今朝の理子は通信しながら息を弾ませていた。
ほっ! はっ! のんのん体操! はっ! ほっ!
どうやら通信しながら体操していたらしい。うんうん、と笑顔で頷いて優一郎は理子との通信を思い出した。やっぱり理子はいつでも元気でいい。
元気と言えば彼女たちは何であんなに異様に元気なのか。優一郎は席についたまま、実験台の方に目をやった。女性の研究員たちがきゃあきゃあと嬉しそうに騒ぎながら愛華を組み立てている。
絶対、引くと思ったんだけどなあ。優一郎は騒ぐ研究員たちをぼんやりと見つめてから端末画面に目を戻した。通ったことはないが、もしかしたら女子校というのはああいった雰囲気を持っているのかも知れない。何となくそんなことを考えながら優一郎は仕事にかかった。
あれから毎日、水輝の家に泊まりに行っている。ベッドの上で淫らに喘ぐ水輝のことを思い浮かべ、優一郎は口許を緩めた。祥子がいれてくれたコーヒーを飲みながら機嫌良く鼻歌を歌う。そこで視線を感じた優一郎は隣の席を見てはっと我に返った。いつの間にか祥子がにこにこと微笑みながら優一郎を見つめている。優一郎は慌てて顔を引き締めた。
「祥子さんも、要求仕様書は見ましたよね?」
「あ、はい。拝見しました」
笑顔のままで祥子が頷く。
「どう、思われました? 正直、僕はちょっと露骨にすぎる仕様だと思ったんですけど……」
「え? 可愛いですよね」
優一郎の問い掛けに祥子が即答する。それを聞いた優一郎はひくりと頬を引きつらせて祥子を凝視した。んー、と言いながら唇に指を当てた祥子が首を傾げる。
「彼女の持ち主の方がちょっと羨ましいです」
さらりと言い切った祥子を見つめ、優一郎はうんうんと頷いた。
「なるほど」
そう返事はしてみたが、優一郎は祥子の趣味がよく判らなかった。この人も謎な人だ。そんなことを考えた優一郎を余所に、祥子が明るい顔をして言う。
「サディスティックな趣味を持つ人に比べて、受ける側の人って少ないんですよねー……」
少し声を落として言った祥子を優一郎は唖然として見つめた。一体、どこからそんなデータを引き出したのか。いや、それ以前に祥子は何でそんなことに興味を持っているのか。確かに人の趣味はそれぞれだから自由だとは思うが、それにしたって。優一郎の頭の中をぐるぐるとそれらの考えが巡る。
「そ、そうなんですか。それは、性格診断テストなどで科学的に実証されているんですか?」
「と言うかですね」
そう言ってから祥子が優一郎の方に身を傾ける。何となくつられて優一郎は祥子の方に身体を傾けた。
「ここだけの話なんですけど、この間の……ほら、例の池田水輝さんの件、あったじゃないですか」
ぼそぼそと小さな声で祥子が優一郎に耳打ちする。うんうんと頷きながら優一郎は返事した。
「ああ、あの件ですね」
「ええ。あの彼がアルバイトって言ってしてたこと、実はけっこう評判が良かったのは、サディスティックな趣味が満たされない欲求不満を大勢が抱いていたこともあってですねー……」
祥子の話によると、この『塔』に詰める者だけで考えても、その手の趣味を持つ者の割合はかなり高いらしい。男同士、女同士、それにそれらの関係性を異様に好むもの。あるところではアブノーマルと言われる性癖を持つ者がここには相当、多いのだそうだ。
「なるほど」
「この間も行きすぎたそういう行為によって、死んじゃったってニュースになってましたよ」
小声でそこまで言ってから祥子が席に戻る。
「ある程度の規模で性格診断テストを行って統計を取ってみたほうがいいかもしれませんね」
性の問題は根深いから。身体の向きを戻しながら優一郎は言った。そうですね、と祥子が神妙な顔で頷く。
「この世界の総人口はさほどではありませんし、いっそのこと全人口を対象にした方がいいかも知れませんね」
「そうですね」
そう返事をしつつ、優一郎は何気ない感じで早速、プロジェクトとして提案書を作り始めた。今日は仕事もさほど多くないからか、祥子がまた話しかけてくる。
「サディスティック趣味の強い人になると、首とか締めちゃうらしいですねぇ。苦しみながら快感に悶えるところがいいとか」
そう言ってから祥子が少し遠い目をして、熱いため息を吐く。いいなあ、というごくごく小さな祥子の呟きを聞いて優一郎はぴたりと作業の手を止めた。肘杖をついた祥子は遠い目をしている。優一郎はそれを見なかったことにして作業を続けた。
エピタイに困ったというのが判り易すぎる気が(汗)
祥子はガチですw