※この作品はR-18です。

種付けおじさん戦記~勇者召還で外れスキルと言われ追放された元工場長の俺! これまで培った経済スキルで無双します!   作:鯉@

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グレイウルフ

 泉の裏で、チョメチョメしてから、数日後。

 このころには、今までひたすら上っていた山を下りる段階にまで来ていた。

 この調子だと、あと数日間で次の街にたどり着くだろう。

 

 

「うちゅ……、ジュル、……ジュルるるるぅっ♡」

 

 その旅の合間で、俺とサムエラはちょくちょく物陰に隠れて、熱い口づけを交わす。

 お互いに激しい手つきで、互いの陰部を刺激することはあれど、そこから先の行為をすることはない。

 グツグツト、俺の中の性欲が煮詰まっていくのを感じている。

 

 

 別れるたびに「あと4日後にね」

 「あと3日後ね」

 と、予定の時刻をカウントしていく。

 

 きっと、その時が来れば。

 正直、今すぐにでもチョメチョメしたいと思っているが、今は行軍の最中だ。

 種付けおじさんとはいっても、さすがに俺も彼女も身が持たない。

 

 

 しかし、現在これはチャンスではないだろうかという事態が起きていた。

 もっとも、それよりも大きな問題が発生してしまっているのだが。

 

 

 ――ザー、ザー、ザー、ザー

 

 外には槍のように雨が降り注いでいた。

 山の天気は変わりやすい。この常識はどこであろうと変わりがないらしい。

 

 地面には湖が出来上がり、水のカーテンが視界を狭め、小鳥のさえずりは雨音によってかき消された。

 

 隊商の皆はテントを張り、耐え忍ぶ、

 そんな中、俺は幹部ということもあってか、山小屋の中でじっと、外の様子を眺めることができていた。

 

 

 ――コトン

 

「粗茶ですが」

 

 物思いにふけっているのを、寒そうだとでも誤解されたのだろう。

 座っている机の前に、温かなお茶が置かれた。

 

 

「ありがとうございます。それにしても大変だな、ナフリーさん。女性が一人、こんな山小屋の中で暮らすなんて」

 

 

 今、こうしてお茶を用意してくれた女性。

 その人が美しかったこともあって、下心半分、本当に心配しているという真心半分で尋ねた。

 

 

「そんな事はありませんよ。

 時々、あなた方みたいな商人がここに訪れていますし、ここの管理は交代制。

 そして何より、夫がいますもの」

 

 艶やかで、しっかりと結われた髪を見るかぎり、彼女はそこまで苦労していないというのは強がりでも何でもないというのは事実なのだろう。

 それにしても、

 

 

「その……、旦那さんはどこだ?

 確か、ナフリーさんはこれから俺たちと下山の予定だったはず」

 

「この雨の中で戻らない。よろしければ、人手を貸しましょうか」

 

 明らかな異変に、隊長は手助けは必要だろうかと確認した。

 

 

「いえ、大丈夫ですよ」

 

 と、ナフリーさんはあっさりと断った。

 返答に隊長は露骨にほっとしていた。

 

 ほとんど思い付きで、救助の手を差し伸べたのはいいが、ここの地形に対して明るくないという事実を今になった思いだしたのだろう。

 助け合いというのは尊いが、心が温まるのはこちらに被害が来ない間だけである。

 

 

「いやぁ、本当に残念です。でも、いったいどうしてあなたの夫はここにいないので」

 

 隊長は全く残念そうにせずに言った。

 

 

「それは、その……」

 

「WAooooooN」

 

 言いにくそうに、ナフリーさんが口をもごもご、開いては閉じ開いては閉じトと反復していると、森から狼の遠吠えが響く。

 

 その遠吠えが聞こえたとたん、この女性はまるで雷の音を聞いた子供のように、縮こまってしまう。

 

 そのただならぬ様子に、一体何が起きたのかと皆の視線が集中した。

 ここまでの動揺を見せてしまえば、もはや隠し通すことはできぬと、彼女は意を決し、昔話を語りだした。

 

 

 どうにも、このグレイウルフはもともと、彼女が傷ついた個体を看病していたという。

 しかし、相手は知能が高く、テイムされることすらある個体だが、所詮獣は獣。

 おさない彼女に、最後まで面倒を見切ることはできなかったらしい。

 

 自然に返した後も、ちょくちょく彼女の様子を見に来ていたらしい。

 

 そして、事件は起きた。

 彼女の旦那が外に出たっきり帰って来ない。

 そして、3日後。

 夫が来ていた服をグレイウルフが持ってきたらしい。

 

 

「しょせん、これは私の失敗。ただ、自然と人間の距離感を勘違いした哀れな女がいただけですよ」

 

 後悔してもしきれない大事件だというのに、意外にも彼女は割り切っているらしい。

 天才を自分の責任だと言い張り、明け透けに自分の失敗を披露し、同じ轍を踏まないように忠告している。

 しかし、心の奥底にくすぶっている復讐という名の炎が、心から体に燃え移り、、その身体が小刻みに震えているのを俺は気が付いた。

 

気丈に言い切ったハイいものの、その腕はどうしようもなく、小刻みに震えていた。

 

 

 彼女の失態で、人が一人死んで、俺たちにも被害が出た。

 それでも、ナフリーさんの可哀そうな境遇に皆が同情し、胸を痛める。

 だが、誰もそれ以上踏み込むことはなかった。

 

 同情できる話だが、俺たちは戦士ではなく、ただの商人だ。

 何かできることはあるかと言われても、何もできることはない。

 もし、できることがあるとしても、この哀れな布陣が復讐の炎に囚われないように、安全に彼女の故郷に送り届けることだけだった。

 

 

「お茶美味しかったですよ」

 

「ええ、自慢のお茶だもの。

 もし、ふもとの町を訪ねることがあったら、購入してみてね」

 

 と、商魂たくましく自分の村の特産品を彼女はお勧めしてくる。

 その様子を見て、奇麗にとりつくろっているそのうわべの内側に炎がくすぶっているのではという不安が払しょくされた。

 彼女は未来を見ている。

 この様子だと、やけを起こすことはなさそうだ。

 

興味は引かれるものの、残念ながら買うことはないだろう。

 俺は、あいまいに返事を返すことになった。

 

 

 

 そして、雨が止んだ。

 

 

「なんだこれ、土が重い」

 

「雨のせいだ」

 

 

 空をを見上げれば、虹が目を楽しませ、長旅の疲れのせいで鈍った心に潤滑油をさして行く。

 

 足元では、土が俺たちの脚にへばりつき、通せんぼしていた。

 

 正直、地面が固まるまで待ちたいというのが本音なのだが、このまま足を止めても、悪戯に食糧を消費するだけだ。

 

 あれやこれやのメリット、デメリットを計算したうえで、隊長は出発を選んだ。

 

 その行軍に、案内役としてナフリーさんも参加する。

 

 

 燻製として保管されていた肉類を見たとき、正直俺は危なかったと思った。

 もし、俺が肉を差し出す前にここにたどり着いていれば、今のように暴利をむさぼることはできなかっただろう。

 

 でも、俺の備えのおかげで、肉類は十分ある。

 他にも、山菜や薬草類をどっさりと抱え込んで、俺たちはふもとの町まで移動することになった。

 

 

 

「どうですか、今のペースで」

 

「恐らくですが、村にたどり着くまでは半日ほど余計に時間がかかりますよ」

 

 補給担当として、行軍の速度、それによって、どれだけ食料を放出するかを考えなければならない。

 

 彼女の話を聞いて、さらにそろばんを動かしていく。

 

 

 まぁ、肉類は補充できるので、食糧不足は考えなくてもいいだろう。

 

 安心しても、気が抜けないのが今だった。

 初めての道。最悪のコンディション。

 食料の準備のため、斥候としての役割を持つからこそ、俺たちはいつもにもまして、気を引き締めていた。

 

 

 とはいえ、精神と体は別物だ。

 泥という足枷のせいで、歩みは遅くなり

隊列が長くなっている。

 補給担当の俺たちでこれなので。

 本体については考えたくもない。

 

 

 

「WAooooooN!」

 

 その時だ。

 狼の遠吠えが聞こえて来た。

 

 

「待て、待ってくれ!」

 

 それからの彼女は早かった。

 手に、ボウガンを構えたかと思えば、身体を反転。

 

 遠吠えが聞こえた方へと、勢いよく走り去った。

 

 女性の脚だというのに、この山で過ごしてきただけのことはあり、その足取りはカモシカのように速い。

 

 俺はあわてて、彼女を追おうとしたのだが、

 

 

「あんたはリーダーだろ。

 こういったことは部下に任せて、あんたは持ち場を離れるな」

 

 同僚に、そういって止められた。

 

 

 そういわれてしまうと、俺には持ち場を離れる理由がない。

 

 しぶしぶそのまま進もうとしたところで、険しい崖の上から、風もないというのにころころと岩が落ちてくる。

 落石、激しい雨が降っているのを思えば、土砂崩れの可能性もあることを俺は知っていた。

 

 

「下がれ、今すぐ後ろに下がれ!」

 

 俺は指示を出す。

 もはや命あっての物種だ。

 コック長。その特権を用いて、荷物を捨て逃げろと、部下に対して命令した。

 

 

 

「おい、みんな無事か……」

 

 俺は点呼をかける。

 幸いなことに、補給部隊の仲間たちは判断が速かったおかげか、皆がぴんぴんしてる。

 

 

 欠けていたのはたった一人だった。

 皆への気まずさから、後ろを歩いていた元コック長。

 

 そしていまだに、狼の遠吠えが鳴り響いていた。

 

 

「速く助けに行かないと」

 

 俺は必死に呼びかけた。

 

 

「あんな奴を助けに行く必要などない。

 それよりも、土砂でうずもれた物資を掘り起こすほうが先だ」

 

「それはいったいどうして」

 

「あやつは、一応はこの隊商に参加しているとはいっても、物資を勝手に盗んだ盗賊だ。

 仲間でもない。

 あの女にしても、勝手に隊列を離れたのだろう。どうして、我々が大事な物資を掘り返す時間を使ってまでも、そんな事をしなければならない」

 

 部下は好き勝手している奴らを本気で忌々しいと思ってるのだろう。

 冷徹に言い放った。

 

 

「簡単だ。

 信用の問題だよ。

 たとえ、犯罪を犯してでも、俺たちはあいつをこの部隊の中にいることを許した。

 なら、あいつはまだここの仲間だ。

 だというのであれば、この隊商の役員の一人として、見殺しにすることはできない」

 

 反発もある。

 しかし、俺はここのリーダーだ。

 折れるわけにはいかない。

 

 

「それに、狼がいる中、できるだけ早く本体と合流したい」

 

 そういえば、渋っていた面子も、その重い腰を上げるのだった。

 

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