機械なので苦手な方は避けてください!
百合警報。
目を開けた桂は深い息を吐いて何度か瞬きをした。どうやら少しの間、システムがダウンしていたようだ。そう思いながら桂は気配を感じてのろのろと視線を下げた。
そこで桂は硬直した。佑が桂の股間を覗き込んで腕組みをし、しきりに首を傾げている。
「システムの起動状態を教えて」
『正常に動作しています』
佑の問い掛けを受けた桂の股間から機械で合成された声が流れる。桂は恥ずかしさに真っ赤になりながら何とか佑に声を掛けようとした。だが緊張しきっているせいか、上手く言葉が出てこない。桂が動揺している間も佑はしきりに首を捻り、股間を覗き込んでは頷く。
「じゃあ、なんで意識が戻らないのよ!」
『既に回復しています』
合成された声が答えた直後、佑がまじまじと桂を見る。視線に気付いた桂は慌てて頭を下げた。
「いつから気付いてたの?」
『48秒前に回復が完了しました』
佑の問い掛けに桂の機体の股間から合成声がきっちり応答する。その恥ずかしさに桂は耳まで真っ赤になった。
「あの、佑、私、さっき気付いたところです」
佑のうろんな眼差しを受けて桂は慌ててそう説明した。起きた直後に足を左右に大きく開き、その股間を佑が覗き込んでいることに驚き過ぎて声が出なかったのだが、桂はそのことはあえて言わなかった。
「桂、あなた、記憶飛んでない?」
『現在、記憶状態をチェックしています。シャットダウン時にメモリーエラーが発生した可能性があります』
佑の問い掛けにやっぱり合成声が答える。それを聞いた桂は真っ赤になってうろたえた。何だかよく判らないが無性に恥ずかしく、居たたまれない気分になる。桂は焦りながら自分の股間に目をやった。
『記憶状態のチェックが完了しました。メモリー状態の不整合を検出しました。バックアップから整合性処置を実行しますか? 実行する場合は右人工乳首を、実行しない場合は左人工乳首を押してください』
淡々とした感情のない機械で合成された声が桂の股間から流れる。桂は真っ赤になって視線を泳がせた。そんな桂は足を伸ばしたまま左右に大きく開いていて、腕を伸ばして頭の両脇につけた格好をしていた。上から見ると桂の足はVの字型に開いている。生身の身体ではちょっと考えにくい格好をしたまま、桂はもじもじした。すると伸ばして左右に開いた桂の足の付け根部分のジョイントが内部で回転し、桂の足がくるくるとその場で回転する。
「青く点滅してるほうね?」
『はい。スイッチガイド機能によって肯定的な入力を行うスイッチが点滅します』
桂本人の意志を余所に、佑と合成声が会話を進める。そのことにはっと気付き、桂は慌てて佑を見やった。このままでは合成声に負けてしまう。何となくそんな気になって桂は焦って佑に話しかけた。
「あの、佑さん、わたし、いったい……」
だが桂の弱々しい声はすっぱりと佑と合成声に無視された。
「やっぱり記憶が飛んでるのね?」
『メモリー状態の不整合性処置を検出しています』
自動的に勃起し、右が青、左が赤色に明滅していた乳首の光が消える。桂はそのことに遅れて気付き、恥ずかしさに喉の奥で悲鳴を上げた。
「えっと、リカバリ処置っていうのを実行してるんだけど、間違ってる?」
そう言って佑が桂を見つめる。漸く気付いて貰えた喜びを噛みしめながら桂はぱっと顔を輝かせた。
「あの、続けてください。コンピュータと対話しながら進む仕組みになってますから」
そう言えば自分で造ったんだった。そのことをやっと思い出して桂は恥ずかしさに頬を染めた。そう、あの声も自分で合成したのだ。本当は出来るだけ自分の声に近くなるようにしようとしたのだが、どうも聞いていると恥ずかしいのでわざと違う声にした。機体を造った手順を思い浮かべて桂は何となく一人で頷いた。
「えっと紛らわしいわね。ちょっとコンピュータ、あなた名前なんて言うの?」
『瑞原桂です』
合成声が抑揚のない声で答える。そう言えばこの合成声を造るとき、ちょっと欲が働いて優一郎の声を造ってみた。が、股間から優一郎の声が響く恥ずかしさにどうしても耐えられないような気がして、桂はせっかくのその声を使わないことに決めた。その時のことを思い出しながら桂はくっ、と唇を噛んだ。
「コンピュータ! 意識戻ってる状態だと、桂ちゃんとあんたのどっちへの質問か解らなくなって混乱してるの。理解できる?」
『質問を解析中です』
合成声が答えた後、沈黙する。すると桂の人工の女性器が自動的に動き始めた。赤く薄いゴム製の小陰唇が音を立てて何度も開閉する。その音にはっと我に返り、桂は恥ずかしさに真っ赤になった。
「こいつ、考え中はぱくぱくしてるのよ。解りやすくていいけど。最初は笑ったわよ」
そう言えば判りやすいようにそう造ったんだった! そのことを思い出して桂は恥ずかしさのあまりに目に涙を浮かべた。
「あの、佑。おかしいですか?」
「ううん。面白いからおっけ」
でも、恥ずかしくない? 佑が少し眉を寄せて口許に意味ありげな薄い笑いを浮かべて言う。恥ずかしさに消え入りたい気分になりながら桂は俯いた。
「たった今、凄く恥ずかしいことに気付きました……」
造る時には見た目に判りやすい方がいいだろうと考えていた。だが実際にその機能が働くところを桂はこれまでに想像したことがなかったのだ。小声で言いながら桂は上目遣いに佑を見た。
「えらく長考してるわね。質問が難しかったかしら」
そう言いながら佑が桂の股間に目を落とす。するとタイミングよく桂の股間から合成声が響いた。
『質問の解析が完了しました。解析に時間がかかりましたことをお詫びします』
少しの間を置いてから合成声が続ける。
『提案をいたします。感情回路側の呼称を変更し、対象を特定できるように質問に呼称を入れていただくことで混乱が解消できると思われます』
声が途切れた後、しばしの間があった。合成声の言ったことを理解した桂は心の中で叫びながら股間を見下ろした。合成声は桂の方の名前を変更しろと言ったのだ。
「わかった。コンピュータ、あんたが瑞原桂一号、略して一号! 感情回路とかのほうは、瑞原桂二号、略して桂ちゃんで!」
何で合成声の方が一号なのだ! 桂は焦るやら恥ずかしいやら居たたまれないやらで、複雑な顔をして佑を見た。呼び方としては合成声のことを一号、桂の方を桂ちゃんというのはありがたい。のだが、順番が逆のような気がする。桂はしばしの間佑を見つめてから股間を見た。
なんだか負けた気がする。心の底で呟いて桂は自分の股間を睨みつけた。
「こいつがせっかく提案してくれたんだし。ここは立てて上げるのが大人ってものよ」
そう言って佑が満足そうな顔をして腕組みをし、うんうんと頷く。桂はのろのろと目を上げて佑を見た。
立て方の問題かと。だが桂はそうは思っても口には出さなかった。佑が納得しているならそれで良いような気もする。腹が立つが。
『プログラムの書き換えが完了しました。確認のために人工クリトリスをクリックしてください。キャンセルする場合は、左人工乳首をクリックしてください』
合成声……一号が言うと桂のクリトリスが青く、そして左の乳首が赤く光り始めた。何だか釈然としないものを感じつつも桂は自分の胸元を見て頬を染めた。
「押すわよ?」
いいわね? そう言って佑が桂を見る。だが桂が返事をするより早く、一号が答えた。
『はい』
それを聞いた桂は口を半ば開いた格好をして固まった。だが他に言うことも思いつかなかったので、桂は仕方なく開いた口を大人しく閉じた。佑が桂の股間を覗き込みながらクリトリスを軽く指先で押す。
佑は桂をおもしろおかしいと思っていますw