※この作品はR-18です。

種付けおじさん戦記~勇者召還で外れスキルと言われ追放された元工場長の俺! これまで培った経済スキルで無双します!   作:鯉@

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スキル・金剛槍

「かまいませんよ」

 

 慌てて離れようとした俺を、白く柔らかな手が引き寄せた。

 

 

「そ、それはどういう……」

 

 もしかして、もしかするのか。

 俺の太く、醜い手が急激に汗ばんでいく。

 

 

「国王様から、ツルヒコ様の要望にはできる限り応えるようにと、命令されています。

 それがいかなるねがいであったとしても、ね……」

 

 

 アサさんは嫌がるどころか、嬉々として引き寄せる。

 言葉の意味が分からないほどに、俺はもう子供ではなかった。

 

 

「さぁ、目を閉じてください、恥ずかしいですから」

 

 俺は彼女の言われるがままに目を閉じ、言われるまでもなく、一枚一枚服を脱いでいく。

 心臓が早鐘を打ち、周囲の音をかき消した。

 どんな声も、音も、もう俺の耳には届かないだろう。

 なにせ、目の前にいるこの美しい女性以上に価値あるものなど存在しないのだから。

 

 

 でも、見てはいけないと言われるほど、見て見たいという欲が高まっていく。

 ついに、俺はエロ猿のような好奇心を押さえることができなかった。

 

 アサさんの美しい裸体を鑑賞すべく、薄目を開ける。

 すると、アサさんも肌を大きく露出していた。

 大胆にスカートをめくりあげ、健康的な太腿を外気にさらし、川ベルトに固定されていたナイフを引き抜いた。

 

 

「うわあああぁぁぁっ!」

 

 天国だと思ったら、実は地獄だった。

 突発的な事態に、俺は絶叫をあげ逃げようと背筋を逸らしたのだが、もう遅い。

 

 ふざけんな、ふざけんな、ふざけんな、と世界を呪う。

 その呪いのせいか、世界がゆっくりとしか動けなくなった。

 まさか、これが俺の称号、種作おじさんの力。

 確かにAV出は時間操作物は鉄板だが……。

 

 

「って! これただの走馬灯じゃねぇかぁ」

 

 新鮮な体験だが、こんな経験したくなかった。

 

 称号が不発になった。どうにかなれ!

 と願うも、どうにもならない。

 いつだって、現実は非常である。

 

 

【条件達成――異性の前で裸となる。スキル・金剛槍を取得します】

 

 ――キィイインッ!

 

 すくなくとも、今まではそうだったが、実は、日本限定だったらしい。

 

 

 柔い体にナイフが刺さる、非確かに肉をついたのに、響いたのは金属音だった。

 

 

「へぇ、もうスキルを獲得していたのですか。

 これだから異世界人は面倒です」

 

 アサは心底から忌々しいと吐き捨てた。

 

 俺はそっと、腹部を触る。

 相も変わらず、針でつつけば風船のように破裂しそうなほどに立派なふくらみだ。

 一方でナイフをはじいた箇所。つまり俺の息子はといえば、ガッチガチだ。

 

 この金剛槍というスキルは硬化能力なのだ。

 

「腕よ」

 

 差ぁ、鋼鉄のように固くなれ!

 そうすれば、ナイフ如き恐れなくて済む。

 だが、何も起きない。

 

 おでこ、鼻、指。

 

 それからも、○○よ固くなれと命じるものの、柔らかいまま。

 ならあそこはというと、ギンギンだった。

 

 つまり、こういうことだ。

 金剛槍とは、あそこ限定のこうか能力なのである。

 やっぱり、現実ってクソだ。

 

 

「てめぇ、男なめんじゃねぇ!」

 

 俺は吠えた。

 全身が震える、怒りではなく恐怖で。

 若いころは3年ほどやんちゃな時代があった。

 しかし、それから30年。暴力とは無縁の生活を送ってきたのだ。

 穏やかな日常が、弱きとなり筋肉をすくませる。

 3年の経験が、弱みを見せたら食われると肝を据えさせた。

 

 どうして俺を狙った。

 誰の差し金だ。

 どこかに仲間がいるのか。

 

 聞きたいことが山ほどあったが、興奮で頭に血が上った俺に聞くという発想はなかった。

 もし、聞いても答えてはくれなかっただろう。

 

 思考が話し合いではなく、暴力で固定される。

 男女の筋力差を見せつける。

 脳髄が、暴力こそが原初の衝動なのだと思いださせた。

 喧嘩は話し合いで解決しなさいと、子供に何度も何度も注意したのにだ。

 

 

「ッーー!」

 

 幸いなことに、金属に、全体重を乗せぶつかったせいだろう。

 ナイフを握る手がどことなく緩い。

 

 そんな女へ、俺は自分でもここまで速く動けたのかと驚くほどの俊敏さを発揮した。

 

 全身を使ってのタックル。

 ふはっはっはっはっ、100キロを超える俺の身体はどうだぁ。

 

 

「クソ、重いし、汗臭いんですよ!」

 

 着地と同時に、部屋全体がドシンと沈み込み、ほこりが舞い上がる。

 キィキィと何かがきしむ音がするものの、床が抜けることはなく、潰されたのは女の肉体だけだった。

 

 男の急所ということで、かろうじて自由になっている足でガシガシと、アサは俺の股間を狙ってくる。

 

 ふはっはっはっはっ、そんなもん、ギンギンになっている俺の身体に効くかぁ!

 

 胸部を強く圧迫されたせいだろう。

 アサは呼吸もままならず、見る見る間に顔面が青白く変色していく。

 

 どうにか抜け出そうとじたばたもがくが、俺の巨体は動かざること山のごとくだ。

 

 

「うぐぅっ!」

 

 でも、痛い。

 股間はダメージ無効だけど、脂肪の鎧を着込んでいても、あばらとかは骨がもろいので、やめてほしいです。

 

 内臓をえぐるように打撃に、俺はたまらずうめき声をあげ、攻撃から逃れようと身をよじった。

 そうしてできたわずかな隙間から、彼女は身をよじって脱出してしまう。

 

 

 たったこれだけのやり取りだけで、相手との技術差が浮き彫りになった。

 

 俺がでっぷりと太った豚であるならば、彼女は身体を研ぎ澄ました大型のネコ科……、可愛らしさの関係からサーバル・キャットだろうか。

 

 

「お前に教えてやるよ。豚は元猪であり、ときに、人も猫も食い殺すってことをな」

 

「何を訳の分からないことを」

 

 だよね、言ってて自分でもそう思ったし。

 

 

 

「一つ確認したい。どうして、俺を狙う。

 異世界からきて、たったの数日だ。

 俺たちの間には因縁も何もないはずだろ」

 

 すべった時。話題そのものをなかったことにするに限る。

 

 

 これが地球でのできごとならば。100歩譲って……、いや、それでもやっぱり納得できないが、もともとそれなりの業を経験してきた身である。

 人に恨まれる憶えは十分あった。

 しかし、来たばかりのこちらで暗殺されるいわれなどないはずだ。

 

 

「簡単なことですよ、神聖なる勇者の召還。

 そんな中に、種付けおじさんなどという品位のかけらもない称号が混じっている。

 その事実を抹消するためです」

 

 種付けおじさんはそこまで品位がないものかなぁ、うん、やっぱり品位のかけらもないな。

 だからと言って、殺されてやるわけにはいかない。

 

 

「つまり、お前らは、俺の存在が不都合だって理由だけで、殺すってことか……」

 

 それなら、道中で俺を殺しておけと思うが、他の勇者に暗殺がばれたとき問題になると考えたのだろう。

 

 恐らくだが、ここで死んでも痴情のもつれの果てというカバーストーリが用意されているのだろう。

 

 裸の男に、薄着の女。

 片方が若く、片方が中年。

 改めて、犯罪臭が凄い。

 

 この状況で、俺が殺されても、きっと娘でも納得するだろうな。

 俺が一切悪くないのに。

 

 

「先ほどは不覚を取りました。しかし、あれは私の油断が生み出した一回限りの奇跡。

 もう、次はありませんよ」

 

 壁に突き刺さった、ナイフを抜くと、アサは油断なくこちらを見据えていた。

 その姿は流石訓練された暗殺者というところか。

 

 一本の刀剣のようだ。

 でっぷりと太り、すきをさらしまくっている俺とは大違い。

 

 

 いつ、敵の援軍が来るかわからない現状。

 状況は、絶望的だ。

 だが、まだ希望はある。

 それは蛮勇でも空元気でもない。

 

【条件達成――女性の肌に触る。スキル・バイブレーションを習得します。

 ――女性の匂いを嗅ぐ・スキルフェロモンサーチを習得します】

 

 冷徹な計算によるものだ。

 

 先の攻防で、俺は新しく、2つのスキルを獲得した。

 使えるものならば助かるかもしれないが。

 使えないものならば棺桶の中だ。

 つまり、だし得ってことである。

 

 不安が残るものの、未知の手札を手に入れたことに変わりはない。

 

 

「さぁ、これで終わりです」

 

【ハイド・シーク】

 

 スキル名を口にして後、アサは影の中に飛び込んだ。

 

 どうする、逃げるか。

 成り行きで、撃退したが、俺には彼女と戦う理由がない。

 向こうから距離を取ってくれるなら、かえってありがたい。

 金貨全ては無理でも、ひとつかみかふたつかみくらいなら。

 

 

「まさか、こんなことが!」

 

 その算段が、彼女の姿が蜃気楼のように搔き消えたせいでご破算になった。

 

 

「どこだ、どこに消えた」

 

 目の前から、突如人が消える。

 科学が進みに進み、おおよそ、一昔前ならば魔法としか言いようがなかったことがほぼすべて実現できるようになった今でも、できるはずがないと言われる神業だ。

 

 

 そんな相手が、今も部屋の中にいて俺のことを狙っている。

 考えただけで、恐ろしくて仕方ない。

 

 

 あぁ、逃げ出したい 。

 だが、どこにいるかもわからない相手から、どう逃げろと言うのだ。

 知らず知らずのうちに、彼女がいる場所に進んでしまえば、それで終わりである。

 

 

 だとしたら、頼りになるのは俺が持つ2つの新スキル。

 

「バイブレーション」

 

 唱えたら、なんか腕がものすごいプルプルした。

 振動することで、剣が切れやすくなるってあるけど、正直、何このスキル、どこで使うの。

 うわぁ、ゴミ引き当てたぁ!

 

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