一応、BL警報です。
「えーっとー、ダイエット中なんですー。あははー」
「ダイエットねえ……」
訝るような顔をして水輝がまじまじと実鈴を見る。実鈴はその視線に耐えられず、慌ただしくテーブルの並ぶ方を見た。女性たちは早速、昼食を手にテーブルに着いてこちらに大きく手招きしている。きっと二人を連れてこいという意味だろう。実鈴は恐る恐る水輝と優一郎に目を戻した。二人はカウンターの中にいる調理人に向かって料理を注文している。
「あ、あのー。今日もー、お食事をご一緒しませんかー?」
カウンターの前に並ぶ二人に実鈴は消極的に声を掛けた。二人が実鈴を振り返ってから、女性たちの賑わう席に目をやる。
「まあいいけど? あ、おれ先行くな」
そう声を掛けて水輝が先にトレイを持ってカウンターを離れ、課の女性たちの賑わう席に近付いていく。それを見送ってから実鈴は優一郎に目を戻した。
「こんにちは」
にっこりと笑って優一郎が言う。実鈴は優一郎から目を逸らし、小声で言った。
「あの……。良かったら吉良博士もご一緒にどうぞー」
だがそんなことを言わなくても、優一郎はきっと水輝の隣に当たり前の顔をして腰掛けるに違いない。そんな実鈴の思い通りに優一郎は微笑みを浮かべて会釈をし、カウンターを離れて水輝のいるテーブルに向かっていった。実鈴は優一郎の後をのろのろと追い、空いていた隅の席に腰掛けた。
「やっぱりお二人が並ぶといいですよねっ。ああ、幸せ……」
女性の一人がそう言って、うっとりとした顔をして胸の前に手を組み合わせる。実鈴は俯いて少しずつデザートを口に入れた。
「おまえらなあ。人の色恋をつついて楽しいか?」
呆れた顔をして水輝が言うと、女性たちが一斉に黄色い歓声を上げた。しかめ面をした水輝が嬉しそうにはしゃぐ女性たちを見回してため息を吐く。その隣では優一郎が微笑みを浮かべて食事を続けている。実鈴はちらりと上目遣いに二人をみやってからまた視線を下げた。
最初はこんな風には感じなかったのだ。だが二人が交わる動画を見るたびに言いようのない苛立ちがこみ上げ、それを上回る性感がむくむくとわき上がる。
「今日もお顔の色が優れませんね。体調を崩してらっしゃるのですか?」
心配そうな顔をして優一郎が実鈴を見つめる。視線を感じた実鈴は顔を上げて黙って首を横に振った。スカートの下でペニスが痛いくらいに勃起していて、どうしようもないほど辛いなどとどうして言えるだろう。
「なんだ。もしかして寝不足とかか? あんまり酷いなら添い寝でもしてやろうか?」
子守歌くらいなら歌ってやるぞ。笑いながら水輝がそんなことを言う。きっと水輝は冗談のつもりだったのだろう。だが実鈴は弾かれたように顔を上げ、涙の浮かんだ目で水輝を見つめた。視線に気付いたらしい水輝が実鈴をみてぎょっとしたような顔をする。それまで騒いでいた女性たちがしんと静まり返り、不安そうに実鈴と水輝とを見比べる。
「いえ……けっこうですー。お心遣いだけ頂いておきますねー……」
小声で答えてから実鈴は俯いた。
「医療局の皆さんにはこれから頑張ってもらわなければなりませんからね。非常事態宣言はご存知ですよね?」
「あ、はい。近頃多いですよね」
実鈴に変わって女性の一人が優一郎に答える。実鈴は息を整えてから顔を上げた。くだらないことを考えているからいけないのだ。そう自分に言い聞かせて実鈴は出来るだけ水輝を見ないようにして話に加わった。
「またドームに穴が空いたとかですかー? この間の時は担ぎ込まれた人たちが急に元気になってびっくりしたですー」
デザートをつつきながら実鈴は平然を装って言った。それまで伺うような顔で実鈴を見ていた女性たちが一様にほっとした顔になる。
「そうですよねぇ。ここのところ、騒ぎが続いているような気が」
テーブルについていた女性の一人がそう言いながら頷く。すると優一郎がやけに真面目な顔をして言った。
「今回の非常事態宣言は当面の間、解除される予定はありません。詳細な説明は午後に公開されると思います」
「そうなんですかー? ありゃー……。改装工事がー」
実鈴は情けない顔で呟いてからため息を吐いた。せっかく余裕がある間にあの部屋を改装してしまおうと思ったのに。そんなことを思いながら実鈴はしかめ面をした。何気なく優一郎の方を見て実鈴は思わず息を詰めた。水輝がこれ食ってみろ、と言って優一郎の口にスープをすくったスプーンを近づけたのだ。優一郎がごく当たり前の顔をして水輝のスプーンを口に含む。その瞬間、嬉しげに女性たちが騒ぎ出した。
「もう一回! 水輝さん、もう一回お願いします! カメラっ、カメラはどこ!」
「うわあ! ほんとにらぶらぶなんですねー! ああ、生きてて良かった」
「きっ、吉良博士は水輝さんにそういうの、しないんですか!? ご返杯!」
ああだこうだと女性たちが騒ぐ中、実鈴は渋い顔をしてそっぽを向いた。水輝が呆れたような顔をして女性たちを見回す。
「それではリクエストにお答えして……。はい、水輝さん」
にっこりと笑った優一郎が皿の中のものをすくったスプーンを水輝に向ける。すると水輝は苦笑しつつ口を開け、優一郎のスプーンにぱっくりと食いついた。
「きゃああ! 感動です! ああっ、もう、これは保存版です!」
女性の一人がカメラで二人を撮りながら悲鳴のような歓声を上げる。女性たちが賑やかに騒ぐ中、実鈴は椅子を鳴らして立ち上がり、食べかけのデザートを残したままでテーブルから離れた。慌ただしく彼らから離れながら、実鈴はこみ上げてきた涙を白衣の袖で拭った。
実鈴は難しい立場というか……。
逆に水輝と優一郎はらぶらぶですな!w