『ハイスクールハックアンドスラッシュ』の世界に転生して二日目。
寮で軽く食事を済ませ、学園へ向かう。自身の「丙」クラスに到着し、座席に着く。
どうやらクラスメイト達は初めてのダンジョンダイブで浮足が立っているようだった。
ふと、視線を前に向ける。
原作主人公――船坂叶馬。その周りには、すでに人だかりができていた。
「今日のダンジョンダイブ、よろしくね!誠一くん、叶馬くん」
明るく、どこか緊張を孕んだ声で男たちに微笑みかけるのは、ミドルロングの茶髪を揺らす少女
――麻衣。
「ああ。今回のダイブは、俺たち四人で潜るってことでいいよな」
整った顔立ちに自信をのぞかせる少年――誠一が応じる。
「問題ない」
短く、地を這うような声で答えたのは、凶悪なほどに鋭い三白眼を持つ原作主人公――船坂叶馬だ。
「よろしくお願いします……」
最後に、気弱そうに、しかし覚悟を秘めた瞳で小さく頭を下げた黒髪ロングの少女――静香。
(……間違いない。原作のプロローグ通り、あの4人でパーティを組んで潜るわけだ。あいつらはこの後、死線を潜り抜けて順調に強くなっていく。――そして、それ以上の面倒事を学園内に連れてくるんだ)
「関わらないのが正解だな」
誰にも聞こえない声でそう呟き、俺は廊下側の最背後、自身のモブ席に深く腰掛けた。
周囲を見渡せば、生存確率を少しでも上げるために、他の生徒たちも必死になってパーティ交渉を繰り広げている。
力のない女子生徒が、調子のいい男子生徒に都合のいい条件で囲われている光景も、すでにそこかしこで見られた。
胸が糞悪くなるような実力至上主義の片鱗。
だが、俺は誰とも群れるつもりはない。
俺には『異空間生成』という安全圏があり、何より、あの最強のヒロイン、サクラがついてくれている。
下手に一般人と群れて手の内を晒す方が、この狂った学園ではよほど命取りになる。
何より、この最初のダンジョンダイブでの「死」は、これからの人生において取り返しのつかない致命的なデバフを背負うことになるのだ。
この学園のダンジョンで死亡した場合、死の直前の記憶を失って現世に強制送還される。
その際、代償として自身の『
魂魄を失った人間は、寿命が著しく縮まり、生殖機能を完全に喪失し、精神を修復不可能なレベルで病んでいく。
死んで、戻って、また死ぬ。
それを繰り返した人間の末路は――最後は自我すらなくなり、生ける屍、抜け殻のようになるのだ。
(一度だって死んでたまるか。俺は絶対に、生き残ってやる……!)
――――
翠先生の説明を終えた丙組の生徒たちは、学園の最深部、厳重に隔離された『
神社で見るような巨大な鳥居の形をしたそれは、現世と異界を繋ぐ文字通りの境界。
ダンジョンを繋ぐゲートは5つあり今回、使用するのは、『
「……これが、支給品?」
手渡された装備一式を睨みつけ、俺は内面で激しい怒りを覚えた。
片手にラバーグリップの細い警棒。もう片方に、ペラペラのプラスチック製の丸盾。
(ふざけるなよ。これから獰猛なモンスターと殺し合いをさせるっていうのに、こんな玩具みたいな防犯グッズでどう戦えってんだ。剣や斧、せめてまともな防具を配れよ!本当に生徒を「生きて返す気がない」ような、学園の異常なやり方には虫唾が走るな……)
担任の翠先生は、眼鏡の奥の瞳を悲痛に揺らし、今にも泣き出しそうな面持ちで、一人、また一人と生徒たちをゲートの円陣へと送り込んでいく。
彼女もまた、この学園の過酷なシステムに心を痛める被害者の一人なのだろう。
しかし、抗う術はない。
いよいよ、列の一番最後に並んでいた俺の番がやってきた。
「一人で行くんですか……?」
翠先生が、心配そうに俺の顔を覗き込んできた。
クラスのほとんどが4人から6人のグループを作る中、冴えない男がソロで挑もうというのだ。
自殺志願者にしか見えないだろう。
「はい、問題ないです。お気遣いありがとうございます」
「……そうですか。わかりました」
彼女の沈痛な声を背中に受けながら、俺は冷たい石の床に描かれた転送陣の円の中に立つ。
「本来であれば、迷宮への侵入は複数での行動が鉄則となります。もしパーティを組む場合は、互いの体のどこかに触れ合って円に……それでは、転送を開始します」
翠先生の凛とした声が響いた直後、世界の境界がぐにゃりと歪んだ。
幾何学的な、見たこともない文字の羅列が視界の全面を遮るように高速で流れ落ちていく。
強烈な浮遊感の後、ストんと両足に重力が戻った。
視界が開けると、そこは湿った冷気が肌を刺す、薄暗い石畳の空間だった。
「……ふう、無事にダンジョンダイブは成功したようだな」
大きく安堵の息を吐き出しながら、プラスチックの盾を構えて即座に周囲の索敵を行う。
通路は静まり返っており、左右に続く闇の奥にも動く気配はない。
「よし、とりあえず周囲にモンスターはいないな。――《異空間生成》!」
空間に右手をかざすと、何もない虚空がジワリと裂け、お馴染みの黒い渦が音もなく出現した。
ダンジョン内でもスキルが問題なく機能することを確認し、俺は素早くその中へと身を滑り込ませた。
「サクラ、いるか?」
「いるよ、マスター」
緊迫した俺の声に呼応するように、すぐ背後から鈴を転がしたような声が響く。
振り返ると、そこには昨夜と変わらない、見ているだけでこちらの心が洗われるような桜色の髪の美少女が立っていた。
俺は彼女の小さな手を引き、二人で一緒に黒い渦を跨いで、冷たい迷宮の通路へと躍り出た。
「わあ……!外に出るの、久しぶりなんだよ!ここがダンジョンの中なの、マスター?」
「ああ、そうだ」
サクラは、まるでピクニックにでも来たかのように目を輝かせ、珍しそうに石造りの壁を見回している。
長い間、異空間の中に縛られていた彼女にとって、この不気味な迷宮すら新鮮な外の世界なのだろう。
「油断するなよ、サクラ。いつモンスターが出てもおかしくない」
「うん、わかってる」
俺の警告に、サクラの表情がキリリと引き締まる。その瞬間――
通路の奥、数メートル先の闇から、カサリ、と嫌な硬い音が響いた。
「……来るぞ」
暗がりの奥から、泥を捏ね上げたような醜悪な小柄の体が這い出てくる。
緑色の醜い皮膚、不釣り合いに肥大した頭部、そして飢餓感に歪んだ顔。
――ゴブリンだ。
「……マジかよ」
前世のゲームや小説で、文字通り腐るほど見てきた最弱の雑魚モンスター。
だが、生身の現実として目の前に現れると、その威圧感は冗談ではなかった。
獣特有の生臭い悪臭と、明確な「殺意」の籠もった濁った瞳が、真っ直ぐに俺を捉えている。
「マスター、どうする? 私がやる?」
「……いや、やるしかない。今回は一匹だけだ。――ここは、俺にやらせてくれ」
「……大丈夫?」
心配そうに服の裾を引くサクラに、俺は力強く頷いてみせる。
どのみち、いつまでも彼女の背中に隠れているわけにはいかない。
この恐怖を自力で乗り越えなければ、この学園で生き残る資格などないのだ。
喉がからからに渇き、心臓が肋骨を突き破らんばかりに暴れ狂う。
――逃げ場はない。ゴブリンが、その短い脚で地を蹴り、鋭い爪を立てて俺の顔面へと飛びかかってきた。
「おおおおおっ!」
無我夢中で、支給された警棒を全力で振り抜く。
バキッ、という生々しく鈍い感触が、手の平を通じて腕全体へと伝わった。
俺の放った一撃はゴブリンの顔面にクリーンヒットし、その頭部を容赦なくひしゃげさせる。
モンスターの身体は、肉汁を撒き散らす間もなく、まるで陽炎が霧散するように黒い粒子となって崩れ落ちた。
あとに残されたのは、ゴブリンがいた場所にぽつんと転がっている、小さな透明な石――『
「……はぁ、はぁ……っ」
激しい呼吸と共に、腰が抜けそうになるのを堪える。本当に、俺の手で化け物を殺したのだ。
転がったクリスタルを拾い上げながら、俺は震える声で呟いた。
「”ステータス”」
目の前に半透明のウィンドウがポップアップする。
=====≪STATUS≫=====
名:影山幹隆
レベル3
職業:ノービス
スキル:ヒロイン召喚 レベル1
ステータス レベル1
異空間生成 レベル1
スキルポイント:2
=================
レベルが一気に3まで上昇していた。俺は目を見開いた。
原作の知識によれば、この迷宮の最上層にいる「レベル1のゴブリン」を、ノービスの人間がなんと100匹殺してようやくレベルが10に到達すると言われている。
ということは、今俺が倒した個体は、通常の20倍近い経験値を持つ「レベル20相当」の個体だったのか……!?
何はともあれ、ステータス画面には新しく『スキルポイント:2』の項目が追加されていた。
(検証をしたいが……一箇所に長く留まるのは不味いな。すぐに移動しよう)
原作の記憶が警鐘を鳴らす。
ダンジョン内で同じ場所に一定時間以上とどまり続けると、迷宮の防衛システムである『
原作主人公の叶馬は、のちにこれを「素手で撲殺」するという荒技を披露するが、今の俺が遭遇すれば一瞬で魂魄をロストする。
「マスター、お疲れなんだよ」
サクラが嬉しそうに駆け寄ってきて、俺の腕に抱きついた。
「ああ、問題なく倒せたよ。レベルも上がった……。サクラ、本格的な連戦に入る前に、一度安全な場所でスキルの検証をしたい。付いてきてくれ」
「わかったんだよ!」
「――《異空間生成》」
再び開いた黒い渦のゲートへと飛び込み、俺たちは十畳の和室へと帰還した。
ダンジョンの構造は基本的に一本道の「通路」と、小部屋である「玄室」で構成されている。
先ほどのゴブリンは、恐らく近くの玄室から迷い出てきたのだろう。
これからは、玄室に潜む 個体を確実に各個撃破してレベルを上げる。
懸念されていた「レベルアップに伴う性欲の暴走」は、今のところ軽い昂り程度で、十分に自制できている。
転生時に肉体が根本から強化されている恩恵かもしれない。
俺は早速、目の前のシステム画面を操作し、獲得したスキルポイントの割り振りを思案した。現状のスキル項目を確認する。
・ヒロイン召喚…………次のレベルまで残り10ポイント。
・ステータス…………次のレベルまで残り1ポイント。
・異空間生成…………次のレベルまで残り1ポイント。
(召喚だけ必要ポイントが桁違いだな……。やはり別世界から存在を呼ぶチート能力、性能が違うか。よし、まずは情報と戦力を固めるために、基礎の2つを底上げしよう)
まずは《ステータス閲覧》に1ポイントを投資する。画面がパッと明滅し、新しい項目が展開された。
=====≪STATUS≫=====
名:影山幹隆
レベル3
職業:ノービス
スキル:ヒロイン召喚 レベル1
ステータス レベル2
∟パーティ編成 New
異空間生成 レベル1
スキルポイント:1
=================
新しく”パーティ編成”の項目が増えていた。
・パーティ編成――
任意の対象に対してパーティ申請が可能。
申請された側は、脳内で【承諾/拒否】を選択する。
パーティリーダーは、全メンバーの詳細なステータスログを閲覧可能。
また、討伐時の獲得経験値は、戦闘への関与度に関わらず「均等に共有分配」される。
ステータス…………次のレベルまで残り2ポイント。
――経験値分配。これはダンジョン攻略するうえで助かるな。
原作では、レベルの偏りを防ぐために、わざわざ瀕死のモンスターへの「ラストヒット」を実力の低いメンバーに譲るという、命がけの微調整を行っていた。
だが、このスキルがあれば、誰がどう倒そうが全員が同じ速度で一律に強くなれる。
次のレベルアップには2ポイントが必要なため、残った1ポイントを《異空間生成》へと注ぎ込んだ。
=====≪STATUS≫=====
名:影山幹隆
レベル3
職業:ノービス
スキル:ヒロイン召喚 レベル1
ステータス レベル2
∟パーティ編成
異空間生成 レベル2
∟家具追加 New
スキルポイント:0
=================
・家具追加――
異空間の内部に、記憶にある一般的な「家具」を任意で追加・配置できる。
異空間生成…………次のレベルまで残り2ポイント。
(こっちは戦闘に直接関係ない、生活系の拡張か。まあ、殺風景な部屋よりはいいか)
試しに画面を思い描きながら「座卓、座布団、そして最高級の布団一式」を選択してみる。
すると、何もない白壁の一部が生き物のようにボコボコと膨れ上がり、数秒の後、真新しいふかふかの敷布団一式が畳の上にスポンと出現した。
「おお、お布団だー!」
それを見たサクラは目を輝かせ、助走をつけてダイブした。
敷布団に顔を埋め、ふにゃふにゃと幸せそうに身悶えしている。
いちいち仕草が可愛すぎて、直視しているだけで心臓の鼓動が早くなる。
「コホン……サクラ、少しいいか?」
「なぁに? マスター」
お布団から顔を半分だけ出したサクラが、首を傾げて俺を見つめる。
「今からパーティ申請する。脳内で承認してくれ」
「わかったんだよ!」
システム画面の【パーティ編成】からサクラを対象に選択し、申請を飛ばす。
直後、脳内にピン、と小気味いい電子音が響いた。
『――サクラからパーティの承諾がありました』
画面の最下部に、新しく【パーティメンバー】の項目が追加される。
俺はその「サクラ」の欄を指先でタップした。
――だが、そこに表示された規格外の内容を目にした瞬間、俺の思考は硬直した。
=====≪STATUS≫=====
名:サクラ
レベル1
職業:
スキル:
パーティ:(リーダー)幹隆 レベル3、サクラ レベル1
=================
(スキルのレベル表記がない……!?最初から、全ての能力が完成しているっていうのか……?)
戦慄しながら、俺はその3つの固有スキルの詳細ログを展開した。
・
前方の広範囲に存在するあらゆる事象を灰塵と化す、神話級マホウの聖剣。
兵器内に独立した魔力炉を搭載しており、日光を浴びることで自動的に魔力を補填可能。
神話魔術の破壊力は最高クラスだが、その分魔力消費量が多い。
・
優秀な人型戦略破壊魔術兵器として適切な行動ロジックを得るために標準装備された能力。
自分と契約者の思考・五感をリンクさせ、瞬時に情報共有を行う。
また、視界に捉えたあらゆる敵の能力・スキルの性質を瞬時に見抜き、記憶・解析することが可能。
(※ただし、特殊な遮蔽魔術等で隠された秘匿能力までは見抜けない。あくまで使用された能力の解析のみ)。
・
レーヴァテインによる致命的な魔力消費を自動で調節し、術者の自滅を防ぐ、自己防衛型概念魔術兵装。
使用者の魔力の総量や生命力に応じて、出力を「一から九段階」まで制限・解除する。
――強い。書いてあることすべてが強い。
これがメインヒロインのパワーというものなのか。
この異常な世界において、これ以上ない最強の切札を手に入れたことを、俺は心の底から確信した。
「……よし、スキルの確認は完了だ。サクラ、いよいよ本格的なダンジョン攻略、レベル上げを開始するぞ」
「うん! マスターの敵は、私が全部やっつけるんだよ!」
気合十分なサクラを伴い、俺たちは再び黒い渦を抜けて石畳の通路へと戻った。
薄暗い迷宮を進むこと数分、前方に巨大な空間が見えてくる。
モンスターが確実に巣食っている「玄室」だ。
「マスター、止まって。――中に、たくさんの不気味な気配があるんだよ」
サクラが俺の前に立ちふさがり、小さな声で警告を発した。
――直後。通路の奥から、影が揺れる。
「チッ……これは、二匹や三匹のレベルじゃないな……!」
闇の中から溢れ出してきたのは、狂ったように鳴き声を上げるゴブリンの「大群」だった。
その数、優に数十体。先ほどの単発の個体とは明らかに違い、前衛と後衛、棍棒を持った個体など、簡易的な統率すら取れている。
何十双もの血走った邪悪な眼光が、一斉に俺たちを射抜いた。
凄まじいプレッシャーが肌を刺し、全身の毛穴から冷や汗が噴き出す。
警棒を握る手が恐怖で震えた。
(クソッ、いけるか……!? この数を、この玩具みたいな警棒で……!)
「マスター、下がって」
凛とした、少女のものとは思えない静かな声。
一歩前に出たサクラが、行く手を阻むゴブリンの群れを見据え、その小さな右手を天へと掲げた。
「……少しだけ、使うね。――
彼女の声に呼応し、迷宮の冷たい空気の中に、淡く美しいサクラ色の光が灯る。
光の粒子が、まるで花吹雪のようにきらきらと空気中に舞い上がった。
次の瞬間――
「……っ!?」
視界のすべてが、破滅的なまでの純白の閃光によって塗りつぶされた。
地を割るような大爆音と、凄まじい熱波の衝撃。
俺はまともに目を開けていられず、腕で顔を覆いながらその場に激しくのけぞった。
数秒の後。耳鳴りの中で、恐る恐る目を開ける。
――そこには、文字通り「何も」なかった。
数十体のゴブリンの群れは、悲鳴を上げることすら許されず、影も形も、肉片一つ残さず綺麗さっぱり消滅していた。
ただ、サクラの前方に続く数十メートルの直線状の床だけが、まるで巨大なレーザーで抉られたかのように真っ黒に焼け焦げ、その上には、数え切れないほどの大量の
「……は?うそ、だろ……」
呆然とした声が、喉の奥から漏れる。レベル1の出力でこれなのか?
ゴブリンの群れを一瞬で灰燼に帰したその圧倒的な火力に、背筋に冷たい戦慄が走った。
「マスター……?」
「あ、いや……す、凄いなサクラ。助かった、ありがとう」
「うん。……だって、マスターを守るって、約束したから……ね……」
微笑もうとしたサクラの身体が、糸の切れた人形のように、どさりと冷たい石畳の上に崩れ落ちた。
「おい、サクラ!? 大丈夫か、しっかりしろ!」
心臓が跳ね上がり、慌てて彼女の元へ駆け寄ってその小さな身体を抱き起こす。
サクラの身体は、驚くほどに熱くなっていた。
はあはあ、と荒い吐息を漏らし、白磁の肌が林檎のように真っ赤に染まっている。
「マスター……なんだか、身体が、とっても熱くて……変なんだよぉ……」
潤んだ碧眼が、熱を帯びて俺を視る。
(――しまった!これは一気に大量のレベルアップをした弊害か……っ!?)
気づけば、抱きついている俺自身の身体の奥からも、ドロドロとした尋常ではない「熱量」が爆発的に湧き上がっていた。
下半身の愚息が、痛いほどの硬さを持って自己主張を始め、理性を猛烈に削り取っていく。
「とにかく――『異空間生成』っ!!」
狂いそうな本能を必死に抑え込み、黒い渦を出現させると、俺はサクラの軽い身体を横抱きにしたまま、転がり込むようにして十畳の和室へと飛び込んだ。
新しく追加したふかふかの布団の上に、優しく彼女を寝かせる。
「……マスター」
布団に横たわったサクラが、涙目の瞳でじっとこちらを見上げてくる。
熱を帯びた吐息が、静かな部屋の中に小さく響く。
普段の無邪気な雰囲気とは違う、どこか艶めかしく、甘えた声音。
「……苦しいの。身体の奥が、うずうずして、堪らないんだよ……」
そう言って、サクラは震える手で、俺のブレザーの裾をぎゅっと掴んできた。
(俺の身体も、もう限界だ……。さっきの戦闘での急激なレベル上昇、その代償の『性欲暴走』が、俺の理性を食い破ろうとしている……!)
「マスター……お願い、私に、触れてほしいんだよ……」
至近距離から放たれる、ヒロインの誘惑。
体温が、肌を通じて直に伝わってくる。
「……サクラ、いいんだな。俺は、もう我慢できない」
俺が覚悟を決めてそう告げると、サクラはどこかホッとしたように、とろんとした笑みを浮かべた。
「うん……マスターになら、何されても、いいんだよ……♡」
その瞬間、俺の頭の中で理性の糸がプチンと切れた。
指先が、興奮と熱量で激しく震えている。
サクラの柔らかい頬に手を触れ、顔を近づけると、彼女は自然と目を閉じて小さな唇を突き出してきた。
「んっ……ちゅっ、――んんっ、――」
静かな和室の中で、濡れた不埒な音が響く。
「マスター、……心臓のドキドキが、本当に止まらないんだよぉ……っ」
甘く優しく触れ合うようなキスを交わしていると、サクラが緊張した面持ちで小さく呟いた。
これから行われる人生初の未知の行為に、期待と不安が入り混じり、身体を固くしているのだろう。
(やべぇ……めちゃくちゃ可愛い。本当にいいのか?ダンジョンの影響とはいえ、こんな極上の美少女と結ばれるなんて、前世の社畜人生からは想像もできない最高のご褒美だ……!)
俺はその緊張を優しくほぐすように、もう一度、彼女のふっくらとした唇に自身の唇を重ね合わせ、深く貪った。
「ん――――、……ちゅ……ちゅっ、……んっ……マスタぁー♡……んむ」
サクラはとろんとした表情で、甘ったるい愛の吐息を漏らしてくれる。
魂のパスで繋がった二心同体の二人。
言葉にしなくても、彼女の「幹隆が好き、幹隆にすべてを捧げたい」という純粋な想いが、直接脳内に流れ込んできて胸が熱くなる。
ただ触れているだけのはずなのに、境界が曖昧になっていく。
優しくキスを続けながら、俺は彼女の服を脱がし、その下にある膨らみへと手を伸ばした。
(……っ、やわらかすぎる……!)
傍目からでも判る、彼女の小柄な体躯には不釣り合いなほどの大きな胸。
それを手の平全体で愛おしむように揉みしだく。
……もみ……もみゅっ……もみゅっ、もみぃ……
「……やっ♡……おっぱい、ばっかり触っちゃ……マスタぁー♡……んぅっ」
サクラの衣服を完全に脱がしながら、俺もまた自身の制服を乱暴に脱ぎ捨てていく。
下着のホックを外した途端、ぷるんと形の良い見事な巨乳が、遮るものなく目の前に露わになった。
白磁の素肌に映える、大きな乳房。その中央には、淡いサクラ色をしたほんのりとした乳首が鎮座している。
俺は再びその豊満を両手で揉みしだき、極上の柔らかさを堪能した。
指を胸に押し込むと、どこまでも深く沈んでいってしまうその弾力に、脳が感動に打ち震える。
先ほどから、熱の暴走によってツンと固く尖り、自己主張している乳首の先端を、親指と人差し指で優しくいじってやった。
「やぁっ♡……んっ、マスターぁ♡……んっ……んはああぁん!」
「サクラ、めちゃくちゃ可愛いよ……。もっと、可愛い声を聞かせてくれ」
そのままの勢いで、彼女の最後の障壁であるショーツを滑り落とす。
露わになった彼女の神聖な秘処――淡紅色の美しい花びらに目を奪われながら、俺は衝動のままにサクラの股間へと割り込み、メスの甘い匂いを堪能しながら、その秘裂へと自身の舌を深く挿入した。
「あああっ♡……んっ、やぁっ♡……そこ、だめぇ、マスター♡……んっ、はああ!」
舌でおまんこを愛撫すればするほど、彼女の体内から溢れ出た、透明で甘い愛液がじゅるじゅると溢れ出してくる。
秘所の頂点にひっそりと置かれた
……じゅるじゅる……じゅるるぅ……じゅるぅ……!
「ああん♡……マスター♡……いっちゃう、だめぇ……イクぅ……あああああんっ!!」
サクラの豊かな肢体が、弓なりのようにビクンビクンと激しい痙攣を起こしながら大きく震えた。
「サクラ、もう我慢できない。中に、入れるぞ」
体勢を変え、彼女の上に覆いかぶさるように正常位の形を取る。
俺はサクラの太ももを大きく割らせ、そこへ、熱の暴走によって根元から反り返った自身の凶器をあてがい、狭い割れ目へと一気に挿入した。
「……っ!?」
カチリ、と肉の壁が行く手を阻む。サクラが痛みに身を硬くした。
身体の反射で浮かび上がっている彼女の細い腰を両手でしっかりと掴み固定しながら、俺は一気に最奥まで突っ込んだ。
純白の敷布団の上に、彼女が純潔であった証である、鮮烈な赤い血がハラリと付着する。
「あ、ああ、ああぁあ……あーーっ♡」
痛みがすぐに快感へと塗りつぶされたのか、サクラの眼が快楽に染まる。
俺は何度も彼女の唇に口づけを交わしながら、ゆっくりと、しかし確実に腰を動かし始めた。
愛液で完全に溢れかえっている彼女の膣内は、おそるべき吸着力でぎゅうぎゅうと、俺のペニスを締め付け、脳髄を破壊しかねない極上の快感をもたらしてくる。
(やばい、気持ちよすぎる……! 生セックスがこんなに凄いなんて……!サクラは俺の女だ、誰にも渡さない……!)
サクラの最も敏感な部分――子宮の入り口を亀頭の先で小突くと、子宮口が俺の亀頭をちゅう……ちゅう……と、まるで生き物のように必死に吸い付いてくるのが分かった。
俺はサクラの体内に、己の存在を深く刻み付けるように、貪欲に腰を振り続けた。
パチパチ、パンパン、と激しい肉と肉の衝突音が、十畳の和室に響き渡る。
「やあっ♡、ああん♡、ああぁん♡……あん……あああああぁ♡」
「サクラ、お前のナカ、すげぇ気持ちいい……っ! もう、そろそろ、出そうだ……っ!」
「……マスター♡、……マスタぁー♡、そのまま、中にいっぱい出して……っ、マスタぁー♡」
「ああ、出すぞ、サクラァァァ!! ぐ、イク……っ!! うっっ!」
「あっ♡……あああああっ♡♡♡ あっ♡ イク、イクぅ♡……マスターの熱いのが、中に、あああん♡」
ドクドクと、彼女の最奥に向けて、溜まりに溜まっていた熱い精液をすべて注ぎ込む。
あまりの快感の強さに、サクラは目を白黒させながら、二度目の絶頂を迎えて激しく悶絶した。
ゆっくりとペニスを引き抜くと、彼女の可愛い合わせ目から、行き場を失った大量の白濁液が、ドロリと溢れ出て畳を汚していく。
出し終えた凄まじい余韻と疲労感と共に、俺はサクラの豊かな胸の中にそのまま覆いかぶさった。
「サクラ……」
名前を呼びかけ、彼女の唇に軽くキスをする。汗で張り付いた桜色の髪を優しく撫でながら、息を整えた。
「マスターぁ……♡」
「すまない。熱のせいで我慢できなくて……本当は、最初だからもっと優しくしようと思ったんだが、無理だった」
「ううん……マスターと私は、二心同体なんだよ? マスターが今、私をこんなに求めてくれた、その想いが一番嬉しいんだよ……」
「それって……サクラも、気持ちよかったってことか?」
「もう、マスター!そういうところは、男の子としてデリカシーがないんだよぅ!」
真っ赤になって頬をぷくーっと膨らませながらも、サクラは愛おしそうに俺の首に腕を絡めてくる。
「……それに、マスターのそれ……まだ、お腹のところで、硬いままだね?」
「すまん。サクラが可愛すぎて、正直、一回じゃ全然収まってないんだ」
「ふふっ……いいよ♡ マスターが満足するまで……何度でも、私に注いで……♡」
サクラの、その上目遣いの熱く濡れた視線に、残っていた理性が完全に消し飛んだ。
俺はその後も、彼女の甘い肉体に溺れるように、体勢を変えながら、合計で5回も彼女のナカへと熱い精液を注ぎ込み続けた。
「もう、マスターぁ……♡、さすがに、限界なんだよ……」
最後には完全に骨抜きにされ、はあはあと満足げな吐息を漏らしたサクラは、そのまま幸せそうな顔で布団へと倒れ込んだ。
全ての欲望を出し切った頃には、俺たちの身体を狂わせていたあの暴走的な熱は、すっかりと静まり返っていた。
――――
――どれくらいの時間が経ったのだろうか。
気が付けば、サクラは俺の腕枕の中で、スースーと静かな寝息を立てて眠りについていた。
さっきまでの狂おしいほどの熱情が嘘のように、その寝顔は穏やかで、ただの可憐な少女そのものだ。
「……落ち着いた、か」
軽く息を吐き出しながら、俺は空中に「ステータス」を呼び出した。
一気にレベルが上がったはずだ。画面が発光し、視界にログが表示される。
=====≪STATUS≫=====
名:影山幹隆
レベル18
職業:ノービス ※【ジョブチェンジ可能】
スキル:ヒロイン召喚 レベル1
ステータス レベル2
異空間生成 レベル2
スキルポイント:15
パーティ:(リーダー)幹隆 レベル18、サクラ レベル18
=================
=====≪STATUS≫=====
名:サクラ
レベル18
職業:
スキル:
パーティ:(リーダー)幹隆 レベル18、サクラ レベル18
=================
「……やっぱり、経験値を完全に共有しているから、サクラが聖剣で消し飛ばした数十体分のゴブリンの経験値が、俺にも一気に流れ込んできたんだな。レベル18、か……」
俺は小さく呟いた。原作の知識が脳裏をよぎる。
この学園において、初期の一般職である「ノービス」のレベル上限は10。
レベル10に達した時点で、より戦闘に特化した専門職へと『
今の俺は、すでにその基準を大幅にオーバーしている。
眠るサクラの額にかかった髪を、そっと指先で払ってやる。
彼女のレベルも18に上がっているが、やはり固有スキルの性能自体に変化はない。
元々のスペックが完成されすぎているのだ。
「……よし、レベルアップの暴走も引いたし、これで一安心、だな」
そう言って、自身の内側に意識を向けた、その時だった。
――奇妙な「違和感」が、俺の胸の奥をチクリと刺した。
「……何だ、これ?」
身体の最奥、魔力の源泉とも言える場所。そこに、暴走の熱とは異なる、何かが“残っている”感覚が消えない。
それは魔力とも、ただの身体的感覚とも違う。
まるで、自身の魂の根底に、新しく得体の知れない「泥のようなナニカ」がべっとりと付着して、同化してしまったかのような、不気味な残滓。
(……これも、レベルアップの弊害なのか? それとも、サクラと深く交わったことによる、因果の混ざり合いなのか……?)
考えても、今の貧弱な情報量では答えは出そうにない。
だが、確実に、俺の身体は前世の人間とは「違うモノ」へと変貌しつつある。
「……まあいい。今は深く考えるのはやめよう。まずはサクラを休ませて、俺も体力を回復させるのが先決だ。検証は、実習が終わってからゆっくりやればいい」
自分に言い聞かせるようにそう呟き、俺は愛おしい彼女の身体を優しく抱き寄せ、隣にそっと身を横たえた。
一日にして起きたあまりにも過酷で、そして濃密すぎる出来事。
激しい疲労感が一気に押し寄せ、俺の瞼は急速に重くなっていく。
サクラの心地よい体温と、甘い残り香に包まれながら、俺の意識はゆっくりと、深い、深い眠りの底へと沈んでいった。