機械の局所が色々でてきます。
百合警報。
「あと二つ、動作モードはあったわよね? 言ってみなさい」
慌ててスカートを戻そうとした桂の手を手で押さえて動きを制し、佑はそう訊ねた。
「……モードと、……モードです……」
真っ赤な顔をして桂が消え入りそうな声で言う。
「ごにょごにょ誤魔化さない!」
「セックスモードと、自慰モードですっ」
顔を赤くしたままで桂が口早に言う。それを聞いた佑は満足をこめて頷いた。
「よくできました。それじゃあ解説して」
当然という顔で佑は促した。すると桂が真っ赤な顔でうろたえる。口の中であの、とかでも、とか言いながら意味もなくおたおたと振り回した桂の手が、何故か佑の乳房を服越しにむんずとつかむ。佑は無言で自分の胸元を見つめ、次いでにっこりと笑って桂を見た。桂は佑の乳房をつかんでいることが判らないのか、大胆に乳房を揉んでいる。
「佑。あ、あのっ! 私! そのっ!」
桂の指がむにむにと佑の乳房を揉みまくる。
「わたしの胸の揉みごごちはどう?」
「すごく張りがあって、でも柔らかくて」
佑の質問にすらすらと答えてから桂がはっとしたように息を飲む。漸く佑の乳房を揉んでいたことに気付いたのか、桂が慌てたように手をぶん、と振り上げる。それにつられて佑の乳房はたゆん、と揺れた。
「桂。わたしはあなたの何?」
両腕を左右の耳にぴったりと付け、ばんざいの格好をした桂が真っ赤になって何度も詫びる。
「ごめんなさい、私。違うんです。本当に、気がついたら、あの」
泣きそうに顔を歪めて桂が必死で詫びる。ベッドに横たわった桂の顔を覗き込み、佑は訊ねた。
「質問に答えて。わたしはあなたの何?」
「佑は、私のパートナーです」
目に涙を浮かべつつも桂がはっきりとそう告げる。それを聞いた瞬間、佑の下腹部にずくん、と熱がこみ上げる。この不思議な感覚は二度目だ。最初に桂から今のせりふを聞いた時にも同じ感覚があった。水輝に触れられた時と少し似ている感覚だが、それとはやっぱり違う。
「佑、ごめんなさい。佑に、私のことをきちんと知って貰わなければならないのに」
恥ずかしがって奇行に走ってしまったことを後悔しているのだろう。しょんぼりとした顔で桂が詫びる。その顔が、そして桂の仕草が、見ていると何だか無性に堪らないものを感じる。叫びだしたいような、暴れ出したいような妙な感覚がある。佑はまじまじと桂を見つめてしばし考えを巡らせた。
「そのためにしなければならない事は?」
佑は感じていることを押し隠して平然とした態度で訊ねた。怖々と伺っていた桂が上目遣いに佑を見つめる。
「私の、中枢部を見てください」
真っ赤な顔をして桂が小声で言う。
「中枢部って何?」
「……人工女性器です」
恥ずかしそうに答えてから桂がいそいそとショーツを脱ぎ、大胆に足を開く。人なら股関節が外れたと疑いたくなるくらいに左右に足を開いた桂が真っ赤になりながら佑を見つめる。
「佑の気が済むまでじっくり見てください」
恥ずかしそうな顔をして桂が小声で言う。佑はしばしじっと桂の顔を見つめてから視線をじりじりと動かし、桂の股間で目を留めた。
「この前ちらっと見たけど、あなたのここって紅いわよね」
そう言いながら佑は身を屈めて桂の股間に顔を寄せた。桂の陰部は生身とは異なり、作りはシンプルだ。丸い小さな球の形をしたクリトリスや、花びらのような秘唇、それに丸く開いた膣口が見える。そのどれもが赤い素材で造られているのだ。
「解説お願い」
顔を上げた佑はにっこりと笑って桂を促した。
「はい。人工女性器は、Mタイプ……機械化人である私の中枢部です。人工クリトリスは主制御スイッチとして機能し、人工膣は多目的入出力口となっています」
恥ずかしそうな顔をしつつも桂が真面目に解説を始める。それを聞きながら佑は桂の陰部を観察した。
「人工クリトリスを回転させることで、制御モードを切り替えます。右に回せばセックスモード、左に回せば自慰モードです。自慰モードはメンテナンスモードでもあります」
その解説を聞いて佑は桂のクリトリスを覗き込んだ。丸い球が浮いた格好になったクリトリスは生身で言う包皮がなく、赤い人工の女性器の上にぽつんと乗っかる格好になっている。
「人工クリトリスは、電源キーでもあります。摘んで引き抜くと、私の全機能が停止します。元通りに挿入すれば再び起動します」
「本当に中枢部なんだ……」
佑は納得して頷いた。
「抜いてみていい?」
「あっ、はい」
桂が慌てたように頷くのを見て取って、佑は球の形をしたクリトリスを引っこ抜いた。すると桂の動きがぴたりととまる。その後、機械的な声が桂の機体から響く。
『システムをシャットダウンしています』
「止まっちゃった」
動きを止めてしまった桂を見て佑は何となく焦ったものを感じた。抜けたクリトリスはちょうどまち針のような形をしている。細長い金属製の棒が伸びた先に丸い球の形をした赤いものがついている。
「本当に、機械なんだ……」
完全に動きを止めてしまった桂を見つめ、佑はしみじみと呟いた。桂は足を左右に開いたまま動きを止めている。もしも誰かと交わる時も桂はこんな風に足を開くのだろうか。男に抱かれる桂の姿を想像して佑は怒りに近いものを感じた。
「うん。水輝さんには渡せないわ。水輝さんに桂を与えたらちょっと危なすぎるもの!」
そう言って佑は何度も頷いた。もしも水輝に桂を渡すと、きっと桂はあっさり壊されてしまうだろう。何しろ水輝は機械を壊すのがとても得意なのだ。
「あの世界の男にも桂に相応しい奴なんか居ないし」
玩具にされてボロボロにされちゃうのがオチだわ。難しい顔をして佑はそう呟いた。あの世界の住人は男女を問わずセックスにはやたらと執着しているのだ。もしも桂が彼らの手に渡ったら玩具にされるに決まっている。そう考えて佑は何度も頷いた。
「桂……」
佑は桂を見つめるうちに不安になった。桂はまるで死んでしまったように身動きしない。これまでヒューマノイドと呼ばれる機械仕掛けの身体を持つ者とは何度も関わったが、彼らを見てこんな風に感じることはなかった。きっとヒューマノイドと機械化人は本質的に違うからだろう。そう考えて佑は手に握ったクリトリスの部品を見つめた。
「桂はわたしが護るわっ!」
力強くそう言って佑は反射的に手をぐっと握りしめた。その途端にぽきりと嫌な音がする。佑は嫌な予感を覚えて恐る恐る右手を開いた。佑の手の上で桂のクリトリスの部品は無惨に壊れていた。
「ほら、こんなに、脆いもの!」
壊れたクリトリスの乗った右手を天井に掲げ、佑は目を輝かせて叫んだ。
余分に交換部品持たせておいてよかったわ。
その体勢で固まったまま、佑は心の底でしみじみと呟いた。
桂は優一郎が作っていたヒューマノイドと似ているところもあるのですが……。
後々、根本的に違うことが判ります。