※この作品はR-18です。

再生の日   作:伊駒辰葉

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エロ……ではないですが、男の裸はでてきます。


第一〇五次定期検診

 狭い個室で服を脱ぎ、指定通りにシャワーを浴びて身体の水滴を丁寧に拭き取る。あらかじめ指定された手順を踏んで個室を出たところで水輝は頬を引きつらせた。待ち構えていた白衣の女性たちが嬉しそうに水輝を見る。

 

「あのな。あからさまに人の身体を楽しそうに見るのはやめろ」

「いいじゃないですかぁ。こういう楽しみがないと、医療部は退屈なんですよー」

 

 きゃあきゃあと騒ぎながら女性たちが顔を見合わせて頷き合う。はいはい、と返事をして水輝は決められた通路を歩き出した。裸足で歩く水輝の後ろを白衣の女性たちが追う。彼女たちはれっきとした医療局医療技術開発部のメンバーだ。

 

「相変わらず綺麗ですよねー」

 

 年若い研究員が言えば、隣を歩くもう一人の女性が頷く。すっかり見せ物になっていることを知りつつ、水輝は知らん顔をして通路を進んだ。しばらく進むと自動でドアが開き、狭い部屋が見える。水輝が部屋に入ると女性たちが外からドアに鍵を掛け、別のドアを開けて見えなくなる。透明な硝子のような壁に囲まれた部屋の中を水輝は何気なく見回した。

 

「素っ裸で検査っての、どうにかならないか?」

『各種データを取るのに一番効率がいいんです。我満してください』

 

 壁越しに声が聞こえてくる。はいはい、と小声で返事をして水輝は部屋を取り囲む人々を見た。水輝の入った狭い部屋は広々とした部屋の中央に位置している。小部屋を取り囲んでいるのは白衣を着た医療局の連中だ。小部屋を囲む形で机が配され、人々はその机について何やら機械を操作している。

 

『第一〇五次定期検診スタートします』

「へーい」

 

 壁越しに聞こえてきた機械仕掛けの女性の声に水輝はのんびりと答えた。その直後、部屋の中にいた水輝の身体がかき消える。だが水輝の意識は部屋の中にある。身体を構成するものが強制的に分解されたのだ。

 

 なんだかなー。何もなくなった小部屋の中の様子を意識で捉えながら水輝はため息を吐きたくなった。彼らは検診のたびにこうして水輝を分解する。彼らに言わせれば必要な作業らしいのだが、水輝にはその意味が今ひとつ理解出来なかった。

 

 ハイブリッドと呼ばれる種の身体は目に見えないほどの小さな粒子で構成されている。水輝は意識を研ぎ澄まして壁の外のことを探った。すると途端に壁越しに怒られる。どうやらデータ取得を邪魔してしまったらしい。

 

 分解の後に再構成、そしてまた分解としばらく単調な作業が進む。水輝は退屈さに眠ってしまいたくなった。これもやっぱりいつものことだ。何度目かに再構成されたところで水輝は大きな欠伸をした。

 

「暇」

『我満してください。続いて能力値の測定に移ります』

 

 機械仕掛けの女性の声が水輝の愚痴に無情に答える。うー、と呻いて水輝は頭をかいた。身体の中を目に見えない何かが通る感覚は、何度経験しても慣れない。水輝は透明な壁にもたれて顔をしかめた。

 

 不意に妙な感じがして身体が熱を帯びる。来た来た、と呟いて水輝はのろのろと自分の身体を見下ろした。

 

「公開射精の時間です」

 

 水輝は厭味をこめてぼそりと言った。だが今度は機械の声は応えてくれなかった。くそ、と呟いて水輝は小部屋の周りにいる人々にちらりと目をやった。白衣を着た女性たちが目を爛々と輝かせているのが見える。

 

「おまえらなー……」

『ファイト! 今回はちゃんと出してくださいね!』

『大丈夫です! 今回はとっておきですから!』

 

 騒ぐ女性のどの顔もとても楽しそうだ。水輝はため息を吐いてがっくりとうなだれた。同じ射精するならせめて女を抱かせてくれるとか、そういう検査にしてくれないだろうか。そんなことを思う間にも水輝の股間で男根がむくりと頭を起こす。

 

 何で医療局が女ばかりか判ったような気がする。水輝は強制的に勃起させられる妙な感覚を味わいながら、力なく壁に寄りかかった。精液を構成するモノの検診というのがこの検査の理由だそうだが、その意味は何度検診を受けても判らない。

 

 せめて綺麗な女医さんとやるとかなー。看護婦さんとするとかなー。そういうことにならないかな。腹立ち紛れに水輝は脳裏に美人女医だの美人看護婦だのを思い描いた。そうしている間にも水輝の意志とは無関係に男根はそそり立っていく。

 

『勃起率、86%でーす!』

「いちいち報告すんな!」

 

 目を輝かせた白衣の女性に喚き返し、水輝は背後の壁に強く手を押しつけた。下半身に熱が溜まり、自然と息が荒くなる。

 

『一〇〇%に到達! それではとっておき、いきます!』

 

 壁越しに誰かが言う。水輝は声のした方を見ようとして顔を上げた。その直後、脳裏を凄まじい勢いで何かが過ぎる。驚きに目を見張った水輝は、立て続けに襲ってきたものに耐えきれず、掠れた声を上げて身体を震わせた。水輝の男根から迸った精液が一瞬でどこかに消える。

 

『回収終了しました。これを持ちまして第一〇五次定期検診を終了いたします』

 

 機械仕掛けの淡々とした女性の声が聞こえる。水輝は疲れた息を吐きながらのろのろと壁から身を剥がした。逆の手順で通路を戻り、服を着てから今度は白衣の女性たちの詰める部屋に向かう。検診結果が出るまではこのフロアからは動けないのだ。

 

 ドアを開けて広い部屋に入ったところで水輝は眉を寄せた。いつもなら忙しく結果の解析に勤しんでいるはずなのに、何故か部屋の一角で白衣を着た女性たちがきゃあきゃあと騒いでいる。訝りを覚えつつ、水輝は人だかりに向かって歩いていった。

 

「何だよ」

 

 水輝はそう声を掛け、人垣の後ろから首を伸ばして騒ぎの中心を見た。その瞬間、騒いでいた女性たちがぴたりと口を噤んで水輝を一斉に振り返る。もしかして検診の結果が良くなかったのかも知れない、と思っていた水輝は振り返った女性たちの顔を見てしかめ面をした。

 

「……何だ。その気持ちの悪い笑い方は」

 

 そう言って水輝は人垣を分けて騒ぎの中心になっているものを見た。そこで水輝はぴしりと顔を凍り付かせた。

 

「心配しなくても大丈夫。守秘義務がありますし」

「そうそう! 絶対、言いませんから!」

「この角度がたまらん……ハァハァ」

 

 女性たちがそれぞれに勝手なことを口走る。水輝は頬を引きつらせて問題の端末画面を指差した。

 

「なんだこれは」

 

 緊張に強ばった声で訊ねた水輝の傍に居た女性がほう、と熱を帯びたため息を吐く。

 

「これがとっておきですよー。ああ、シアワセ」

「だからなんだ、と訊いてる。質問に答えろ」

 

 水輝は画面を指差した手を震わせてもう一度訊ねた。

 

「吉良博士もやるわね!」

「やってねえ! ていうか、何なんだよ、これは!」

 

 感心したような誰かの声を聞いた水輝は素っ頓狂な声を上げた。何故か大きなモニタ画面には水輝と優一郎が交わる光景が映し出されている。

 

「ですからぁ。近頃、水輝さんって検診の時に射精出来なかったじゃないですかぁ。だから、とっておきの方法で欲情してもらったんですけどぉ」

 

 端末の一番近くにいた女性がそんなことを言って水輝に頷いてみせる。水輝はぴしりと顔を強ばらせてその場に硬直した。つまり画面に映し出されているこの光景は、彼女たちがねつ造したものではなく、水輝の深層心理から引っ張り出したものだということだ。

 

 だらだらと冷や汗をかく水輝を余所に女性たちがまた嬉しそうに騒ぎ始める。

 

「動画なんですよー、これ。リプレイします?」

「するな!」

 

 嬉しそうに言った誰かに喚いて水輝は端末に飛びかかろうとした。だがそんな水輝に周囲にいた女性たちが我先にと抱きつく。さすがに女性を乱暴に振り解くことが出来ず、水輝はその場に足止めされて真っ赤になって叫んだ。

 

「いいからとっとと解析しやがれ! でないとここから動けんだろうが!」

「言われなくても解析中でーす」

 

 明るく笑って誰かが水輝の叫びに答える。水輝はがっくりとうなだれて画面から目を逸らした。




エヴァいいですよねw
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