「え……俺の……性処理係?」
マイルームのベッドに座り藤丸立香は目の前のレオナルド・ダ・ヴィンチに問い返した。
「そうとも」
ダヴィンチは軽い口調で座っている椅子をくるくると回しながら答える
「知っての通り君のバイタルはカルデアスタッフが常時監視している、故に君が夜一人で何をやっているか、そしてそれにどれほど満足しているか、そこまで把握させて貰ってる」
申し訳無いけどね、と続けるダヴィンチに多少の恥ずかしさを感じながらも藤丸は続きの言葉を目線で促す。
それにニコリと笑いダヴィンチは言葉を続ける。
「現状マスターとして活動出来るのは君だけで、故に君のメンタルサポートはカルデアスタッフの総意としても重要性は非常に高い」
「だから君が自慰行為で満足出来てない現状を放置する訳にはいかないのさ」
そう続いた言葉に納得し辛いと言いたげな藤丸を無視してダヴィンチは更に続ける。
「それに当たり前だがその担当者だって無理強いされている訳じゃない、むしろ君を思っての好意なんだ」
そう言われ更に抗議し辛くなった藤丸をからかうようにダヴィンチは続けた。
「それに君だって若い男性だ、そう言ったことに興味がない訳じゃないだろう?」
と微笑みながら言われた藤丸は目線をそらし顔を赤らめて言った。
「まあ、その、うん、興味…あります…」
その言葉にダヴィンチは嬉しそうに笑うと手に持っていた紙束を藤丸に差し出しながら言った
「良かった、皆と話し合った甲斐があるよ」
その言葉に問い返そうとした藤丸がチラリと紙束に目を向ければケバケバしいピンクの文字で「デリバリーヘルス[カルデア]」と印刷されている。
「ダヴィンチちゃんこれは?」
と何が何だかわからないといった表情で藤丸が質問するとダヴィンチは笑顔で答えた。
「さっき言ったように君のストレスを解消するには自慰だけじゃ駄目だ、つまり女性との性行為が必須条件になるわけだ、その書類はその候補者のデータって事だね」
「それは、まあ納得したくないけど理解はしたよ、けど候補者って?」
「簡単な話だよマスター君、いくらピルやゴムが有ろうと対人間では100%の避妊は保証できない、だから人間のスタッフじゃなくて女性サーヴァント達に頼んでみたんだ」
呆気にとられる藤丸を無視して更にダヴィンチは続ける。
「勿論大雑把に募集してその後個人個人に面接をしてセーフラインを決めたメンバーだ、君は安心してそのリストの中から選んで性行為を頼めば良いのさ」
その言葉にチラチラと紙束に視線を向ける藤丸にもう1つ端末らしき物をダヴィンチは手渡した。
「これは?」
「君がいちいち頼みたいサーヴァントを探すのも億劫だろう?その端末で私に誰に頼みたいか言ってくれれば後は私がそのサーヴァントに伝えて君の部屋に向かって貰うシステムさ」
そう言ってダヴィンチはニコニコしながら部屋を出て行こうとする。
藤丸が興奮と羞恥で動けずにいるとドアが閉まる寸前にダヴィンチは再び部屋に入って藤丸に普段は決して出さない艶の有る声で囁いた。
「そう言えば候補者の皆からの言伝てを忘れるところだったよ、[デリバリーヘルスカルデアのメンバーはいつでもご指名お待ちしてます♥️]だってさ♥️」
ダヴィンチが出ていった後も藤丸は座ったまま動けなかった。
その傍らにはケバケバしいピンク色の表紙の冊子と連絡用の端末が置かれている。
それらをチラチラと見ながら藤丸は深くため息をついた。
「あああああなんでさぁ」
そんな叫びは虚しく虚空に溶けてまたマイルームは静寂に包まれた。
「なんで俺は興味が有るなんて言っちゃったんだ…」
そう羞恥に身を捩っていた藤丸はスッと立ち上がると何もなかったかのようにマイルームを出た。
「うん、今は忘れて後でなんとかしよう!」
そう呟きながら自分を誤魔化そうとしていた藤丸に声をかけてくる人物がいた。
「あらマスター」
その声に振り向けばそこにいたのはメルトリリスだった。
「や、メルト」
そう話しかけた藤丸はフッと何か違和感を感じてマジマジとメルトリリスを見つめた。
「マスター?女性をあまりマジマジと眺めるのはマナー違反よ」
軽く微笑みながら注意してくるメルトリリスの言葉に確かに言われた通りだなと藤丸が視線をあげたとき違和感の正体に気付いた。
「メルトどうしたのそのチョーカー?」
するとメルトリリスは先程以上の笑みを浮かべて藤丸の耳に囁いた。
「"あなたの為のカルデア"のスタッフはねマスター♥️皆この黒いチョーカーをしているのよ♥️」
そして離れて己のチョーカーを愛おしそうに撫でながら続けた。
「他にもルールはあるからダヴィンチから貰った冊子をよくお読みなさいマスター♥️」
そういって立香を置いて歩きだしたメルトリリスは少し進んだ先で振り返り告げた。
「私のオススメは18ページのスタッフよ♥️」
そういって去って行くメルトリリスを見つめながら藤丸はフーッと興奮から深呼吸した。
メルトリリスの言葉に興奮してしまった藤丸は心を落ち着けようと食堂でエミヤにいれて貰った紅茶を飲んでいた。
深い紅茶の香りが鼻から肺に流れていくのを感じながら改めて藤丸は今回のダヴィンチの提案は冗談ではなく大真面目なものだったと理解した。
真剣な顔で紅茶を味わっている藤丸に2人のサーヴァントが話しかけてきた。
「あれぇマスターどーしたのかなぁ?いつもは能天気な面を無意味にしかめちゃってさぁ?」
「全くねあんたの悩みなんて大したモンじゃないでしょうに」
そう言って藤丸の顔を覗き込んできたのはバーヴァン・シーとジャンヌ・ダルク・オルタだった。
ヘルス[カルデア]の事をどう相談しようかと視線をさ迷わせた藤丸は2人の首にメルトリリスと同じ黒いチョーカーを見て動けなくなった。
そんな藤丸の視線に気付き2人はニコニコと笑いながら自分達のチョーカーを撫でると囁いた。
「マスター私のオススメは4ページのスタッフね♥️」
「私のオススメは3ページと27ページねマスター♥️」
2人は揃った甘い声で囁いた。
「「私達スタッフはいつでもご指名お待ちしております♥️」」
予想外に早くスタッフと出会った藤丸は急いでマイルームに戻る事にした。
「これ以上スタッフの皆に会ってもちょっとどうすれば良いか分かんないや」
そうブツブツと呟きながら早足で廊下を進んでいる藤丸に話しかけてくる声があった。
「あら?どうしたのかしらマスター?まるで獄吏から逃げる囚人よ?」
そうからかう様に言ったのはマリー・アントワネット・オルタだった。
「やっやぁマリー・オルタ」
内心の動揺を必死で隠しながら藤丸は挨拶を返す。
そうしておそるおそるマリー・オルタを見た藤丸はその首にスタッフの証のチョーカーが無い事に気が付いた。
そんな藤丸の目線と表情の変化で考えを理解したのだろう、マリー・オルタは呆れた顔で言った。
「あのねぇ私は末路はどうあれ由緒正しいハプスブルクの系譜、フランスの王族よ?いくらサーヴァントになったとしてもキライなあなた専属の娼婦になんてなるわけがないでしょう?」
そう言われてむしろ藤丸は安堵した。
「ははっそうだよね、ごめんねマリー・オルタ」
そう安堵して返事をした藤丸を見てマリー・オルタの目が細まったのに藤丸は気が付かなかった。
「じゃ俺は部屋に戻るから」
そう振り返って藤丸が歩き始めた瞬間マリー・オルタは再び藤丸に話しかけた。
「ねぇマスター?」
「うんどうしたのマリー・オル?!」
藤丸は二の句が継げなかった。
何故なら先程まで巻かれていなかった黒いチョーカーがマリー・オルタの細い首に巻かれていたからだ。
「マリー・オルタ?」
唖然とした藤丸が問いかければマリー・オルタは少し拗ねた様に答えた。
「だってあなたがあまりにも分かり易く安堵するのだもの、いくらキライな相手でもアレでは私のプライドが傷付くわ」
そう言いながらマリー・オルタは藤丸に歩み寄ってくる。
動揺して身動きの取れない藤丸にマリー・オルタは囁いた。
「あなた専属の娼婦、いえダヴィンチ風に言うならスタッフかしら?私のオススメは45ページねマスター」
通りすぎながらマリー・オルタは最後に言った。
「あなたの性欲で王族のブランドを穢してみない?」
「あれ?マスターのお兄さん?」
マリー・オルタの囁きでしばらくフリーズしていた藤丸は後ろから元気に声をかけられて正気に戻った。
「やぁイプシロン」
白い霊衣の太祖竜テュフォン・イプシロンは元気に藤丸に笑いかけていた。
その首にチョーカーが無い事に安堵した藤丸は多少心が落ち着いてきているのを感じた。
「なんかお悩みですか?お話だけでも聞きますよ?」
そう健気に気遣われてついつい藤丸は心の声を吐露してしまった。
「ダヴィンチちゃんの言う[俺専属のカルデア]が冗談だったら良かったのに…」
そう呟いた瞬間藤丸の隣から声が聞こえた。
「願ったな?」
それに驚いた藤丸が振り向けばテュフォン・エフェメロスが顔を真っ赤にしながらも勝ち誇った顔でこちらを見ていた。
「マスターあなたの願いは叶わない!あなたはダヴィンチの言う[あなた専属のカルデア]に悩まされ続けるのよ!」
自棄糞気味にそう叫ぶテュフォンの首にチョーカーを見つけて藤丸は目を丸くする。
するとエフェメロスと入れ替わるように同じくチョーカーを身に付けたイプシロンが現れ囁いた。
「マスターのお兄さん、熟れたての果実の食べ比べはいかがですか?」
「もしも興味があるなら50ページがオススメですよ♥️」