長期連休目前。学園全体が、どこか浮ついた空気に包まれている。
……周りにいる『丙』クラスの連中が、少し羨ましい。
どうせ頭の中は、遊びとやることばかりなんだろう。
「はぁ……」
自然とため息が漏れる。
ダメだ。思考が完全にネガティブ寄りになっている。
感覚としては、ブラック企業時代に二十連勤した後に近い。
身体は動く。だが、精神が死んでいる。原因は分かっていた。
毎日のダンジョンダイブだ。
俺は『
傷も。 筋疲労も。極論、瀕死状態ですら巻き戻せる。
だが――精神までは戻らない。“心の摩耗”だけは、蓄積し続ける。
だから今の俺は、どこか擦り切れた精神のまま授業を受けていた。
もちろん、ただ消耗しているだけじゃない。
来るべき日に備え、戦力は整えている。
……もっとも。
やっていることは毎日ダンジョンダイブしてるだけなんだが。
異空間では、カヌに修業もつけてもらっていた。
これが本当にヤバい。12000年。
口にすると馬鹿みたいな年月だが、実際にその技術を叩き込まれると笑えなかった。
剣術。体術。歩法。呼吸制御。殺気隠蔽。
一つ一つが洗練されすぎている。
下手すると、“技術だけなら現代最強クラス”なんじゃないかと思うレベルだ。
試しに一度、「師匠」と呼んだことがある。
その瞬間。『や、やめてください……っ!』と、本気で青ざめながら止められた。
彼女の中では、あくまで俺に忠実な奴隷騎士らしい。
……いや、忠誠心が重い。まあ、それはそれとして。
問題は『
考えれば考えるほど嫌な予感しかしない。
やはり事前に低ランクレイドへ潜って慣れておくべきか。
レイド特有の空気や時間圧差酔いへの耐性は必要になる。
食料や生活用品は、既に異空間へ買い込んである。
長期、籠城になっても、しばらくは問題ない。
だが、最大の問題はやはり戦力だった。
現状の俺たちは少数精鋭。単体戦闘能力は高い。
だが、対軍性能が足りない。
数で押し潰されるタイプのレイドだった場合、一気に詰む。
範囲殲滅。召喚。足止め。継戦能力。その辺りが明確に不足していた。
「……み、幹隆くん」
……やはり戦力補強が先か。
最低でも前衛を増やすべき――
「……幹隆くん!」
「あぁ?」
「ヒッ!?」
顔を上げると、隣の女子が肩を震わせていた。
考え事をしていたら……どうやら、かなり怖い顔をしていたらしい。
そういえば今の授業は、戦闘訓練実習だったな。
視線を前へ向ける。
そこにいたのは――以前、叶馬にボコボコにされていた角刈り体育教師だった。
相変わらずゴリラみたいな体格をしている。
「……幹隆くん、先生に呼ばれてるよ。前に出ないと……」
「ああ、悪い。教えてくれてありがとう。えーと……」
「
「ああ、琉菜な」
名前を覚えながら立ち上がる。周囲の視線が集まった。
……嫌な予感しかしない。前へ出ると、角刈り教師がニヤニヤしながら腕を組んでいた。
なんで、俺が選ばれたんだ。いつも、隅で影薄くしてるのに。
まあいいや、今、少しイライラしてるから悪いけど八つ当たりさせてもらおう。
この教師、悪い噂しか聞かないし後腐れもないだろう。
「よぉ、ようやく出てきたなぁ?」
なんだこいつ。露骨すぎるだろ。
「俺を前にしてビビるのは仕方ねぇが、授業中の無視は感心しねぇなぁ?」
がはは、と下品に笑う。……ああ、なるほど。
この前、叶馬に公開処刑レベルで負けた件。
まだ引きずってるのか。面倒くさい。
つまり俺をサンドバッグにして、教師としての威厳を取り戻したいわけだ。
「うんじゃあ特別にハンデだ。一発だけ先に打たせてやるよ」
「はぁ……」
クラスメイトたちがざわつく。
まあ普通に考えれば、教師と生徒じゃ実力差がある。
周囲から見れば、余裕の慈悲に見えるんだろう。
……でも今の俺は、かなり機嫌が悪い。
レイド。極級。不足戦力。未来への不安。精神疲労。
そこへ来て、このゴリラのイキった態度。
「……じゃあ、遠慮なく」
軽く息を吐く。その瞬間。意識が静かに切り替わった。
異空間で何千回も叩き込まれたカヌの技術が、自然と身体へ沈み込んだ。
右腕に魔力を溜める。重心。呼吸。魔力循環。視線誘導。
――殺す必要はない。ただ、“理解できない格の差”だけ教えてやればいい。
(まあ、もちろん手加減はするが……)
「――フンッ!!」
踏み込み。床が爆ぜた。瞬間。
俺の姿が掻き消える。
「――ッ!?」
角刈り教師の顔から笑みが消えた。もう遅い。
カヌに比べれば。『既知外』領域の化物どもに比べれば。
この程度の防御姿勢。止まって見える。右拳を振り抜く。
直撃の寸前で魔力出力を調整。骨は砕かない。
死なせない。ただ吹き飛ばす。それだけ。
――ドゴォォォォンッ!!!
爆音。空気そのものが震えた。
角刈り教師の巨体が、文字通り砲弾みたいに吹き飛ぶ。
グラウンドの床を削り。数メートル跳ね。
そのまま二十メートル先の防護壁へ激突した。
轟音と共に壁面が陥没し、粉塵が舞い上がる。
「…………は?」
誰かが、間抜けな声を漏らした。訓練場全体が静まり返る。
やはり、一般の生徒や教師は『
ダンジョン内を循環する魔物の魔力と術師が術式を発動するためのSPは、本質的に同系統のエネルギーだ。
なので、魔物が持つ装甲、SPバリアは、スキルや術で破ることができる。
だが――俺がサクラと契約したことで得た『
これは、この世界の魔術体系とは別概念。だからこそ、SPバリアを無視できる。
本来、防御に回るはずのエネルギー構造を“すり抜けて”直接衝撃を通しているのだ。
……まあ、今気づいたが、少々やりすぎたかもしれない。
(目立ちたくないとかいつも思ってるくせに、自分から目立ってどうすんだ……はぁ)
あとで反省しよう。そう思いつつ元の場所に座りなおした。
「す、すごいね、幹隆くん」
「ああ、まぐれだよ」
「……ま、まぐれ……?」
琉菜が引きつった顔をする。
その後の授業は、教師が続行不能になったため自習となった。軟弱なゴリラだ……
クラスメイトたちから向けられる視線が痛い。
恐怖、興味、羨望、警戒、様々な感情が混ざっている。
叶馬よ。嬉しそうにこっちを見るんじゃない。
――――
授業が終わった瞬間、俺は即座に荷物をまとめ、教室を後にした。
理由は単純。これ以上、厄介事に巻き込まれたくないからである。
案の定というべきか。あの模擬戦以降、クラスの空気が完全に変わってしまった。
今まで空気みたいな扱いだった俺へ、視線が集まる。
特に女子。なんか妙に好意的だ。
「幹隆くんって、意外と強かったんだね」
「今度、一緒にダンジョン潜らない?」
「おすすめの装備店とか知ってる?」
などなど。今まで一度も話したことなかった女子たちから、急に話しかけられるようになった。
怖い。いや、普通に怖い。
しかも、何人か本気で目がハートになってる気がする。
おそらく、俺が普段一人で行動しているから目をつけたんだろう。
そして男子側。こっちはこっちで、なんか悔しそうに俺を見ていた。
……いや、なんで?話したこともないよな?なのに視線だけ妙に刺々しい。
これだから目立つのは嫌なんだ。俺のミスなんだけど。そんなことを考えながら、俺は足早に廊下を進む。
校舎を出て人気のないところに入る。放課後の喧騒が遠ざかる。ようやく一人になれた気がする。
「……”異空間生成”」
黒い渦が目の前に生成され、俺はそのまま足を踏み入れた。
「……ただいま」
「おかえりなさいませ、幹隆様」
柔らかな声。玄関に立っていたのは、豊葦原学園の制服を着たカヌだった。
黒髪を揺らしながら、穏やかに微笑んでいる。その姿は完全に“出迎える妻”だった。
……いや、本人は奴隷のつもりなんだろうけど。
現在の異空間は、俺のレベルアップに比例して拡大を続けている。
最初は小部屋程度だった空間も、今ではちょっとした高級旅館レベルだ。
大きな庭に、プール、書斎に地下室もある。もっとも、増えた部屋の大半は物置になっている。
ちなみに部屋の管理をしているのもカヌである。
最近ではもう俺、サクラ、マリィはどこに何があるかわかっていない。
なお、一応外部であれば“念じたアイテムを取り出す”ことはできる。
異空間の中にいる場合は、その能力が使えないため一つ一つカヌに聞くしかないのである。
……うん、完全に管理担当兼生活インフラである。
「とりあえず、汗を流したい。今日は戦闘実習だったからさ」
「……わかりました」
カヌが静かに頷く。
そのまま浴場へ向かい、脱衣場で制服を脱ぐ。
連日のダンジョンダイブと訓練のせいで、身体にはうっすら疲労感が残っていた。
肉体疲労自体は『
だが、温かい湯に浸かりたくなるのは別問題だ。
浴場の扉へ手をかけ――。ふと気配を感じた。
「……カヌ。なぜ服を脱いで入ってこようとしている」
振り返る。そこには、真っ白な素肌を全て晒して立っているカヌの姿があった。
胸元で白いタオルを抱え。 どこか恥ずかしそうに視線を揺らしている。
「王の背中を流すのは、奴隷の務めです」
「いや、そんな常識知らないんだが」
「……それに」
カヌが小さく俯く。
「最近の幹隆様は、ずっと頑張っていらっしゃったので……少しでも、癒して差し上げたくて……」
もじもじ。白い指先がタオルの端をきゅっと握る。頬もほんのり赤い。
……いや、可愛すぎるだろ。なんだその破壊力。
これを断れる男、世の中に存在するのか?
しかも本人、色仕掛けしてる自覚が薄いのがなお悪い。無意識でこれである。
「じゃあ、……頼むよ」
そう答えた瞬間。ぱぁっ、と。
カヌの表情が、花が咲いたみたいに明るくなった。
風呂場へ入る。
湯気がふわりと肌を包み込んだ。
異空間内の浴場は、レベルアップと共に徐々に拡張され、今では完全に高級温泉みたいな造りへ進化している。
お風呂は3種類あり、広々とした内湯、夜空を模した天井付きの露天風呂、身体を引き締める水風呂、さらに、サウナまで完備。
シャワーも五つ並んでおり、複数人で同時に使っても取り合いにならない。
なお、男湯と女湯で分ける発想は最初から存在しなかった。つまり、うちは混浴オンリーである。
なので、こうしてカヌと一緒に風呂へ入ること自体は、別に初めてでも何でもなかった。
……まあ、未だに慣れないけど。浴場へ入ったカヌは、慣れた様子で髪をまとめ始める。
長い黒髪が滑らかに揺れ、白い首筋が露わになった。湯気越しに見ると、妙に色気がある。
シャワーで軽く身体を流しながら、ぼんやり浴場を見回す。
ちなみに、この異空間の風呂の排水や汚水は、自動的に浄化される。
しかも各部屋には自動清掃機能までついていた。
だから、これだけ広い空間なのに掃除の必要がほとんどない。
各部屋にも自動で掃除する機能があったりするのでこれだけ広くても汚れたりはしない。
トイレに関しても同様ではあるのだが……うちのヒロインズはそもそも排泄行為をしないため。
使ってるのは俺だけである。
サクラは精霊。マリィは女神。それぞれ摂取したエネルギーを完全変換しているらしく、そもそも排泄という概念が存在しない。
そしてカヌ、彼女もまた、不老化してからは排泄行為自体が不要になったらしい。
「では、幹隆様。……お背中をお流ししますね」
「ああ」
背後では、カヌが慣れた手つきでシャンプーを泡立てていた。
ふわふわとした白い泡が指先の間で広がっていく。
その間にも、耳へ届くのは湯の流れる音と、彼女の静かな呼吸だけ。
……不思議と落ち着く空間だった。
「失礼します」
やがて、柔らかな指先が背中へ触れる。
カヌの流儀なのかは分からないが、彼女はタオルを使わない。
必ず、自分の手で洗ってくれる。きめ細かな泡が、しっとりと肌へ広がっていく。
すべすべとした指先が肩から背中へ滑るたび、強張っていた筋肉がゆっくり解けていった。
「……力加減、大丈夫でしょうか?」
「……ああ。かなり気持ちいい」
「よかったです」
ほっとしたような声。鏡越しに映るカヌは、湯気の中で妙に綺麗だった。
濡れた黒髪。ほんのり上気した白い肌。柔らかく細められた紫の瞳。
肩甲骨の辺りをゆっくり撫でるように洗われるたび、疲労が溶けていく感覚があった。
「……かなり、お疲れだったのですね」
「そんな分かるか?」
「はい。身体に力が入りっぱなしでしたので」
カヌの声は穏やかだった。責めるでもなく。
ただ、本当に心配しているような声音。
そのまま指先が肩へ触れる。
ぐっ、と凝っていた部分を押され、思わず息が漏れた。
「っ……そこ、効くな」
「ふふ……ここ数日、ずっと無理をされていましたから」
小さく笑うカヌ。その表情があまりにも柔らかくて、不意に胸の奥が温かくなった。
最近は、レイドのことばかり考えていた。焦燥感ばかりが積み重なっていた。
けれど、こうして誰かに気遣われるだけで、少し救われる。
背中を洗い終えたカヌは、静かに俺の正面へ回り込んだ。
そして、そのまま足元へ膝をつく。
「では、……前も失礼します」
白い泡を纏った両手が、そっと俺の腕へ触れる。
指先から手首へ、そこから肘、肩へと。
カヌは一本一本を確かめるみたいに、丁寧に洗っていった。
まるで奉仕そのものを大切な儀式だと思っているような手つきだった。
目の前で美少女が膝をつき、自分の身体を優しく洗っているよいう事実に興奮し既に肉棒は固くなっていた。
「ふふっ……幹隆様のおちんちんもう固くなっていますね。このままご奉仕させていただきます」
細い指先で俺の肉棒を優しく包み込む。ぎゅっぎゅっと上下にしごき始めた。
「気持ちいいですか。幹隆様。私の手で気持ちよくなってくださいね」
シュッシュッと手の速度を早くしていく。こちらを窺うアメジストの瞳は、どこか熱を帯びていた。
だが、その奥にある感情は単なる欲ではない。心配、献身、そして――愛情にも似た何か。
俺は彼女の豊満なブルンブルンと揺れる胸が気になった。
「カヌ、胸で扱いてくれないか」
「わ、わかりました、その、初めてなので……」
そういうと、自身の胸を両手で持ち上げ、俺の肉棒を挟み込んでいく。
ぐちゅぐちゅと泡と肉棒から出る我慢汁で彼女の豊満な胸を染め上げていく。
「んっ……どうでしょうか、気持ちよくなられてるでしょうか」
上目遣いでこちらを見つめるカヌの顔は、湯気のせいだけではなくほんのり紅潮していた。
その視線はどこか不安げだが、決して、俺から目を逸らそうとはしなかった。
「ああ、最高だよ、カヌ。そのまま口でも咥えてくれ」
軽くニコリとほほ笑んだ後、彼女の赤い唇に俺の肉棒がずずずっと飲み込まれていく。
護者の証で繋がってるカヌに触れられると、とても大きな安心感を得る。
今まで溜めていたストレスが全て洗い流されるようだ。
……ぐちゅ……ぐちゅ……と風呂場に卑猥な音が響き渡る。
俺はそっと、彼女の髪へ手を伸ばし、彼女のサラサラの黒髪を撫でる。
さらり、と。指の間を滑っていく黒髪は驚くほど滑らかだった。
「んっ……じゅる、……じゅるっ……んっ……れろ、……んちゅ」
小さく目を細めるカヌ。
「カヌ、そろそろ出そうだ」
「らしてくだふぁい、……んちゅ……じゅるう……このまま口の中に」
びゅるるるっと彼女の赤く染まった口の中に精を解き放った。
「……ゴクっゴクっ……おいしゅうございました、幹隆様」
俺の精子を飲みながら微笑むカヌはとても妖艶だった。
張り詰めていた神経が解け。
積み重なっていた疲労も、少しだけ軽くなった気がした。
その後、我慢できなくなった俺はカヌに3回ほど出した。
静かな水音。肌へ触れる温かな湯。すぐ隣にいるカヌの気配。
それだけで、不思議と心が落ち着く。
「……少し、のぼせてきましたね」
カヌが小さく苦笑する。確かに、身体がかなり熱い。
長風呂しすぎたらしい。
「そろそろ上がるか」
「はい」
カヌは素直に頷いた。
湯船から立ち上がると、濡れた黒髪から雫がぽたりと落ちる。
その姿を見ながら、俺は小さく息を吐いた。
……こういう時間があるから、まだ頑張れるのかもしれない。
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僕のクラス――『丙』クラスは、はっきり言って異常だと思う。
今日の戦闘実習で、改めてその事実を再確認した。
あの化け物以外にも、怪物がいたなんて誰が想像できるんだ。
僕みたいなモブ人間は、クラスでも似たような連中と固まって過ごしている。
教室の隅や廊下側のなるべく目立たない位置で大人しくしている。
生存戦略としては正しいと思う。
この学園は、陽キャと強者が支配する世界だ。
僕らみたいな一般人は、静かにしているのが一番いい。
……まあ。そんな僕にも、ささやかな楽しみはある。
主に翠先生だ。豊満。優しい。距離感が近い。
そして、簡単に性処理してくれる最高である。
同級生とは格が違う。
大人のお姉さんの包容力というか、なんというか。
まあ、同級生の女子に自分から話しかけることができてないただのヘタレという自覚はある。
クラス替えから一ヶ月ほど経過し、教室内の勢力図もだいぶ固まってきた。
まず、クラス上位グループ。
教室の前で騒がしくしているのは彼ら、和人くんたちのグループだ。
他に2人いる剛史くん、虎太郎くんがメインのグループだ。
休み時間になれば、自然と周囲に女の子たちが寄っていく。
次のグループは、栄治くん、白夜くん、翔くんの3人グループだ。
このグループはいわゆるヤンキーや荒くれ者たちを集めたグループでクラスにいても関わりたくないグループである。
この『丙』クラスでは、彼らですら比較的大人しい。理由は単純。
もっとヤバい奴らがいるからだ。
そして、クラスの大多数を占めているのが僕らモブグループ。特徴は特にない。
目立たないというのは、このクラスでは重要な才能だと思う。
そして、最後にクラスの真ん中の方を座っている彼ら、化け物のグループだ。
誠一くんとは少し話したことがあるが普通にいい人だった。
化け物とは話したことない、目をつけたれたらお終いだ。
いつ殺されるか、わからんないから僕はいつも、下を向いている。
あの無表情で冷徹な目はきっと何人か殺してるに違いない。
そして、今日もう一人の怪物を見つけてしまった。……幹隆君だ。
普段の彼はいつも教室の隅でぼーとしている。特徴のない生徒だった。
正直、僕らモブ側の人間だと思っていた。
実際、存在感も薄かったし。
いつも一人でいるから、勝手に親近感すら抱いていたくらいだ。
――だが。
今日の戦闘実習で、その認識は完全にぶち壊された。
誰もが、あの体育教師にボコボコにされると思っていた。
実際、教師側も完全に舐めていた。
なのに、まさか逆に吹き飛ばすなんて、誰が予想できるんだ。
しかも、一撃。
地上ではスキルが制限されている。
つまり、ほぼ純粋な身体能力と技術だけでやったはずだ。
それが、余計に怖かった。「なんか強い」じゃない。
“完成されている強さ”だった。
あの瞬間だけ、空気が完全に変わっていた。
教師ですら反応できてなかったし、クラス全員、固まっていた。
たぶん、あれは、本気じゃない。手加減してアレだ。それが一番怖い。
ただ、今になって考えると、とても不思議だ。……いつも一人でいるからだ。
この学園では、ダンジョン最低でも週一で潜る以上どんなに抗っても性欲を抑えることはできない。
にもかかわらず、普段一人で過ごしてる彼に特定のパートナーがいるようには思えなかった。
翠先生の部屋にも一回も見たことないし、どこで何をしているのだろうか。
……もしかしたら。
彼には、とんでもない秘密があるのかもしれない。
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