※この作品はR-18です。

護り人   作:倉羅

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暁の甘噛みと朝食の風景

 

部屋に戻ると、そこにはこたつの温もりに負けて、幸せそうに寝息を立てる澪の姿があった。

 

 

「あ、ココア……どうしましょう」

 

 

里奈ちゃんが困ったように、用意していたカップを見つめる。

 

 

「俺が飲むよ。ココア、好きなんだ」

 

「そうなのですか?」

 

 

そう言って、彼女はふわりと花が咲くような微笑みを浮かべた。

俺は温かいココアを一口啜り、気になっていたことを切り出してみる。

 

 

「……さっき、俺の小さい頃の話をしてたんだって?」

 

「そうですよ。澪さん、本当に嬉しそうに話してくれました」

 

「そ、そうなんだ……」

 

 

自分の知らないところで、護り人である澪が俺のことを語っていた。照れくささと、ほんの少しの気恥ずかしさが混ざり合い、顔が熱くなるのを感じる。

他愛もない会話を重ね、温かい飲み物が体に馴染んでいくうちに、心地よい沈黙が二人の間に流れた。ふと里奈ちゃんを見ると、その瞳は今にも閉じそうなほど潤んでいる。

 

 

「少しだけでも、寝よっか」

 

「そう、ですね……」

 

「里奈ちゃん、目がとろーんってしてるし」

 

 

俺が茶化すように微笑むと、彼女はハッとしたように顔を赤らめた。

 

 

「はっ……すみません、少しだけ……眠くなってしまいました……」

 

 

恥ずかしそうに俯く彼女の仕草に、胸の鼓動が少しだけ早まる。

俺と里奈ちゃんは、残り少なくなったココアを飲み干すと、こたつの魔力に身を任せ、束の間の微睡みの中へと落ちていった。

 

 

午前6時32分。

 

 

意識の底からふわりと浮上するように、陽は目を覚ました。これ以上まどろみに身を任せれば、今日一日の予定が瓦解する。そう直感した彼は、重い腰を上げて台所へと向かった。静まり返った空気の中で、手早く朝食の準備を始める。

 

 

午前6時54分。

 

 

「すみません、寝過ぎてしまいましたぁ……」

 

 

背後から聞こえてきたのは、申し訳なさそうな里奈の声だった。

 

 

「おはよう。今作ってるから、おこたで温まってて!」

 

 

陽が振り返ると、そこにはまだ夢の断片を引きずっているような、とろんとした表情の里奈が立っていた。朝にはめっぽう弱いらしい。

 

 

「ありがとうございますぅ……」

 

 

彼女は吸い込まれるように炬燵へと消えていった。

 

 

午前7時02分。

よく寝る狐さんもそろそろ起こす時間だ。

 

 

「みーおー! 朝だよー!」

 

「スゥー……」

 

 

返ってくるのは規則正しい寝息だけ。だが、長年の付き合いが陽に真実を告げていた。

 

 

(……起きてるな)

 

 

二度寝の誘惑に負け、あえて「起きていないフリ」を決め込んでいる。その証拠に、睫毛がわずかに震えていた。陽は隣でウトウトしている里奈に視線をやる。彼女はこちらを見ていない。

陽はいたずらっぽく口角を上げると、無防備な澪の耳元へ顔を寄せた。

 

 

「……」

 

 

カミッ……

 

 

「みゃぁっ!!!?///」

 

「へっ!?」

 

 

静かな朝の空気が、澪の悲鳴で一変する。敏感な耳を甘噛みされた彼女は、弾かれたように飛び起きた。

 

 

「ど、どどうしました!? 汗」

 

 

突然の事態に、里奈の眠気も一気に吹き飛んだようだ。

 

 

「貴様……っ!///」

 

 

顔を真っ赤にして睨んでくる澪に対し、陽は涼しい顔で言い放つ。

 

 

「寝たフリする澪が悪いんだよ。さぁ里奈ちゃん、食べようか」

 

「あ、はい……。すみません、ごちそうになっちゃって……」

 

 

釈然としない空気のまま、里奈は恐縮しながら箸を手にする。一方の澪は、一言も発さなかった。

気まずい朝食をなんとか終え、一行は本日の依頼現場へと足を踏み出した。

 

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