※この作品はR-18です。

再生の日   作:伊駒辰葉

142 / 157
エロシーンはありません。


計画と実行

 食堂からのんびりと作戦部に戻ったところで水輝は顔見知りに取り囲まれた。どうやら昼を過ぎてからドーム全域に通達がなされたらしい。非常事態の具体的な情報が通達には盛り込まれ、対策委員会の設置と非常事態対策委員長に優一郎が就任したことが公知されたらしい。

 

 どうなっているのかと問いつめられた水輝は憮然とした顔をして質問を流した。そもそも訊かれたところで水輝には答えようがない。何しろ水輝も彼らに聞いてそのことを初めて知ったのだ。

 

 もしかして優一郎、これから忙しくなるのか。自分の席について水輝は煙草を吸いながらぼんやりと考えを巡らせた。作戦部の部屋の隅には人だかりが出来ている。水輝は彼らがかじりついているテレビを何気なく見やった。どうやらテレビではこれから演説が中継されるらしい。

 

「優一郎も大変だなあ……」

 

 そう呟いて水輝は頭をかいた。忙しいなら何か手伝えることはないだろうか。そうは思うのだが、方策とやらの内容を聞いていないために何が自分に出来るか判らない。水輝は苛々としたものを感じながら机に頬杖をついて寄りかかった。

 

 テレビに映し出された優一郎は挨拶をしてからまず、無人の探査機から送られたこの惑星全土の映像を公開した後、このまま放置すれば水資源の枯渇や空気組成の変化によってこの都市は滅亡することになると淡々と告げた。水輝は端末を立ち上げ、凍結が決定した作戦の報告書を作成しながら時折、テレビに目をやった。

 

 ほとんどの世界は移住不可能だが、実は移住可能な世界も存在する。住民の多くにはそこに疎開してもらうとテレビの中の優一郎が告げる。テレビを取り巻いて呆然としていた人々の顔がぱっと明るくなるのを見てから、水輝は端末画面に目を戻した。

 

 おれっておかしいのかな。この非常時にそういうことしか考えられないなんてな。水輝はそう思いながら自嘲を込めて微かに笑った。テレビに映し出されている優一郎を見るだけで、言いようのない欲求がこみ上げてくる。

 

『ですが、我々には大乗的な立場から世界全体の秩序を護り、維持していくという崇高な使命があります! それを投げ出してしまうわけにはいきません』

 

 優一郎が力強くテレビの中で言う。するとテレビを取り囲んでいた人々がはっとしたように息を飲む。水輝はその様をちらりと見てから苦笑した。逃げる気満々でいた人々が、崇高な使命というあの言葉でころりと態度を変えたのが見た目にもよく判る。

 

『このような事態に備え、わたしはある意味、新人類とも言える存在を創造するために努力を重ねてきました。ネクスジェン計画。噂だけは聞いたことがある方も多いと思われます』

 

 滔々と語る優一郎を人々は食い入るように見つめている。そんな彼らの様子を見て、水輝はちらりと苛立ちに似たものを覚えた。だが感情を殺して淡々と作業を続ける。少なくとも中断した作戦の報告書を提出しなければここから出ることも出来ない。非常事態だからこそ、見てきた外の様子も報告書に盛り込まなければならない。水輝は仏頂面をしつつキーボードを打っていった。

 

 テレビ画面にFタイプ、Mタイプ、Sタイプ、Xタイプ、Zタイプという研究計画の図が表示され、優一郎が説明をする。その中でMタイプとSタイプという図だけが画面上に残された。

 

『実行部隊としては従来どおりハイブリッドを主軸としたエージェントがあたります。しかし、作戦判断、情報分析を行い指揮を執る者もこれまで通り必要ですし、その他、後方支援にあたる者も必要不可欠なのは説明するまでもないでしょう』

 

 あー、早くしてえなあ。そんなことを考えながら水輝はテレビから流れる優一郎の声に耳を澄まし、のろのろとキーボードを叩いた。油断すると服の中でペニスが首をもたげようとする。水輝はため息を吐いて自分の股間を見下ろした。落ち着け、と自分に言い聞かせてみる。すると下腹部に溜まった熱が少し和らぐ。

 

『強制することはできません、しかし、Sタイプ、Mタイプとなる素質がある方には、これより電信をお送りします。使命を全うするために志願されたい方は、必要事項を記入の上返信ください』

「よし出来た。これを打ち出しして、と」

 

 水輝は小声で呟いてプリンタのセットをし、報告書をプリントアウトした。優一郎の演説を聞いた者たちが慌ただしく自分の席に着く。これが恐らく優一郎が言っていた方策なのだろう。優一郎はこの世界で機械の人形を大量に作成するつもりなのだ。

 

 自分の席で端末画面を血走った目で見る人々を余所に、水輝は報告書に署名して立ち上がった。部長の席に行くと、部長もやはり熱心な顔をして画面を覗き込んでいた。水輝は黙って報告書を部長の机に乗せてから踵を返した。

 

 いつもなら人の行き来のある廊下には誰もおらず、しんと静まり返っていた。水輝は誰もいない廊下を静かに進んだ。とりあえずは優一郎に今後のことを訊ねなければならない。水輝はそう考えてからふと足を止めた。

 

 もしかして邪魔になるかな。心の底で呟いて水輝はため息を吐いてその場から転移した。どうやら優一郎は自分の研究室の奥の応接室にカメラを入れ、そこで演説をしているらしい。水輝は邪魔をしないように、研究室の方に転移をした。急に現れた水輝に驚くでもなく、祥子がぺこりとお辞儀をする。他の研究員たちはテレビ画面に釘付けだ。




作戦部にいてもさかってるというね!
BL的にですけども!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。