【妖々剣戟夢想】魂魄妖夢を色々な設定で色々動かす短編集 作:北村 貴之
妖夢とともに魔物討伐をする青年剣士
妖夢はいま、とある異界にいた。
灰色を基準とした、殺風景な雰囲気。
荒野が広がっている。
なぜ彼女がこんな場所にいるのかというと、ここに魔物が棲み着いたらしく、その討伐を以来されてであった。
相方の男、ジークを引き連れ、妖夢はこの禍々しさ漂う異界を鋭い目つきで見回していた。
「本当にいるのか?こんなとこに悪鬼だなんて」
ジークが妖夢にそう聞く。
白のつなぎ風の服装に紺色のコートを羽織ったいかがわしそうな雰囲気を醸し出した男だ。
手には大剣を持っている。
なかなかに重厚感のありそうな大剣は、ジークに似合っていた。
「間違いありません。依頼者と依頼書によれば」
妖夢は一切感情を変えることなく、無表情ながらも警戒している。
魔物たちからの強襲に備えているのだろうか。
「…相変わらず真面目だな」
ジークはやれやれ、と言いたげな表情でそう呟く。
妖夢との付き合いは長いが、悪いわけではない。だからこそ、妖夢の性格がよく理解できていたのだ。
妖夢は、基本的に感情を顔に出さない。
戦闘においては二振りの刀を駆使して戦う。
刀の腕前はもちろんのこと、驚異的な速さも彼女の強みだ。
(ま、そんなこと言うのも今更だけど)
ジークはそう呟き警戒する。
そんな彼らを見つけたのか、討伐対処である「彼ら」が姿を見せる…。
「出やがった」
ジークは早速、魔物の姿を目にする。
妖夢も同じだ。
魔物は一匹だけではなかった。
群れをなしている。
現れた魔物は悪魔及び鬼だった。
筋骨隆々とした黒い身体をしており、頭部には角が生えている。
それぞれ手には金棒や刀を持っている。
「悪鬼か」
「のようですね…」
ジークたちは、次々と現れる魔物に対して、すぐに臨戦態勢を取る。
ここで、ジークの表情が一変する。
驚きの表情であった。
それは妖夢も確認できた。
「やべぇな…」
ジークが目にした光景。
それは…。
「グルルルルッ…」
「フゥーッ」
唸り声をあげながら、悪鬼たちは続々とやって来る。
その数は100…、いや、それよりも多そうな数だ。
魔物討伐に手慣れた妖夢とジークでも、すべて倒しきれるかどうか不明確だろう。
流石のジークも、焦りを覚えていた。
これまで数え切れないほどの魔物たちを葬ってきたが、こんなにも数の暴力と言わんばかりの魔物たちを目にしたのは初めてだった。
倒すのはいいが、きりがなさそうだった。
これほどまでに数が多ければ、体力が尽きかけてくるところを討たれてしまってもおかしくはなかった。
「クソっ、報告の件数よりも多いじゃねえか…」
そうは言いながらも、大剣を握り締める。
どうやら戦うしかほか、方法はなかった。
ここで退けば、奴らに捕まり殺されるし、依頼者の依頼を達成できなくなる。
だからこそ、ここで倒しておかなくてはならないのである。
「それにしても多すぎだろ…」
「…」
無言のまま、妖夢も構えている。
ここでジークはちらっと妖夢の方を見る。
焦りを表情に出しているジークとは逆に、冷静な表情は微動だにしない。
「こんな状況なのに…。よく冷静でいられるな」
ジークは魔物たちを観察しながら、そう呟いた。
そんなジークに、妖夢はこう返す。
「ざっと数えて200体」
それを聞いたジークは、
「な、何を言って…」
と困惑気味に言った。
そんなジークにお構いなしに、妖夢は、
「仕方がない…。かなり久方ぶりにはなるが、やるしかない」
と呟いた。
「あなたは初めてでしたよね、わたしの『本気の姿』を拝むのは」
妖夢はジークの方を向き、そう言った。
「本気?ま、まさかとは思うが、アレを…?」
「ええ、『アレ』をです」
妖夢は再び魔物たちの方を見る。
そして再びジークに、
「危ないので離れておいた方がいいですよ」
「は、離れるってどのくらい?」
「およそ700メートルほどなら」
そう言いながら、妖夢は二振りの愛刀を地面に刺す。
「遠いな…」
妖夢からの警告を受けたジークは言われるがまま、妖夢から小走りで離れた。
ジークを遠ざけた妖夢は目を閉じ、すぅーっ、と深く鼻で息を吸う。
まるで念じるかのように、息を吸いつつ神経を集中させていく。
すると、妖夢の身体から青色のオーラが出始めた。
妖夢の念に応じるかのように、最初は霞ほどのオーラが次第に濃くなり、炎のような形状へと変化していく。
身体に青い炎のオーラを纏う妖夢の姿は神秘的であった。
ここで、妖夢は、
「はああッ!」
と高らかに叫んだ。
すると、妖夢の身体に纏われていた青色の炎のようなオーラは勢いを一気に増し、周囲の大地をも焦がす程の勢いとなる。
妖夢は雄叫びをあげながら、オーラの勢いを高めていく。
すると、妖夢の身体に変化が。
青色の炎は、妖夢の服を燃やしていく。
下着や靴も燃えていた。
着ている物が燃え落ち、妖夢は一糸纏わぬ姿となった。
剣で鍛えた妖夢の裸体は、かなりスタイルが良い身体だった。
胸は大きくて丸い形をしており、わかりやすいきれいなおっぱいだった。
性器も丸出し。
だが、周囲を囲む陰毛はまったくない。
素足で荒野の地を踏んでいた。
そして、全裸の妖夢を、衣服代わりと言わんばかりに、青い炎のオーラが衰えることなく包んでいる。
こうして変化は終わった。
オーラの勢いは美しい。
静寂の中、変身を終えた妖夢は目を開き、
「これがわたしの本当の力です」
と告げる。
そこには、普段の妖夢とは違う妖夢がいた。
「凄いな…。噂には聞いてはいたが、まさかここまでだとは」
ジークは息を呑みつつそう呟いた。
妖夢にはとんでもない力があると、ジークは上官から聞いていたために、今回こうして初めて妖夢の変身後の姿を見るわけだ。
「やれるのか…?」
「この数、別にいまのわたしならまったく問題ありません」
妖夢は、少し得意げに語る。
そして、改めて悪鬼たちの方を見る。
「フシュゥーッ!」
「ガァーッ!」
相変わらず殺気立っている魔物たち。
そんな彼らに対して妖夢は、
「悪いことは言わない。ここから消え失せろ!」
と叫んだ。
無論、魔物たちは聞く耳を持っていない。
「そう来ますよね…」
妖夢がそうつぶやくと、纏っていたオーラの勢いが増した。
ボォッ、と音をたてながら、青いオーラはまるでバーナーのように勢いを増していた。
すると次の瞬間、オーラは槍の形状になった。
そして、オーラの槍は妖夢の前方に浮遊しはじめる。
その様子を見た魔物たちは、何かを悟ったのだろう、すぐに妖夢を攻撃しようとした。
しかし…。
「遅いっ!」
妖夢はすぐに左手を前に出す。
すると、妖夢の左腕から、青いオーラが生成される。
それは瞬く間に弓へと形状変化していく。
さらに、先ほど生成された槍状のオーラは、矢へと形状が変化した。
生成された矢が、妖夢が生成した青い弓に装填されると同時に、オーラの弓の弦が伸びてゆく。
生成された弓からは、今まで感じたことのないような高エネルギーが充満している。
その高エネルギーは、魔物たちを滅ぼすのに十分なエネルギーだった。
「一網打尽にするっ!」
妖夢はそのまま、魔物の群れめがけて矢を放った。
ヒュンッ!
と音をたてながら、オーラの矢は高速で飛んでいく。
すると…。
ドォォォォッ!
と轟音と共に魔物たちは消え失せ、矢は爆発した。
爆発した場所からは大爆発が起こった。
鬼たちの悲鳴が次々と響きわたる。
妖夢は次に、鬼の大群のもとへ、ペタペタと素足で荒野を踏みながら突撃していく。
全裸なのでお持ちの乳房がぶるんぶるんと激しく揺れる。
鬼たちからすれば全裸の妖夢など性処理の対象も同然。
だが…。
妖夢は目に見えぬほどの速さの拳打や蹴りを繰り出し、鬼たちを次々と屠っていく。
ジークでさえ、その速さは目視できなかった。
「なんて速い…!噂はホントのようだったな」
青色の炎を纏った美少女は、鬼たちを次々と倒していく。
背後から鬼たちが奇襲してきたが、妖夢はそれを読んでいたのか、
「はあっ!」
と叫び、足元から青色の炎の柱を出現させ、その柱で奇襲してきた鬼たちを瞬く間に塵にした。
その後も、妖夢は次々と青い炎の火球を掌から生成しては、それを投げつけることで鬼たちを爆散させていった。
鬼たちはどんどん減っていく。
そのうち、残りは3体となってしまった。
鬼たちは完全に怯えきっていた。
「グゥー…」
「フ、フゥー…」
妖夢はそんな鬼たちに向けて、
「とどめです」
と、先程地面に突き刺していた二振りの刀を抜き、それを手にする。
オーラの勢いは衰えていない。
「さようなら」
そして妖夢は、目にも止まらぬ速さで鬼たちに突撃。
そして、数秒間の間に斬撃を放ち、鬼たちをバラバラに斬り伏せた。
妖夢ひとりによって、この地を荒らす悪鬼たちは倒された。
そして彼女は、ジークのところに戻ってくる。
「終わったようだな」
ジークは妖夢に声をかける。
妖夢を纏う青いオーラは消えた。
「ええ。無事に殲滅できました」
「まさかお前にこんな力があったなんてな…」
「わたしを怒らせないように、ですね?」
と、妖夢は答える。
そして、
「この力を行使するのも何十年ぶりだったので」
「な、何十年って…」
ジークは驚く。
「俺よりも歳、上だったんだな」
「隠していてごめんなさい」
とてへっ、と可愛らしい仕草をする。
こんな表情をするのも、ジークは初めて見たようで唖然としていた。
「あっ、そうだ」
ジークがここであることを思い出す。
「服…。なくなっちまったな」
妖夢は真っ裸だ。
なので、すぐさま服を用意しないと風邪をひくおそれがある。
「とりあえず着とけ…」
ジークは羽織っているコートを妖夢に優しく着せた。
「優しいですね」
と微笑む。
「別にいいじゃないか」
「ふふふっ」
妖夢はそのまま歩き始める。
ジークもついていく。
無人となった異界には、無惨にバラバラにされた鬼の死骸が転がっていた。