「ねぇ、なっちゃん。私たちさっきまで、何もない荒野のダンジョンにいたよね……?」
「そうだね、ハル。ボクも今、これが現実かどうか疑っているところだよ」
異空間のダイニング。
目の前の重厚なマホガニーのテーブルを埋め尽くす、湯気を立てる
その傍らで、無口な
(いや、俺はカヌに『先輩たちが落ち着けるようにお茶でも出してくれ』って頼んだだけなんだけどな。どうして数時間でフルコースが錬成されているんだ……?)
我が家のメイド長の規格外な家事能力に遠い目をしながら、俺は冷えたハーブティーを喉に流し込んだ。
ちなみに、別室のヒノキを用いた混浴大浴場の方には、
亜季先輩と紬結先輩の二人は、どうやら、
あの、衣服のキャパシティを完全に無視した暴力的なまでのデカ乳を独占できるなんて羨ましい。
もちろん、異空間へ案内する際、浴槽の中でどんな破廉恥なセックスに耽っても構わない旨は伝えてある。
というか、ダンジョンの死線から生還した直後の熱を、男に我慢しろという方が物理的に不可能な話なのだが……。
一方で、目の前で料理に目を輝かせている波留先輩、奈津先輩、楓夕先輩の三人は、特定の固定パートナーを持たないフリーの身らしい。
いつもは、彼女らが所属する『俱楽部』の数少ない貴重な男性メンバーを都合よく共有し、熱の暴走を処理しているのだとか。
また、彼女たちが他の女子生徒のように男の隷属下に置かれていないのは、純粋にこの3人の基本スペックが高く、学園内でも極めて希少な
「……ん。美味しい」
小さく呟いた
それもそのはず、彼女は以前、学園内の悪質な俱楽部に監禁され、慰安婦同然のレイプを受け続けていた凄惨な過去がある。
そのトラウマを聞かされた時、俺はこの学園の腐りきったシステムへの嫌悪感が一段と深まったものだ。
まあ、こういった事例は、この学園では珍しくないのだが……
今、サクラとマリィは各々の部屋で休んでもらっている。
そしてキッチンからは、未だにせっせと新しい皿を仕上げるカヌの小気味良い包丁の音が響いていた。
いや、もうテーブルの上がキャパシティオーバーなんだけどね。
なんか彼女いわく「王として、他の女どもに舐められてはなりません。器の広さを知らしめるのです」とか何とか、重たい忠誠心を滾らせて勝手に作り出してしまったのだ。
もうこれ以上の制止は無駄だと判断し、放っとくことにした。
「――先輩方、料理の手を止めて申し訳ないですが、少しいいですか?」
俺が声を落とし、真剣な眼差しを向けると、波留先輩がゴクリと喉を鳴らしてフォークを置いた。
「あ、やっぱり、この異空間の利用料……お金の話だよね?取り急ぎ、手持ちのキャッシュから百万銭で手を打ってくれないかな。足りなければ学園の口座から融通するけど……」
「いえ、お金が欲しくて皆さんをここに呼んだわけではありません」
「えーと、それじゃあ……ボクたちを好きに抱いていいよ?ほら、ハルもフユも、こう見えて中身の感度は抜群だからさ」
妖艶に微笑みながら、自身のブレザーの襟ぐりを緩めて白い鎖骨を誇示してくる
そんな破壊力抜群の肉体交渉を、俺はあえて厳しい表情のまま手で遮った。
「それも魅力的な提案ですが、今話したいことは別です」
「……ほう」
それまで黙々と食べていた
「――『
「あ~、あの不落のレイドの話ね」
波留先輩は、自身の茶髪を弄りながら記憶を掘り起こすように目を細めた。
「幹隆君に事前にその名前を出されてから、私も俱楽部のアーカイブで少し調べてみたんだ~。公式の難易度は『
「はい、そうですね。表向きの学園のデータでは、その通りになっています」
「ん~、でも
「波留先輩、俺はこれがただの
俺は身を乗り出し、机の上にいくつかの手書きのメモを広げた。
「俺が図書館で調べて集めた情報によると、あの『
「確かに……言われてみれば、それは変だね。付喪様式は、特殊なアイテムが核となって領域を作っているのが定義のはずだもん」
奈津先輩の片眉が跳ね上がる。
「ええ。そして、俺はこのレイドについて一つの恐ろしい結論に達しました。あのレイドの正体は、おそらく異界の残虐な軍勢が侵入する『
「なっ……融合様式!?」
波留先輩の顔から、一気に血の気が引いていく。
それもそのはずだ。
「確かに、今幹隆君が、提示した観測データを聞く限り、その仮説は完全に理にかなっているよ。それに……このクソッタレな学園が流す情報なんて、自分たちの都合の良いように改ざんされたゴミばかりだ。ボクも、今回挑むレイドがただの
奈津先輩が俺の意見に同意をする、流石Aランクの俱楽部だ。状況の呑み込みが早い。
「うん……そもそも、何年も攻略不可のまま放置されている『
波留先輩が、細い指で自身のこめかみを強く押さえながら、冷や汗を流す。
「はい。ですが、本当に恐ろしいのはここからです。この
「なるほどね、それで、今度挑むレイドが『
波留先輩が納得したかのように首を振る。
「そして――学園は、その事実を完全に把握した上で隠蔽している。今回の定期テストで赤点を取った生徒たちへの『補修レイド』という大義名分を使い、強制的に『
「ボクも、次の定期テストの補習先には、長年ある『轟天の石榴山』と『餓者髑髏城』は、意図的に選ばれると踏んでいた」
奈津先輩の冷ややかな言葉に、俺も軽く首を縦に振った。
「てことは、全員でテストを赤点取るのか?」
それまで無言だった
「――いえ、流石にそれは申し訳ないので、今から俺が考えてる作戦を話します」
そして俺が考えてる攻略を説明した。
・赤点は俺だけが取り補習に参加すること。
・当日、参加する人は、この異空間の中に入ってもらいレイドダイブすること。
「うん、わかったよ。それじゃその作戦で行こうか。私の方も信頼できて、なおかつ腕の立つ倶楽部メンバーを集めておくよ。その場合は幹隆君の異空間スキルのことを話したりするけど大丈夫?」
「はい、構いません。先輩たちが信じた人なら、俺も信頼します。……まあ、倶楽部メンバー内で秘密を収めてもらえれば。もし裏切るような奴がいれば、その時は俺が対処します」
冗談めかしながらも、その奥にある圧倒的な覇道の気配に、先輩たちはゾクりと背筋を震わせた。
だが、それは恐怖ではなく、極上の男を前にした時の歓喜の震えだ。
「――あ、そうそう。真面目な仕事の話はここまでにして、ちょっと話は変わるんだけどさぁ……幹隆君。そろそろ、いいかな?」
ワイングラスを傾けていた波留先輩が、急にトーンを落として、ねっとりとした甘い視線を俺に投げかけてきた。
「え、え~と、なんのことでしょ。今回のドロップ品の分配の話なら今カヌが――」
「もう、そこまで露骨にとぼけっちゃって無駄だよ?」
「いえ、本当にさっぱりわからないのですが……」
いや、嘘だ。俺もそこまで鈍感じゃないから、彼女たちの視線の熱さから薄々気づいてはいた。
波留先輩が言っている「そろそろ」が、一体何を指しているのか、男として分からないはずがない。
「もうここまで言わせて、先輩に恥をかかす気かな。セックスだよ。セックスのお誘い」
「え……っ!?」
「たしかに私たちは、幹隆君の可愛い女の子たちには手を出さないって約束したよ。けどさ……幹隆君『自身』と私たちがセックスしちゃダメっていう取り決めは、どこにもなかったよね?」
確信犯的な悪戯っぽい笑みを浮かべる波留先輩。その言葉を皮切りに、隣の
「波留、抜け駆けは許さないぞ。私も幹隆君に抱いてもらおうと思っていたんだ」
「え~それでいうとボクも狙っていたんだよ」
奈津先輩までが、頬を上気させて俺をじっと見つめてくる。
(おいおいおい、まじかよ……!なんとなく好意は感じてたし、気づいてはいたけど、ここまで積極的かつ肉食系に誘われるとは思わなかったぞ!)
三人とも完全に狩人の目になっており、一歩も引かないという様子で俺を包囲してくる。
「それで、幹隆君は……この中で、誰を選ぶのかな?」
ニヤニヤとした肉食獣のような笑みで、波留先輩が至近距離まで顔を近づけてくる。
わざとらしく胸元を大きく開いた服の隙間からは、豊満な双丘の谷間が露わになっており、脳を狂わせるような甘い牝の匂いがぷんぷんと漂ってきた。
どうやら、このお姉さんたちを前に、俺に逃げ道なんて最初から用意されていないらしい。
なら、男として、腹を括るまでだ。
「……分かりました。誰か一人なんて選べません。なので、三人全員を、まとめて相手しますよ」
俺が不敵にそう宣言した瞬間、お姉さんたちの目の色が変わった。
そこからはもう、怒涛の勢いだった。
空いている豪華な寝室へと引きずり込まれるように案内させられ、俺は三人の先輩たちに寄ってたかってたっぷり、隅々まで搾り取られることになった。
大人の色気たっぷりに腰を振る波留先輩、イイ声を上げて翻弄される奈津先輩、そして過去のトラウマを上書きするかのように俺の愛を激しく貪る楓夕先輩――。
視界のどこを見渡しても極上の柔らかいおっぱいが敷き詰められており、まさに「おっぱいまみれの天国」で最高の一言に尽きた。
途中でカヌが俺のことを探しに部屋を入ってきたときは焦ったが、なぜかそのまま参加することになり大乱交になってしまった。
――――
怒涛の合同ダイブ(と、その後に続いたおっぱい塗れの濃厚な乱交劇)が無事に終幕を迎え、連休明けの喧騒から数日が経過した。
その間も俺の日常に怠惰の二文字はない。
サクラたちとのダンジョン攻略によるレベルアップはもちろん、異空間に籠もっての特訓は、一日たりとも欠かさず継続していた。
同時に、波留先輩の俱楽部『
――当然、最初は荒れた。なんでポッと出の一年坊主が、と、俱楽部の主力級の先輩たちが不満を漏らすのは至極当然の反応と言えた。
だが、そんな雑音に対する波留先輩の解決策は極めてシンプルだった。
「言葉じゃ伝わらないからさ、幹隆君。実力で全員黙らせちゃってよ」
その提案通り、不敬を働く先輩たちを一人ずつ、文字通り物理的に「わからせて」あげた。
――そして今、俺は息の詰まるような中間テストをすべて終えたところだ。
ペーパーテストに関して言えば、前世の詰め込み教育というアドバンテージがある。
どの教科もテスト内容自体はほぼ満点で、全問正解を叩き出した。
この学園のダンジョン専門科目も、ダンジョンの生態系やシステムの構造が面白くてたまらず、異空間の特訓の合間に熱心に予習していたおかげで、何の問題もなく最高得点をマークしていた。
筆記試験が終わった瞬間の「丙」クラスは、重圧から解放された家畜のようにいっそう騒がしかった。
まあ、この学園のテストはペーパーテストとダンジョン実習の二つがあり実は座学でどれだけ無様な赤点を取ろうが、補習といった面倒なペナルティはない。
問題は実習の方だ。
この実習は定期考査ごとに一層ずつノルマが増えていくシステムで、三学期制の中間・期末を合わせて計6回。
つまり、一年の終わりには最低でも六階層まで単独、あるいはパーティーで到達していなければならない。
さらに階層が上がるにつれて、特定のモンスターの素材回収や討伐数がノルマに加算されるという、生徒を容赦なく選別するためのシステムだ。
だが、その証明は至って簡単。
一度でも指定の階層に足を踏み入れれば、支給されている学生手帳が自動で記録し、提出するだけで合格扱いとなる。
もちろん、俺の目的は「不合格」になることだ。
だから俺は、事前に学生手帳の内部回路を完全に融解させ、物理的に修復不可能な壊死状態にした上で、わざとエラーだらけの誤った偽装情報を学園側に提出しておいた。
結果は、寸分の狂いもなく俺の思惑通りとなった。
「――――叶馬くん、幹隆くん。二人ともちょっと前までいいですか?」
教卓の前で、担任の翠(みどり)先生が冷徹なトーンで俺たち二人の名前を呼び出した。
よし、無事に赤点処理されたな。
だが、その瞬間、静まり返ったクラスメイトたちが「まじかよ……」と言わんばかりの怪訝な視線を一斉に俺に突き刺してきた。
いつも教室の隅で机に突っ伏している、目立たないはずの陰キャ。
それが実は「実技すらこなせない正真正銘の劣等生だった」という、どこか見下すような、あるいは好奇の混ざった変な注目のされ方をしてしまい、前世の一般人メンタルが強烈な羞恥心で悲鳴を上げる。
(うわぁ……最悪だ、今すぐ異空間をこじ開けて家に帰りたい……)
内心の泥濘のような鬱屈を隠し、俺は原作主人公である叶馬と肩を並べて教卓へと向かった。
翠先生から直々に渡されたのは、予想通りの不合格通知と補習の案内。
内容は原作のシナリオ通り――明日からのテスト休みを利用した、三日間に及ぶ「特殊レイドへの強制ダイブ」である。
知っていた。すべては俺の描いた絵図の通りだ。
「友も俺と同じで機械に嫌われたのか?」
並んで歩きながら、叶馬がどこか親近感を覚えたような顔で話しかけてきた。
叶馬の場合、職業の影響ですべての電子機器がダメになってしまう。
今回こいつが赤点を取った理由も学生手帳をダメにしたからだろう。
俺は「わざと」潰したんだけどね。いちいちこいつに本当の理由を説明するのも、めんどくさいので適当に相槌を打つ。
「いや、まあ、うん。そんな感じだ」
「幹隆君も叶馬君も、残念だったね~。テスト休みがパーじゃん」
クラスの女子である麻衣がこれ以上ないほど嬉しそうな、邪気のない笑顔でからかってきた。
俺の事情を知らないくせに、むかつくなその笑顔、一発殴ってやりたいもんだ。
「なんで、お前ら揃って赤点取ってる?正直、実力的にあり得ねぇだろ」
眉間に深い皺を刻んだ誠一が、腕を組んで俺たちを問い詰めてきた。
「機械とは相性が悪い」
「なんか知らんが壊れてた」
叶馬の言い訳に便乗する形で、俺も肩をすくめて答える。
まあ、日頃の俺の立ち回りを観察している誠一からすれば、このトラブルがどれほど不自然で、きな臭いものに見えているかは想像に難くない。
「叶馬は、わからんでもないが、幹隆、お前はあり得ねだろ。何を企んでいる」
獲物を値踏みするような、極めて怪訝な眼で俺の表情の裏を読もうとする誠一。
はぁ、やっぱり勘が鋭い奴は説明がめんどくさいな。
レイドに行くために赤点を取ったなんて、わざわざ説明することもないか。
「特に何も考えてない。俺だって、せっかくの連休が台無しになってこの結果には深くショックを受けている最中だ。」
わざとらしくため息を吐いて突っ伏すと、誠一はなおも疑わしげな視線を向けてきたが、やがて諦めたように首を振った。
「はぁ……。まあ、お前がそう言うならいいけどよ」
「分からせる、分からせてやる……。私を叶馬さんから切り離そうとする牝豚に身の程を思い知らせてやる。私も一緒に、どうして駄目なの、許せない、許せない、許さない」
ふと隣に目を向けると、当の叶馬にガチガチに抱き着き、虚ろな目で恐ろしいほどの殺意と呪詛をブツブツと放っている静香の姿があった。
その尋常ではないヤンデレの覇気に、周囲の生徒たちがサッと引いていく。
原作主人公の周囲も、相変わらず理不尽な狂気に満ち満ちているらしい。
俺は、そんな彼らの喧騒を尻目に、静かに教室を後にした。
背後で聞こえる呪詛を耳にしながらも、俺の唇は自然と、冷徹な三日月のような形に歪んでいた。
さあ、明日からは本格的なレイド攻略――血と混沌が混ざり合う
需要があれば、先輩達とのエッチシーンを書こうと思います。