――穿界迷宮『YGGDRASILL』、接続枝界『黄泉比良坂』
――第肆階層、『既知外』領域
異空間で一息ついた俺たちは、その後再びダンジョン攻略へ戻っていた。
瘴気混じりの薄暗い通路。けれど、今のパーティの空気は驚くほど明るい。
「カヌちゃん、わたしにも今度料理教えて欲しいんだよ!マスターに美味しいもの食べさせてあげたいんだよ!」
先頭を歩きながら、サクラがくるりと振り返る。
揺れる桜色の髪が楽しそうに跳ねた。
「はい、サクラさん。私で良ければ、いつでもお教えします」
カヌも柔らかく微笑み返す。
以前の彼女からは想像もできないほど穏やかな笑みだった。
「……私にも、教えてね」
その隣で、マリィが小さく呟く。
金色の髪を揺らしながら、じっとカヌを見上げていた。
「もちろんです、マリィさん」
黒髪の奴隷騎士は自然な仕草で頷く。
どうやらヒロインズ三人は、すっかり打ち解けたらしい。
前を歩く桜色、金色、黒色の髪が、通路の淡い魔光灯に照らされながらゆらゆらと揺れている。
時折聞こえる笑い声まで柔らかくて、ここが危険なダンジョンの内部だということを忘れそうになる。
異空間でカヌと二人きりになった後。
そこへサクラとマリィが部屋へ入ってきて、流れのまま全員で甘い時間を過ごすことになった。
最初こそカヌは戸惑っていた。
だが、不思議と拒絶する様子はなかった。
むしろ、サクラやマリィへ向ける視線には、どこか安心したような色すら浮かんでいた。
――作中でのカヌは違う。
王以外にはほとんど興味を示さず、仲間にしか心を開かない。
極端なまでに閉じた価値観を持つキャラクターだった。
だが、今の彼女は違う。
サクラの明るさを受け入れ。
マリィの不器用な優しさにも自然と歩幅を合わせている。
きっともう、彼女の中では二人も“守るべき仲間”として認識されているのだろう。
そういえば、一つ気になっていたことがあった。
カヌから
「カヌ、ちょっといいか?」
「え、あ……はい。何でしょうか、幹隆様」
前を歩いていたカヌが振り返る。
先ほどまでサクラたちと談笑していた柔らかな表情が、こちらを見ると少しだけ真面目なものへ変わった。
俺は異空間から、一冊の古びた本を取り出す。
黒い革装丁。
触れているだけで微かに脈打つような、不気味な存在感。
表紙には、相変わらず読めるようで読めない複雑怪奇な筆記体が刻まれている。
――『境界の記』その瞬間。
「――っ!?」
カヌのアメジスト色の瞳が大きく見開かれた。
彼女は信じられないものを見るように本へ視線を固定したまま、一歩こちらへ近づく。
「こ、これは……
普段冷静なカヌが、露骨に動揺していた。
「幹隆様……なぜ、これをお持ちなのですか……?」
「ダンジョンでゴブリンがドロップした」
「…………え?」
空気が止まった。
カヌは数秒硬直したあと、ゆっくりとこちらを見る。
「ゴブリン……が?」
「ああ。ファーストダイブの時にな」
「そ、そんなはずは……」
彼女は呆然と呟きながら、本へそっと触れた。
その指先はわずかに震えている。
「
カヌの声音が低くなる。
「それを、ただの下級モンスターが所持しているなど……あり得ません」
そのまま彼女は考え込むように黙り込んだ。
俺も内心では同じことを考えていた。
やはり、この本は本物の
だが、そうなると違和感が多すぎる。
カヌを召喚する前から、この本は既に俺の手元にあった。
しかも手に入れたのは、ダンジョンへ初めて潜ったファーストダイブの時だ。
あの時はただの不気味なアイテムだと思っていた。
だが――もし違うのだとしたら。
あの頃から既に、カヌがこちらの世界へ来ることは決まっていたのか?
“ヒロイン召喚”で現れる存在はランダムだと思っていた。
だが、この本の存在を考えると、それすら誰かに仕組まれていた可能性が浮かんでくる。
「……『
その名を口にした瞬間だった。――ぶるり。
手の中にあった本が、生き物みたいに震えた。
「っ!?」
次の瞬間。
黒い革表紙がぐにゃりと歪む。
まるで液体になったみたいに、本そのものが形状を崩し始めた。
「な、なんだこれは?!」
慌てて手を離そうとする。
だが遅い。 どろり、と。
黒い表紙が腕へ這い上がってきた。
冷たい。なのに脈打っている。
まるで意思を持つ蛇が腕へ巻き付いてくるみたいだった。
「み、幹隆様!」
カヌが咄嗟にこちらへ駆け寄る。
剣へ手をかけるほど警戒していたが、彼女自身もどう対処すべきかわからないのだろう。
アメジスト色の瞳に、はっきりと焦りが浮かんでいた。
黒い文字列が、本の表面から浮かび上がる。
見たこともない古代文字。 だが、不思議と理解できた。
――契約承認。
――適合確認。
――権能接続開始。
脳へ直接流し込まれるような感覚。その瞬間、世界がぶれた。
ダンジョンの壁。瘴気。仲間たちの気配。
その全ての“境界”が、妙に鮮明に見える。
空間と空間の継ぎ目。世界の薄膜。
見えてはいけないものが、一瞬だけ視界へ映り込んだ。
「――っ!!」
激しい頭痛に思わず膝をつく。だが、それもほんの数秒だった。
やがて黒い液体は完全に俺の右腕へ巻き付き――
カチリ。金属音にも似た音を立てて固定される。
そこにあったのは、一つの腕輪だった。
漆黒の金属。
細部には銀色の紋様が刻まれている。
よく見ると、その紋様は絶えず形を変えていた。
まるで無数の道が絡み合っているみたいに。
「これは……」
呆然と呟く俺の隣で、カヌが息を呑む。
彼女は信じられないものを見るように目を見開いていた。
「
カヌはゆっくりと腕輪へ視線を向ける。
「幹隆様は、正式に『
「認められた……?」
「はい。本来、真名を知らない者は使用できません。ですが今、幹隆様がその名を口にしたことで――」
カヌの表情が険しくなる。
「契約が成立したのでしょう」
腕輪が微かに脈打つ。
すると頭の奥へ、知らない知識が流れ込んできた。
道。境界。転移。接続。封鎖。座標。
まるで世界そのものを“繋ぐ”ための知識。
「……っ、これやばいやつだろ」
「はい。間違いなく」
カヌは即答した。
その声音には、隠しきれない緊張が滲んでいる。
「『
「なんでだ?」
「境界を越える力を持つからです」
短い答えだった。だが、その意味は重い。
世界と世界。空間と空間。閉ざされた領域。禁忌の封印。
その全てを“越えられる”ということ。
つまり――。
「……理論上は、世界そのものへ干渉できます」
ダンジョンの空気が、一瞬静まり返った。
腕輪が再び脈動する。
まるで。ようやく本当の持ち主を見つけた、とでも言いたげに。
――
創造神ナラヤナが、“人の身でありながら神の奇跡を扱う方法”を記した超越の書物群。
一冊あたりのページ数は一兆ページ以上。一ページの面積は三十億平方メートル。
もはや書物という概念そのものが狂っている。
当然、人間サイズの形状では存在できない。
そのため、創造神は人間界へ授ける際、それぞれを別の形へ変換した。
カヌが身に着けている紫色のヘアバンド。
そして今、俺の腕へ巻き付いている漆黒の腕輪。
これらも本来は、“本”なのだ。
だが、一般的な意味での「読む」という行為は不可能とされている。
ページをめくる必要すらない。必要なのは、読解する才能。
知識が流れ込む。概念が刻まれる。
やがて“奇跡”そのものを、自身の能力として扱えるようになる。
そして恐ろしいのは、その全容すら誰も把握していないことだった。
何冊存在するのか。いくつの『奇跡』が記されているのか。
未発見の書がどれだけ眠っているのか。
その全てが不明。
つまり――この世には、まだ誰も知らない“神の奇跡”が存在していても不思議ではない。
腕輪を見つめながら、俺は小さく息を吐いた。
『
「……カヌ、一つ聞きたい」
「はい」
彼女は真剣な表情でこちらを見る。
「こういう
俺は右腕を軽く持ち上げる。
漆黒の腕輪は、皮膚と完全に一体化しているように見えた。
ただ装着している感覚じゃない。
血管。神経。
あるいは魂そのものへ直接接続されているような感覚。
「カヌの『
その言葉に、カヌの表情が僅かに強張る。
彼女はしばらく黙り込んだあと、ゆっくりと口を開いた。
「……本来、そこまで深い融合は起きません」
「やっぱりか」
「
そう言いながら、カヌは自身の紫色のヘアバンドへ触れる。
「取り外しも可能ですし、意識的に力を遮断することもできます」
だが、と彼女は言葉を切った。
アメジスト色の瞳が、俺の腕輪をじっと見つめる。
「幹隆様のそれは……違います」
空気が僅かに張り詰めた。
「違う?」
「はい。まるで、ただの“道具”ではなく……」
カヌはそこで迷うように口を閉ざす。
だが、やがて覚悟を決めたように続けた。
「……神格の一部が、幹隆様へ直接接続されているように見えます」
「は?」
意味がわからず、思わず間抜けな声が漏れた。
だがカヌは冗談を言っている顔ではない。
「『
彼女の声が少し震える。
「にもかかわらず、拒絶反応が起きていない……むしろ、向こう側が幹隆様へ積極的に融合している」
腕輪が再び脈動した。
どくん。その瞬間。
視界の端で、空間が薄く裂ける。
ほんの一瞬だけ。だが確かに見えた。
世界と世界の継ぎ目。空間の“境界線”。
まるで透明なガラスへ亀裂が走ったみたいに、ダンジョンの通路の奥へ細い線が浮かび上がる。
しかも、その線は動いていた。
脈打つように。呼吸するように。
「……っ」
頭の奥へ妙な感覚が流れ込む。
ここから先へ進める。この壁の向こうには玄室がある。
――理解してしまう。
見ただけで。触れてもいないのに。
カヌが険しい顔でこちらを見る中、俺は一度深呼吸し、そのままステータスを開いた。
=====≪STATUS≫=====
名:影山幹隆
レベル55
職業:
(
スキル:ヒロイン召喚 レベル3
ステータス レベル4
異空間生成 レベル5
エイヴィヒカイト 形成
(
スキルポイント:4
パーティ:(リーダー)幹隆 レベル55、サクラ レベル55、マリィ レベル52、カヌ レベル20
=================
「……追加されてる」
思わず呟く。やはり見間違いじゃない。
正式にスキル欄へ組み込まれていた。
しかも単なるアイテム扱いではない。
完全に“能力”として俺へ定着している。
――《
空間に存在する“境界”を知覚できる。ただし、強力な結界は判別不能。
説明文を読んだ瞬間。再び視界が変化した。
ダンジョン内部へ無数の線が走る。
通路と通路。階層と階層。
さらには壁の向こう側に存在する空洞まで、薄ぼんやりと輪郭が浮かび上がって見えた。
まるでダンジョンそのものが、巨大な立体地図へ変わったみたいだった。
あまりにも広大すぎるため脳の処理が追い付かない。
再び目を閉じ、自身が知覚できる範囲にまで探知範囲を絞っていく。
どうやら、距離にして百㎞が今の俺の探知限界らしい。
俺はもう一つの権能へ視線を向けた。
――《
使用者にとって“最も進むべき道”を示す。一度通った道を記憶する。
その瞬間だった。腕輪の紋様が淡く光る。
すると、無数に見えていた境界線の中から一本だけが金色へ変化した。
ダンジョンの奥へ。まっすぐ続いている。
俺の脳裏へ、一気に情報が流れ込んできた。
さらには、一度通った通路の構造まで完全に記録されている。
忘れようとしても忘れられない。
ダンジョン全体が頭へ刻み込まれていく感覚。
そして、俺は一つの下層に続く界門を見つけた。
これがあれば、『
いや。下手をすれば、既存の探索職より遥かに高性能だ。
俺は一度目を閉じ、流れ込んでくる感覚を整理する。
そして、なんとなくだが理解してきた。
《
空間構造そのものを可視化し、隠された接続点や境界を見抜く能力。
そして。
《
膨大な情報の中から、“今の自分にとって最適な道”を選び出し、進むべきルートを示してくれる。
つまり――。
《
《
二つが合わさることで、初めて真価を発揮する権能なのだろう。
腕輪が脈動するたび、金色の導線が迷宮の奥へ伸びていく。
まるで“先へ進め”と急かすように。
俺はその光を見据えたまま、三人へ振り返った。
「三人とも、ついてきてくれ。次の階層へ繋がる界門を見つけた」
「えっ!?」
サクラがぱっと表情を輝かせる。
「どうやらこの腕輪が、ダンジョンの次の階層を教えてくれてるらしい」
「おおっ、マスター! ついにやったんだよ! これでようやく先に進めるんだよ!」
桜色の髪を揺らしながら、サクラが嬉しそうに飛び跳ねる。
マリィも静かに頷いた。
「……うん、わかった」
だが。その隣で、カヌだけは黙り込んでいた。
彼女は俺の腕輪をじっと見つめたまま、どこか考え込むように眉を寄せている。
「……カヌ?」
「っ」
声をかけると、彼女は小さく肩を震わせた。
「カヌ、どうしたんだ? 黙り込んで」
「い、いえ……大したことではありません」
そう言いながらも、その表情には強い警戒が残っている。
「ただ……
静かな声だった。だが、その一言は妙に重かった。
俺も小さく頷く。
「確かに、それは俺も感じてた」
視線を腕輪へ落とす。
漆黒の紋様は、今も生きているみたいに脈打っていた。
「原作でも、“神の遺物”みたいなアイテムはいくつか出てきてた。でも――
それが意味することは単純だ。この状況は、本来の物語から外れている。
カヌがこちらを見つめる。
「……つまり、誰かが意図的に介入している可能性がある、と?」
「たぶんな」
俺は苦笑する。
「もしかしたら、俺をここへ呼び出した“神”が関わってるのかもしれない」
その瞬間。マリィがわずかに反応した。
金色の瞳が静かに揺れる。
カヌも慎重な口調で問い返してきた。
「……神、ですか。それは……マリィさんや、創造神ナラヤナ様ではないのですよね?」
「おそらくだが違うと思う」
俺は首を横に振る。
「マリィ自身、“別の神”に呼ばれてこっちへ来たって言ってたしな」
「……そう、ですか」
カヌは小さく目を伏せた。その横顔には、わずかな緊張が浮かんでいる。
神。それも、創造神ナラヤナすら関与していない可能性のある存在。
そんなものが裏で動いているとすれば、話の規模が大きすぎる。
俺は一度頭を整理するように息を吐き、考えを口にした。
「これはあくまで仮説だけど――」
三人の視線がこちらへ集まる。
「今回のパターンだと、カヌが来る前から俺は《
どくん。腕輪が反応するように脈動した。
「でも、手に入れた時点じゃ何も起きなかったんだ。ただの不気味な本だった」
ファーストダイブ。ゴブリンが落とした黒い本。
あの時は、本当に意味不明なアイテムでしかなかった。
「だけど、カヌがこっちへ来て……
つまり。この本は最初から“待っていた”可能性がある。
適合者を。あるいは、“知識”そのものを。
「ってことは――」
俺は金色の導線が伸びる迷宮の奥を見る。
「このダンジョンを攻略していけば、他にもヒロイン召喚に関係するアイテムが出てくるかもしれない」
原作には存在しなかった
全部が、どこかで繋がっている。
なら、このダンジョンそのものが“召喚の舞台”として作られている可能性すらある。
カヌが静かに呟く。
「……まるで、幹隆様を導くために配置されているみたいですね」
その言葉に、空気が僅かに冷えた。導かれている。
誰に?何のために?
その答えはまだわからない。
だが一つだけ確かなことがある。
どのみち――。
俺たちは、この迷宮をさらに深く攻略していく必要がある。
腕輪の金色の導線は、まるでそれを待っていたかのように、静かに深淵へ続いていた。
――――
――ザシュ。
鈍い斬撃音と共に、第肆階層の
巨大な異形の身体が数歩よろめき、やがて地響きを立てて崩れ落ちる。
黒い瘴気が噴き出し、魔物の肉体は光の粒子となって霧散していった。
俺たちは今、第肆階層――界門前の玄室へ到達していた。
広大な石造りの空間。
天井は高く、壁面には古代文字のような紋様が刻まれている。
そして、その中央。
巨大な界門が静かに佇んでいた。
黒鉄のような質感を持つ両開きの門。
その表面には無数の境界線めいた紋様が走っている。
門の向こう側から漏れ出す瘴気は、今までの階層とは比較にならないほど濃密だった。
俺は小さく息を吐いた。
「今日はここまでにしよう」
「え?」
サクラがきょとんとする。
俺は界門から視線を外し、三人へ振り返った。
「そろそろ『
ダンジョン探索で最も危険なのは、無理な深追いだ。
だからこそ、一度戻るべきだと判断した。
「……わかりました、幹隆様。お食事の準備をしておきます」
カヌは素直に頷き、いつもの落ち着いた笑みを浮かべる。
「お腹ペコペコなんだよ! カヌちゃん、私も手伝う!」
サクラが元気よく手を挙げる。
「ふふ、ありがとうございます、サクラさん」
「……じゃあ、あとでね、幹隆」
マリィも小さく手を振りながら、静かに異空間へ入っていった。
三人の姿が黒い渦の中へ消えていく。
空間が捻じれる感覚。身体が薄い膜を通過していくような違和感。
だが今の俺には、それが“空間転移”であることが直感的に理解できてしまう。
ダンジョンと現実世界の境界。座標の接続。位相のズレ。
今まで感覚的にしか扱っていなかった羅城門の仕組みが、《
気が付いたら門の前に立っていた。どうやら帰ってきたようだ。
「突然ごめんね、ちょっといいかな。私、二年の
背後から聞こえた軽い声に、俺は振り返った。
そこに立っていたのは、茶髪をサイドテールにまとめた女子生徒だった。
制服の着崩し方はラフ。だが、その立ち姿には妙な隙がない。
視線だけは、やけに鋭かった。
「……」
俺は無言で彼女を見る。見覚えはない。
少なくとも原作には登場していなかったはずだ。
もし主要人物なら、あの作品で印象に残らないはずがない。
「もしかして、一人でダンジョンダイブしてるの?」
波留先輩は興味深そうに首を傾げた。軽い調子。
だが、探るような視線。俺は反射的に問い返していた。
「なんで」
「え?」
波留先輩がきょとんとする。
「なんで、俺に声を掛けたんですか?」
波留先輩は一瞬だけ目を瞬かせ――。次の瞬間、くすりと笑った。
「だって、君……普通の生徒じゃなさそうだったからねぇ」
軽い口調。けれど、その目は笑っていない。
「好奇心からだよ。それに同類かなって思ってねぇ……」
そう言って肩を竦める。どうやら、この先輩ただ者ではないらしい。
その目からは、普通とは違う逸脱者の気配を感じていた。