====
「おお~! なっちゃんも
私は、訓練場の中央を見ながら笑った。
黒炎が渦巻き、祝祭の光が床一面を覆う。
普通の学園の生徒なら、あの空間に立った瞬間、腰を抜かして戦闘不能になる。
それほどまでに、二人の固有スキルは異常だった。
にもかかわらず、幹隆君は、まだ余裕を失っていない。
「固有スキルまで使うってことは、幹隆君がそれほど強いってことなのかなぁ」
「……彼、とんでもなく強いね」
隣にいた亜季ちゃんが、小さく呟いた。私は少しだけ目を丸くする。
珍しい、亜季ちゃんは、基本的に感情を表へ出さない。
規格外――『
だから普段は、なるべく静かに、なるべく波を立てないように生きている。
そんな彼女が、はっきりと驚きを口にしていた。
私は、ちらりと観客席へ視線を向ける。
そこには
ピンク髪の少女――サクラちゃんと黒髪の少女――カヌちゃんが並んで座っていた。
二人とも、真っ直ぐ幹隆君を見つめている。
信頼、親愛、そして、絶対的な確信――幹隆君なら負けない。
そんな感情が、見ているだけで伝わってくる。
出会った当初、私は、彼も自分たちと同じ
でも違う。彼はもっと別の何かだ。
規格外ですら、分類しきれない“外側”。
彼だけ、世界のルールそのものからズレている。
彼女たちを召喚で呼んだ――そう言っていたけど。
普通、モンスターカードによる召喚には絶対的な制限が存在する。
探索者のレベルを超える存在は、呼び出せない。
レベル30なら、総量30まで。
レベル10を三体でもいいし、レベル30を一体でもいい。
それが、この世界の常識。
だけど、幹隆君のパーティーは違う。
さっき、亜季ちゃんが《鑑定》していた。
四人全員、同じレベル。
しかも全員が異常なステータスをしていたらしい。
あり得ない。もし同じ召喚システムなら、計算が合わない。
そもそも、カヌちゃんの戦闘能力、マリィちゃんとの融合。
どれも、普通の召喚獣という範疇を完全に逸脱している。
(ああ……)
自然と、口元が緩む。
こんな存在、初めて見た。だからこそ、たまらなく楽しい。
(幹隆君……本当に最高だよ。……濡れてきちゃう)
「……波留ちゃん。……考え事?」
隣から、亜季ちゃんの静かな声、私は、にへら、と笑った。
「うん。ちょっとねぇ……こんなにワクワクするの、いつぶりだろうって」
「……私たちが、イリーガルクラスを一緒に取得した時以来じゃない?」
「あー……うん」
私は目を細める。
「……そうかもね。そうかもしれない」
『
あの頃にはもう、私もかなり学園に染まっていたと思う。
この学園は、強者が優遇され、逆に、弱者にはとことん残酷だった。
セックス自体は、気持ちいいし、楽しかったから別に嫌いでは無かった。
私たち四人の出会いは、同じ俱楽部に所属していたからだ。
ただ、その俱楽部は、一年生の女子を捕まえてレイプして楽しむだけのいわゆる“エンジョイ系”だった。
一年の女子を囲って、力関係で逆らえなくして、そのまま玩具みたいに扱う。
そんな最低な場所だった。
もちろん当時は、強さもレベルも敵わなかったからされるがままだった。
私は楽しいことが好きだった。けど、変化のないセックスするだけの日々は楽しくなかった。
だから気づけば、同じ俱楽部にいた、なっちゃん、亜季ちゃん、楓夕ちんを誘ってダンジョンへ潜るようになっていた。
四人でいる時だけは、少しだけ自由だったから。
誰にも邪魔されなくて、好き勝手暴れて、命懸けで戦って、その瞬間だけは、生きてる感じがした。
そして――きっかけは、もう覚えていない。
ただ、ある日、私たちは
その結果、四人同時に、イリーガルクラスを獲得した。
最初は、冗談かと思った。
学校の授業で習っていたけど、まさか自分が獲得するなんて思いもしなかった。
でも現実だった。
《
感情を極限まで肥大化させた異常職。
力は絶大。その代わり、心が壊れる。それがイリーガルクラス。
……でも、不思議と怖くなかった。
楓夕ちんの提案で俱楽部を脱退することを決めた。
今思えば、あの時点で決まってたんだと思う。
私たち四人が、一緒に進むことは。
イリーガルクラスを得た私たちを、先輩たちは露骨に恐れていた。
まるで怪物を見るみたいな目。
あんなに好き勝手してたくせに、力関係が逆転した途端、急に怯え始めた。
だから私たちは、その俱楽部を抜けた。
そのあとは、今の『
ちなみに名前は全然可愛くない。
私はもっとキラキラした名前が良かった。
でも楓夕ちんが、――舐められない名前にするって譲らなかった。
結果、物騒極まりない俱楽部名になった。
結成当初は、ほぼ女子だけだった。
男子は獅騎君くらい。
ああ見えて、亜季ちゃんの幼なじみらしい。
本人は断りたかったっぽいけど、亜季ちゃんに頼まれて結局来たらしい。
そこから私たちは、ひたすらダンジョンに潜った。
ダンジョン、レイド、対抗戦で暴れて、勝ち続けて成り上がった。
気づけば『
普通じゃ届かない場所。
でも、そこへ来てもなお、退屈は消えなかった。
強敵は減り、刺激は薄れ、未知はなくなっていく。
そんな時に、――幹隆君が現れた。
世界のルールから外れた。
理解不能で、危険で、滅茶苦茶で――最高に面白い男。
訓練場の中央、黒い刃を構える彼を見ながら、私は笑う。
胸が高鳴っていた。
久しぶりに、本当に久しぶりに、この先が楽しみだと思えた。
====
「さぁ、第二ラウンドだ」
訓練場の空気が、完全に変質した。
赤黒い禍々しい魔力、黄金色に輝く祝祭の光。
相反する二つの異常が、空間そのものを書き換えていく。
まるで怒りそのものが具現化したみたいな魔力。
視界に映るだけで、本能が危険信号を鳴らしてくる。
一方、
キラキラと、楽しげに、軽やかに、なのに、その空間だけ妙に感覚が狂う。
恐怖が薄れ、高揚感だけが増幅されていく。
戦っているはずなのに、どこか楽しい。
これがイリーガルクラスか、遂に本領発揮したってことかな。
俺の今の力が、どこまで通用するのか、確かめるには最高の相手だった。
足に魔力を溜め、
爆発的な加速、景色が一瞬で流れ去る。
空間を裂く勢いで踏み込み、俺は楓夕先輩の懐へ飛び込んだ。
右腕の黒刃――マリィを振り抜く。
ギロチンみたいな一撃、胴体ごと断ち切る軌道。
「……フッ!」
――ギィィィィン!!
火花が炸裂した。放った斬撃は、楓夕先輩の刀身によって完全に受け止められていた。
(また防いだ……!?攻撃までに1秒もかかってないのに)
今の速度は、普通の探索者じゃ視認すら不可能。
それを、真正面から受け止めるなんて。
こっちは聖遺物融合による肉体強化とさらに
理論上、誰にも捉えられないはずだった。
なのに、楓夕先輩は、まるで未来でも見えているみたいに反応してくる。
「そこ!」
ヒュンッ――!横合いから銀光。
奈津先輩の投擲した
「クッ……!」
遅れた。さっきは、反応できたのに今度は避けることができなかった。
頬から血が流れる。そもそも当たる直前まで殺気を感じなかった。
攻撃には予兆がある。
モンスターも、探索者も、攻撃する瞬間、必ず“敵意”を放つ。
俺は、マリィとの融合によって、その殺気を感知できるようになっていた。
だから回避できる。だから先読みできる。
だが、今の攻撃にはそれが無かった。
そして、ダメージを受けたのも驚きだ。
聖遺物と融合している俺は、生半可な攻撃はダメージにすら入らない。
(二人の固有スキルが何なのかわからないのが厄介だな)
「黒炎よ――この地を焦土と化せ!」
ドゴォォォォォォンッ!!!!
次の瞬間、俺の足元から黒炎が噴き上がった。
床が爆ぜる。灼熱が空間を焼き尽くす。
「あぶねぇ……!」
咄嗟に後方へ跳躍。
だが……
「
空中へ逃れた先、そこには奈津先輩の笑顔があった。
――ゾワッ。
視界を埋め尽くす銀閃。数がおかしい。
数百。いや、千を超えている。
空そのものが刃で覆われていた。
流星群みたいな銀の豪雨が、俺へ降り注ぐ。
「……“空間固定”!」
異空間を生成し、足場にして軌道を変える。
ギャリギャリギャリッ!!
短剣が異空間の端を削り取っていく。
地面へ着地。だが、その瞬間。
再び黒炎が襲い掛かった。
「――チッ!」
避けても、逃げても、次が来る。
完全な挟撃。
(クソ……!)
認めざるを得ない。
俺は心のどこかで、イリーガルクラスを舐めていた。
カヌやサクラ、マリィが規格外すぎたせいで、感覚が麻痺していたのかもしれない。
だが、目の前の二人もまた、間違いなく怪物だ。
しかも連携が完成されている。
このまま受けに回れば、押し潰される。
なら――突破するしかない。
俺は視線を奈津先輩へ向けた。
黄金の祝祭空間、無数の刃を操る支援役。
こっちを止め続けている原因。
なら、まず落とすべきは――あっちだ。
「――行くぞ!」
黒炎へ向かって強引に踏み込み、俺は進行方向を反転。
「君は――確かに強いし速い」
目視でも気配でもさっきまでいなかったのになぜだ……?いつの間に
「だが……同じ手ばかり通用すると思うなよ。――”
咄嗟に防御姿勢へ移行する。だが――遅い。
視界の端で、黒い軌跡が閃いた瞬間、凄まじい衝撃が全身を貫いた。
ドガァァァァァァンッ!!
「――ぐぁッ!!」
身体が砲弾みたいに吹き飛ぶ。
訓練場の壁へ激突。
コンクリート状の特殊壁材が砕け散り、粉塵が舞い上がった。
肺から空気が無理やり吐き出される。
骨が軋み、内臓が揺れる。
まともに食らった。
「……っ、なんでだ……」
壁へ埋まりながら、俺は歯を食いしばる。
見えていなかった。
確かに、さっきまでそこにいたのは奈津先輩だけだったはずだ。
楓夕先輩の姿はなかった。見落とすはずがない。
マリィと融合した今の感覚器官は、人間の域を超えている。
なのに――認識できなかった。
さっきの投擲された
(これが……奈津先輩のイリーガルか)
《
だから、殺気も敵意も感じることはない。厄介な能力だな。
こっちがどれだけ感知能力を高めても、“認識できない”なら意味がない。
そして楓夕先輩、あの人は真正面から異常だ。
反応速度、剣技、身体能力、全部が化け物。
カヌほどではないにせよ、現状の俺では完全に対応され始めている。
(……このままじゃ勝てない)
俺は壁から身体を引き剥がしながら、静かに傷を修復する。
「――
淡い光が全身を包む。
砕けた骨、裂けた筋肉、焼けた皮膚、すべてが巻き戻るみたいに再生していく。
――ふと、まるで最初からそこにあったみたいに、脳裏へ、一つの確信が降りてきた。
「……“ステータス”」
小さく呟く。
青白いウィンドウが視界へ展開された。
=====≪STATUS≫=====
名:影山幹隆
レベル65
職業:
(
スキル:ヒロイン召喚 レベル3
ステータス レベル4
異空間生成 レベル5
エイヴィヒカイト 形成
(
スキルポイント:14
パーティ:(リーダー)幹隆 レベル65、サクラ レベル65、マリィ レベル65、カヌ レベル65
=================
・ヒロイン召喚…………次のレベルまで残り30ポイント。
・ステータス…………次のレベルまで残り6ポイント。
・異空間生成…………次のレベルまで残り8ポイント。
俺は迷わず“ステータス”へポイントを振る。
本当なら温存したかった。
ヒロイン召喚の強化は、今後の切り札になる。
だが――今は勝つ。この場を超える。
そのためなら惜しくない。視界に新しい項目が現れた。
・スキル強化――
固有スキル以外のスキルを強化する。一日一度で一時間の時間制限あり。
ステータス…………次のレベルまで残り8ポイント。
固有スキルってことは、ヒロイン召喚、ステータス、異空間生成には使えないってことか。
どこかでこの展開を打開できるスキルが来るという謎の確信はあった。
こうも都合よく手に入るとは、だが今は迷ってる暇はないか……
「……”スキル強化”」
エイヴィヒカイトのスキルが強化され、位階が一つ上がる。
本来であれば、既存の常識を己が理想で粉砕しなければならないが、俺は”
マリィとの繋がりが、さらに深く沈み込んだ。
世界を塗り替える領域。『創造位階』に到達した今ならいけそうだ。
この力なら、この渇望なら“永遠”へ。
「さすがに楓夕ちん、やりすぎじゃないの~?」
遠くから奈津先輩の声。
「幹隆君、壁に埋まったまま出てこないし……」
「……そ、そんなことはないと思うぞ」
楓夕先輩の声が、珍しく少しだけ弱い。
俺はゆっくりと瓦礫の中から立ち上がる。
粉塵の向こう、二人の先輩の声が聞こえる。
「……今のは効きましたよ」
一歩。
「やっぱり先輩方は強いですね」
一歩。
「ほら、幹隆君は生きていたではないか」
楓夕先輩が楽しそうに笑う。
奈津先輩は肩を竦めた。
「いや、生きててよかったけどさぁ。まだやる?君の強さは十分わかったよ。正直、これ以上は危ないと思うけど」
「ええ」
俺は右腕の黒刃を構え直す。
「今の位階だと、勝てません」
「位階?」
空気が変わる。
「だから――」
マリィへ意識を向ける。
《マリィいけるか》
《うん。……いつでもいいよ》
心臓が脈打つ。鼓動が加速する。
血液が熱を帯びる。脳が焼ける。
そして、原作『Dies irae』の主人公藤井連の渇望。
俺の中にある“渇望”が形を持ち始める。
――止まってほしい。
この一瞬が、この美しい刹那が、永遠であってほしい。
失いたくない。終わらせたくない。
だから――
時間よ――止まれ。
「――
「――
「――
「――
「――
「――
「――
そして、俺は、その名を告げた。
「――
黒き光が奔流となって溢れ出す。
「――
形成位階の速度についてこられるなら――答えは単純だ。
さらに、その上を行けばいい。
俺の渇望が辿り着いたのは、
外界を支配するのではなく、己そのものを極限まで高める創造。
発現した能力は――“自己時間加速”。
自身の時間感覚を極限まで引き延ばし、一秒を永遠へ変換する。
世界が遅い。いや、違う。俺だけが、速すぎる。
「――行きます」
その瞬間、世界が停止した。
訓練場に漂っていた瘴気、空中に舞う粉塵、波留先輩の揺れる髪、観客席で息を呑むサクラたち。
すべてが、静止画みたいに止まって見える。
音が消える。鼓動すら遠い。形成位階とは比較にならない。
数十倍、数百倍、――いや、数千倍。
認識速度、思考速度、反応速度。移動速度、すべてが異常加速していた。
今の俺にはもう誰もついてこれない。
今の俺には、“時間”そのものが緩慢に見える。
楓夕先輩が双刀を構えようとしている。
だが、遅い。
奈津先輩が双短剣を放とうとしている。
それも、遅い。
イリーガルクラスの固有スキルすらこの領域では意味を成さない。
俺は静かに踏み込む。床が割れる。
だが、その破壊音すら遥か後方。
楓夕先輩の横へ移動し、ギロチンの黒刃を振るう。
――ザシュ。
赤い線が走る。
続けて奈津先輩の背後へ振り抜く。
――ザン。
斬撃、ただ、それだけ。
あまりにも速すぎて、二人は、自分が斬られたことすら理解できていない。
俺はそのまま二人の背後へ抜ける。
一拍遅れて。
――ブシュァァァァッ!!
鮮血が宙を舞った。
「あ――が……ッ」
「う、ぐ……っ」
二人の腕が宙を舞う。
遅れて激痛が神経を焼いたのだろう。
だが、それすら長くは続かなかった。
衝撃。出血。
限界を超えたダメージに、二人はそのまま意識を失う。
――ドサリ――ドサリ、訓練場へ倒れ伏した。
さっきまで激しく揺れていた空間が、嘘みたいに静まり返る。
観客席の波留先輩も、亜季先輩も、獅騎先輩も全員が、呆然とこちらを見ていた。
静まり返った訓練場の中央には――ただ一人。
黒き刃を携えた俺だけが、立っていた。
やがて、俺はゆっくりと息を吐き、右腕の黒刃へ意識を向ける。
黒い粒子が霧散する。
ギロチンの刃が崩れ、マリィの力が解除されていく。
融合解除。光の粒子が集まり、俺の隣へマリィの姿が再形成された。
少しだけふらつきながらも、彼女は静かに俺を見る。
「……幹隆、お疲れ」
「……ああ」
俺は苦笑しながら肩の力を抜いた。
「マリィも、力貸してくれてありがとな」
「……うん」
嬉しそうに小さく頷くマリィ。
そのまま俺は倒れている二人へ歩み寄る。
切断された腕、大量出血、普通なら即救護案件だ。
だが。
「――
淡い光が広がる。切断面が巻き戻る。
肉が繋がり、骨が再生し、血流が修復される。
まるで最初から傷など存在しなかったみたいに。
「おお~! マスターたちが勝ったんだよ!」
観客席から飛び降りたサクラが、テンション全開で駆け寄ってくる。
その後ろを、カヌが静かについてきた。
「幹隆様、お疲れ様です」
「ありがとな、二人とも」
そう答えながら俺は立ち上がる。
すると、倒れていた楓夕先輩を抱えた波留先輩が、にこにこと笑いながらこちらへ歩いてきた。
「いやぁ~、びっくりしたよ」
その声は、どこか弾んでいる。
仲間が負けたはずなのに、むしろ楽しそうだった。
「まさか、本気の楓夕ちんとなっちゃんに勝っちゃうなんてねぇ。これは予想外だったなぁ」
彼女は目を細める。
「でも、これなら本当に『
「……そうですね」
俺自身も驚いていた。
創造位階、あの力は、想像以上に危険だ。
正直、最後は少しやりすぎた気もする。
そんなことを考えていると。
「……わりぃ」
珍しく真面目な顔をしている。
「正直、お前らのこと舐めてた」
拳を握り締める。
「認めるよ。お前らがこの俱楽部に入ることも。……それに比べて、簡単に負けた俺が情けねぇ」
そして、深く頭を下げた。
「い、いや、気にしないでください!」
俺は慌てて手を振る。
「そもそも訓練ですし……! それに、これから一緒にレイド攻略する仲間なんですから」
「……お、おう」
なんだこの人。思ったよりかなりいい人だな。
長い前髪の奥、その瞳だけが怪しく揺れている。
「……あり得ない」
ぽつり、と呟く。
「強すぎる」
そして。
「……ねぇ。最後の力、一体何?」
静かな声だった。
だが、その奥には明確な探求心があった。
さっきの力が、単なる“強いスキル”なんかではないことを。
「えぇと……」
俺は少しだけ視線を逸らす。
「……あれも、職業スキルの一つです」
沈黙、数秒後。
「……そう」
「……答える気はないってことね」
……完全に誤解されている。
でも、どう説明しろっていうんだ。
神様から貰ったチートで、聖遺物と融合して、創造位階に到達しました。
……とか言ったところで、頭のおかしいやつ認定されるだけだろ。
結局、奈津先輩と楓夕先輩の容体も考慮して、合同訓練はそのまま終了になった。
サクラは最後まで、「わたしも戦いたかったんだよ~!」と不満そうに騒いでいたが。
その代わり、次回一緒にダンジョンダイブする約束を波留先輩たちと取り付けてた。
……色々あった。
規格外の先輩たち、イリーガルホルダー、Aランク俱楽部。
正直、関わる前まではもっと危険な連中だと思っていた。
だが、少なくとも、この人たちとなら。
俺たちは、本当に『