昨日に引き続き、今日もダンジョンダイブをする予定だ。
ただ、昨日までとはメンバーがガラリと変わる。
クラスメイトの女子たち、そして俺が所属する『
ちなみに、今回のダイブではサクラたちは異空間でお留守番である。
サクラは、お気に入りのハンモックでの日向ぼっこで、カヌとホーネットの二人は「読書」という名の自己学習に励んでいた。
相変わらず生真面目な二人だ。
一方、マリィは次にプレイするエロゲーの品定めに頭を悩ませていた。
どうやら『ランスシリーズ』はすでに全クリしてしまったらしい。
ホーネットに『ランスシリーズ』のあれこれを質問して本人を困らせていた。
今は、エロゲーブランドの『エウシュリー』、『ソフトハウスキャラ』、『Dual Tail』のどの作品からやるか迷っているらしい。
相変わらずゲーム性があるエロゲーが好きみたいだ。
そんな賑やかなヒロイン達を異空間に置き、『
「いや~、こんなに早く約束を守ってもらえるなんて驚いちゃったよ!」
ふわふわとした柔らかい茶髪の癖ッ毛を揺らしながら、
「本当にね! 昨日約束して、今日すぐ連れて行ってくれるなんてさ、幹隆くんって意外とマメなんだね!」
長い黒髪をお洒落な三つ編みで結んだ
(原作のゲーム中じゃ、ほぼ
前世のゲーム知識だけでは、知り得なかった彼女たちの新たな一面に、新鮮な驚きを覚える。
授業が終われば速攻で帰宅する陰キャの俺にとって、こうしてクラスメイトの素の性格を把握する機会は滅多にないのだ。
「それで幹隆くん、今はどこに向かってるの? このまま『羅城門』のダンジョンに直行するんじゃないんだ?」
背が高くスレンダーな美人の
「ああ、ちょっとな。今回は俺だけじゃなくて、同行してくれる先輩がいるんだ。とりあえず、その人たちとの待ち合わせ場所に向かってる」
今回の「お試しダイブ」には、俺の他に『
昨日、部長の
これでは俺がハーレムを作りたがっているみたいだが、あくまで今回は、彼女たちの側から移籍を希望してきたのだ。
俺自身にそんなハーレム願望があるわけではない。
(……いや、サクラたち美少女4人に周りを固ている時点で、何の説得力もないか)
我ながら、立派なハーレムクソ野郎の仲間入りを果たしてしまった自覚はある。
今更サクラ、マリィ、カヌ、ホーネットの中から「一番」を決めろと言われても絶対に無理な話だ。
せめて、彼女たちを誰一人として悲しませないよう努力しようと、俺は改めて胸に誓った。
「ふ~ん、なるほどね。じゃあ、その先輩たちが、私たちの実力を測る『審査員』みたいな感じなのかな?」
背が低く、その割にやたらと主張の激しい胸元を揺らしながら、
「あー……まあ、うん。そんな感じ、かな」
俺は思わず曖昧にはぐらかしてしまった。
本当は俺の独断だけで入団を決められるのだが、この時期に、Aランク倶楽部の実権を握っている一年生なんて存在がおかしい。
余計な不審を抱かれないための、ささやかな嘘をつく。
相変わらず、地下の『羅城門』の前の上に広がる学園のラウンジは、ダンジョンへ赴く前の生徒たちでごった返していた。
あちこちテーブルでダンジョンに向けての攻略会議が行われ、机の上には地図や魔物図鑑が広げられている。
耳を澄ませば、「次のボスは火属性だ」「回復役が足りない」といった会話が飛び交い、まるで軍の作戦室のような光景が広がっていた。
物々しい武器を背負った生徒たちが行き交う光景も、この学園においてはすっかり見慣れた日常だった。
そんな喧騒の端、一つのテーブルに、『
一人は、派手な金髪を緩やかなウェーブで流した、いかにもなギャル風の先輩――
そしてもう一人は、自身の背丈を遥かに超える巨大な『
背もたれから流れる美しい黒髪と凛とした佇まいは、一見するとどこかの一流のお嬢様かと錯覚してしまうが、騙されてはいけない。
ああ見えても
……主に、俺に対してだけだが。
昨日、波留先輩と話をしていた際、たまたま近くにいた二人が「私たちも行くー!」と突如として立候補したため、急遽合流する運びとなったのだ。
俺たちがテーブルへ近づくと、真っ先に
「あ!たかっちじゃん!後ろにいる子たちが、昨日言ってた後輩ちゃんたち?」
「はい。こちらにいる4人が、今回一緒にダイブするクラスメイトです」
俺が紹介すると、
しかし「たかっち」か……。呼び方がまた変わっている。
やっぱり「みきたかっち」は語呂が悪くて言いにくかったんだろう。
「ご無沙汰しております、幹隆様。本日は不肖ながら、このわたくし、
お茶を持ったまま、沙耶香先輩が妖艶な微笑みを向けてくる。
(相変わらず癖が強すぎる……)
背後にいる4人が、その尋常ならざる雰囲気に若干引いているのが気配で分かった。
この人、別に
「えーと、幹隆くん。その人たちが、今回一緒に潜ってくれる先輩……だよね?」
「ああ、そうだ。金髪の方が
「
「幹隆様の忠実なる下僕、
二人の先輩が、それぞれ自己紹介を返す。
一応言っておくが、俺は
「下僕」というのは彼女の自称で言っている。ぶっちゃけ、抱くことすら怖いと思っている。
この学園の女子で、セックスすること自体に本能的な恐怖を覚えるのは、後にも先ほどこの人だけかもしれない。
「すごく……個性的な先輩たちだね……」
「っていうか、幹隆くんってやっぱり普通じゃないじゃん。周りにいる人がすでにおかしいよ」
(まことに心外である。俺は至って普通だぞ……。多分……)
しかし、客観的に見て否定しづらいのも事実だった。
今回のダイブで、俺の異常性がどれほど彼女たちに露見してしまうだろうか。
一応、二人の先輩には、俺の固有スキルやサクラたちの存在については口止めしてある。
今回はあくまで、俺の「素の状態」での戦闘のみを見せるつもりだ。
とは言っても、一緒に戦闘するわけではなく、今回、彼女たちには、これから俺が出す「課題」をクリアしてもらうつもりだ。
所謂、『
「とりあえず、自己紹介でもしながら『羅城門』の方に向かいましょうか」
「そうだね! たかっち、リードよろしく~!」
俺の提案に
ラウンジから羅城門までの短い道中、女子グループは驚くほどの速度で打ち解けていった。
女子のネットワークを知らない俺からすれば、こんなすぐに馴れ馴れしく打ち解けていることに異常を感じる。
逆に、俺は完全に会話の輪から弾き出され、相変わらずの「ボッチモード」を発動している。
元々面倒見の良い蓮奈先輩は、後輩たちから頼られるのが嬉しいらしく、テンション高く話を回してくれている。
さすがコミュ力お化けのギャルだ。
一方、沙耶香先輩はといえば、俺の正確に三歩後ろを徹底してキープしながら歩いていた。
「これが淑女の嗜みですわ」とのことだが、背後からの視線が熱すぎて生きた心地がしない。
(いつ喰われてもおかしくないな……。これは……)
『
それにしても、女の子を6人も引き連れて先頭を歩く俺の姿は、周囲から見れば調子に乗っている「ハーレム野郎」そのものだ。
道行く男子生徒たちからは、鋭い嫉妬と敵意の視線がこれでもかと突き刺さってくる。
いつ突っかかってこられてもおかしくない状況だ。
――だが、不思議と誰も直接手を出してはこなかった。遠巻きに睨みつけてくるだけだ。
(おそらく……俺の中の『魔王の力』の影響だな)
どれだけ自分から漏れ出る「瘴気圧」を意識して遮断したところで、魂そのものが放つ、オーラまでは消しきれない。
本能的な危機察知能力を持つ生徒ほど、「この男に関わったら碌なことがない」と察し、無意識に一線を引いているのだろう。
大きなトラブルもないまま、俺たちは目的地の『羅城門』の前に到着した。
「それじゃあ、ダイブするとしようか。えーと、予定通り第一階層からでいいんだよな?」
俺が確認すると、琉菜が少し真剣な表情になって一歩前に出た。
「ううん、どうせなら、もう少し上の階層を目指したいなって思ってる。今回は実力のある先輩たちもついてきてくれてるわけだし」
それもそのはず、こう見えても
二年生のこの時期にそこまで到達している時点で、他の一般生徒とは比べ物にならないほど先へ進んでいるのは事実だ。
「私はどこでもいいよ~ん。今回は付き添いだしね。たかっちがいるならどこでも楽勝っしょ!」
「わたくしも、幹隆様のお心のままに。どこへなりともお供いたしますわ」
まあ、レイドに挑むわけでもないし、俺としても、九階層以下ならどこに行こうが誤差のようなものだが。
「先輩たちもああ言ってるし、どうする? ちなみに俺も、どの階層でも問題ないよ」
俺がそう告げた瞬間、隣にいた
「……どの階層でもいいって、幹隆くん。君、こないだの補習で赤点取ってたよね? その発言自体が、今の自分の実力は嘘だって言ってるようなものだよ?」
「ぐっ……いや、まあ、うん。あの補習はだな、たまたま試験の時間に学生手帳の調子が悪くて……そう、本当にたまたまだよ」
冷や汗をかきながら、苦しい言い訳を並べる。
「ほへぇ~。学生手帳が壊れるなんてこともあるんだね。幹隆くん、災難だったねぇ」
「いや、
「ええっ、嘘ぉ!? もしかして、今の嘘だったの!?」
(これ以上喋るとボロが出るな。よし、黙ろう)
俺は固く口を閉ざすことに決めた。
ダンジョンに入る前からすでに矛盾を突かれまくっている。
「るなっちたちは、普段はどこまで進んでるの? やっぱりこの時期だし、第二階層あたりでレベリング中?」
俺が押し黙ったのを見て取ったのか、
やはり持つべきものは、コミュ力の高いギャルの先輩である。
俺のような陰キャが出しゃばるから会話がスタックするのだ。
「そうですね。いつも一緒に潜ってくれる男子メンバーとは、普段は第二階層でレベリングをしています」
「んむんむ、そっかー! それじゃあ、今回は第三階層からスタートして、様子を見ながら段々と階層を上げていく感じでどう?」
「はい、それでお願いします、
「もー、言葉が硬いってば、るなっち! これから同じ倶楽部になるかもしれないんだし、もっと気軽にいこーよ!」
どうやら、まずは第三階層からのダイブに決定したらしい。
流れるような段取りで決めてくれた蓮奈先輩に、内心で深い感謝を捧げる。
(……ていうか、これだけ
「——いいえ。私は、幹隆様が必要だと思いますよ?」
ぞくり、と背筋に冷たいものが走った。
耳元。吐息が触れるほどの至近距離から、
(……いや、だから怖いし、距離が近すぎる。っていうか、俺は今、念話スキルを使ってない。ただの『心の声』だぞ。なんで会話が返ってくるんだよ……)
恐る恐る横を振り向くと、沙耶香先輩は三日月のように目を細め、ニコニコと歪な笑顔でこちらを凝視していた。
原作のメインヒロインである
だが、この目の前で妖艶に微笑む怪物は違う。
俺の魂魄と繋がっているわけでもないのに、こちらの思考を正確にトレースしてくるのだ。
もしかして、ヤンデレ属性をもつ女子は、皆、何かしらの心を読むスキルがあるのかもしれない。
……まさか、沙耶香先輩も俺と同じ『転生者』だなんて可能性は――。
「幹隆くん! おーい、幹隆くんってば!」
「はっ……!? ごめん、聞いてなかった。何だっけ?」
激しく身体を揺すられ、俺の思考は急激に現実へと引き戻された。
目の前では、真穂が頬を膨らませて俺を睨みつけている。……可愛い。
どうやら、沙耶香先輩の放つ狂気に当てられて、一瞬意識がトリップしていたらしい。
アホな考察を頭から追い出し、慌てて背筋を伸ばす。
「もうしっかりしてよね!」
呆れ気味でジト目でこちらを見る真穂。
「それじゃあ、みんな第三階層からスタートするからね。とりあえず今回は7人いるから、転移制限の都合で二つに別れるね。また後でね、幹隆君!」
そう言って先に
最初のグループがダイブした。
「それじゃあ、私たちもいこっか」
「ええ、行きましょう、幹隆様……♪」
そして、当然のように左側からすっと手を滑り込ませ、逃がさないとばかりに指を絡めてくる、満面の笑みの
両手に花、などという生易しいものではない。
左手側から伝わる捕食者の体温に冷や汗を流しながら、俺たちは光の渦へと足を踏み入れた。
(俺はこの怪物にセックスで勝てるのだろうか……)
そんな思考と共に視界は揺らいでいった。
————
――穿界迷宮『YGGDRASILL』、接続枝界『黄泉比良坂』
――第参階層、『既知内』領域
視界がクリアになると同時に、ひんやりとした地下特有の空気が肌を刺した。
どうやら無事にダイブできたようだ。
俺の異空間には現在4人のヒロインが生活しており、『羅城門』の本来の転送制限人数(6人)を超過していたのだが、エラーを起こすこともなく正常に転移できたな。
補習レイドの『
まあ、例え上空ダイブしたとしても、ここは玄室と通路で構成された地下迷宮、大した問題ではなかっただろう。
今転移してきた場所は『既知内』領域。すなわち、学園で管理されている管轄領域でもある。
普段は、『既知外』領域で探索している俺だが、もちろん、この『既知内』領域で攻略進めるメリットもいくつか存在する。
まず、階層ごとの
地図があれば、『
俺の場合は、管轄外の地図が存在しない『既知外』領域で攻略していたため、『
二つ目としては、モンスターのレベルが総じて低く、イレギュラーなモンスターが少ない。
『既知外』領域で出てくるモンスターみたいに集団で襲ってくることもないし、変異種も滅多にいない。
その分、レベルアップの速度は遅くなってしまうが……。
感覚的に言えば同じ第三階層の『既知内』でゴブリンを20体討伐して得られる経験値が、『既知外』の野生のゴブリンたった1匹分と同等である。
(まあ、その分『既知外』領域は、リスクもあるから一長一短ではあるのか……)
もはや、感覚がマヒしているせいで、俺からすれば『既知内』第三階層は、外の空気とあんまり変わらない気がする。
俺の体内から無意識に漏れ出ている魔王の瘴気圧の方がよっぽど濃いだろう。
(※
「おっ、いたいた! たかっち、遅い~!」
「無事に合流できたみたいで安心したよ!」
前方から、先に転送を終えていた
俺は隣に視線を向け、
しかし、返ってきたのは、底の知れない慈愛を湛えたニコニコ顔。
それどころか、先輩はさらに腕を絡め、豊満すぎる二つの果実をグイグイと俺の二の腕に押し当ててきた。
(――やわらけぇっ!?エロ過ぎるだろ)
前回のレイド攻略時は重厚で露出の少ない「戦巫女スタイル」の沙耶香先輩だが、今日の装備はなぜか、大胆に太ももが剥き出しになった、布面積の異様に少ない「ミニスカ巫女スタイル」だった。
動くたびに、白くて肉感のある太ももが視界を埋める。
ちなみに下着はレースの透けた黒色だった。
ヤンデレ特有の狂気さえなければ、お礼参りしたくなるほどにめちゃくちゃエロい。
「えーーっと。そこの二人はとりあえず放っておくとして。みんな、界門を目指しながら進んでいこっか!あ、その前に改めてお互いの『
金髪のギャル毛を揺らしながら、
(すみません、
心の中で深く平伏する。戦闘が始まれば、いくらなんでも離れてくれるだろう、という淡い願望にすがるしかない。
「えーと、それじゃあ改めて
「
「
「……
順々に自己紹介していくクラスメイトたち。
なるほど、この時期にすでに基本職へのランクアップを済ませている者が3人。
普段から規格外のチートキャラクターばかりに囲まれているせいで俺の感覚は狂っているが、一般の一年生という枠組みで見れば、彼女たちは十分に優等生の部類に入る。
「おおー、すごじゃん! この時期にもうランクアップ済ましているのが三人もいるんだ。みんな将来有望だね~!」
蓮奈先輩がパチパチと拍手を送る。
将来、か。俺は彼女たちの横顔を眺めながら、ふと胸の奥が冷えるのを感じた。
結局、この子たちも魂魄を失っているから、長く生きることができず早死にするんだよな。
何とかして救ってあげたいという気持ちはあるが、俺が提示できる現状の救済策が「魔人化させて永遠の命を与える」という極端すぎる方法だしな。
高難易度レイドに潜り、複数回攻略することで、魂魄を戻す方法もあるんだが、そっちもリスクは高いしな。
その後、俺と先輩達三人の職業と
俺は、戦Ⅱの『侍』と名乗った。もちろん、『
各自のポジションが決まったところで、迷宮の探索を開始した。
石造りの薄暗い通路を歩いていくと、一つ曲がった先に
『既知外』領域であれば通路のど真ん中にもゴブリンがウジャウジャと徘徊しているのがデフォルトだが、『既知内』であれば、そこまでの無法さはなさそうだ。
感知した敵の数は、ゴブリンが5体。
前を歩く蓮奈先輩たち4人は、角の向こうの気配にまだ全く気づいていない。
(……よし、小手調べといくか)
俺は左腕にまとわりつく沙耶香先輩の手を優しく解いた。
そして、腰の鞘から『
――ガァンッ!
音すら置き去りにする神速の抜刀。
肉眼では決して捉えられない「不可視の斬撃」が虚空を裂いた。
エイヴィヒカイトの『斬首の呪い』と、魔王の莫大な魔力によって練り上げられた『
音もなく通路の角を直角に曲がった魔力の刃は、玄室で油断していた5体のゴブリンの元へと容易に届いた。
第十階層以降の装甲が厚いモンスターでは、ただの牽制にしかならない攻撃だが、第三階層の程度のゴブリンを無力化するには十分だ。
《
よし、ちゃんと生かしつつ、四肢の腱だけを正確に叩き切って「行動不能の瀕死状態」に追い込めた。
まだ、どのゴブリンも死んではいない。
「……ッ!?」
隣にいた
彼女ほどの実力者ともなれば、今の俺の一瞬の身のこなしと、そこから放たれた異常な魔力の奔流を察知したのだろう。
対して、前を歩いていた『
俺は引き抜いた『
「っあ……ふ、ぁ……っ」
すると先輩は、まるで壊れたネジ巻人形のようにコクコクと激しく首を縦に振り、恍惚としきった、感極まる熱い瞳で再び俺の左腕にガシッと抱きついてきた。
さっきよりも抱きしめている力が上がっている。
やっぱりこの人、俺の規格外な一面を見るたびに興奮度が増してないか……?
「あ! みんな見て、前方に玄室発見! よーし、お姉さんが未来の可愛い後輩ちゃんたちのために、サクッと手本を見せちゃうぞー!」
――しかし、そこに広がっていたのは、すでに血溜まりの中でピクピクと痙攣している、瀕死状態のゴブリンたちの哀れな姿だった。
「えっ……? 何これ、なんかもう死にかけなんだけど……。あ、あれ?これって」
「ゴ、ゴブリンが全員、手足を切られて転がってる……?」
「本当だ……。こんな状態で放置されてるなんて初めて見たよ……」
「ほんとだね、ラッキーじゃん。俺や先輩たちは今日、経験値を稼ぎに来たわけじゃないからさ。
俺は何食わぬ顔で、さも「偶然の幸運」を装って後ろから声をかけた。
「あ、ありがとう、幹隆くん……! じゃあ、お言葉に甘えて、みんなでトドメだけ刺しちゃおう!」
まあ、学園において、上位の生徒が下位の生徒を引き連れてこうして「パワーレベリング」を行うのはよくある光景だ。
特にAランク倶楽部ともなれば、派閥拡大のため、こうして下の者を率いるのは日常茶飯事である。
俺のこの提案自体に不自然さはないはずだ。
――しかし、その後も奇妙な現象は続いた。
俺が先行して後ろから『
「……ねえ、流石にこれ、おかしくない!? これで5回目だよ!? 遭遇する全フロアのゴブリンが、最初から瀕死で転がってるなんて異常だよ!」
「確かに、不自然すぎるよね……。他のパーティが先回りして狩りをしてるにしても、わざわざ殺さずに、瀕死で放置して進むメリットなんてどこにもないもん……」
陽菜子も鋭い視線で迷宮の奥を睨みつける。
ようやくクラスメイトの4人組も、この異常な違和感に気づいたようだ。
一方で、
そこからは俺の意図を察してくれたのか、あえて何も言わず、ただただ驚く後輩たちを誘導することだけに徹してくれていた。
(よし……。これくらいの『違和感』には、すぐに気づいてもらわないと困るからな)
俺はトドメを刺し続ける4人の背中を見つめながら、審査員としての冷徹な視線を向けていた。
これこそが、俺が彼女たちに課した、『
ダンジョンという命のやり取りを行う戦場において、いつ何時、想定外のイレギュラーに遭遇するかは分からない。
周囲の僅かな異変を察知し、「何かがおかしい」と立ち止まって思考を巡らせる危機管理能力――それこそが、生存率に直結する。
この程度の違和感にすら気づけず、ただ「ラッキー」と目の前のエサに飛びつくような有象無象であれば、たとえ原作キャラであろうとも、Aランク倶楽部『
もし、ここで気づかなければ、逆に彼女たち自身を危険な目に合わせてしまう。
彼女たちが本当に上を目指す覚悟があるのか、俺の裏の意図をどこまで見抜けるか、それこそが俺が課した「課題」だった。
今回登場したヒロインたちの簡単な紹介です!
キャラクター設定集には改めて記載する予定です。
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また、以前まで
作中の設定整理に伴う修正となりますので、今後は 戦Ⅳ 表記で統一されます。
よろしくお願いします。