・空崎 ヒナ(水着)
・シャーレの先生
久方振りの休日。私とヒナは海に来ていた。
『久し振りの休暇、先生と一緒なら』と、そう言ってついてきたヒナと共に砂浜を歩く。
照り付ける太陽。熱を帯びた砂浜は、サンダルで踏み締めるごとに足の裏に熱を伝えてくる。
ヒナは『暑いわね』と呟きながら、額の汗を拭った。
透き通るような白い肌をつたう汗の雫、そして少し上気した肌はどこか艶かしく、彼女の魅力をより一層引き立てている。
身に纏う水着は、以前の夏合宿で着用していたスクール水着。あの時と変わらずのヒナに、私は思わず笑みを浮かべた。
「何?」
私の視線に気づいたのか、ヒナが首を傾げる。私は『何でもないよ』と誤魔化すように答えると、彼女の手を引き、波打ち際を歩いていく。
「冷たくて気持ち良いわね」
足首まで海に浸かると、ヒナはその心地良さに目を細める。繋いだ手の温もりが、海水の冷たさと相まって気持ちいい。
そのまま暫く波打ち際を歩いていると、大きな岩陰を発見した。
「あそこで休憩しようか」
私はそう言うと、ヒナの手を引き岩陰へと移動する。
そこは、ちょうど2人で並んで座れるスペースがあり、私はそこに腰掛けるとヒナも隣に座った。
一息つくと、ヒナの方を見る。
彼女は私の肩に頭を乗せるように寄りかかっており、その表情は穏やかだった。なにものにも縛られず、二人だけの時間を堪能する。
波の音と、ヒナの息遣いだけが聞こえてくる。こんな穏やかな時間がずっと続けばいいのに、と私は思った。
お互い、水着とラフな服装のせいか、何時もより開放的で、それでいて、より身近にヒナを感じることが出来る。
私はそっと彼女の腰に手を回し抱き寄せると、ヒナは嬉しそうに微笑み、私の腕に自分の腕を絡ませてきた。
水着の生地越しに、ヒナの体温が伝わる。そして、控え目に主張する胸の感触。
ヒナは恥ずかしげに頬を染め、視線を逸らす。それでも離れようとはしないのが嬉しかった。
「少し、海の中に入らない?」
その言葉の意図を察し、私はヒナの手を取り、ゆっくりと、海の中へと入っていく。
私からすれば、まだ足がつく位置だが、ヒナからすれば水底に足がつかない位置まで来ている。
だが、これにより、ヒナと私の目線は同じになり、身長差を補う形となった。
「不思議な感じ。私は何時も、先生を見上げていた。でも、此処なら、先生と同じ目線でいられる」
ヒナはそう言うと、私の首に手を回し、唇を重ねてきた。
「んっ……」
触れる程度のキス。ヒナの柔らかい唇が、私の唇を優しく包み込む。
触れ合うだけの軽いキス。それだけで、私の身体の芯に火が灯るのを感じた。
ヒナは唇を離すと、少し困った顔をしながらクスクスと笑った。
「でも、残念。此処だと少し塩っぱくて、先生の味がよく分からなかったわ」
そう言って悪戯っぽく笑う彼女に、私は背中と頭に手を回し、抱き寄せると今度は深く口付けをした。
ヒナは一瞬驚いた表情をするも、すぐに受け入れてくれた。呼吸すら忘れるほどの、長く、濃厚な口付け。
やがてどちらからともなく唇を離すと、銀色の橋がかかった。
「先生……」
「本当だ。此処だとヒナの味が海水でよくわからないね」
私はそう言うと、再びヒナを抱き締める。
「でも、こうして同じ目線でヒナを感じる事が出来るのは役得かな?」
「そうね。私も、先生の体温を全身で感じられるわ」
ヒナはそう言うと、私に身体を預けてきた。
寝室のような閉鎖的な空間ではなく、開放的な空間での逢瀬を、私達は暫く堪能するのであった。