BL警報です!
何なんだよ、あれ。水輝が怪訝そうな顔をして逃げるように去っていった実鈴を振り返る。優一郎は水輝の視線を追って振り返り、遠ざかっていく実鈴の背を見つめて心の底で笑った。
「何だか近頃、白草課長って変なんですよ。仕事中にふらっとどこかに行ったりとかしょっちゅうですし」
さっきまで賑やかにはしゃいでいた女性がカメラを小さなバッグにしまいながら言う。かと思うと他の女性たちもしきりに頷いてみせた。
「彼はある意味、特殊な存在ですからね」
優一郎はテーブルについた女性たちに目を戻し、微かな笑みを浮かべて言った。憮然とした顔で食事をしていた水輝が不思議そうに優一郎を見る。だが女性たちは優一郎の言葉を受けて一斉に頷いた。
「そう。そうなんですよ。課長って男性なのにボーイズ趣味を貫いてて、凄いと思います」
「時々怖くなることがあるんですよ……。課長って私たちよりずっと熱心で、動画とかも買い漁ってるみたいで……」
「そうなんですよね。ここのところ熱度が上がってるみたいな」
口々に女性たちが言うのを聞いて優一郎は微かな笑みを浮かべた。水輝が怪訝そうな顔をして動画? と呟く。すると女性たちは示し合わせたようににっこりと笑い、水輝に向かって何でもありませんと言った。優一郎はそれを聞いて生ぬるい笑みを浮かべた。水輝は家に多くの隠しカメラが仕掛けられていることを知らないのだ。
「それに、急に天の岩戸の改装をするって言ってて」
「あ? なんだ。あの部屋、改装するのか?」
一人の女性が言ったことに水輝が食べる手を止めて問い掛ける。はあ、と曖昧な返事をして水輝に問われた女性が頭をかく。
「忙しいから後にしましょうって言ったんですけどねえ……。何か急ぐらしくて」
業者には連絡してありますし、今日の午後にも改装が始まるはずですけど。女性がそう答えると水輝はふうん、と呟いてちらりと優一郎に視線を寄越した。
「ああ、その件でしたらキャンセルになると思いますよ。不要不急な工事に人を割く余裕は無くなりましたから」
優一郎は真面目な顔をしてそう告げた。すると女性たちが不思議そうにお互いの顔を見合わせる。
「え、そうなんですか?」
「大体、あんなところを今さらいじってどうしようってんだよ。それともあれか? 使えるようにするのか?」
水輝がそう言ってから優一郎の皿にさりげなくしいたけを乗せる。優一郎は苦笑して乗せられたしいたけを口に運んだ。
「いえ、それが私たちにも改装内容は知らされていないんですよ」
水輝の質問に女性の一人が答える。優一郎は残った昼食を口に運びながら考えを巡らせた。蘭の言っていた通り、医療局医療特殊技術部三課の改装工事認可願いは閲覧することが出来た。が、詳しい内容までは公開情報には記載されていなかったのだ。
「おおかたあれじゃないか? 骨董品を退けるとか」
水輝が笑いながらさらりと言うと、女性たちがそうですよねぇ、と曖昧に返答する。優一郎は隣に座る水輝をちらりと伺った。
青藍から取り戻した水輝の想いのうち、自分に向けられたもの以外を優一郎は水輝に戻さなかった。だから水輝はもうあの部屋には執着はしていないのは判っている。
「まあ、あのスペースは確かに無駄でしたからね」
「そうだよな。潰して別のことに使えるなら、そっちのがいいだろうし」
優一郎が言ったことにごくあっさりと水輝が答えて頷く。すると女性たちが不思議そうな顔をして水輝を見た。
「でも水輝さん、この間までちょくちょくいらしてましたよね? もういいんですか?」
女性の問い掛けに水輝が苦笑を浮かべて頷く。
「まあ、おまえらには迷惑かけて悪かったよ」
水輝があの部屋にこもると計器などが暴走し、隣室の医療特殊技術部三課の端末などが壊れるなどといったことが起こっていたらしい。女性たちが口々に言うのを聞いて優一郎は頷いた。水輝がばつの悪い顔をして女性たちを上目遣いに見る。
「だから悪かったっつってんだろ」
「いえ、責めている訳じゃないんですよ。ただ、課長が改装するって言い出したのが凄く不思議で」
「そうそう。課長、口では嫌がってましたけど、水輝さんがあの部屋に来るの楽しみにしてた感じでしたからね」
女性たちが顔を見合わせて頷き合う。優一郎は淡々と食事をしつつ彼女たちの様子をじっと観察していた。その間に段々と水輝の機嫌が悪くなる。どうやら水輝は自分が以前にしたことを女性たちが口にするのが気に入らないらしい。
「水輝さん、そうだったんですか? 初耳です」
優一郎はにっこりと笑ってみせた。すると水輝が仏頂面をしつつもぼそぼそと言う。
「悪かったって言ってんだろが。それに実鈴のことは知らねえぞ」
水輝が不機嫌な顔をしたままで、テーブルの下で優一郎の手をつかむ。実鈴にはおれはなにもしてねえ。繋がった手から伝わってきた水輝の思惟を読んで優一郎は微笑みを浮かべた。
『信じてますってば』
手を通して水輝に意識で答えてから優一郎は静かに席を立った。
「それでは、皆さん、お先に失礼します」
そう声を掛けてから優一郎は一足先にテーブルを離れた。食堂を出たところで優一郎は実鈴の気配を追ってみた。どうやら実鈴は課に戻っているようだ。あの部屋のことも気になるし丁度いい。そう思いながら優一郎は早速、医療特殊技術部三課に向かった。
辿り着いた部屋のドアを優一郎は軽くノックした。だが応答がない。ドア越しに部屋の中の様子を見て取った優一郎は黙って部屋のドアを開けた。やはり誰もいない。どうやら実鈴は奥のあの部屋にいるようだ。優一郎は部屋の奥に進み、IDカードでさっさと解錠して先に進んだ。
細い廊下を抜けてドアを開ける。薄暗い部屋の中央には透明な壁で出来た小さな部屋がある。その部屋の前には白い光の道が伸び、大きな階段に続いている。
段上の玉座には実鈴がぼんやりとした顔をして座っていた。優一郎はゆっくりと部屋を横切り、にっこりと笑って一段ずつ階段を上がった。
「何をなさってらっしゃるのですか?」
実鈴がぼんやりとした目で優一郎を見やる。実鈴は玉座にぐったりと身を預け、スカートをめくり上げて股間を晒していた。玉座の足許には実鈴の下着が脱ぎ捨てられている。優一郎は実鈴の股間で精液に塗れてそそり立ったペニスをちらりと見やった。
「べつにー……」
はっきりとしない口調で実鈴がそう答え、荒い息を吐きながら右手に握ったペニスを擦り始める。
水輝は天の岩戸という別名のところにこもってた時期を忘れています。