※この作品はR-18です。

護り人   作:倉羅

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真夜中のティータイムと予感

 

 

深夜の静寂に包まれた部屋で、デジタル時計の数字がAM 12:42を刻んでいた。

 

 

「明日、何時なの?」

 

 

隣で澪が、眠たげな声を絞り出すように尋ねた。その問いに、陽は記憶を辿りながら「えっとな……」と言葉を濁す。

 

 

「……聞いてないわ」

 

「えー……」

 

 

澪の不満げな吐息が、薄暗い部屋に小さく響く。

 

 

「電話するか」

 

 

陽は観念したようにスマートフォンを手に取り、発信ボタンを押した。

静かな室内に、無機質な呼び出し音が鳴り響く。数回のコールの後、相手が受話器を上げた。

 

 

『おう』

 

「ごめん、義宗。寝てた?」

 

『いや、まだ仕事してる』

 

 

受話器の向こうから聞こえる義宗の声には、深夜にもかかわらず、仕事への熱量が滲んでいた。

 

 

「……事務所で?」

 

『あぁ、ちょっと気にかかる事があってな』

 

「大丈夫か?」

 

『大丈夫だすぐ終わる。んで、何か用か?』

 

 

義宗の言葉は簡潔だ。陽は本題を切り出した。

 

 

「あぁそうそう、明日何時に行けば良いん?」

 

『あれ、明日8時で良いんだよな?』

 

 

義宗が隣にいる人物に確認するように問いかけると、少し遠くから里奈の落ち着いた声が入り込んできた。

 

 

『陽さん達ですか? 陽さん達は8時です』

 

『……だそうだ。8時だ』

 

「りょーかい」

 

 

用件が済み、通話を切ろうとしたその時、再び里奈の声が響いた。

 

 

『あ、少しだけ澪さんに代わって頂けますか?』

 

『あぁ。陽、澪に代わってくれってよ』

 

「おう。澪、代わってだって」

 

「私は眠いのだー……」

 

「まぁそう言うな。里奈ちゃん、ちょっと待ってねー」

 

 

苦笑いしながら、陽は渋る澪の手に、温かくなったスマートフォンをそっと預けた。

 

 

 

「もしもしー」

 

 

陽から受け取ったスマートフォン越しに、澪が間の抜けた声を出す。

すると、受話器の向こうからは里奈の弾んだ声が聞こえてきた。

 

 

「澪さん、あのねあのね」

 

 

そこからは、最近オープンした話題のスイーツ店や、流行のカフェの話に花が咲き始めた。深夜の静寂を塗りつぶすように、二人の会話は熱を帯びていく。

 

 

「先に寝るぞー」

 

 

陽が声をかけても、澪は「そうそう、あそこも美味しかったわぁ」と頷くだけで、すっかり夢中だ。

やがて、澪から手で「OK」とサインが出されるのを確認すると、陽は一人、先に布団へと潜り込んだ。

 

 

……。

 

 

………。

 

 

ふと意識が浮上した。

枕元の時計に目を向けると、数字はAM 3:12を指している。

 

 

「……まだ起きてんのか?」

 

 

居間の方から、漏れ出す明かりが目に入った。

陽が体を起こし、襖を引く。

 

 

「みーおー、明日起きれなくなるぞー」

 

「あら」

 

 

声をかけると、そこにいたのは澪だけではなかった。

 

 

「ごめんなさい、お邪魔してます……」

 

「え。あれ、里奈ちゃんいらっしゃい」

 

 

意外な来客に、陽は目を丸くした。

 

 

「すみません、夜分遅くに」

 

「気にしないで、今ココア淹れてあげる」

 

「あ、私も手伝います」

 

「大丈夫だよー」

 

 

キッチンへと向かう陽の後を、里奈が静かについてくる。

 

 

「ありがとう」

 

「いえいえ、寝ててください。私も今回の任務、付き合います」

 

「大丈夫だよ、命を張るような任務じゃないしな」

 

 

陽が軽く笑い飛ばそうとすると、里奈は真剣な表情を崩さなかった。

 

 

「義宗さんから聞くと、そこは豪邸で大変らしいんです」

 

 

里奈の言葉に、陽は手を止めた。

マジか。まあ、依頼主は大抵金持ちだ。薄々察してはいたが、改めて言われると身が引き締まる。

 

 

「んー、義宗はこないのか?」

 

「事務所の仕事を片付けるみたいです」

 

「そうか。まあ、疲れたらすぐに帰りな? 義宗も心配してるだろうから」

 

「わかりました」

 

 

深夜のキッチンにココアの甘い香りが広がり、明日から始まる騒がしい日々の予感を包み込んでいった。

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