BL警報です!
実鈴は肩で息を吐きながら震える手でトイレの個室の壁を押さえた。ぐらついて倒れそうになる身体を支えて息を殺す。スカートを咥えて実鈴は精液に汚れた手をぼんやりと見つめた。
こんなことしてもおさまらないのに。心の中で呟いて実鈴は射精してもなおおさまらないペニスを握って扱きはじめた。声を殺して身を屈め、ペニスを弄り回しながら脳裏に水輝の姿を思い描く。
初めて水輝と会ったのは『塔』の食堂でだった。水輝は課の女性たちに人気があるためにそれまでにも画像では何度か見たことがあったが、実物には画像とは比べものにならない存在感があった。
とても綺麗に見えた。ハイブリッドはそれまでにも何度も見てはいたが、水輝は彼らよりずっと綺麗だと思えた。そんな水輝をだしにして課の女性たちと一緒になって騒ぐのがとても楽しかった。横に並べるのは誰がいいか、どんな男と一緒なら許せるだろう。水輝個人の感情など全く無視して、好き放題に想像しては女性たちと騒いだ。
だが作戦部に所属している水輝は『塔』にあまり姿を現すことはなかった。実鈴は課の奥にある部屋で出来たのだという水輝に興味を持った。水輝があの部屋で作られたということは知っていたのだが、水輝自身を見て余計に気になったのだ。
だが不思議なことにあの部屋の端末などはがらくた同然で、とても使える代物ではなかった。調べたところ、水輝が出来たのは今からずっと前のことで、あそこに置かれている機械などもその時に入れたままになっていたらしい。年月が経つと共に機械は自然と壊れてしまったのだ。
そのことを調べていくうちに水輝にそれまでとは少し違う興味がわいた。一体、水輝はどうやって造られたのだろう。だが調べていくうちに実鈴は嫌悪も覚えた。ハイブリッドの造られた理由が、それが例え今ではもうばかばかしい話だと言われることでも許せなかった。性の玩具。他のハイブリッドはともかく、水輝は確かにその目的で造られたのだ。
気持ちが悪いと思った。かつて好き放題に身体を玩ばれたことを思い出し、とても嫌な気分になった。なのに不思議と水輝のことは嫌いになれなかった。だから女性たちに混ざって水輝をだしにしてはしゃぎ続けた。
そんな水輝がある時、唐突に医療特殊技術部三課にやってきた。水輝の急な訪問に課の女性たちは黄色い声を上げた。何しろ水輝は彼女たちにとってはヒーローに近かった。実鈴も驚きはしたが、水輝が訪ねてきたことを喜んだ。
その日、水輝は奥の部屋にこもった。つきまとう実鈴を適当にあしらいながら水輝はあの透明な箱に入った瞬間、姿を消してしまった。そして医療特殊技術部三課にあるあらゆる機器が暴走をし始めた。実鈴を始め、女性たちは悲鳴を上げて何とかそれを食い止めようとした。だが結局は重要なデータを何とか保護することには成功したが、多くの機械が壊れてしまった。
その時からあの部屋は天の岩戸と言われている。水輝がいったんこもってしまうと課長である実鈴にもどうすることも出来なかったからだ。ハイブリッドである伊知花に頼んで何とかある程度は抑えて貰えるようにはなったが、大迷惑なことに変わりはなかった。だが医療特殊技術部三課の女性たちは水輝に文句を言わなかった。何故なら彼女たちは例外なく水輝の大ファンだったからだ。
水輝は気紛れにふらりと来てはあの部屋にこもった。そして時折、思い出したように実鈴に言った。
あそこに男が一人いるんだよ。
だが水輝の指差した玉座には誰もいないように思えた。きっとハイブリッドだから水輝には何かが見えているのだろう。実鈴はそう考えていた。
医療特殊技術部三課が仕切っていると言っても過言ではない定期検診にも水輝はもちろん現れた。あの部屋と検診が実鈴と水輝との接点だった。やがて水輝はどんな気紛れからなのか、昼に『塔』に居合わせた時は一緒に食事をとったりするようになった。
その頃にはもう、誰かが水輝と優一郎のカップリングがどうのと騒ぎ出していたような気がする。騒ぎの発端は水輝が優一郎と話しているのを誰かが目撃したことだった。実鈴もその話が気になって、優一郎を見に行った。
タイプは違っていたが、優一郎も水輝に負けず劣らず綺麗だと思った。二人を並べて女性たちが騒ぐのも判るような気がした。だから実鈴は彼女たちと一緒になって騒いだ。
だが実鈴はある時を境にそれまでと同じようには騒げなくなった。あの時、優一郎が玉座の手前の何もない場所を切った直後、実鈴にはそれまでなかった知らない記憶を得た。
「んっ」
実鈴は眉を寄せて息を殺し、身を震わせた。熱いものが背中から腰を伝い、一気に迸る。荒い息を吐きながら実鈴はペニスをゆっくりと根元から先端に向かって擦った。
何度射精しても物足りない。実鈴は情けない気持ちで精液に塗れた手を見つめた。最初はこんなことはしなくて済んだのに。そう思いながら実鈴は精液の汚れを拭き取ってトイレの個室内を片付けた。
「あら? 白草課長? 大丈夫ですか?」
課に戻った実鈴に部屋の入り口近くの席の女性が心配そうに声を掛ける。実鈴はえへへ、と笑ってみせた。
「大丈夫ですー。ちょっと寝不足でー」
ふらついてしまった足に力を込めてゆっくり歩き、自分の席に戻ろうとした。だが部屋の奥に向かっている間に昼時間を報せるチャイムが鳴ってしまう。女性たちがまばらに席を立ち、ぞろぞろと食堂に向かって移動を始める。
「あー……ええとー、私は今日はちょっとー」
いつものように女性たちに食堂に誘われて実鈴は苦い笑みを浮かべて首を傾げた。
「は? なに言ってるんですか、課長! お昼の時間はあの二人を見られるチャンスなのに!」
「そうですよ! さあさあ、行きましょう!」
女性たちに腕を引かれ、実鈴はふえええ、と半泣きの顔になった。引きずられるようにして進むうちに、治まらないペニスに下着が擦れて思わずびくんと身を竦める。辛うじて声を殺した実鈴は女性たちに引きずられるままに食堂にたどり着いた。
カウンターでいつものように女性たちがそれぞれに昼食を選び、注文をする。実鈴は食欲がわかず、小さなデザートだけ注文した。
「あ? なんだ、そんなので足りるのか?」
背後から聞こえてきた声に実鈴は身を竦めて慌てて振り返った。いつの間にか実鈴の後ろには水輝が立っていた。しかも何故か今日は優一郎と一緒にいる。実鈴は愛想笑いをして頭をかいた。
最初は実鈴も楽しかったと思うのですが。
優一郎が出てきてややこしくなったというか。