種付けおじさん戦記~勇者召還で外れスキルと言われ追放された元工場長の俺! これまで培った経済スキルで無双します! 作:鯉@
「すげぇ、コック長はため込んでいやがったなぁ」
商売の基本というのは、安く買って高く売ることである。
高く売る条件は簡単に手に入らないことだ。
具体的には、店や町もない山道。
原価の3倍で売ろうとしたのだが、隊長が仲裁に入り、副隊長の有り金の8割である金貨50枚で俺の食料品は売却された。
利益の仕組みは最近問題になっている転売ヤーと同じだ。
ほしい人間がたくさんいるのに、供給量が足りず、その差額が利益を生んでいる。
俺がやったことも、本質的にはそれと変わらない。
「コック長か」
「いや、コック長はあっち、って新しいコック長は俺だったな」
ここの生活のせいで、下っ端の立場が身にしみこんでしまった。
新しい呼び名で呼ばれても、つい誰のことだろうと反応に時間がかかった。
「まったく、お前はこれから上に立つ立場なんだろ。それで、その、コック長の収入っていうのはいくらくらいなんだ」
「幹部だけあって、一月で金貨30枚。一応は技術職なだけあって、これまでのバイトとは桁違いだ」
「そうか……。私の出した条件以上だな。
賭けは、そちらの勝ちのようだ」
「まぁ、最初から分かっていた結果だな」
「いくつか聞きたいことがある。お前はこうなる事、コック長が不正をしているのは分かっていたのか?」
俺は黙って、帳簿を取り出した。
「見てくれ、干し肉の異常な消費量を。
あの町に到着した時、計算上なら、干し肉はまだまだ余裕があるはずなのに使い切っていたんだ」
「だから、不正していることが分かったのか。だが、どこまでが計算通りなんだ。不正発覚までは分かるが……。
肉を売って儲ける所、コック長になるところまではさすがに」
「コック長になるところだけは予想外だな」
ありえない!
サムエラはこちらの話を聞いて、否定に入る。
「さすがのコック長でも、肉が少なくなると横領を止めるだろ」
「それは、コック長の立場が明確に上の場合にしかできないんだよ」
まだまだサムエラも甘いなぁ。
「いいか、今回の一件。ドワーフたちはおとがめなしだ。コック長が、横領していることを知らなかったというのが理由だが、そんなことあると思うか」
「それは……」
人間関係に亀裂が入るのが嫌なので、口をつぐんだが、その沈黙が答えだった。
「今回の横領、ドワーフたちにはばれても問題ない。だがな、コック長はばれたらヤバイ」
安く手に入るからドワーフはコック長から買ったが、もともと金を持っているんだ。
咎められる可能性があれば、普通に商人から買っただろう。
「そんな状況で、コック長はドワーフが騒ぎださないように、常にえさを与えないといけないんだよ」
「それが、肉が底をついた理由なのか。まさか、高々皿洗いの記憶が、ここまで大きな成果を叩きだすとは……脱帽ものだ」
散々、皿洗いの記憶を意味がないものとして扱ってきた、サムエラだが、本当に金貨10枚、あるいはそれ以上の価値を叩きだしたのを見て、ついに敗北を悟った。
「まぁ、さすがにコック長の地位を貰えるところまでは考えていなかったな」
これまでさんざん、自分の有能さをアピールしたのがここで効いた。まったく、自分の有能さが恐ろしくなってくるな。
「すまないが、ついてきてくれないか」
そして、ここに賭けの結果は出た。
お互いに、全財産をかけたのだ。
俺は勝利し、彼女は敗北した。
一体いくらになるだろう。
「あれ、どこにいくんだ?」
ってきり、テントで金を払うものだと思ったのだが、そんな事はなく、彼女は俺の手を引いて、森の奥へ奥へと進んでいく。
ああ、そうか。
さすがに全財産は払えないよな。
この隊商。払われる金額というのは本当に最低限だ。
俺のポッコリ風船が、皮だけになったほどに、いくらでもエネルギーは必要だ。
さすがに、最低限の金は残してほしいのだろう。
つまり、目立たないところで、金額の交渉をするのだろう。
そんな見っともない姿を誰かに見せたくないからこそ、こうして、隊商から離れている。
「こちらとしても、全財産を搾り取るのは忍びないし、条件次第では減額や分割払いなら認めてもいいぞ」
「そうか、なら、条件にそうかどうかはわからないが……」
俺の背後で、ガシャンと何か重いものが落ちた音がした。
振り向くと、そこにはうす着姿のサムエラがいた。
「そ、その、どういうつもりだよ」
「簡単な話だ。
私たちはお互いに全財産をかけた。だがな、お前が持っている金貨の量があまりにも多すぎて、私ではどうあっても返せない。
だから、金額のかわりと言っては何だが、私の体で支払うというのはどうだろう」
確かに、俺たちは全財産をかけた。
そして、軽い気持ちで両者が約束したもんだから、こうして後になって面倒な認識の差が生まれたわけだ。
彼女の認識では、お互いの持っている金額全て。
つまり、今俺の方が圧倒的に金を持っているから、その差額を何かで埋め合わさなければならないと考えている。
一方で、俺の方は約束した時に持っていた金を払ってくれればそれでいいと考えていた。
いや、まぁ、もともと曖昧な約束だったので、条件の追加ができたらやるつもりだったが……。
それでも、ここまで素直に自分にとっていばらの道を歩むとは、実直というか、馬鹿正直というべきか……。
あまりの思い切りの良さに、俺はどう答えればいいのか分からずに、フリーズしてしまったが、これは致し方がないことだろう。
「その、いいのか……」
白く光り輝くような裸体を見て、俺はごくりと息をのんだ。
確かに、金が手に入らないというのはかなり痛いが、もともと、冗談半分。本当に手に入るのかどうかもわからない金額だ。
今からでも、彼女が誠心誠意頼み込んで来れば、賭けそのものを無しにしてもいい。
日本で暮らした倫理観が、ここまでされてしまったせいで息を吹き返し、もう許してやってもいいのではとストップをかけた。
「ふふっ♪」
あたふたする俺が面白かったのだろう。慈愛に満ちた微笑みを浮かべると、彼女は後ろで一本にくくっていた髪をほどいた。
流水のように、その美しい髪はさらりと流れる。
手を後ろに回した拍子に、胸が張り、普段は隠れている豊満な肉の塊が存在を主張した。
顔を赤らめ、恥ずかしそうなのに、男を誘うような蠱惑的なかんばせを見て、いつも楽しくおしゃべりしているこの女が、今さらながら美しいと思い知らされた。
「ツルヒコは、いい人だもん」
許可を得るとともに、俺はふらふらと、無意識のうちに前に進んだ。
「さ、行きましょうか」
反対に、彼女は後ろに下がった。
身に着けている衣服を1枚1枚脱ぎチラシ、水面に足を付けるころにはすっかりと全裸になっていた。
水面を踏みしめたことで飛び散った、水しぶきがその美しい肢体を揺らし、頬からうなじ、豊かな乳房、わき腹と、スタイルのいい肉体を際立たせた。
俺もまた、一機に服を脱ぎ棄て、彼女を追おうとして、やっぱりまずいだろうと、2人分の服を折りたたみ、岩の上に置いた。
その上で、誰かに見られやしないかと周囲をそっと伺った。
今、俺たちがいるのは昨日水浴びに使った小さな湖だった。
ごつごつとした大きな岩が周囲に点在しており、よほど運が悪くなければ俺たちの行為が周囲にばれることはないだろうと確信した。
コック長になってから、だいぶ時間がたつ、どうして今と思ったが、ここが原因だろう。
長い行軍で体が汚れるのは避けたいだろうしね。
俺はようやく、おとなしい商人という仮の姿を脱ぎ捨て、種付けおじさんという称号のままに動き出した。
「んちゅ……、ちゅ、むちゅ……ッ♡」
俺たちは舌を絡めあい、歯をなめ、両者ともにお互いの領分を汚していく。
【キスを確認。
条件を満たしたので『体液妙薬化』を獲得しました】
「ツルヒコのキス、あまぁい」
スキルの声という名の、神の啓示が下りるとともに、俺の体液をサムエラがおいしそうにのみほした。
いつもは、自分を律し、強い意志の光が宿る瞳がとろんと溶けだした。
これからの期待だけではなく、彼女の内の上気がさらに上がっていく。
もしかしたら、新しく獲得したスキルが、彼女に対して影響しているのかもしれない。
俺の鼻が、彼女から立ち昇るフェロモンが見えてくる。