『
全身から立ち上る、圧倒的な魔力の奔流を感じながら、俺は恐る恐る、彼女のステータス画面を目の前に展開した。
透明な光のウィンドウが虚空に浮かび上がる。
=====≪STATUS≫=====
名:ホーネット
レベル1
Lv/才能限界:Lv210 / Lv320
職業:魔人(魔人筆頭)
技能:魔法Lv2、神魔法Lv2、剣戦闘Lv2
称号:魔王の娘
パーティ:(リーダー)幹隆 / (メンバー)29人
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(とんでもなく、強いことは間違いないな……)
先ほどまで職業が『魔物界のプリンセス』というものだったが、それが『
驚くべきは、この時点で彼女が名実ともに『魔人筆頭』の職に就いているという事実だ。
おそらく、安土城の最奥には、信長によって生み出された他の魔人たちがまだ複数控えているはず。
だが、この表記があるということは、現状、存在する全ての魔人の中でも、ホーネットが明確に「最強」の座に君臨していることをシステムが証明していた。
原作ゲームの作中において、この魔人筆頭という役職の明確な選定基準は特に言及されておらず、謎に包まれている。
魔王が創り出す魔人の中には、この『魔人筆頭』や『魔人四天王』といった役職持ちが存在し、それらの地位にある者は他の有象無象の魔人たちよりも遥かに強い権力と実力を有しているとされている。もちろん、能力の相性によっては他の魔人に不覚を取ることもあるが、純粋なスペックでは、文字通りのトップに位置しているのだ。
そして、次に目を引いたのは、二重表記がなされているレベルの項目だった。
最初の『レベル1』は、おそらくだがこの世界『ハイスクールハックアンドスラッシュ』のシステムにおける現在のレベルだろう。
先ほど織田四天王というネームドモンスターを倒したが、ここはレイドなので通常通り経験値を手に入れることができずレベルは1のままだ。
そして、もう一つ『Lv210 / Lv320』という数値が、『ランス』の世界で獲得した経験値をそのまま才能LVとして反映されているのだろう。
才能限界とは、その者が生涯で到達できる才能レベルの
ホーネットの持つ『Lv320』という限界値は、原作の主人公『ランス』やその血を引く子供たち、あるいは絶対者である魔王といった文字通りの『例外』を除けば、作中トップクラスの才能を所有している。
この世界の基準で『Lv210』がどれほどの強さなのか、正確なところはまだ分からない。
だが、少なくとも、
さらに、俺の度肝を抜いたのはスキルの項目だった。
ホーネットの場合、通常のスキル欄が『技能』という独自の項目に置き換わっており、レベル表記が存在していた。
『ランス』の世界では、努力や才能によって極められる能力の限界値を「技能名+数値」で表記する。
ホーネットが有しているのは『魔法Lv2』、『神魔法Lv2』、『剣戦闘Lv2』の三つ。
あくまで、数値は、現在レベルではなく、極められる能力の限界値を意味している。
一般に技能を有する場合、その所有者の99%はLV1である。LV2は超希少。LV3は、世界に何人といないバランスブレイカーとされる。
何より、この技能レベルというものは、生まれ持った才能であり、後天的な努力では一生変化しないということだ。
そんな超稀少な『Lv2』の技能を、ホーネットは前衛の剣技から、後衛の攻撃魔法、さらには回復や補助を司る神魔法に至るまで、主要な三部門全てにおいてコンプリートしている。
剣を振らせれば一線級の武人を圧倒し、魔法を唱えれば軍隊を壊滅させ、傷を負えば奇跡で瞬時に癒す。
――文字通りの完全無欠、万能のチートキャラクターだった。
(カヌに続いて、こんな次元の違う化け物(美少女)を手に入れてしまうなんて……)
俺は自身の『ヒロイン召喚』がぶっ壊れスキルなのだと再認識した。
前衛、後衛、回復、全ての役割を世界最高峰のスペックでこなせる仲間が揃った俺のパーティ。
現状のこの圧倒的な戦力をもってすれば、もはやこの世界の原作主人公である叶馬がどれほどチートな覚醒を遂げようとも、絶対に敵わないだろう。
――いや、多分だけど。
「お待たせしました、幹隆。……これが、私の本当の姿です」
ステータス画面を閉じると、そこには衣服の端を夜風に揺らしながら、静かに微笑むホーネットが立っていた。
「すごいな……さっきまでの時と全然違うんだな。なんて言ったらいいかわからんが、とにかく存在感が増した気がする」
「おおー! 確かに前と比べてとんでもなくパワーアップしてるんだよ!マスター、私もその余った赤い玉欲しいんだよ!それで私もパワーアップするんだよ!」
サクラが、俺の手のひらにまだ一つ残っている『
「いや、ダメだ。
少し考えてみたが、サクラの体は精霊であり兵器だ。
魔人の核を宿した結果、暴走でもされたら目も当てられない。
ここは毅然とした態度で却下するのが正解だろう。
「むぅー! マスターのケチなんだよ! 意地悪なんだよ!」
「ケチってお前なぁ……お前の身を心配して言ってるんだっつうの」
「……幹隆様、魔人の力というのは、一体どのような性質のものなのでしょうか」
俺たち二人のやり取りを横目に、カヌがおずおずとした様子で尋ねてくる。
「これに関しては、俺よりホーネットの方が圧倒的に詳しいかもしれんが……。基本的にはベースとなる身体能力が文字通り桁違いに大幅強化され、不老の存在となり、そして例の理不尽な『無敵結界』を常時展開できるようになる、といった感じかな」
「はい、概ねその認識で間違いありません。他にも代表的なところで言いますと、自身の血を他者に分け与えることで『使徒』という強力な眷族を生み出すことができます」
「しと?」
ホーネットの淡々とした説明に、サクラはこてんと首を傾げた。
「魔王が自らの血で魔人を創り出すように、魔人もまた、自らの血で使徒を創り出すことができるんだよ」
「へぇ~! そうなんだ、すごいんだよ!」
そんな解説を交えながら、戦後の空気が少しだけ緩んだ、その時だった。
「おーーーい! 幹隆君、大丈夫!?なっちゃんや
その手には、美しく装飾された細い魔術杖が握られていた。
だが、視線を下に落とすと、その身体は大きなバスタオル一枚を巻き付けただけの、明らかにお風呂上りという無防備すぎる姿だった。
走るたびに豊かな膨らみが危うく揺れており、普通に、いや、直視に困るほど扇情的でえろい。
「……ええ、そうですね。戦闘自体は問題なく終わりました。襲撃してきた敵幹部も二体とも完全に倒せましたので。それから、
「そ、っかぁ……。うう、なら、本当によかった~。でも、二人がこの状態じゃ、出発時間は少し遅らせるしかなさそうだね」
「そうですね。無理をして今突っ込んでも意味がありませんし、二人が目覚めてから、万全の状態で安土城の攻略を目指した方が確実だと思います」
それに、敵の幹部クラスである織田四天王を一気に二体も消去できたアドバンテージは計り知れないほど大きい。
俺は一息つきながら、今回の戦闘結果が反映されているであろうレイドクエストのリザルト画面を確認した。
――――――≪レイドクエスト≫――――――
・『
・『織田信長』の討伐……10ポイント
・『豊臣秀吉』の討伐……5ポイント
・『織田四天王』の討伐×4……各5ポイント
《三体撃破!10ポイント獲得!(残り一体)》
・『スケルトン』の討伐×100……10ポイント《CLEAR!》
―――――――――――――――――――――
(…………ん?)
リザルト結果に少し違和感を感じる。
さっき俺たちが倒したのは、織田四天王である『
それは間違いない。
だが、表示されている四天王の項目を見ると、なぜか累計で三体が撃破された扱いになっており、
そして、ポイントは二体分の【10ポイント】しか獲得できていない。
(俺たち以外の誰かが、もう一体の四天王を討伐したっていうのか……? いや、あり得るのか、そんなこと?)
正直に言って、俺たち以外の補習組の生徒が、あの無敵結界を破って魔人を討伐するのは、天地がひっくり返っても不可能に近い。
まして、このレイドに送り込まれたのは、学園の選別から漏れた底辺レベルの補習組だ。
俺たちAランクのトップ倶楽部ならまだしも、他はまともな戦力すら持たない有象無象ばかりのはず。
だとしたら、一体誰がどうやって魔人を殺した?
不意に、説明のつかない不気味な謎が胸に去来し、急に背筋が寒くなるのを感じた。
「どうかしましたか?幹隆様」
俺が急に黙り込んで眉をひそめたのを見て、カヌが心配そうに顔をのぞき込んできた。
「……いや、なんでもない。ちょっと考え事をしてただけだ。問題ない」
まだ確証のない段階だし、憶測だけでみんなを混乱させて士気を下げるわけにはいかない。
俺はリザルトの違和感を脳の隅へと押し込み、努めて平静を装って微笑み返した。
「それで、幹隆君。そっちの超絶スタイル抜群な美人さんが、さっき言ってた新しく紹介したいって、話してた子かな?」
「あ、そうです。名前はホーネット。……おそらく、これからの安土城攻略において、彼女が最大の鍵になると思います」
「へぇ~、それは頼もしいね! 確かにこうして間近で見ると、只者ではないオーラというか、圧倒的な強者の気配がひしひしと伝わってくるよ~」
波留先輩が、値踏みするかのようにじーっとホーネットの顔や立ち姿を見つめる。
しかし、ホーネット自身はそんな視線を全く気にする風でもなく、ただ静然と佇んでいた。
魔王が支配していた頃より、意識は変わってきているとはいえ、彼女の根底にあるのは魔王ガイの娘としての誇りであり、無意識に人間を格下として見下しているのだと思う。
ここら辺は、俺以外の人間に対してほぼ一貫して関心を示さない、カヌの持つ空気感と非常に酷似している気がした。
そう考えると、俺のパーティの中で、最も社交的でコミュニケーション能力が高いのは、皮肉にもあのやかましいサクラなのかもしれない。
ポンコツな魔術兵器精霊、無垢な黄昏の女神、忠誠心マックスの従者奴隷、そしてどこまでも堅物で誇り高い魔人筆頭――。
改めて見渡してみると、俺の周囲は驚くほど個性的、かつ規格外なメンバーばかりで構成されていた。
「それじゃあ、他のメンバーに状況の報告だけ済ませてから、私はもう一度お風呂に入り直してくるよぉ。走ったから汗かいちゃったし、何より湯冷めしそうだしね」
波留先輩はバスタオルの端を気にしながら、苦笑いを浮かべて浴場の方へと歩き出す。
「わかりました。奈津先輩と楓夕先輩は俺が部屋のベッドまで運んでおきますね」
「幹隆様、私もお手伝いします」
そう言って、カヌが流れるような動作で
俺も同じように、まだすやすやと寝息を立てている
「サクラ、マリィ。二人はホーネットにこの異空間の案内をしてやってくれ。ついでに、この後の安土城攻略の作戦についても簡単に共有しておいてもらえると助かる」
「わかったなんだよ! 任せるんだよ!」
「うん、幹隆。任せて」
サクラとマリィが俺の指示にそれぞれ力強く頷く。
先輩を抱えながら改めて周囲を見渡すと、俺のレベルアップに連動して、この拠点である『旅館』もまた一回りでかくなったと実感せざるを得ない。
最初はただの古びた和風高級旅館だったはずなのだが、今や敷地内には映画館並みのシアタールーム、大会が開けそうな50メートルプール、広大なグラウンド、最新器具が揃ったトレーニングルーム、果ては本格的な医療施設や、高級ホテルのような広い厨房まで、気づけばどんどん拡張されている。
さらに、変なところで言うと、地下には頑丈な牢屋や、どう見ても怪しいSMルームのような謎の部屋まで追加されていた。
もはや俺自身、この旅館内の総部屋数が多すぎて、何がどこに配置されているのか、地図がないと把握できない。
辛うじて場所が分かるのは、日常的に使う食糧庫や武器庫くらいだ。
この広大な拠点全体を完全に把握し、管理できているのは、最早カヌのみである。
「それじゃあ、ホーちゃん! こっちに付いてくるんだよ!」
案内を任されたサクラが、大声でホーネットを呼びかける。
それだけでなく、あろうことか、あの最強の魔人筆頭の手を躊躇なくギュッと握りしめ、ぐいぐいと引っ張って歩き始めた。
無知、あるいは恐れを知らないというのは、本当にある種の才能かもしれない。
あの畏怖されるべきホーネットを、出会って間もないというのに早くも独自のあだ名で呼んでいる。
もしかすると、先ほどの長秀を消し飛ばした連携攻撃の時点で、すでにサクラの脳内では友達判定なのかもしれない。
「ま、まってください、サクラ。それに、その『ホーちゃん』とは一体何のことですか……!?」
突然の距離感のバグに、流石のホーネットも目を丸くして戸惑いの声を上げている。
しかし、サクラはお構いなしに彼女を引っ張ったまま、旅館の本館へと引っ張て行く。
俺は「マリィ、後は頼んだぞ」と視線でアイコンタクトを送る。
すると、マリィはすべてを察したようにコクリと深く頷き、もう片方のホーネットの手を握ると、サクラと挟み込むようにして彼女をグイグイと引っ張っていってしまった。
(いや、違う、違う……。そうじゃないんだよなぁ……。マリィ、お前はストッパーになってくれると思ってたんだが……)
左右から美少女精霊と美少女女神に手を引かれ、人間が宇宙人に連れ去られるような構図になっていた魔人筆頭の後ろ姿を見送りながら、俺は内心でそっと頭を抱えた。
まぁ、ホーネットの根が真面目で堅物な以上、あの二人に対して本気でキレて暴力を振るうようなことはないだろう。
そう自分に言い聞かせ、俺とカヌは先輩たちを腕に抱えたまま、静かになった中庭を後にした。
――――
――異空間内・本館・医療室。
白く清潔なシーツの敷かれた二つのベッドに先輩たちを寝かせた後、俺はカヌに異界の様子を隠密裏に偵察してくるよう指示を出した。
下手に他の倶楽部メンバーを同行させると、かえってカヌのフットワークの足足手纏いになりかねない。
彼女なら単独行動の方がその真価を発揮できるはずだ。
それに、カヌほどの戦闘能力があれば、仮に外にまだ伏兵の魔人が潜んでいたとしても、後れを取るような事態には絶対にならないだろう。
そもそも、カヌの気配を見抜いて見つけること自体が困難だとは思うが……
ムー帝国の奴隷戦士という存在は、純粋な身体能力という点においては、魔人すら遥かに凌駕していると俺は確信している。
外の偵察をカヌに任せ、俺は意識の戻らない二人の先輩が心配だったため、そのまま医療室のパイプ椅子に腰掛けて付き添うことにした。
途中で今回の異変を聞きつけた他の倶楽部メンバーたちも次々と容態を見に訪れたが、二人の命に別条がなく、安全だとわかると各自作業に戻っていった。
静まり返った室内で、しばらく時間が流れた頃。
「…………んっ、……ここは……?」
「気が付きましたか、
かすかな呻き声とともに、
「幹隆、君……? ――っ、は! 敵はどうしたんだ!?
「落ち着いてください先輩、もう大丈夫です。襲撃してきた二体の魔人は、俺とサクラたちで完全にぶちのめして消滅させました。それと奈津先輩は、隣のベッドで寝ていますよ」
「そう……か。なら、よかった……」
安堵からか、楓夕先輩はベッドの枕に深く頭を沈め、小さく息を吐き出した。
その弱々しい姿を見て、俺の胸の中に再び激しい罪悪感が鎌首をもたげる。
「今回の件に関しては、本当に、本当にすみませんでした……っ! 俺が異空間のゲートを開きっぱなしにして放置していたせいで、お二人を危険な目に合わせました」
俺はパイプ椅子から立ち上がり、ベッドの傍らで深々と頭を下げて謝罪した。
「頭を上げてくれ、幹隆君。これに関しては、私だって奈津だって君を責めるつもりは微塵もない。むしろ私は……自分自身のあまりの実力不足と不甲斐なさに、自分自身への怒りが湧いてくるよ……」
自嘲気味に微笑みながら、優しく俺の責任を否定してくれる楓夕先輩。
だが、俺の脳内にはどうしても拭いきれない『疑問』が残っていた。
でも、あんだけ強かった先輩二人が、無敵結界が無効化された状態の魔人に、襲撃からわずか一分足らずで、ここまで一方的に蹂躙されるなんて普通はあり得ない。
奈津先輩の
楓夕先輩にしても、あの凄まじい肉体能力を誇る身体強化があれば、どれほど不意を突かれたとしても、自身の
二人の先輩が、そうそう簡単に魔人相手に遅れを取るとは思えなかった。
「……楓夕先輩。差し支えなければ教えてほしいんですが、あの襲撃の瞬間に、一体何があったんですか?」
「ああ。結論から言えば……私たちにも、何が起きたのかサッパリ分からなかったんだ。
「……ん? 待ってください。ということは、奴らは
「そうだな、私は敵の姿を視界に捉えるよりも前に、すでに斬られていたよ」
勝家の能力が『因果律の操作』なら、長秀の方が『気配を隠蔽する系』の能力なのだろうか……?
いや、もし仮にそういうステルス特化の能力だったのだとしたら、その後にわざわざ俺が中庭に到着したタイミングで、ノコノコと姿を現すのはおかしい気がする。
豊葦原学園の脳筋体育会系筋肉ゴリラ教師じゃあ、あるまいし、そこまで思慮の浅いアホではないはずだ。
「ええと、二人は直前までどこで何をしていたんですか?」
「ん? 私たちか? そうだな……私たちは二人で、その、この異空間の
――ッ!!
(あ、そういうことか……っ! クソ、完全に盲点だった!!)
あまりのシンプルさに、これまで一度も試したことがなかったからこそ全く気づけなかった。
あの魔人どもは、異空間の内部に侵入してから攻撃したんじゃない。
――『異空間の外にある、開きっぱなしの門の前』から、中に向かって攻撃を放ったんだ!
俺が『空間固定』で開きっぱなしにしていたゲートは、外と中を繋ぐただの空間の穴だ。
つまり、奴らは外から門の向こう側を覗き込み、丁度その門の真ん前で無警戒に喋っていた先輩二人を見つけ、外側から全力の不意打ちを叩き込んだ。
だからこそ、異空間の内部の防衛システムである侵入者アラートが鳴り響いた瞬間には、すでに外から放たれた攻撃が門の中に到達しており、先輩たちは敵の姿を見ることもなく致命傷を負わされたのだ。その後、致命傷を負ったのを確認してから、勝家たちは悠々と門を潜って中庭にエントリーしてきた……。
楓夕先輩の発言を、俺は「中で遭遇して戦った」のだと普通に誤解していた。
この卑劣でありながら極めて合理的なトリック。
もし俺がその場にいたとしても、この仕様に気づいていなければ、同じように初手で首を飛ばされていたかもしれない。
今導き出したその予想と構造を、俺はベッドの楓夕先輩に分かりやすく説明した。
「なるほど……確かに、君の言う通りだ。今その話を聞いて、全ての辻褄が合ったよ。おそらくその推測が当たっている。……しかし、敵が外にいようと中にいようと、油断していたのは厳然たる事実だ。……本当に、先輩として情けないよ。私は……」
「いやいや! だから、そもそも悪いのは門を開きっぱなしの状態で放置していた俺の過失なんですから、楓夕先輩がそこまで責任を感じる必要は全くないですって!」
「いや、私の責任だ……。これほど無様に敗北して看病されるなど、このままでは私の先輩としてのメンツも、
シーツを握りしめ、信じられないほど深くズーんと落ち込んでいく楓夕先輩。
えぇ……どんだけメンタル凹んでるんだよ。普段のあの凛とした格好良さはどこにいったんだ。
ここまでガチで落ち込まれると、流石にこれ以上言葉だけで先輩を慰めるのが猛烈に面倒くさくなってきたな……。
う~ん、どうしたものか。何かこう、一発でこの重苦しい空気を引っくり返して、先輩の傷ついた心とプライドを癒せる都合のいい方法はないか…………。
………………。
…………。
――そうだ。セックスだ!
――セックスしたら全部一発で解決するだろ。
電撃が走るように、俺の脳内に一つの完璧な回答が閃いた。
思えば、さっき俺が自分の
ここにきて、IQが急降下し、俺の脳内は見事なまでに空っぽになった。
よし、そうと決まれば、病み上がりの先輩のメンタルケア(セックス)を始めるとしますか。
――――