※この作品はR-18です。

ようこそ実力至上主義の社会へ   作:〇彪

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6-2 ゲーム

 1

 

 櫛田の携帯から音声が漏れていた。

 

『櫛田様、もしもし、もしもし?綾小路様もお近くにおいででしょうか』

 

 心配そうにこちらを見上げてくる櫛田。

 

「家は無事なのか?」

 

「うんっ!ガラスにひびも入らなかったって……壁に煤は付いたみたいだけど」

 

 頑丈すぎる。

 何はともあれ、ただの火薬で良かったと思うべきか。

 犯人の心配、よりもケガ人の心配の方が重要だろう。

 

「多分……パニックで電車も止まると思う。どうしよう……」

 

「二の矢三の矢が来る可能性もあるから、なるべく出歩かない方が良いだろうな」

 

「うん、だから、もし良かったら何人かウチに泊めても良い?」

 

 そう聞いてくる。

 ここから家までは徒歩15分。

 走れば10分とかからない。

 

 結婚式業の窓ガラスを見ると、薄く、デザインに凝ったもの。

 ここよりは家の方が何倍も安全だろう。

 俺は櫛田に対して頷いた。

 それをみた櫛田が振り返ると、既にこちらを伺う堀北や軽井沢、平田が見えた。

 

「先輩、どうしますか……?」

 

 櫛田と話し終えると天沢が聞いてくる。

 そして、坂柳に近寄って、脈を測った。

 

 息はしているが、荒い。

 表情はすぐれない、発熱もある。

 

「どうしよう、どうしよう綾小路……!」

 

 と焦るのは神室真澄。

 

「すぐに死にはしないが、機材の整った病院に行かなくてはならない」

 

 そう診断する。

 

「あの……」

 

 と、声をかけてきたのは山村。

 山村に目を向けると、山村はマイペースに話しかけてきた。

 

「お久しぶりです、綾小路くん」

 

「……あぁ?久しぶりだな、山村」

 

「えッ?えッ!?こんな状態で何?」

 

「ちょっと黙ってください神室真澄。今から山村美紀がしゃべりますから、ホラ、聞こえないですよね周囲の音もうるさいですから」

 

 お前が一番喋っているんだが。

 

「私は医学部、看護学科です。えっと、お医者さんの指示は……?」

 

「そうだな、では人工呼吸をしてくれるか?」

 

 2

 

 片道3キロ。

 車に乗せて、坂柳のSPをする警察官が先導し病院まで直行した。

 

 到着すると山村に坂柳を任せ、俺は病院の医者と会話をする。

 それが終わり、外に出ると天沢が携帯を差し出してきたため、電話に出た。

 天沢の顔に似合わない、表情を消した、ホワイトルーム生のような、そんな表情であった。

 

『もしもし?綾小路くんかい?』

 

 久しぶりに会話をする、坂柳理事長であった。

 少し遠くから声が聞こえてくるところを見るに、車で移動中、スピーカーで話しているのだろう。

 

「はい、綾小路です」

 

『すまない、とりあえず有栖の携帯のGSPから、慶應義塾大学病院にいるとは知っているんだが、合っているね?』

 

「合っています。無事に送り届け、今は同級生の看護学生が付き添っています」

 

『分かった。ありがとう』

 

 話は終わったと思われた。

 だから、携帯を返そうとする。

 

『……終わったら、明日、もしくは明後日でも良い。お見舞いに来て貰えるかな』

 

 元気のない声だった。

 元からそんなに元気のある人間ではない。

 だが、無力感を感じる、そんな声。

 

「なぜです?」

 

『君には聞いてもらいたい。隣には妻もいる。妻も、同じ症状なんだ。有栖の病気は、遺伝だ』

 

「俺に家族の事情を聞けとおっしゃるのですか?」

 

『なんでもする』

 

 そう、坂柳は言い切った。

 強い言葉だった。

 

「なんでも……?娘さんは、ちゃんと入院していれば問題なく復帰できる状態です、そこまで言う必要があるとは思えない。それとも……」

 

 続きを言えるだろうか。

 言えないだろうか。

 

 しかし、俺は淡々と言葉を続けた。

 

「俺に奥さんや、娘さんの手術をしろとでも言うのですか?」

 

『あぁ、そうだ。綾小路くん。私たちを……私の家族を助けてくれ』

 

 そこで俺個人の携帯が鳴った。

 俺は話を切り上げる。

 

「とりあえず、話は聞きます。明日か明後日、病室でお会いしましょう」

 

『……ありがとう』

 

 そう言って、俺は携帯の画面を拭き、天沢に返した。

 

 3

 

 そして、家に帰る。

 

 山村には住所を教え、終わったら来るように伝える。

 帰りがけに見えた坂柳は、すやすやと眠っていた。

 

 白石、西川、森下は山村に合わせるようで、坂柳のそばにいた。

 俺は警察に会釈し、天沢と共に車に乗り込んだ。

 

 ◇

 

 家に着くと元1年Dクラスの面々がくつろいでいる。

 他にも数名いるが、多くたって問題はない。

 

 俺は近寄ってきた櫛田と平田と会話をし、俺の顔を見た平田と共に風呂に入った。

 すると、携帯を鳴らした主との約束の時間が来る。

 

 モニターに国営放送が流れていた。

 世界は震撼しているようだ。

 情報は少ないが、こんな状態でも楽しく生きなければ。

 

 結婚式の主役である、篠原と池も私服に着替えてソファに座っていた。

 挨拶をするのを忘れていたと思い出した。

 

 ◇

 

 モニターに映るのは6名である。

 

『大変なことが起こった……!誰の差し金だ…?我々を差し置いて、こんなことをするのは……』

 

『待て、被害状況を教えてくれ。まずは私の会社、工場が炎上した、いくつもの防波堤を張り巡らせた工場だ。ミサイルが飛んでくるなど到底信じられない……警察の話によると近くをウロツイテいた不法移民が怪しい』

 

『あたしのところは大きな被害はなかった…本店が火災事故。でも、最近出したバッグのデザインが悪いわ、不祥事になってしまう』

 

『バッグだ?そんな事どうでもいい。清隆、君のところはどうなんだ?』

 

「俺のところはとりえず人災はないが、家にミサイルが撃ち込まれた」

 

 そういった瞬間、6名の顔に驚きの表情が生まれた

 

『まじかよ……』

 

『清隆もヤバいけど、ウチもやばい。なんせ、ネットサーバーから火が点いた。本当に、どこの国の、誰なのか分からない』

 

 そこで、一人黙っていた一番高齢の男性が口を開く。

 

『しらばっくれるなよ、帳?ワタシの銀行のデータサーバーがトラブルを受けた。出来るのは情報を知っているお前だろ?近くで捕まったお前の国の集団が、自白したと連絡を受けた』

 

『馬鹿な……そんな数時間で自白する犯人がどこにいる?』

 

『あたしの所も似たようなものかもしれない。怪しんでいるわけではないけど、キヨタカ、貴方の国の、参議院議員に言われてやったと、犯人が自白したわ』

 

「各地で似たようなことが起きているな」

 

『少なくとも先日送った車は無事だと思うが、皆、今は落ち着くんだ。それで、正確な被害状況は?』

 

 と、この中で一番ランキングの高い男がそういった。

 

 4

 

 でも。

 

 この集まりは終わりだろう。

 

 お前たち、もう二度と会うことはない。

 

 この中で二人を残し、後はこの流動的な組織から姿を消すだろう。

 

 

 [富裕層ランキング、1位は正体不明の男]

 

 

 小さな記事が、ネットに出た。

 

 俺はこいつらを気遣いながら、サウジアラムコの王族との約束を取り付ける。

 

 それは本当に心配しているように見えるだろう。

 

 でも。

 

 

 俺が勝てれば、それで良い。

 

 

 ──さぁ、答えのないゲーム。

 

 

 ──犯人捜しを始めようか。

 

 

 

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