種付けおじさん戦記~勇者召還で外れスキルと言われ追放された元工場長の俺! これまで培った経済スキルで無双します! 作:鯉@
一にいわく道、二にいわく天、三にいわく地、四にいわく将、五にいわく法。
つまり、一は国民感情。二は気象状況。三は地理。四は将軍の質。五は法律。
主いずれか道あるか。将いずれか能あるか。天地をいずれか得ているか。法令いずれか行わるか。 兵衆いずれが強き。土卒いずれか練れる。賞罰いずれか明らかなるか。
そこから発展して、国王、将軍。自然状況、法令、兵士、士官、賞罰。
これらの比較でどちらが勝つのかを予想するのかが『五事七計』である。
とりあえず、これらを30分。いや、20分以内に説明して貰わなければ。
「分かりました、しかしながら、それについて説明することに関しては、いささか時間がかかります。
なので、その前に皆さまの称号……、いかなる特殊能力を授かったかの検査をしたいのですが……」
「おや、それより「マジ、あたしも魔法とか使える分け!」
「すっげぇ、楽しそうじゃん!
早く調べてくれよ」
心愛ちゃんと慎吾君。
このメンバーの中で活発な二人が、特殊能力と聞いて飛びついた。
他の面々も、もう、この世界を助けると決めているようで、俺の返答など確認せずに、検査に足を向けていた。
俺が要求した情報。
国の体制、軍の内部情報、気候など。
それらを手短に話せと言われても、そのプレゼンにはどんなに事前準備をしっかりやろうとも2から3時間は欲しい。
他の面々も、むずかしい話などしたくないからか、多数決の法則で俺の意見は却下された。
理不尽だ。
「わたくしたちの世界には、それぞれの人間が生まれた瞬間から、スキルと呼ばれる力を持っています。
スキル持ちが、念じればこのように」
王女様が手を掲げれば、その手の中には水のたまが生まれていた。
気のせいか、空気が乾燥したように思える。
さすがに無から有を想像できるとは思えないので、空気中の水分を操作したのだろう。
「すげえ、マジでゲームじゃんこれ」
と、心愛ちゃん。
「私も、私にもそれができるんですか」
物静かな聖ちゃんも浮かれている。
「まさか、こんな非科学的なことが起こりえるというのか!」
なまじ理屈屋の賢君は初めて見る魔法に愕然としていた。
「お、俺でもそれつかえるんだよな」
それとは対照的に、良くも悪くも物事を深刻に考えない慎吾君は素直に目の前の不思議現象に感動していた。
「皆、これから授かるこの力を使って、この国の、いや、この世界の人々を救っていこう」
最後に勇君がいい感じ風に、話をまとめた。
いい話だなぁ……。
俺が当事者じゃなければ。
「もちろんあなた方にもスキルは使えますわ。ただし、この世界の人間とはスキルを獲得する手順が異なりますの」
王女様の説明によると、この世界の人間は生まれながらにスキルを持っている。
そのスキルを研磨し、研ぎ澄ませることで、全く別物のように見えることはあれど、それは習熟度の差でしかない。
王女様も、水のスキルは使うことができるものの、どんなに頑張っても火のスキルを使うことはできない。
一方で、俺たち異世界人はこの世界を訪れると同時に称号を授けられるらしい。
そして、その称号に関連するスキルを『努力』することで入手できる。
この世界の人間も超能力なような力を使えるのに、どうしてわざわざ俺たちを呼んだのか不思議に思ったが、そういう事かと思った。
要するに、生まれ持った才能が全てのスキルの世界。
無駄になるものや使いにくいものも多くなるだろうが、称号ならばそれがない。
最適された才能を好き勝手とれるというのであれば、そりゃあ一般兵よりも強くなることは納得できる。
「なら、異世界人の血を引いた人間はどうなるのさ」
と、賢。
すると返答は意外なものだった。
その血を引いたものの中にも称号を手にする人物が多く出るというのだ。
実際、王様も、王女様も称号を持っており、努力によって、スキルを手に入れることができるという。
さっきの説明のときは使えないって言ってたけど、そこは分かりやすさを優先したらしい。
これって、勇者を召還したっていうのは単なる建前で、本命は種馬が欲しかっただけなんじゃないのか。
不埒な想像が頭によぎり、思わず鼻息が荒くなる。
下種な想像をしてしまったが、頬をバチバチと叩き、さすがにそんな都合がいいことはないと気を引き締める。
どうやら俺は、年甲斐もなく、どんな特殊能力を使えるんだろうかという期待から浮かれていたらしい。
「皆さん、この宝玉に手を。
そうすれば、いかなる称号が手に入ったのかわかりますわ」
王女様に先導される形で、俺は玉座のある大広間から移動していく。
あそこに機材を設置しておけばいいのではとも思ったが、あそこは本来は王への謁見の場なのだろう。
そんな場所に、使う予定のない機材を置いていくわけにはいかないんだろうな。
そして、さっきとは打って変わって、狭く質素な部屋に俺たちは押し込まれた。
後で聞いた話だが、王女様が指示した宝玉は通常のスキルを鑑定する際にもつかえるらしい。
「よし、じゃあ、俺から行かせてもらうぞ!」
「ええ、ずるい!」
慎吾君と心愛ちゃんが、あれが最初に調べるかをもめるが、もう動き出している彼を止める手段を彼女は持ちえなかった。
「聖剣……これが俺の称号、当りっぽいじゃん」
「ええ、大当たりですわ。
数ある称号の中でも、攻撃的なスキルの獲得に関しては随一。
最上位の称号の一つですわ」
「おおやったぁ」
「やったな、慎吾」
「ホント、すごいよ!」
「というかさ、どうして見たこともない文字が読めるようになってるんだ?
賢君の分析に確かにと思ってしまった。
まぁ、正直な話、異世界からわざわざ魔力を用いて、召喚したのだ。
言葉が通じなければ教育に時間がかかりすぎ、戦うどころではない。きっと、スキルなりなんなりでどうにかしたのだろう。
「あたし、あたしはどうなのよ」
次は心愛ちゃんが透明な球に手をかざした。
慎吾のとき、球は鉄色に輝いたのに、今度は深紅に輝いた。球の反応は一人一人違うらしい。
「こちらも素晴らしい。あなたの称号はカンフーマスターですわ。
肉体で戦う称号の中で、観測されている限り最上位の職ですわ」
「よっし」
こっちもこっちで、どうにも、慎吾からは一枚落ちるようだが、あたりを引いたらしい。
「次は私が行きますね」
今度は聖さんが称号の鑑定に挑んだ。
球はライトグリーンに染まった。
どうやら、球の色は一人一人違うらしい。
「こちらも素晴らしいですわ。あなたの職業は大聖女。
いかなる負傷であろうと、呪いであろうとも治癒できるといわれてます」
「なんというか、実感はないですが、すごいんですね」
「やったじゃないか、聖。すごい称号だ」
実際に、部屋の外にいる見物人たちの反応が恐ろしくにぎやかだ。それだけで、いかに優れた称号であるのか判断できる。
「次は僕の番さ」
今度は賢君が前に出た。
球はシックな黒に染まる。
「あなたの職業は賢者ですわ。ありたあらゆる属性を操ることができる最上位の遠距離職ですわ」
今度も、外にいる面々の反応が大きい。
もう慣れて来たのか、部屋の中にいる面々の反応は小さかった。
「最後は俺だな」
勇君が球に手をかざすと、黄金色に染まった。
雷のきらめきにも、太陽の輝きにも見える不思議な光だ。
後、俺が残ってるからね。
「嘘でしょ、まさか、こんなことが……」
あれ? どうしたことだろうか、王女様の反応がこれまでと違う。
今まで騒がしかったのに、場は静寂に満ちていた。
やがて、騒がしさが爆発した。
「ゆ、勇者だって!」
「夢じゃないよな、今の言葉は」
「これで、人類は救われた」
「バンザーイ、バンザーイ!」
これまではどれだけ優れた称号を耳にしても、節度を保っていた国家の重鎮の皆さまがクールさをかなぐり捨てていた。
そんなに勇者ってすごいの、いや、すごいんだろうな、勇者だし。
「その……、勇者っていうのはどれだけ凄いんだ?」
「そうですね、勇者というのはもっとも強力な称号で、過去、魔王を打倒した内で、記憶にある限り8度の侵攻の際、3度勇者が召喚され、そのすべてで魔王を撃破した功績があるほどです」
と聞いても、事情を知らない俺たちはそうなんだ、すごいんだな程度にしか思えない。逆に事情を知っている皆はお祭り騒ぎだ。
もう皆が、これで我が国は救われた、めでたし、めでたしと、セレモニーを開こうという展開になっていた。
「あの……、すいません。俺の称号なんですが」
咳払い一つ。
王女様は「あっ!」 と驚きの声を漏らした。
おい! 今俺の存在そのものを忘却していたな。
「では、前に」
そういって、球に手をかざすと、やはり色が違う。
白濁とした、濃い白。
それが俺の色である。
称号は――、
「種付けおじさんですわ」
えっと、何それ?
こうして、舞台は冒頭に戻る。