※この作品はR-18です。

再生の日   作:伊駒辰葉

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エロシーンがあります。
BL警報です!


どんだけすれ違えばいいのかと

 作戦部に顔を出したら部長にこっぴどく叱られた。仕事がないかと探しに行った水輝は、頭に来たので仕事の話も聞かずに作戦部を後にした。通りすがる人々が怖々と水輝を見ては避ける。水輝は仏頂面で作戦部のある階層を過ぎた。

 

 苛立ち紛れに食堂で食事をし、通常勤務時間が終わる前に水輝は『塔』を出ることにした。ここにいても居心地は良くないし、第一することもない。そんなことを考えながら歩いていた水輝は、廊下でふと呼び止められて振り返った。

 

「あー……」

 

 今朝の公示を知ってはいるのだろうが、自分たちには関係ないと思っているのだろう。水輝を呼び止めたのはハイブリッドの連中だった。どの顔もにやにやと笑っている。

 

「バイトは止めたんだがな」

「かたいこと言うなよ。お前も好きでやってたんだろ?」

 

 にやにやと笑いながら男たちの中の一人が言う。水輝は仏頂面で彼らの顔を見回した。

 

「暇なのか? それとも飢えてんのか?」

「まあ、両方だな」

 

 男の中の一人が肩を竦めてあっさりと肯定する。水輝はへえ、と呟いてから彼らの顔をもう一度見回した。少しの間、考えを巡らせてから水輝は首を傾げて笑った。

 

「いいぜ。相手してやるよ」

 

 いつものように通信を入れると、理子は元気に言った。

 

 パパ、何だか元気ないねー。そんなときには納豆! 納豆を食べるといいよ! 納豆の栄養価はねぇ……。

 

 だが食堂に納豆はなかった。難しい顔で考えながら優一郎は腕組みをした。食堂の調理師たちに言って納豆をいれて貰った方がいいだろうか。それとも取り寄せてこっそり食べた方がいいのか。そんなことをつらつらと考えているうちに、一人ずつ研究員たちが研究室を後にする。

 

「あのー……。吉良博士? たまにはご自宅に帰られているんですか?」

 

 心配そうな顔をして祥子が言う。

 

「最近、仕事が立て込んでいたからね。例の新しい試作機の目処もついたし、今日は帰ろうかな」

 

 笑みを浮かべて言うと、祥子が微笑みを返して頷く。それではお先に失礼します、と祥子が研究室を出てから、優一郎は深々とため息を吐いた。残念ながら理子は毎日早くに寝てしまうため、優一郎は家に帰っても寂しい思いをするだけなのだ。

 

 机に肘杖をついて優一郎はぼんやりと端末を眺めた。あれから医療特殊技術部三課の課長である実鈴は、わざわざ菓子折を持ってお礼を言いに来てくれた。どうやら伊知花という女性が水輝があの部屋に入っていた間、何とか機械の暴走を食い止めていたらしい。

 

 もう少し遅れてたら大変なことになっていた。そう考えながら優一郎は難しい顔をして息を吐いた。あの部屋には妙な細工でもしてあるのか、フロア中央の小部屋に水輝が入ると、水輝の持つ力を分解し、周囲に撒き散らす効果があるらしい。実鈴が菓子折を持って訪ねてきた時にそのことは教えてくれた。

 

 それとー、これ申し訳ないんですけどー……。間延びした口調で言って実鈴は水輝の携帯端末もここに置いていった。優一郎は机の端に置いてあった水輝の端末を取り上げた。

 

 よかったんだろうか。無理矢理に断ち切って。水輝の携帯端末をぼんやりと見下ろして優一郎は心の中で呟いた。あの時に玉座に残っていたものを強引に時を遡って切り裂いた。優一郎にその自覚はあった。その後で水輝はあの小部屋から出てきたが、態度がやけに素っ気なかった。もしかしたら水輝は優一郎のしたことに怒っていたのではないだろうか。

 

 優一郎はぼんやりとした目で端末を見下ろし、電源を入れてみた。水輝の携帯端末にはアルバイトと称して相手をした男たちの名前の連なるリストなどと一緒に、優一郎の写真が何枚か入っていた。何てことはない、ごく日常の優一郎の姿が写されたものだ。端末の画面にそれらを一枚一枚表示させ、優一郎はため息を吐いた。

 

 返しに行こうか、どうしようか。考えながら優一郎は端末の電源を落とした。実鈴曰く、水輝は優一郎の写真を返すと言ったらしい。そのことを思い出して優一郎は気鬱な表情になった。

 

 とりあえず、韮山氏に電信を送っておこう。愛華の件を思い出して優一郎は端末画面に向き直った。手早く電文を書いて韮山に宛てて送る。ほどなく韮山から電文が返送されてくる。それを見た優一郎は目を見張った。愛華の件の後に、ごく端的な文章が記されている。それによると水輝が情報局の棟のとある部屋で、複数の男性と交わっているのだという。

 

 とりあえず、迎えに行かないと。そう呟いて優一郎は慌ただしく席を立った。研究室を出て、記されていた部屋に向かう。周囲に人気のない、建物の奥まった場所にある部屋のドアを開けた優一郎は目を見張った。

 

「だらしねえなあ……おら、もっとしっかり動けよ」

 

 床には数人の男がひっくり返っていた。その中の一人に跨って水輝が腰を振っている。勘弁してくれ、と跨られた男が呻き混じりに言い、悲鳴のような声を上げてがっくりと脱力する。男が失神したのを見て取ったのだろう。水輝が舌打ちをして身を起こす。

 

「あ? なんだ。何しに来た」

 

 シャツ一枚を身体に引っかけただけの格好をした水輝が不機嫌そうに言って立ち上がる。

 

「あの、水輝さん。これを受け取ってください」

 

 優一郎はそう言って白衣のポケットから水輝の携帯端末を取り出した。のろのろと床に屈んで、放り出されていた服を拾い上げた水輝が優一郎の方を見もせずに言う。

 

「いらねえよ。捨てとけ」

 

 下着を身に着け、ジーンズを穿いたところで水輝が身を起こす。優一郎は戸惑いの目で手の中の端末と水輝とを見比べた。

 

「水輝さん……」

 

 小声で呟いて優一郎は寂しさから切ない目で水輝を見た。煙草を引っ張り出して火を点けた水輝がシャツのボタンを掛けながら言う。

 

「仕事の話なら聞くが、それ以外は聞く気はないぞ。用がそれだけならとっとと失せろ」

 

 低い声で言ってから水輝は顔を上げて優一郎を見た。優一郎は水輝から目を離し、床にひっくり返った男たちを見た。

 

「この男達は? 背後関係は大丈夫ですか?」

「さあ? お互い好きで乱交しただけだろ? 背後とか関係ねえだろ」

 

 ボタンを留めた水輝がさっさと歩き出して部屋を出て行ってしまう。

 

「また、この前のような事態になったら困ります」

 

 水輝を振り返って優一郎は言った。すると水輝がぴたりと足を止めて振り返る。

 

「一応、思考は読んだから大丈夫だろ。奴らもやることしか考えてなかったぞ」

 

 それだけ言ってからまた水輝が歩き出す。優一郎は戸惑いながら水輝の後を追った。だが追ったはいいものの、何をどう話せばいいか判らず、優一郎は黙していた。廊下をしばらく進んだところで水輝がまた足を止めて振り返る。

 

「何だよ。まだ何かあるのか?」

 

 うんざりした顔をして水輝が言う。

 

「今日は、どこも行く場所が無くて……」

「おまえ、いつも研究室に詰めてるだろが。行く場所もくそもねえだろ」

 

 呆れた顔をして言いながら、水輝がポケットを探って灰皿を出す。蓋を開けた灰皿に煙草の灰を落としてから、水輝はそれを唇に挟みなおした。

 

「わかりました。戻ります」

 

 諦めの息を吐いて優一郎は踵を返した。肩を落としてとぼとぼと歩く優一郎の背に声が掛かる。

 

「そうだ。理子から伝言預かってたんだ」

 

 水輝の声を聞いて優一郎は慌てて振り返った。

 

「理子から?」

「浮気したらコロス、だとよ。じゃあな」

 

 咥え煙草で嗤いを浮かべ、水輝が片手を上げて去っていく。優一郎は呆然と水輝の背中を見送った。




そういえばフリガナとかあんまり入れていないのですけども……。
大丈夫でしょうか。
登場人物紹介のとこで一応、読み方は入れてる……はず!
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