不意にポケットの中で通信機が震える。佑は桂に断って通信機を耳にあてがった。小さなボタンを押すと耳に聞き慣れた声が聞こえる。
『……何してるんだ、佑。先に帰ってろって言ったろ』
少し機嫌の悪そうな声で言ったのは水輝だった。
「ごめんなさい。明日からの仕事の関係で、ちょっと……」
ちらりと桂を見やって佑はしおらしく詫びた。すると通信機の向こうで水輝が深々とため息を吐く。
『じゃあ、明日は直にそこから出かけるんだな。気をつけてな』
どことなく覇気のない声で水輝が言う。通信を切ろうとしたらしい水輝を佑は慌てて引き留めた。
「どうしたの? 声が沈んでいるわよ?」
『あ? そうか? 気のせいだろ』
ぶっきらぼうに言った後、水輝が用がないなら切るぞ、と機嫌悪く言う。
「帰って来てほしいなら、帰って来てほしいって言いなさいよ」
『この時間に戻っても寝る時間が短くなるだけだろ。じゃあな』
低い声で言った水輝が一方的に通信を切る。佑はしかめ面をして耳から通信機を外した。
「もう素直じゃないんだから。でもいいもん。心の声はちゃんと聞こえたから」
「佑の結婚相手から、ですか?」
弾んだ声で言った佑に桂がおずおずと話しかける。どうやら会話の断片からそう推測したようだ。
「そう。わたしが居ないと駄目なんだから……。ごめんなさい。帰らないと」
そう言って佑は慌ただしく席を立った。どうせ水輝のことだ。何かあったに違いない。そんなことを考えながら立ち上がった佑に桂が慌てたように頷く。
「佑、今日はありがとう。また……」
そこまで言って桂が口ごもる。その様子を見た佑は腕組みをして首を捻った。
「うーん。桂ちゃんも心配なんだけど……。そうだ! 桂ちゃん」
ぱっと表情を明るくして佑は手を叩いた。
「明日ね、出勤したら、優一郎がうろたえるような事になるかも知れない要請が来るかもしれないけど、桂ちゃんさえ良ければ受けて。それから……」
そこで佑は口ごもった。桂が戸惑うような顔をして佑を上目遣いに見る。
「すぐにオナニー始めなさい! 無理して我慢してたんでしょう? ごめんなさいね」
「いえ、そんな、あの……」
桂が途端に真っ赤になって視線を彷徨わせる。恥ずかしがる桂の肩を安心させるようにぽん、と叩き、佑は挨拶をして桂の部屋を出た。寮館を出て、ゲートを越えて『塔』の正門を出る。そこで佑は周囲を注意深く伺い、真っ直ぐに自宅を目指して転移した。
辿り着いた家の中は真っ暗だった。てっきり水輝は起きているものと思った佑は不思議に思いながら寝室に向かった。広いベッドの端で水輝が毛布を被って丸くなっている。
「水輝さん……」
小声で呼びかけながら、佑はベッドに上がって水輝の脇に横になった。それまで動かなかった水輝が寝返りを打ち、呆れたような目で佑を見る。
「何だ。帰らなくていいっつったろ」
不機嫌に言いつつ、水輝が優しく佑の頭を撫でる。
「帰ってきてって心の声が聞こえたもん」
「そんなもん、通信機で聞こえるわけねえだろ」
唇を尖らせて言った佑にぶっきらぼうに答えつつ、水輝が佑を抱き寄せる。いつもと同じように下着一枚で寝ようとしていたのだろう。抱き寄せられた佑は剥き出しになっている水輝の胸に額を押しつけた。
「距離は関係ないわよ……」
小声で言った佑にはいはい、とため息混じりに答えて水輝が腕に力をこめる。強く抱きしめられた佑は不思議に思って顔を上げた。疑問を口にする前に水輝が佑の唇を素早く塞ぐ。
「んっ、水輝さんっ!」
「じゃあ、おやすみ」
微かな声を漏らした佑に囁きかけ、水輝が目を閉じる。佑は複雑な顔で水輝をまじまじと見つめた。目を閉じた水輝は黙っている。
「疲れてる?」
「ちょっとな」
佑の問い掛けに水輝が目を閉じたままで答える。しばし黙ってから水輝は片目だけを開けて佑を抱きしめていた腕の力を抜いた。
「明日、早いんだろ? さっさと寝ろよ」
佑はもぞもぞと動いて水輝の頭をぎゅっと胸に抱え込んだ。すると水輝が慌てたように佑を引き剥がす。
「だから、寝ろっつってるだろ?」
呆れた顔をしてから水輝がごろんと寝返りを打つ。佑は唇を尖らせて水輝の背中に抱きついた。しばし反応しなかった水輝が間を開けてのろのろと振り返る。
「目が冴えて眠れないのっ」
頬を赤く染めて佑はそう告げた。水輝がため息を吐いてベッドの枕元に手を伸ばす。仄かなライトが灯り、暗い部屋の中を照らす。水輝は苦笑をしてから寝返りを打ち、佑の額に軽く口づけした。
「そんな風にねだられたら、しないわけにはいかないか」
「ごめんなさい、わがままな妻で」
「可愛いから許す」
軽い口調で答えて水輝が佑の唇を塞ぐ。唇を合わせ、舌を絡ませながら水輝が身を起こして佑を組み敷く。佑は水輝の背に手を回し、口づけに応えた。そうしている間に水輝の手が佑の服の中に滑り込む。
「あっ! 水輝さんっ!」
指が肌を這う感触に震えながら佑は切なさに声を上げた。着ていたブラウスのボタンが一つずつ外れ、ブラジャーのカップの中に水輝の指が入ってくる。
「悪い。夕方にちょっと触って放置したからか? 乳首たってるぞ」
悪戯っぽく笑いながら水輝が指の間に佑の乳首を挟む。
「やっと思い出したの? 水輝さんの意地悪っ」
「だから悪いって言ったろ。ほら、横向いて」
言われるままに佑は身体の向きを変えた。水輝が慣れた手つきで佑のブラウスを剥ぎ取り、ブラジャーを外す。手で乳房を弄りながら、水輝が佑の耳朶に軽く歯を立てる。
「んっ! ああんっ! 水輝さんっ!」
触れられたところから熱いものがこみ上げ、佑は堪らず声を上げた。片手で乳房を弄り、もう片方の手で佑の背中を撫でながら水輝が囁く。
「どこ触って欲しい?」
「ずっと濡れっぱなしのいやらしいアソコをっ!」
「了解」
佑の耳許に笑いかけて、水輝がスカートの中に手を入れる。ショーツ越しに軽く陰部を撫でられた佑は甘えた声を上げた。水輝の指先が焦らすように佑のショーツをつつく。
「こんなに濡れててよくスカートに染み込まなかったな」
乳房を優しく揉みながら水輝が佑の耳許に囁きかける。ぞくりとするような快感を覚え、佑は熱い息を吐いた。
「んっ! 意地悪なんだから、ああんっ! そこっ! いいっ!」
「意地悪が嫌ならやめとくか? ほら、びしょ濡れだ」
くすくすと笑って水輝がショーツの底布をそっと撫でる。薄い布越しに水輝の指の動きを感じ取った佑はびくん、と身を竦めた。横を向いて足を閉じた佑の陰部を水輝が焦らすように何度もつつく。
「ごめんなさい。やめないでっ! あんっ!」
「どうするかなー。クリトリスも勃起してるけどなー」
のんびりと言いながら水輝が指で軽くショーツの底布を押す。クリトリスを布越しに捏ねられた佑は切羽詰まった声を漏らして腰をひくつかせた。その間も水輝は片手で佑の乳房を揉んでいる。その上、水輝は佑の耳許で喋っているのだ。身体中に水輝の気配を感じ、佑は蕩けた顔をして息を荒らげた。自然と頬に赤味が射し、身体が熱くなってくる。
「あっ! 水輝さん……大好きっ!」
「おれが? それともおれのこれ?」
くすりと笑って水輝が腰をすり寄せる。腿にかたくそそり立ったペニスを擦りつけられ、佑は甘えた声を漏らした。だが水輝が腰を引いて佑の伸ばした手を避ける。
「両方好きっ!」
「判った判った。ちょっと待ってろ」
苦笑して言ってから、水輝が身じろぎして下着をとる。手を導かれて水輝のペニスに触れさせられた佑はうっとりと顔を緩めた。
「今日はフェラチオはなしな。速攻で出そうだし」
そう言いながら水輝は佑のショーツに指を引っかけてずらし始めた。腿の中程までずらしたところで濡れそぼった陰部に指を這わせる。濡れた女性器を指先で撫でられ、佑は目を潤ませて息を殺した。水輝のペニスを握る指に無意識に力がこもる。
こっちの世界で佑がいちばん幸せだった時だと思います。