BL警報です!
研究室の自分の席で優一郎は端末を操作していた。先の事件に関する報告書を各部に提出しなければならない。ドーム外の森に潜伏した凶悪なテロリストの討伐作戦の認可を取らなければならないのだ。通常勤務時間を終え、誰もいない研究室で優一郎は険しい顔をして端末画面を覗き込んだ。
ポケットの中で通信機が震える。訝りを覚えつつ優一郎は通信機を引っ張り出した。画面を睨むように見ながら耳に通信機をあてがう。
「はい。吉良です」
『あっ、ママ! お仕事中にごめんなさい。青藍です』
あどけなさの残る声を聞いた優一郎は驚きに息を飲んでぴたりと手を止めた。
「青藍? 通信機、使えるようになったんだ」
優一郎は何気ない素振りで話をしながら目を細めた。確か、今朝までは青藍はこんな風にきっちりと喋ることは出来なかったはずだ。
『パパに借りたの。あのね、パパも青藍もおなかが空いてて……あの……ママ、今日はおうちに帰ってくる?』
不安そうにして青藍が言う。それを聞きながら優一郎は考えを巡らせた。
「そうだね。あと、一時間くらい待てるかな?」
『うん! ありがと、ママ! 大好き!』
青藍がそれじゃあ、と言って通信を切る。優一郎は耳から外した通信機を握ってじっと画面を見つめた。そう言えば今朝、青藍は優一郎の流した力を吸収しなかった。てっきり優一郎の力を拒絶したのかと思ったら、青藍は水輝のそれも受け入れなかった。
だが青藍は異様な速度で成長している。そこまで考えてから優一郎は唐突に笑いだした。声を上げて哄笑してから、優一郎はゆらりと立ち上がった。
そうか、そういうことか。僕としたことが、見落としていた。優一郎は笑い混じりに呟いた。青藍は力を食って育っているのではない。水輝の想いを食って成長しているのだ。しかも恐らく、幼い青藍にその自覚はない。
「一見、論理的には思えなくても、水輝さんの提案には意味があるってことか……」
そう呟いて優一郎は調べておいた青藍の疎開候補の世界のリストを急いでプリントアウトした。プリンタから打ち出された紙を慌ただしく抜いて鞄に詰め込む。優一郎は端末の電源を落として急いで研究室を駆け出した。
最短のルートを通って優一郎は水輝の家に向かった。玄関のチャイムを鳴らすと水輝がドアを開ける。
「……あ? 仕事じゃなかったのかよ」
訝る顔をして水輝がまじまじと優一郎を見る。
「おなかが空いて大変なことになっていると連絡がありまして」
にっこりと笑う優一郎に水輝が苦笑をしてみせる。確かにな、と笑って水輝は家に優一郎を迎え入れた。家の奥から青藍が嬉しそうな顔をして駆けてくる。
青藍はいつの間にか五歳児ほどの身体に成長していた。
「おかえりなさい! ママ!」
「ただいま。青藍」
にっこりと笑ってから優一郎は早速、キッチンに入って飢えた二人のために料理を始めた。冷蔵庫に入れておいた食材を手際よく調理する。三人で夕食をとった後、青藍が一足先にベッドに入って眠りに就く。それを見届けてから優一郎はリビングに戻った。
「悪かったな。仕事あるっつってたのに」
ソファに座っていた水輝がそう言ってすまなさそうな顔をする。優一郎は首を振ってから鞄を抱えて水輝の隣に腰掛けた。
「いえ、あとは返事待ちとか、そういう状況がほとんどですから」
お気になさらないでください。そう続けてから優一郎は鞄の中から紙の束を引っ張り出した。テーブルに広げると水輝が不思議そうな顔で紙を見る。
「この前頼まれていた青藍の預け先のリストです」
「あ、そう言えば頼んでたっけ。どれどれ」
頷いてから水輝がリストをじっと見下ろす。優一郎は水輝に触れたいのを我満して一緒になってリストを覗き込んだ。
「どこがいいかな。おれ、子供は育てたことねえし、わかんねえな」
困ったような顔をして水輝が首を傾げる。
「ここなどはどうでしょうか? ハイブリッドの数も多すぎず少なすぎず、ハイブリッド間の関係も良好で安定しています。魔の侵攻は受けていますが、その分、ハイブリッドの世界の中での地位は高いですし」
そう言いながら優一郎は一枚の紙を指し示した。水輝がそれを覗き込んで良さそうだな、と頷く。
だが青藍にはこのまま疎開されては困る。それでは水輝の想いを持って行かれたままになってしまうからだ。
「それでは、青藍をお風呂に入れて来ますね」
にっこりと笑って優一郎は立ち上がった。すると水輝が不思議そうな顔をする。
「は? 青藍、寝たんじゃねえのか? って、そう言えば風呂に入れるの忘れてた……」
水輝が呟くように言って顔をしかめる。優一郎は水輝に微笑みかけてから青藍の眠る寝室に入った。
「青藍、ごめんね。お風呂、忘れていたでしょう?」
そう言いながら優一郎は青藍を揺すった。すると青藍が瞼を擦りながらのろのろと身を起こす。
「んー……おふろー?」
ぼんやりとした顔で言ってから青藍がベッドを降りる。
「一緒に行こうね」
にっこりと笑って優一郎は青藍をバスルームに促した。眠そうに瞼を擦りながら青藍が優一郎の後について歩く。バスルームに入って優一郎は手早く着ていたものを脱いだ。青藍がのろのろと服を脱ぐ。
脱衣場から洗い場に入ったところで優一郎はきっちりと周囲に結界を張り巡らせた。青藍が不思議そうに首を傾げる。
「青藍、行くよ」
そう声を掛けて、優一郎は身を屈めて青藍の唇を塞いだ。驚いたように目を見張った青藍の身体を両腕に抱えながら、優一郎は慎重に青藍の器の中を読んだ。水輝の想いが詰まっているのが見える。
やっぱり僕が一番だ。内心でほっと息を吐いてから優一郎は青藍の中から水輝の想いを引き抜いた。みるみるうちに青藍の身体が縮み、小さな赤ん坊の姿になる。
「青藍。ごめんね」
そう言ってから優一郎はよしよしと青藍の頭を撫でた。青藍があー、と嬉しげに笑って優一郎の顔を手でぴたぴたと撫でる。優一郎は急いで青藍の身体を洗い、慌ただしく服を着せて寝室に戻した。青藍がベッドで静かに目を閉じて眠りに就く。優一郎はそれを見届けてからリビングに向かった。
「……は? なんで裸なんだ? 服くらい着ろよ」
リビングに姿を現した優一郎に水輝が呆れた顔をして言う。優一郎は大股でリビングを横切り、有無を言わせず水輝の唇を塞いだ。驚いたように目を見張った水輝に唇を介して想いを戻す。
「あ……」
唇が離れた後、水輝が何度か瞬きをして呆然と優一郎を見つめる。
「僕とのこと、思い出しました?」
優一郎はにっこりと笑った。すると水輝が頬を少し赤くして腕を伸ばして優一郎の首筋を抱く。
「もっかいして」
そう言ってから水輝が目を閉じてみせる。優一郎は微笑みを浮かべて水輝の唇を塞いだ。口を開いて舌を伸ばすと、水輝が積極的に優一郎の舌に舌を絡めてくる。そうしながら水輝は微かな声を漏らした。
エロシーンで毎回BL警報を出しているような気がしますね(汗)
この話の一部は仕方ないのですが!(泣)