「んっ、あれ? なんで」
「実は前にホックのあるブラだったり」
「えっ!? そ、そうなんですか」
蒼藍は慌てて佑の背の下から手を引き抜き、急いで佑の胸についた下着に手をかけた。乳房を覆う丸みを帯びた布の繋ぎ目をつまんで引っ張ってみる。だがやっぱり上手くいかない。蒼藍はええと、と呟いて頭を伏せて下着の繋がった部分を間近に見つめた。どうやらこれは単に引っ張っても外れないらしい。蒼藍は真剣な目で繋ぎ目の構造を観察してから、指でその部分を摘んで軽く捻った。やっと繋ぎ目が外れた下着をそっと持ち上げる。
「すごく、きれいです」
露わになった佑の身体を見つめて蒼藍は呟いた。細い胸にある左右の乳房に恐る恐る手を乗せる。
「きゃっ……」
小さな悲鳴を上げて佑が身震いする。蒼藍は壊れ物のように大切に佑の乳房を撫でた。これまで何人もの女の胸は見てきたが、やっぱり佑のそれが一番綺麗だ。蒼藍は佑の身体を優しく撫でた。首筋から肩を撫でながらブラウスをそっとずらす。形を確かめるように蒼藍は佑の肌を撫で回した。
「蒼藍……あなた、知らないって、本当なの? キスも、愛撫も、すごく上手よ……」
うっとりした顔をして佑が甘い声で囁く。蒼藍は佑を見つめて困った顔をして頷いた。
「知識としては、本を見たりしましたから知ってましたけど、こうして実際に触れるのは、初めてです」
そう答えて蒼藍は手を佑の乳房に戻し、ゆっくりと撫でた。夢にまで見た佑の身体がここにある。蒼藍はそっと身を屈めて佑の乳首を舐めた。胸の膨らみの先端で乳首は愛らしい桃色に色づいている。掠めるように何度も舐めてから、蒼藍は佑の乳首を口に含んだ。
「ああっ!」
佑が声を上げて仰け反る。佑が感じてくれているのだと知った蒼藍は、口許に笑みを浮かべた。初めてでどうしていいか判らなかったのだが、思うままに動いたことが良かったのかも知れない。そう思いながら蒼藍は口の中に含んだ乳首を舌で優しく舐めた。反対側の乳房を手でそっと撫で回す。
「あっ! んふっ! あああんっ!」
甘ったるい声を上げながら佑がしきりに腿を擦りあわせる。蒼藍は佑の足がぎこちなく動いていることに気付き、何となく空いた手で佑の腿を撫でた。その途端、佑がびくんと身を反らして切なそうな声を漏らす。
「あなたって、天才かも……」
とろんとした目をして佑が囁く。え、と声を上げて蒼藍は顔を上げた。その拍子に佑の乳首が蒼藍の口からすっぽ抜ける。蒼藍は困惑した顔をして佑の顔と、佑の腿に挟まれている自分の手とを見比べた。
「どうしたの……?」
少し不安そうな顔をして佑が言う。蒼藍はええと、と呟いて思い切って佑のスカートをめくりあげた。スカート越しにさっき手を挟まれたところをそっと撫でてみる。すると佑の腿が震え、やっぱり蒼藍の手を強く挟み込んだ。
「ここ、気持ちいいんですか?」
「それもそうだけど、乳房を愛撫しつつ、きっちりタイミングはかったみたいに……」
うっとりして言いながら佑が部屋を見回して考えるような顔をする。蒼藍は訝りに眉を寄せて佑を見つめた。
「もしかして寮内というのが不安ですか?」
「どうして、蒼藍の部屋はこんなにみすぼらしいの? わたしの部屋は普通だったのに」
そう問われて蒼藍は自分の部屋を見回した。ベッドに学習用の机、それに茶などを飲んだりするためのテーブルが一つずつ。部屋の隅には小さな本棚もある。これらは全て寮の備品で、寮の個室としては蒼藍の部屋は整っている方だ。
「これでも整っている方だと思いますよ。ベッドや机がない部屋もありますから」
「ベッドが無いのはともかく、机が無いって、自習するときはどうするの?」
「服などを入れる箱がありますし。それに個室というだけでも十分に贅沢だと思うんですが」
質問に答えながら蒼藍は何となく身を起こした。
「わたしの部屋のほうが特別だってこと?」
「それはそうだと思いますよ。女子寮の方が男子寮より整っていますから」
そう言いながら蒼藍は気まずいものを感じていた。寮の部屋は生徒の自由意志では選べない。何しろざっと数えただけでも千以上の生徒がいるのだ。蒼藍も佑も空いていた部屋に入れられたに過ぎない。
……が。佑が特別にいい部屋をあてがわれているというなら、編入試験を担当した教師が恐れをなしたためかも知れない。
「とりあえず。その、わたしの部屋に移動しない?」
「ぼくの部屋で抱かれるのは気に入りませんか」
苦笑をして蒼藍は佑を見つめた。身を起こした佑が困ったような顔をしてブラウスの前を合わせる。
「違うの……。あの……その……」
真っ赤になって佑が口を濁す。蒼藍はくすりと笑って佑の額に軽く口づけした。
「ぼくはどこでも構いませんよ。佑さんが落ち着くというなら、移動しましょうか」
でも、と続けて蒼藍は唇の前に人差し指を立てた。
「本当は男子寮に女子が入ったり、その逆もいけないんですからね?」
「わかってるわよ」
そう言って佑が蒼藍の手を取る。真剣な顔で意識を集中する佑を蒼藍はじっと見つめた。しばしの後、佑の魔法に導かれて蒼藍は自分の部屋から転移した。見知らぬ部屋に現れたところで蒼藍は周囲を見回した。
佑の個室は二間あった。片方の部屋にはベッド、書き物台、ドレッサーなどが置かれている。服入れも蒼藍の部屋のただの箱とは違い、緻密な彫り物の入った木で出来ている。隣の部屋には背の低いテーブルに花を入れるための花瓶、そして花瓶を置く足の細い台、飾り棚などが置いてある。床にはじゅうたんが敷かれているし、トイレやバスルームなどもついている。それらの様子をぐるりと見回してから、蒼藍はなるほどと呟いた。こんな部屋なら確かに蒼藍の部屋はみすぼらしく見えたに違いない。
「ね、普通でしょう?」
「いえ、普通ではありません。これはたぶん、寮の特別室ですね」
淡々と答えて蒼藍はにこりと佑に笑みかけた。
翠の野郎……入学金に余計な金乗せたな。蒼藍は心の底でぽつりと呟いた。きっと佑の編入用の準備金を適当に設定したに違いない。
「でも、本物の王子様、お姫さまとかも通ってるらしいじゃない。そういう人も寮に住んでるって聞いたけど。寮の建物でここより立派そうなのは無かったわよ」
「ですから、ここがそうなんですよ」
苦笑をしつつ蒼藍は答えた。きっと寮のどこを探しても、佑の部屋より上等な部屋はないだろう。複数あるとしてもこれ以上のレベルの部屋はないはずだ。そのことを蒼藍は淡々と説明した。
蒼藍の部屋はのーまるというか、ごく普通です。