※この作品はR-18です。

護り人   作:倉羅

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宵闇に紛れる足音

 

 

テレビの液晶画面の中では、アナウンサーが緊張した面持ちで原稿を読み上げていた。

 

 

「今日の午後2時半頃、○○県○○市で女性が謎の変死をするという事件が起きています。又、午後2時~5時の間に近くで3人も同じような変死が相次いでます」

 

「……」

 

「変死か」

 

 

二人は箸を止め、画面を注視する。

 

 

「調査によりますと、4人の女性の遺体は体内から焼かれ、感電死との話も上がっています」

 

「女性だけ狙ってんのかな?」

 

「たまたまじゃないの? 冷めちゃうから陽、手伝って」

 

「はーい」

 

 

どこか現実感のないニュースを遮るように、促されて夕飯を運ぶ。食卓に並んだ料理を前に手を合わせ、いつも通りの夕食が始まった。

 

 

「うん、相変わらず美味い」

 

「そう、良かった」

 

 

彼女の得意料理は肉じゃがだ。使っている素材は至って普通のものだが、誰もが一度食べれば虜になる、不思議なほど深い味わいがあった。

だが、その平穏は脳内に響いた鋭い声によって唐突に引き裂かれる。

 

 

《陽さん!!》

 

「ハイっ!」

 

 

あまりに突然のテレパシーに、思わず声を出して返事をしてしまう。

 

 

「……大丈夫?(汗)」

 

「里菜ちゃんからテレパシーだ」

 

 

傍らで怪訝そうな顔をする彼女に短く応じる。脳内に響く声は、かつてないほど緊迫していた。

 

 

《今、殺人犯を見付けて追い掛けてて、陽さん家の横を通りそうなんです!》

 

 

一瞬で空気が張り詰め、日常の温度が消えた。

 

 

「澪、ライフル!」

 

「弾は?」

 

「睡眠」

 

「了解」

 

 

返事と同時に、彼女の身体が淡い光に包まれていく。

つい先ほどまで「美味しい」と笑い合っていた彼女は、その姿を冷徹な鋼鉄の銃器へと変貌させた。

夕飯の香りが残る部屋で、その重みを手に取る。窓の外からは、すぐそこまで非日常の足音が迫っていた。

 

 

部屋の灯りを落とし、視界を夜の闇に慣らす。ベランダへと躍り出ると、手に馴染んだ銃身を柵に預け、静かにその時を待った。

 

 

《里菜ちゃん、指示よろしくね》

 

《今公園を通りすぎました、陽さんの家から約70メートルです》

 

 

脳内に響く緊迫したガイドに合わせ、意識を研ぎ澄ませる。

 

 

「ウチから70メートルね……」

 

「……何事? ニュースの奴?」

 

 

銃身となった彼女の低い声が、わずかな振動と共に伝わってくる。

 

 

「あぁ、そろそろ……見えた!」

 

《確認できましたか?》

 

《できたよ、ウチを通りすぎたら撃つね》

 

《了解しました》

 

 

闇を裂き、不穏な影がアスファルトを駆けてくる。標的が家の真下を通り過ぎた――その刹那、意識を指先に集中させた。

 

 

――ダァン!!

 

 

乾いた発射音が夜の静寂を切り裂く。睡眠弾は吸い込まれるように、奴の背中目掛けて一直線に突き進んでいった。必中。そう確信したはずだった。

 

 

「!?」

 

 

だが、完璧な弾道とは裏腹に、確かな手応えが指先に返ってこない。まるで幽霊を撃ったかのような、奇妙な空虚感。

 

 

「陽」

 

「ハッ!」

 

 

傍らで震える彼女の声に、我に返る。

すぐさまリロードを試みたが、時すでに遅い。殺人犯の影は、嘲笑うかのように暗闇の奥へと消え去っていた。

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