※この作品はR-18です。

再生の日   作:伊駒辰葉

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エロシーンはありません。


心の在処 1

 ゲートフロアの一連の騒動を事務処理しながら優一郎は苛々した気分に陥っていた。避難勧告が解け、戻ってきた研究員たちが時折、怖々と優一郎の方を伺う。だが優一郎は彼らの視線には全く気付かなかった。

 

 通常勤務時間が終わり、研究員たちが帰って行く。祥子がお疲れ様でした、と言ってそそくさと研究室を後にする。優一郎は苛々と机を指で叩いて眉間に皺を寄せた。

 

 水輝の行動が理解不能だ。奪われた想いを、取り返してくれたと思ったのに……。優一郎は心の中で呟いてため息を吐いた。これまでの水輝とのことを思い返してみる。水輝と交わった間の心地よさは覚えているのだが、肝心の想いがないために、その時の自分の心の動きがよく判らない。

 

 まあ、さすがに佑を討ったことで、水輝さんもダメージを受けたのかもしれない。そう考えて優一郎はため息を吐いた。

 

 仕事を終え、シャワーを浴びて仮眠室のベッドに横たわっても優一郎はしばらく眠れなかった。あれだけ水輝を求めていた自分の心の動きが理解出来ない苛立ちばかりがこみ上げてくる。その苛々のせいか、今日は理子の通信も上の空で受けてしまった。

 

 何度も寝返りを打っているうちにやがて眠気が襲ってくる。次の日の朝、優一郎はいつもの時間より随分と早く目を覚ました。ゆっくりと身支度を整えてから時間を待って研究室に向かう。おはようございます、という明るい挨拶の声に型どおりの挨拶を返し、優一郎は自分の席に着いた。祥子が支度を整えた後に今日一日のスケジュールを読み上げる。澄は予定通りに昨日の夕刻に始動試験が行われた。今も実験台の上に足を開いて横たわった澄に、研究員の何人かがたかっている。

 

「試験機の調子はどうだい?」

「昨日、手足の部品が多少破損しましたが、問題はありません」

 

 さらりと答えてから祥子がにこりと微笑む。

 

「手足? 人工女性器は?」

「そちらはもう……壊れるのは前提ですから。十回ほど部品は交換しました。予備がそろそろ尽きそうなので、部品追加分を発注したところです」

 

 それではコーヒーをいれますね。そう言ってから祥子が研究室の隅に寄る。優一郎は深い息を吐いて端末の電源を入れた。電信などを処理している間に祥子がコーヒーをいれて戻ってくる。差し出されたコーヒーカップを受け取ったところで、祥子がふと言う。

 

「そう言えば吉良博士。今日は池田さんは来られないんですか?」

 

 小声で問われて優一郎は思わず眉を寄せた。

 

「そうだね。どうしてか、試作一号機も持って行ってしまったみたいだし」

「まあ……。そうなんですか?」

 

 困惑した面持ちをして祥子がそっと息を吐く。優一郎は深々とため息を吐いて考えを巡らせた。苛立ちはやっぱり消えない。が、想いが欠けているためか、不思議なことに水輝に会いたくて仕方ないということもない。優一郎は苛々しながら午前の業務を終えた。

 

 昼休憩になり、研究員たちが研究室を出て行く。優一郎は疲れた顔で立ち上がり、食堂に向かった。カウンターでメニューを選んで注文してから食堂の中を見回す。今日もあの賑やかな女性たちはまとまって席に着いている。だが医療特殊技術部三課の面々の中には水輝の姿がない。

 

「実鈴さん、こんにちは」

 

 出された料理をトレイに乗せ、賑やかな話をしている女性たちに優一郎は近付いた。声を掛けると実鈴がうろんな目で優一郎を見る。

 

「こんにちはー」

 

 無愛想に言った実鈴とは対照的に、テーブルに着いていた女性たちが口々に優一郎に席を勧める。優一郎は勧められるままに実鈴の横の席についた。げー、と小声で言って実鈴が舌を突き出す。

 

「今日は、どうしたの?」

 

 そう言って優一郎は辺りを見回した。すると実鈴が嫌そうに舌打ちをしてから独特の喋り方で言う。

 

「べつにー。普通にお昼を食べているだけですよー。それとも吉良博士が聞きたいのはー、私たちじゃなくてー、他の誰かのことですかー?」

 

 意地悪い笑いを浮かべて実鈴がつんと横を向く。

 

「実鈴さんに聞いたら解るんだ?」

「なにがですかー? あ、私、おかわりしてこよーっと」

 

 そう言って実鈴が立ち上がり、空になった食器をテーブルの窓に滑らせてからカウンターに向かって歩いていく。そんな実鈴を見送った女性たちの中の一人が深々とため息を吐く。

 

「白草課長、今朝から機嫌が悪いんですよね……」

「そう言えば吉良博士、今日は水輝さんと一緒じゃないんですね」

 

 口々に女性たちが言うのを聞いて優一郎は首を傾げた。

 

「自分の心が解らなくなってしまって」

 

 真面目な顔で優一郎が言うと、女性たちが残念そうな面持ちになる。

 

「そうですか……。ちょっと残念」

「お似合いのカップルだと思ったんですけど、うう、やっぱり録画しとくんだった」

 

 女性たちがそれぞれに感想を口にしている間に、実鈴がトレイを手にして戻ってくる。実鈴はトレイをテーブルにがん、と乗せて元の席に腰掛けた。トレイの上には小さい皿がのっている。どうやらデザートを頼んだらしい。

 

「こういうのはー、諦めが肝心ですー。他のカップルを探すですよー」

 

 スプーンでかちかちと皿を叩いて実鈴が言う。そうですねぇ、と女性たちが落胆した顔で呟く。




一部は割とBL風味です。
苦手な方はすみません(汗)
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