BL警報です!
タオルを咥え、必死で声を殺しながら実鈴は乱暴に身体を揺すられていた。緩みきった肛門に遠慮の欠片もない勢いで太い物が出入りする。給湯室は医療特殊技術部三課のある階層の奥まったところにある。人気のない給湯室の流し台につかまり、実鈴は全身に力を込めて漏れそうになる声を堪えた。
「うっ」
実鈴を犯していた男が低い呻きを漏らして射精する。体内にぬめったものが飛び込む嫌な感触に顔をしかめ、実鈴は流しをつかむ手に力をこめた。男が何度か腰を揺さぶってからペニスを抜き、実鈴のスカートの中に手を突っ込む。
「んっ」
股間を弄られた実鈴は微かな声を漏らし、タオルをきつく噛んだ。慣れた手つきで器具を取り外した男がにやにやと笑って容器の蓋をぱちんと閉じる。
「何だよ。その面。生意気な目、しやがって」
器具と容器を白衣のポケットにしまい込んだ男が、実鈴の頬に平手を見舞う。実鈴は殴られた痛みに顔をしかめ、男を睨みつけた。
男の名前は多村久弥。実鈴と同じ医療特殊技術部に所属する研究員の一人だ。
「俺に逆らったらどうなるか判ってんだろうな?」
実鈴の胸ぐらをつかまえた久弥が凄みのある声で言う。実鈴は久弥を睨みつけたまま、頷いた。すると久弥が舌打ちをして実鈴を床に打ち捨てる。乱れた服を整えてから久弥は笑いを残して給湯室を出て行った。
「下衆が」
タオルをぺっ、と床に吐き出してから実鈴は低い声で久弥を罵った。汚れたタオルを流しで丁寧に洗い、タオル掛けにかけてから給湯室の中を片付け、急いでトイレに向かう。慌ただしくトイレの個室に飛び込んだ実鈴は、下着を脱いで便座に腰掛け、汚された肛門を水で洗い流した。乱暴にされたおかげで肛門も腸壁にも傷が出来てしまっている。
手早く汚れた部分を洗い流し、下着を着けてから実鈴は医療特殊技術部三課の部屋に戻った。
「あれー? 課長、まだいらっしゃったんですか?」
入り口近くの席に着いていた女性が言う。実鈴はにこりと笑って頷いてみせた。
「実験のー、きりがいいところまでやっちゃおうと思ってー」
えへへ、と笑って頭をかいてから実鈴はのろのろと自分の席に向かった。今日は朝からローターで弄られっぱなしだったせいか、身体になかなか力が入らない。実鈴は痛みを堪えて椅子に腰掛け、残っていた作業に取りかかった。
「そう言えば! 課長、水輝さんと何話してたんですかっ!」
実鈴の席の近くにいた長柄伊知花という女性が目を吊り上げて言う。えー、と困った顔をしてから実鈴は頭をかいた。
「実験経過の報告をしてただけですよー」
「よかった……。二人きりで実験室にこもっちゃうから心配したじゃないですかっ」
涙を目に浮かべて伊知花が言う。えー、と笑ってから実鈴はぺちぺちとキーボードを叩いた。
「なに言ってるんですかー、もう。伊知花さんってばー。私は男には興味ありませーん」
「そうそう。課長はナカマなの、な、か、ま。伊知花さん、心配しすぎ」
近くの席にいた女性がからからと笑って伊知花に言う。すると伊知花はむう、と呻いて唇を尖らせた。
伊知花は医療特殊技術部三課の中では唯一のハイブリッド種だ。そのため、伊知花には特殊な作業を依頼することが多い。むくれた顔をする伊知花を周辺の女性と共にどうどうとなだめ、実鈴は端末画面に目をやった。
「あー、そーいえばー、新しい画像がー……いる人ー!」
実鈴が声を張り上げると、部屋に残っていた女性たちが揃ってびしりと手を上げる。くくく、と笑ってから実鈴は全員の端末にその画像を送りつけた。画面に食いついて画像を確かめた女性たちが、一斉に熱いため息を吐く。
「ああ……この角度がたまらない……」
「もう少し近ければ! あああ、この苛々がナイスです!」
「ふふふふふふふー。隠し撮り、大成功ですー」
満足の笑みを浮かべて実鈴は頷いた。食堂で一緒に食事をとりながら、実鈴はちゃっかりと水輝と優一郎のツーショット画像を撮っていたのだ。
「ううう、生で見たかった……」
伊知花がモニタをぐっと抱きしめて首を振る。伊知花は午前の業務が長引いたために、みんなと一緒に食事が出来なかったのだ。
作業を手早く済ませ、実鈴はみんなと一緒に『塔』を出た。街でお茶をしてから数人の女性たちと一緒に帰途につく。
「今日もボーイズ人生は充実していました。神様ありがとう」
「あははは。ほんとにそうだよね。これも課長のおかげ! ありがとうございますっ」
賑やかに話をする女性たちに実鈴はうんうんと頷いてみせた。何しろ医療特殊技術部三課には、趣味を同じくする女性が集まっているのだ。彼女たちを一人一人、医療特殊技術部三課に引き抜いたのは実鈴だ。
『塔』から少し離れた場所にある、女性専用の社宅についてから実鈴は彼女たちと手を振って別れた。足早に階段を上がって部屋に駆け込む。ドアを閉めてから実鈴はへなへなと玄関に座り込んだ。
「うう、いたいですー。ちょっと限界ですー」
涙の浮かんだ目で言ってから実鈴は這って部屋の奥に進んだ。バスルームに直行し、服を脱いでからシャワーを浴び、傷つけられたところを丹念に洗い流す。バスルームを出た実鈴は身体を綺麗に拭いてから、裸のままでベッドに這い寄った。枕元の薬を取り上げて傷に塗る。
「はうー。しみますー」
実鈴の身体のあちこちには傷が出来ていた。久弥は狡猾に服に隠れて見えないところに傷を作ってくれるのだ。くそ、と呟いて実鈴は苛立ちに歯軋りした。
天人と呼ばれる人々の多くが子をなせない身体をしている。久弥もそんなディザブラの一人だ。そしてこの世界では、裏で人の体液が取引されている。実鈴は苛々しながら自分の股間を見下ろした。
実鈴の股間にはペニスがぶら下がっている。実鈴が女性の振りをして『塔』に入ったことをどこから嗅ぎつけたのか、それをネタにして久弥は脅しているのだ。が、医療特殊技術部三課の彼女たちは実鈴が男だということを知っている。彼女たちにバラされる分には問題ないのだが、久弥はそのネタを上に売ると言ってきたのだ。
別に誰に知られても構わない。実鈴は自分の女装癖は少しも後ろめたく思っていなかった。女性の振りをしているのも、その方が常時女装していられるからで、それ以外の理由はない。
薬を塗りおえた実鈴はため息を吐いた。ベッドの向こうにある窓の外に暗い空が見える。
「やっぱりここは気合いですー! ボーイズ熱が足りないから、こんなに弱気になるんですー!」
声を上げて実鈴はぐっ、とこぶしを握りしめた。明日も頑張るぞー! と実鈴が叫んだ直後、部屋の壁がごんごんと向こう側から蹴られる。慌ててごめんなさい、と隣の部屋に向かって詫びてから、実鈴はこっそりと呟いた。
「でもー、おとなりさんのー、お部屋からー、時々聞こえてくるー、えっちな声の方がー、はるかに大きいと思いますー」
小声で言ってから実鈴は一人で納得して頷いた。
実鈴の名前は辞書登録してたはずなのに出なくて焦りました(汗)