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「リンゴちゃん、どうしたの? そんな難しい顔をして」
部室の奥から、のんびりとした間延びした声が聞こえた。
振り返ると、『
ショートボブの鮮やかな黄色い髪を揺らしながら、片手には自身の身長ほどもある巨大な鉄製ハンマーを軽々と担いでいる。
蜜柑ちゃんの職業は『
さっきまで奥の鍛冶場で熱い鉄でも叩いていたのだろう、厚手のエプロンには黒い煤がいくつも付着していた。
「……今日、珍しい一年生がうちの店に来てね」
「おおー!お客さん来てくれたんだ。でも、この時期にわざわざ素材を売りに来るなんて、結構優秀な子なのかな?」
蜜柑は興味津々といった様子でカウンターへ近づき、テーブルの上に無造作に置かれたモンスター素材へと視線を落とした。
その瞬間――。
「……え?」
ピタリ、と空気が凍りついた。
さっきまでのゆるい雰囲気が一瞬で吹き飛び、蜜柑ちゃんの表情がプロの職人のそれへと変貌する。
彼女は無言のまま、その素材を一つ手に取った。
黒く変色した不気味な牙。禍々しい一本角。そして、鈍い光沢を放つ漆黒の毛皮。
「……これ、第四階層産?」
「……多分、そうだと思う」
「“多分”って何……」
呆れたように返しつつも、蜜柑ちゃんの目は完全に職人のそれになっていた。
素材の表面をそっと撫でる指先が、驚きで微かに震えている。
「しかも、信じられないくらい状態がいい。……これ、下手な上級生よりも遥かにダンジョンに狩り慣れてる人の仕業よ」
「やっぱり、蜜柑ちゃんもそう思う?」
「思うも、何も……普通じゃないよ。うち、戦闘系倶楽部じゃないから戦闘のことは詳しくないけどさ、
「『既知外』階層の素材、ってコト」
二人の間に重い沈黙が流れる。
職人だからこそ理解できる。
そして今、目の前に置かれている素材は、明らかに異常だった。
しかも――。
「……彼、これを『ソロ』で狩ってきたって言ってたのよね?」
「一応はね」
「一応って何よ、その含みのある言い方。気になるじゃん」
凛子は、先ほどの少年――幹隆の顔を思い出す。
穏やかな口調。物腰柔らかい態度。敵意の全く見えない、どこか気弱そうな笑み。
だが逆に、それが底知れなくて不気味だった。
まるで、“自分が圧倒的に強いこと”を最初から当然のように理解している人間の余裕。
焦りがない。驕りもない。それなのに、すべてを見通しているかのように妙に落ち着いている。
まるで、これから先の未来の展開を知っているみたいに。
「……しかもね、『これからうちが有名になる』とか意味わかんないこと言ってたし」
「えー?なにそれ預言者?」
蜜柑がケラケラと笑う。だが、凛子は一緒になって笑えなかった。
あの少年の目。あれは、ただの一年生の目じゃない。
もっと別の――ずっと先の未来を見据えている、本物の怪物の目だった。
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『
(ここなら、誰もいなさそうだな……)
「――”異空間生成”」
ぼそりと呟くと、目の前の空間がぐにゃりと歪み、黒い光の渦が生まれた。
外でスキルを使用するたび、いちいち周囲を警戒するのが正直かなり手間に感じる。
何か自動で周囲を索敵できるスキルがあればいいんだが……。
ちなみに、サクラのスキルである『
こうして警戒しているのには理由がある。
俺が一度このゲートを潜って異空間に入ってしまうと、外の世界の出口がその場に固定されてしまうのだ。
異空間の内部からは外の様子を窺う術がないため、再び外に出る際は、誰かに待ち伏せされていないか細心の注意を払わなければならない。
周囲に誰もいないことを最終確認し、俺は黒い渦の中へと足を踏み入れた。
「ただいま」
「おかえりなんだよ、マスター!」
出迎えてくれたのはサクラだ。
最近、俺のレベルが上がった影響なのか、あるいはサクラの影響なのかは分からないが、この異空間の庭に心地よい疑似的な日差しが射し込むようになっていた。
サクラは購買部で特注したハンモックに気持ちよさそうに寝転がり、日向ぼっこを満喫している。
「お前、外のラウンジでも日向ぼっこしてただろ。場所が変わっても同じじゃないのか?」
「全然違うんだよ! 外のは天然のマグロで、この異空間の日差しは養殖のマグロくらい味が違うんだよ!」
力説された。あいにく小市民な前世を持つ俺は、マグロの違いなんて言われても「全部同じ味」と平気で答える自信がある。
「マリィはどこだ?」
「居間でゲームしてるんだよ~」
居間の扉を開けると、そこには凄まじく真剣な表情で液晶モニターを睨みつけているマリィの姿があった。
長く透き通った、陽光を溶かした絹糸のような金髪が、椅子の背もたれから床へと贅沢に流れ落ちている。ブ
レザーはすでに脱ぎ捨てており、上着は白いカッターシャツ一枚という無防備な姿だ。
画面を覗き込んでみると、どうやら彼女は現在、アリスソフトの名作『ドーナドーナ』をプレイ中らしい。
(おい、マリィ……。メンタルが崩壊してる女の子を躊躇なくウリに出すなよ……)
手持ちのキャラクターのステータス画面を見ると、見事に全員のメンタルが死んでいた。
どんなエグいプレイをしたらこうなるんだ。ひどすぎるだろ。
(まあ、よく考えたらこの学園のシステムも、ドナドナしてるようなものだし、現実とあんま変わらないか)
一人で納得していると、背後の気配でようやく俺の帰宅に気づいたのか、マリィがゆっくりとこちらを振り向いた。
「……幹隆。おかえり」
「おう、ただいま。熱心だな」
一言それだけ交わすと、彼女はまたすぐに画面へと向き直ってしまった。
ゲーム性の高いエロゲーをやっている時の彼女は本当に集中力が高い。
俺は歩み寄り、椅子に座るマリィの背後から顔を近づけた。
ふわりと、シャンプーの甘く瑞々しい香りが鼻腔をくすぐる。
そのまま我慢できず、彼女の美しい金髪に顔を埋めた。
さらりとした冷たい金糸が頬を撫で、俺の吐息に合わせてかすかに揺れる。
「……んっ」
小さく可愛い鼻声を漏らしながらも、マリィは拒絶しない。
ただ静かに、マウスを動かしてゲームを続けている。
その従順な態度に、俺の悪戯心に火がついた。
画面に夢中になっているマリィの胸へと、背後から両手を回して衣服越しに触れる。
……もみゅ……もみゅ……
――もみゅ、ともちもちした肉厚な感触が手に伝わった。
優しく胸を愛撫しながら、今度はマリィの白く透き通ったうなじへと、そっと舌先を這わせていく。
「……あんっ、……ん、幹隆、するの……?」
「する。けど、マリィはこのままゲームを続けててくれ」
「……ん、わかった……」
俺の意図を察したのか、マリィは顔を真っ赤にしながらも、再び健気に画面へと向き直った。
マリィの乳房は恐ろしいほどに柔らかい。指を沈めると、その指ごと吸い込まれるように極上の肉が包み込んでくる。
サクラの胸も素晴らしい柔らかさだが、やはり二人と毎日のように肌を重ねている俺からすると、明確な違いが分かった。
マリィが全肯定して包み込むような「底なしの柔らかさ」だとすれば、サクラの胸は弾力があり、押し返してくるような「健康的な反発力」を秘めている。
つまり、何が言いたいかというと――どっちのおっぱいも最高だということだ。
俺はマリィのシャツのボタンを、上から一つずつ丁寧に、焦らすように外していった。
白い指先がわずかに震えるたび、静かな緊張感が部屋を満たしていく。
シャツの前を左右にはだけると、その肌の白さを強調するような、大人っぽい「黒いブラジャー」が目に飛び込んできた。
繊細なレースの刺繍が豊かな胸元を彩り、妖艶な黒がマリィの淡い金髪を一層引き立てている。
まるで夜の闇にひっそりと咲く大輪の花みたいに、息を呑むほど綺麗だった。
「……マリィ、これ。すごくよく似合ってて可愛いよ」
耳元に唇を寄せ、熱い吐息と共に感想を囁く。
「……ん、ありがとう……。サクラと一緒に、購買部で選んだの。幹隆が、喜んでくれると思って……っ」
横顔を見ると、耳根まで真っ赤に染まっていた。
瞳はすでに潤んでおり、呼吸も荒い。ゲームを進める手がおぼつかなくなっている。
俺は背中に手を回し、ブラジャーのホックを外した。
――ブルンッ。
溢れ出すように、マリィの立派な二つの果実が解放される。
その乳房の頂点には、可愛らしい淡いピンク色の乳頭が、すでに刺激を求めてツンと硬くなっていた。
俺は容赦なくそこを指先でつまみ、丹念にコリコリと擦り上げていく。
……クニぃ、……クニぃ、……クニぃ、……
「やん、あん……っ、みきたかぁ……」
ついに耐えきれなくなったのか、マリィの喉から密やかな甘い悲鳴が漏れ始めた。
静まり返っていた居間に、熱を帯びた水音が溶けていく。
「……ぁ……んっ、もう、無理……っ」
ついにマリィはパソコンのマウスを床へ落とした。
肩を小さく震わせながら、潤んだ瞳でこちらを見上げてくる。
普段のどこか儚げな雰囲気とは一変した、情欲に狂わされた雌の表情。
俺はそんな彼女を壊れ物のように優しく抱き寄せ、椅子の上でこちらを向くように跨がらせた。
そのまま制服のスカートをずらす。ブラジャーとお揃いの、黒いレースの紐パンが露わになった。
今回のダンジョンダイブ中、セックスしていなかったため、すでに準備万端だった。
下着のクロッチ部分は、信じられないほどぐっしょりと濡れ透けている。
「挿れるぞ」
「うん……はやく、きて、幹隆……っ」
下着を横にずらすと、マリィの秘丘からは大量の愛液が溢れ出ていた。
ぐちょぐちょに濡れているオマンコに挿入していく。
「あ、はぁぁ……っ!んんっ、……ああああっ、……」
奥までいれると、マリィの膣肉がぎゅうぎゅうと俺のちんこを締め付けてきた。
何度もすでに挿れているまんこだが、挿れるたびに、具合がよくなっているのがわかる。
俺は彼女の腰をしっかりと固定し、腰を振って、マリィの弱点である子宮口をゴツゴツと突き穿っていった。
「……幹隆のおちんちん、……あんっ! 深い、深いところまで、刺さってるよぉ……っ。熱くて、硬くて……すごいいいの……っ」
「マリィ、もっと強く抱きしめてくれ」
「うん……っ、もっと、もっと一つになりたい……んちゅ、ぷはっ、ん、あぁぁーっ!」
口づけをしながら、お互いの腰に腕を回し、俺はそのままマリィの身体を椅子から抱き上げた。
いわゆる『駅弁スタイル』のまま、重力を使ってさらに深く、激しく突き上げる。
「すごい、これ、頭おかしくなっちゃう……あ、あんっ♡……子宮の奥、壊されちゃうよぉ……っ!」
マリィの肌が瞬く間に薔薇色に染まり、体温が跳ね上がっていく。
普段から魂の奥で繋がっている俺たちの性交は、脳が焼き切れるほどの快楽をもたらす。
お互いの魂の輪郭に直接触れ合い、境界線が溶けていくような一体感。
あまりの気持ちよさに、俺はすぐに限界を迎えていた。
「出すぞ、マリィ! うぐっ、い、イク……っ!」
「幹隆っ、わたしも、イグっ、いっちゃう、いっちゃうのぉぉ! ああんっ♡……あ、ああああんっ♡♡♡」
マリィの身体がビクンと激しく硬直した。
同時に、膣壁がこれ以上ないほどきゅーっと強烈に肉棒を締め上げる。
その絶頂の波に抗えず、俺の肉棒は彼女の子宮に向けて、熱い精液を大量にドクドクと解き放った。
溜め込んでいた精液が弾け飛び、視界が真っ白に染まる。
ハァハァと荒い呼吸を重ねながら、力の抜けたマリィの身体を抱きしめる。
マリィは満足げに俺の肩口に顔を埋め、体重を預けてきた。
重なり合う心臓の鼓動だけが、静かな部屋にいつまでも響いていた。
「あーーー!!! マリィちゃん、マスターと抜け駆けセックスしてるんだよ! ずるいんだよ!」
と、そこへ、日向ぼっこを終えたサクラが、両頬をこれでもかと膨らませながら部屋に怒鳴り込んできた。
「悪い悪い。仲間外れにするつもりはなかったんだ。ごめんな?」
俺が苦笑しながら謝ると、サクラは桜色の髪をハタハタと揺らしながら突撃してきて、俺の唇を奪うように強引にキスをしてきた。
「んちゅ……ぷはっ。……じゃあ、マスター。次は私ともするんだよ?」
唇を離したサクラが、今度は熱く潤んだ瞳でじっと俺を見つめてくる。
頬をほんのり赤く染め、その声には蕩けるような甘えの響きが混じっていた。
俺は降参気味に笑いながら、彼女の頭を優しく撫でる。
サクラは嬉しそうに目を細め、その隣ではマリィも静かに俺の身体へ再び擦り寄ってきた。
そこからは、二人の美少女の柔らかな温もりに挟まれながら、ただ貪り合うように互いを求め合った。
言葉を交わし、肌を重ね、何度も何度も抱き締め合って――。
気づけば、時間の感覚すら曖昧になっていた。
静かな部屋には、重なり合う吐息と、満たされた余韻だけが残っていた。
――――
ダンジョンが解放されてから数日が経過した。
「おい、お前昨日のダイブで死に戻りしなかったんだって? すげえじゃん!」
「今日の放課後さ、一緒に潜らない? パーティの前衛が足りないんだけど、誰かいない?」
教室のあちこちから、そんな会話が日常茶飯事として聞こえてくる。
もはやこの学園の生徒にとって、“ダンジョン”は非日常ではなく、ただの日常の延長線へと成り下がっていた。
そして――至る所で行われている「性交」の営み。
さすがに白昼堂々、教室や廊下の真ん中でおっぱじめる者はいないが、
良くも悪くも、生徒たちはこの狂った豊葦原学園のルールに「順応」し始めている。
(……まあ、俺は相変わらず『ぼっち』で誰ともかかわっていないわけだが)
心の中で自嘲する。だが、それも当然の結末だ。
自分から周囲と距離を置き、クラスメイトを拒絶して、必要以上に関わろうとしなかったのだ。
今さらどの面を下げて「俺も仲間に入れてくれよ」なんて言えるはずもない。
原作の『
他人と深く組めば、必ず自分の「常軌を逸した力」について説明を求められるからだ。
秘密が多すぎるが故の弊害である。
俺は視線を机から黒板へと移した。
現在の授業はダンジョン専門科目の『総合防御技術概論』。
教壇に立っているのは、小学生と見間違えそうなほど小柄で幼い容姿をした女性教師――
黒板の上の方にチョークが届かず、「ぴょん、ぴょん」と健気に背伸びしている姿は、見ていてかなり危なっかしい。
(……あんな先生でも、『SSR職』なんだよな)
SSR職。それは派生や下位職が存在しない、性処理に特化したクラスだ。
この学園で教鞭を執っている女性教師は、全員がこのSSR職に就いている。
そして学園のルール上、彼女たち教師には「生徒の性欲解消」も正当な業務として義務付けられているのだ。
そう思うと、なんだか胸の奥が妙にモヤモヤとぎゅっとなる。
……ちなみに念のために断っておくが、俺はロリコンではない。断じて違う。
授業内容は「盾の正しい構え方」や「モンスターの特殊攻撃による状態異常への対処法」など、徹底して生存率を高めるための防御面に重点が置かれていた。
初心者ほど派手な“攻撃手段”ばかりに目を奪われがちだが、実際のダンジョンで生死を分けるのは、敵の初撃を確実に「防げるかどうか」だ。
そういう意味では、かなり実践的で有意義な授業と言えた。
『
現状、俺のストレージに素材を溜め込んでも使い道がないため、優秀な装備や便利アイテムに変換できる職人連中に流すのが一番合理的だ。
最初は散々だった。
初対面の際、俺の放つ威圧感を見た瞬間に「レイプされに来た!」と勘違いして大泣きした先輩までいたくらいだ。
しかし毎回、
原作では“気が小さい”とか書かれていた気がするが、現実の彼女はかなり面倒見の良い苦労人のお姉さんだ。
一方で、部長の蜜柑先輩は別のベクトルで面倒だった。
俺が持ち込むモンスターの素材を見るなり、目をキラキラと潤ませて感動し始め、そのまま一時間近く「自作武器の構造と鍛冶理念」についてノンストップで熱弁された。
あれは本当に疲れた。
余談だが、サクラが欲しがっていた専用の刀が、蜜柑先輩の手によって無事に完成した。
刀身は夜の闇をそのまま切り取ったかのように漆黒――『
光を反射しているはずなのに、どこか“光を吸っている”ようにも見える不思議な刀だった。
素材になったのは、『
あの異様な魔力を帯びていた希少金属を再構成して作られたらしく、完成品からは普通の武器とは明らかに違う、肌を刺すような重圧が漂っている。
サクラ自身も相当気に入ったらしく、暇さえあれば異空間の中でブンブンと振り回している。
……まあ、振るたびに床や壁が傷つくのは、勘弁してほしいが。
異空間の「自動自己修復機能」がなければ、我が家は今頃、切り傷だらけだろう。
ダンジョン攻略のほうはあれからも毎日潜っている。
不思議なことに、精神的に参る気配はない。
サクラとマリィが魂レベルで結びついている影響なのか。
あるいは――。
(前世でブラック企業の『20連勤』とかを平気でこなしていた社畜経験が、まさかダンジョン攻略で活きるとはな……)
社畜というのは、案外モンスターよりも過酷な環境への適応能力が高いのかもしれない。
悲しい気付きだ。
そして何より、俺たちには他の一年生に対して圧倒的なアドバンテージがあった。
スキルの発動にSPを一切必要としないという点だ。
職業の『
消費するのはSPではなく、俺の体内にある“魔力”そのものだ。
サクラ曰く、俺の魔力量は「神話級」。
少なくとも、普通に使っていて、魔力切れということは起きないらしい。
おまけに寝て起きたら勝手に全回復している。
サクラ自身も、俺との毎日のセックスとダンジョンでのレベルアップを通じて、
マリィと融合した際に振るう『エイヴィヒカイト』に関しても、当然SP消費のルールを受けない。
もはや俺たちだけプレイしているゲームのジャンルが違っていた。
現在、俺たちは第四階層を中心に探索を続けている。
実力だけで言えば、第四階層に出現する『
だが――未だに次の階層へ繋がるゲートを発見できていない。
理由は至ってシンプル。このダンジョン、あまりにも広すぎるのだ。
前々から『
だが、まさかここにきて本格的に詰まるとは思わなかった。
……いや。今までが順調すぎたせいで、完全に失念していた俺の落ち度だ。
なら『
だが最初に言った通り、俺は現在進行形でぼっちである。
しかもサクラとマリィの存在を考えると、外部の生徒を安易に誘うわけにもいかない。
異空間。召喚。魔法。聖遺物。etc……
どれも秘密にしておきたい切り札ばかりだ。
結果——。
火力はある。継戦能力もある。ボスも余裕で瞬殺できる。
なのに、次の階層へ進む道だけがサッパリ分からない……。完全に脳筋パーティだった。
(……こんな序盤の階層で詰むとか、これなんてクソゲーですか?神様、運営のパッチ修正はいつ入るんですかね……?)
「――”ステータス”」
現実逃避気味に、周囲に聞こえない小声で呟く。
思考を切り替え、改めて自身の能力値を開示した。
=====≪STATUS≫=====
名:影山幹隆
レベル51
職業:
(
スキル:ヒロイン召喚 レベル3
ステータス レベル4
異空間生成 レベル5
∟空間固定 New
エイヴィヒカイト 形成
スキルポイント:0
パーティ:(リーダー)幹隆 レベル52、サクラ レベル52、マリィ レベル50
=================
ステータス自体は順調に育っていた。
俺自身のレベルはついに50台の大台を突破。
レベルの詳細ウィンドウを開いてみる。
≪レベル基準値:1~10=
レベル基準値。
おそらくだが、この世界に存在する
(まあ、神から与えられたシステムだ。この世界に来ること前提で作られてるんだろうし、そこまで外れてはいないはずだ)
この基準値を見る限り、現在の俺(レベル51)は、一般的には「第II段階クラスの上位層」に位置していることになる。
……とはいえ、実際の戦闘力はその基準から大きく逸脱している自覚があった。
サクラとマリィ、二人のヒロインと魂が直結している影響で、俺の素の身体能力や五感の鋭さはすでに常軌を逸している。
体感としては、そこらの第III段階クラスの先輩相手でも、正面から叩き伏せる自信があった。
ただ、レベルアップしても『
ランクアップには、何か特殊な別条件が存在しているのかもしれなかった。
『
一瞬だけ己の魔力を爆発的に高め、自らに取り込み固定することによって 自身が弾丸のようになって移動することが出来る身体能力の強化。
新しく習得した職業スキル『
簡単に能力を説明すると、魔力を纏った
実際には、超高速移動。それも、生半可な速度ではない。
体感では、もはや光速すら凌駕している。当然、周囲から見れば“消えた”ようにしか見えないだろう。
第四階層ののエリアボスである『
そして次はスキル関連。
・ヒロイン召喚 レベル3――
召喚で呼び出せる制限数が上昇。レベル3の時点で3人まで。
さらに、ヒロインの好感度上昇補正が強化。
…………次のレベルまで残り30ポイント
先日のダンジョンダイブでようやくレベル3まで上げることができた。まだ3人目のヒロインは召喚していない。
だからこそ、今日は探索を一時休みにして、この後安全な寮の部屋で新たなヒロインの召喚を試す予定なのだ。
そもそも、ここまで『ヒロイン召喚』の育成が遅れてしまった最大の原因。
それは、先に便利そうだと思って『異空間生成』のレベルを優先して上げていたからだった。
“異空間”なんて大層な名前なんだから、レベルを最大まで上げれば「階層ゲート自動探知機能」とか「空間広域把握」とか、その辺の困りごとを解消する能力が生えるに違いないと踏んでいたのだ。
まあ、その期待に満ちた結果がこれなわけだが……。
・空間固定――
異空間の出入口をその座標に半永久的に固定できる。
異空間生成…………次のレベルまで残り8ポイント。
……実に残念な結果だった。
元々、異空間の入口は俺の視界内ならどこにでもノーコストで出せる。しかも「消えろ」と念じれば一瞬で消える。
以前、試しにゲートを開きっぱなしで放置してみたが、3分ほどで自然消滅した。
つまり『空間固定』とは、その“自然消滅しないようにその場に残せる”だけの、ただそれだけの能力だった。
その場に入口を置き去りにするメリットをどれだけ考えてみても、何一つとして思いつかない。
完全に貴重なポイントをドブに捨てた気分である。
唯一、一つだけ面白い実用的な発見はあった。
固定した異空間の入口は、魔力を纏わせた足で上から踏みつけると、強固な“透明な床”として成立するのだ。
本来なら吸い込まれるはずなのに、魔力の膜で身体を覆うことで、境界面の上に立つことができる。
つまり理論上――空中に『空間固定』のゲートを連続で配置して足場にすれば、空中を自在に歩行できる。
……実戦での使い道はかなり限定的だが。
「あ、やべっ……」
ステータスの確認と考察に夢中になっていたせいで、美弥先生の板書を写すのを忘れていた。
俺は慌ててノートを開き、消される前に黒板の内容を猛スピードで書き写していく。
すでに授業終了のチャイムはとっくの前に鳴っており、生徒たちは騒がしく談笑していた。
その時だった。
——シーーン。
不意に、教室全体が水を打ったように静まり返った。
さっきまで雑談していたクラスメイトたちも、妙に張り詰めた空気を察したみたいに、一斉に口を閉ざして視線を一点に注いでいる。
(……なんだ? この妙に胃が痛くなるような空気は)
嫌な予感を覚えながら、ノートからゆっくりと顔を上げる。
すると――俺の机の真ん前に、直立不動で立っている一人の男がいた。
この世界の原作主人公――叶馬だった。
ただ、今日はいつも一緒にいる三人――誠一、静香、麻衣たちの姿がない。
どうやら、叶馬を置いてどこかへ行ったらしい。
教室中の視線が、一斉に俺と叶馬の間に集まる。
野次馬たちの「おい、何が始まるんだ?」という無言の圧が痛い。
叶馬は無表情のまま、ゆっくり口を開いた。
「――
嫌な予感が加速する。
「――俺と供に来るがいい」
「…………」
………………。
………………。
(終わった)
俺は静かに確信した。
どうやら俺の平穏な学園生活はここで終わったらしい。
――さよなら異世界青春。
俺の脳内で、哀愁漂う壮大なBGMと共に、そんなナレーションが静かに流れ始めてい
た。