5-0 運命
5月末の、同窓会が終わった後の自宅。
数名の同級生を連れて、3次会を行う。
そして、あまり酔っていない平田と一緒に行動していたら、そろそろ寝ようかという話になった。
「せっかくだから、一緒に入ろうか」
何がせっかくなのかは分からないが、流れでそういう感じになった。
そんなこんなで、俺は平田洋介と風呂に入る。
背中を流してくれるそうだ。
「ちょっと腕を上げてもらえる?脇も綺麗にしないとね」
「脇くらい、自分でやるが」
「その辺はさせてよ。念入りにやるからさ。ホラ」
そういって腕を上げる。
細かい事で言い合うつもりはないからだ。
男同士のこういったスキンシップは良くあることなのだろうか。
「わ、やっぱり清隆くんは毛が少ないんだね」
「そういえば薄い方かもしれないな」
「剃ってる、とかないの?」
「あっちにいる時に脱毛はした方が良いと言われて、顔の脱毛はしたな」
「へぇ、そうなんだ。結構痛かった?」
背中を洗う。という行為はそこまで時間がかかるものなのか。
柔らかいブラシ、柔らかい布で平田は俺の上半身を中心に洗っていく。
そのまま何も言わずにいると、背中だけなく首、脇、腕が泡で包まれていった。
上半身に手を付けて来る。
「平田、そろそろ良い。助かった」
「うん、分かった」
「じゃあ今度は俺が背中を洗う番だな」
「よろしくね」
そういって次は平田が座り、俺が持っているスポンジにボディソープをかけ、泡を出していく。
「結構ガッチリしてるんだな、サッカーは続けているのか?」
「うん、プロには流石になれないから、趣味だけどね」
高校の体育の時、平田はサッカーが相当上手かった。
その性格からゴールを決めることはせず、コートの真ん中でボールのコントロールをする程度だったが。
「サッカー業界も厳しいんだな、大学卒業後の進路は決めているのか?」
「まだ決めてないよ、大学2年生だしね。でも先輩たちは商社やコンサル業界に行ったみたい」
平田の進学先は偏差値も相当高い大学。
部活動やサークル活動で鍛えたコミュニケーション能力で、良い会社に就職出来るだろう。
「そうか、高円寺とこの前あった。あいつの会社も、候補の一つに入るんだろうな」
「高円寺くんの会社、というより、そのグループ会社かな。流石に中核の、それも持株会社に入社するのは難しいだろうから……」
と話していた時──。
扉が開かれた。
扉の向こうにいるのは焦った様子の櫛田。
その櫛田が、柔らかい笑みで言った。
「綾小路くんも、平田くんも、何してるのかな?」
扉が徐々に開かれていき、後ろに相変わらず表情の柔らかいひより、ドン引きしている恵、ニコニコしている一之瀬がいた。
「何って、背中を流し合おうって平田と約束してたから……な」
「そうだね、それに皆も、ちょっとひどいんじゃないかな?椎名さんだって、僕たちタオルを巻いてるって言っても裸なんだから」
「男同士の友情ってヤツ?」
というのは軽井沢。
「綾小路くん、そっちもいけるんだね。ちょっと、残念……かな」
何もしていないのにショックを受けている様子の一之瀬。
「それでも誤解だと知って良かったですね、戻りましょうか」
表情の変わらない椎名。
そして誰かが、あー焦って損したー。と言いながらドアを閉める声が聞こえて来た。
「……何があったんだ?」
「さぁ、どうしたんだろうね」
自宅の、広い、通所シャワー室。
俺達は話に花を咲かせながら、交互に風呂に入る。
平田は執拗にタオルを取ることなかった。
タオルの奥は、少し形のある、アレが見えた。
俺は何も言わない事を決めた。