時間を切り裂くように、画面の中では緊迫したニュースキャスターの声が流れていた。

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