※この作品はR-18です。

再生の日   作:伊駒辰葉

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エロシーンはありません。


湖面とウエディングドレス

「水輝さん。僕も実はそのような状態になった事があります」

 

 優一郎は静かな声で言ってから水輝に向き直った。水輝が想いを返してくれなかった時、妙な苛立ちがあった。

 

「覚えていますよね? 佑に水輝さんへの想いを奪われて、それを水輝さんが持っていらっしゃった時の事を。あの時、水輝さんに対して、僕は同様の感覚を味わいました」

「あ? あ、ああ。そう言えば優一郎はむきになって取り返そうとしてたよな」

 

 ぼそぼそと呟いてから水輝が頭をかく。

 

「僕の場合、思い返すとぼやけたような感じがするのに、妙にいらいらが募って、むきになって返してもらおうとしたようですが」

 

 自分の心の動きを客観的に見ようとするのは難しいなあ。そう思いながら優一郎は説明をした。水輝が腕組みをして首を捻る。

 

「苛々はしないな。何か妙に残念な感じはするが。で。優一郎。後ろですげえ怖え顔して突っ立ってるのがいるが、それはいいのか?」

 

 淡々と言って水輝が優一郎の後ろを指差す。優一郎ははっとして慌てて振り返った。小舟の中にいつの間にか佑が立ち上がっている。

 

「やっぱり、狂言だったんですね?」

「狂言? 何の事よ!」

 

 佑は優一郎の問い掛けに鋭い声で答えて視線を流す。佑の見た先には頭部が壊れた桂が転がっていた。

 

「ドームを破壊し、大量殺人を企てた犯罪者を処分しただけですけど。それとも、どなたかが裏で糸を引いてらしたから、彼女には罪が無かったとでも?」

 

 笑い混じりに言って優一郎は肩を竦めてみせた。すると佑が憤然と優一郎を睨み、身軽に小舟から飛び降りる。すると小舟はぎしりと音を立てて湖に向かって動き出した。ゆっくりと小舟が湖の中央に向かって進み、沈んでいく。

 

「あ……おれ、これ知ってる……」

 

 ぼんやりとした顔で湖を見ていた水輝がぽつりと呟く。

 

「水輝さん?」

 

 優一郎は佑と同時に呼びかけてから、顔を互いに見合わせて嫌悪の表情を浮かべて佑から顔を背けた。水輝がふらりと立ち上がって湖に向かって歩いていく。なにを思ったのか、水輝はふらふらとした足取りで湖の中に入り始めた。

 

「だめっ! 待って水輝さん!」

 

 佑が悲鳴に近い声を上げる。優一郎は佑の切羽詰まった反応を見て、慌てて水輝に呼びかけた。

 

「水輝さん、危険です。ちょっと待ってください!」

 

 二人の呼びかけに反応したのか、水輝が足を止める。振り返った水輝は何故か佑に向かって指を鳴らした。その瞬間、佑が着ていたウェディングドレスが消え失せる。続いて水輝の身体が弾けて消え、次の瞬間、湖の上にウェディングドレスを着た女性の姿をした水輝が現れた。捉えどころのない笑みを浮かべて水輝がゆっくりと湖の中央に向かって進んでいく。水輝の身体は何故か湖の上に浮いていた。鏡のように静まり返った湖の上を水輝が歩いていく。

 

「だめっ! 優一郎、水輝さんを引き寄せなさい! 手加減無しの最強パワーで!」

 

 裸になった佑が真っ赤になりながら叫び、水輝のところに転移する。

 

「佑? 水輝さんっ!」

 

 水輝が傍に現れた佑の腕を無言でつかみ、振りかぶったかと思うと次の瞬間、優一郎に向かって佑を放り投げる。

 

「諦めないっ!」

 

 優一郎にぶつかる寸前に佑が再度、水輝の許に転移する。

 

「水輝さんの、エッチっ! ヘンタイっ! わたしの服返して!」

 

 水輝に取りすがって叫ぶ佑を見て、優一郎は慌てて引き寄せの力を導いた。水輝が静かな目で佑を見つめ、再び佑を放り投げる。水輝を手元に引き寄せようとしていた優一郎に向かって佑が飛んでくる。

 

 不意に湖面にさざ波が生まれる。

 

 優一郎にドロップキックを入れ、その反動で佑が華麗に着地する。顔面をめいっぱいに蹴られて呻いた優一郎の腕には水輝の着ていた服だけが引き寄せられた。

 

「仕方ないわ。最後の手段」

 

 そう言って佑が手の中に翠色の剣を出し、湖底に向かって抜き打ちする。剣圧が水面を割り、湖面に大きな波が立つ。

 

 その瞬間、水輝の身体は湖に沈んだ。優一郎は抱えていたウェディングドレスを放り出し、湖に向かって駆け出した。佑の剣圧で二つに割れた水の間を走る。

 

「水輝さんっ!」

 

 大声で呼びかけながら優一郎は水の中を沈んでいく水輝に手を伸ばした。水の中に飛び込んで、眠るように目を閉じた水輝を両腕に抱える。

 

「優一郎! ナイス! さっさとここから去りなさい! もう、離しちゃだめよ!」

 

 再びウェディングドレスを着た佑が、崖のようになっている湖の底に飛び降りる。だが次の瞬間、湖の湖面が大きく揺れ、飛び降りた佑が亀裂からぺっ、と吐き出された。

 

「どうして!」

 

 水の中で憤る佑の傍にふわりと一人の妖精が寄ってくる。妖精は小さな鈴の音を立てた。

 

「時間……切れ?」

 

 そう呟いて佑が天を仰ぐ。優一郎は両腕にしっかりと水輝を抱えて水の中から空を見上げた。さっきまで天頂にあった陽が少し傾いている。蒼白になった佑を見やり、優一郎は言った。

 

「とりあえず、先に岸に戻っています」

 

 訊きたいことが随分とある。優一郎は厳しい顔で佑を睨んでから湖の中から転移した。




エロシーンはないのですが……。
裸になってる人がいるのでどーなんだろうw
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