・早瀬 ユウカ
・不良生徒
リクエスト作品です。
早瀬ユウカが不良グループに捕まり拷問される話です。
シャーレの先生という立場上、生徒とは平等に接する事を心掛けてはいる。しかし、時と場合、特に生徒同士でのいざこざが起きた時、どうしても片方の肩を持ってしまう部分がある。
それが例え、犯罪目的の生徒を止める為の行動だったとしても、それがその生徒にとっては裏切りに見えてしまう事もある。だからこそ、私は生徒との距離感を大事にしてきた。
そのつもりだった……
「今日のお仕事はこれでお終いですね。先生」
「ありがとうユウカ。ユウカのお陰で助かったよ」
「そんな事ありません。当番として、先生の仕事スケジュールを管理しただけですから」
「それでも、本当に助かったよ。私一人だったら、今日中には終わらなかっただろうからね」
そう言って、当番制で仕事の手伝いに来てくれたユウカにお礼を言う先生。ユウカは、少し頬を赤らめながらも、そのお礼を素直に受け取った。
場所はブラックマーケットから近い区画であり、最近、不良生徒達の溜まり場となっている事から治安が悪化し、その件で地元住民からシャーレに調査の依頼が来た為、当番のユウカと共に現地に赴いたが、事前情報とは異なり、不良生徒達が大人しく、トラブルが起きる事も無く、仕事を終える事が出来た。
とはいえ、依頼があった場所は複数あり、それらを回るのは一苦労したのは確かである。
もしもユウカがいなければ、効率的に回る事が出来ず、今日の内に仕事を終える事は出来なかっただろう。
「そうだ。折角時間も余った事だし、お礼に食事でもどうかな? ユウカの好きな物、ご馳走するよ」
「え、本当ですか。ありがとうございます」
先生からの食事の誘い。それは、ユウカにとって嬉しい事だった先生と過ごす時間が増える。他の生徒達も同様、当番制に参加する生徒の大半は、先生と過ごす時間を楽しみにしている節がある。
そんな生徒達よりも長く先生と時間を共にする事が出来る。それも、仕事の手伝いではなくプライベートの時間でだ。
この機会に、もっと先生と親密な関係になれたらと、ユウカは想いを馳せていた。
「この辺りだと、何処かおすすめのお店はあるかな?」
「えっと、それでしたらこの先にある……っ」
おすすめの店を問われ、辺りを見渡したユウカ。その視線の先には不良生徒達の姿。ブラックマーケットの近辺ではよく見かける光景であり、普段なら気にも留める事のない光景の筈だった。
しかし、彼女達の視線が先生に向けられていた事と、彼女達が普段から所持していた銃火器に手を掛け、セーフティーを解除した事に気付いたユウカは、無意識に先生が物陰に隠れられるように突き飛ばした。
「先生っ!! 伏せて!!」
「ユウカっ!!」
先生を突き飛ばし、不良生徒達の視界から先生を隠したが、彼女達は銃口を此方に向けて、引き金に手を掛けている。
応戦するよりも先に先生を守らなければ。そう判断したユウカは、重火器に手を伸ばすよりも先に、先生と不良生徒達の間に立ち塞がり、両手で頭部や胸周りを守るように身構えた。
刹那、銃声が鳴り響き、ユウカの身体に衝撃が走る。複数人からの同時射撃。
如何にキヴォトスの住民が頑丈とはいえ、被弾すれば痛みを感じる。続く発砲の嵐。先生が背後にいる事もあり、ユウカは痛みに耐えながら、その身を盾にして先生を守り続けた。
そして弾が切れ、不良生徒達が次弾を装填するよりも早く身を翻すと、先生を連れてその場から撤退する選択肢を取った。
「ユウカ、怪我は……」
「大丈夫です!! それよりも今は、この場から撤退する事を優先しましょう!!」
数的不利。そして何より、彼女達がこの辺りを屯している不良達なら地理的不利も加味されると、下手に対抗するよりも撤退しながら救援を要請した方が良い。そう判断し、先生を連れて不良生徒達から逃げるように駆け出した。
しかし、ユウカの考えを読んでいたのか、或いはそれすらも想定の範囲内だったのか、逃げる先々に不良生徒達が待ち構えており二人の行く手を阻んでくる。
明らかに誘導されている。それも、ブラックマーケット方面へと確実に。不良生徒達の動きは統率が取れており、彼女達を指揮している者が何処かにいる筈だ。そして、二人を追う不良生徒達全員が、先生ではなくユウカのみを狙っている事から狙いは先生なのだろう。
先生はキヴォトスの外から来た大人だ。銃弾一発で致命傷にすらなり得る。不良生徒達の目的が先生を人質に取っての金銭の要求か、或いは別の目的かは定かではない。
致命的なのは、ユウカ一人で不良生徒達を対処しきれない事。もしもこれが、ゲヘナの空崎 ヒナやトリニティの剣先 ツルギ。そしてミレニアムの美甘 ネルだったならと思わずにはいられない。
それでも先生を守らなければと、ユウカは息を荒げながら追手を牽制し、先生の指示を受けながら、不良達の猛攻を躱し続けた。
だが、それも限界に近付いている。先生も逃げながらの指示には限度があるし、何より決め手となる手札もない。早瀬 ユウカという戦力では打てる策も少なく、次第に追い詰められていく。
視界に捉える不良生徒の数が更に増えてくる。恐らくは広く展開していた不良達が合流し始めているのだろう。
このまま逃げ続けても袋小路にあうだけだ。それなら……。
「……先生、お願いがあります。私が活路を開きますので、その隙に逃げて下さい」
「ダメだ。それだとユウカが……っ」
「このままだと、結局二人共捕まってお終いです。それなら、私が足止めしている間に救援部隊と合流出来れば勝機があります。だから……」
「……っ」
ユウカの決意。それは、自分の犠牲を厭わない、決死の作戦でもあった。
しかし、現状で打てる手はそれしかない。ならば、少しでも二人が助かる道を選択するしかない。
苦渋の決断を迫られる中、ユウカは先生からの返事を待たずに飛び出すと、突然の反撃に戸惑う不良生徒達に向けて、引き金を引いた。
「先生っ!! 今です!!」
ユウカが切り開いた道。不良生徒達の布陣に空いた僅かな隙間を縫うように先生は包囲網から抜け出すと、その背を守るようにユウカが銃火器を構えながら銃弾を広範囲にばら撒いた。
被弾したとしても殆どダメージはないだろう。しかし、追い詰めていた筈の獲物に反撃された不良生徒達は、銃口をユウカ一人に集中した。
無数の弾雨に晒されるユウカ。放たれる銃弾から身を守るように身構え、応戦している内に弾倉が空になる。次の瞬間、不良生徒達の銃火器から放たれる弾丸の嵐がユウカを襲い、その身体を穿ち続けた。
それでもユウカの反撃は止まらない。弾倉を交換し弾幕を張り続ける。視界が霞む。意識が遠のく。それでも倒れるわけにはいかない。此処で倒れれば、先生が追い付かれる。それだけは避けなければならない。
その一心で、歯を食いしばりながら弾切れとなった重火器の引き金を何度も引き続けた。
しかし、次の瞬間。
一発の銃弾がユウカの額を穿ち、その衝撃により、ぐらりと身体を揺らし、手にしていた銃火器を滑り落としながら膝をついた。
狙撃された。それに合わせて無数の銃弾が全身を穿つ。抵抗する術はない。銃器は手から零れ落ち、ぼやけた視界の先に、銃器を持ち直し、振り上げる不良生徒の姿。そして、無情にも振り上げられた銃器がユウカの頭部へと振り下ろされ、頭部に感じた衝撃と共にユウカの意識は深い闇へと沈んでいった。
ブラックマーケットの一画。廃墟となったビル群が立ち並ぶ区画に、不良生徒達の溜まり場と化している場所がある。
連邦生徒会の手の届かない無法地帯。そこに連れ去られたユウカは、廃ビルの地下にある空き倉庫放り込まれていた。
不良生徒達は意識のないユウカを拘束し、その手足を厳重に縛り上げる。
深手を負い、傷だらけの身体に、両腕両足をきつく縛り上げられれば、全身が軋むように痛み、鋭い痛みが何度もユウカを襲う。
「ぐぅ……っ!!」
「お、漸く目を覚ましたか」
意識が覚醒したユウカが最初に見た光景は、窓のない部屋とドアの前に立ち塞がる大勢の不良生徒。そして、部屋の隅には何故か耐熱性の入れ物に大量の炭火と、棒状の何か。
先生の姿はない。何とか無事に逃げ果せたのだろう。その事に安堵し、目の前の不良生徒達に鋭い視線を向けながら、ユウカは口を開いた。
「此処は何処? 貴女達の目的は何?」
「ハッ。目覚めて早々にその態度かよ。別に答える義理はねぇよ」
「こちとら先生に逃げられてイライラしてんだ。あんま舐めた態度取ってると、後悔すんぞ」
「……そう、先生は無事なのね」
「……てめぇ」
「よせ。今のは口を滑らせたお前が悪い」
ユウカの挑発的な言葉に逆上する不良生徒を、リーダー格の不良生徒が静止する。
他の不良生徒とは雰囲気の違う、何処か危険な香りを漂わせる不良生徒達のまとめ役。そういった存在に見えるリーダー格の不良生徒は、ユウカに近付くと無防備な彼女の腹部へ拳を打ち込んだ。
「がっ……!!」
「それはそれとて、けじめはけじめだ。私達に舐めた口を利いた事を後悔させてやる」
咳き込み蹲るユウカに近付き、リーダー格の生徒がそう呟きながら、彼女の髪を掴んで上を向かせた。
自身の足で立つ事すら困難になりながらも、決して負けを認めようとしないユウカ。その様子にリーダー格の不良生徒はユウカの顔に何度も拳を打ち込んだ。何度も何度も、自身の拳が血に染まるのも気に留めず、ただ気絶させないように気を付けながら。
「かはっ……う……っ」
殴打が繰り返され、やがて反応が鈍って来たユウカの様子を見下ろしながら、リーダー格の不良生徒は立ち上がると、周りの生徒達に後を任せ、一人退室する。
顔中青痣だらけとなり、意識が朦朧とするユウカを他所に、不良生徒達はユウカを無理矢理起こすと、天井にフックを取り付け、そこに彼女の両腕を拘束した縄を通し、吊るし上げた。
「ぐぅぅ……あぁ……」
吊り下げられる事により、自分の体重でロープが身体を締め付ける苦痛が、彼女の表情を顰めさせる。
「えげつねぇ事考えるよなぁ。うちのリーダーは」
「だな。まぁ、先生を逃がした元凶なんだ。当然の報いだ」
「アレの用意は出来たか?」
「おぉ、めっちゃ熱々に仕上がってるぜ」
不良生徒が用意したのは炭火にくべられた太い棒状の何か。その先端は赤く熱せられ、その熱量に周囲の空気も歪んで見える。
「なぁ、お前はミレニアムの生徒なんだろ?」
「ミレニアムっていや、頭のよさげな印象だなぁ」
「だったら、これに彫られてる文字も分かるよな?」
言って、先端を見せる不良生徒に、ユウカは目を見開いた。
熱く熱せられた棒状のそれは焼鏝であり、先端には『奴隷』と文字が彫られていたのだ。
『奴隷』と彫られた焼鏝を見て、これから不良生徒達が何をしようとしているのか察したユウカは、恐怖に顔を引きつらせる。
「や、止め……っ」
「あぁ? 聞こえねぇよ。ちゃんと喋れやオラァッ!!」
「あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛っ!!!!」
制服越しに焼鏝を押し当てられ、肉が焼ける音と共に激痛がユウカを襲う。
苦痛から逃れようと身体を捩るが、他の不良生徒達が身体を抑え付けている為、逃げる事も出来ない。
「あ゛っづぁ……!! あ゛づぃ……っ!! あ゛ぁ……っ」
暫くして、肉と服が焼ける臭いで部屋中が満たされ、ユウカの悲鳴も小さくなっていき、不良生徒達が焼印を離すと、彼女は力無く項垂れた。
焦点の合わない瞳には覇気が無く、腹部にできた『奴隷』の烙印に不良生徒達は嗜虐的な笑みを零した。
「良い出来だな。おい、こいつの写真撮っとけ」
「りょ~かいっ」
「取った写真は携帯を置いてきたビルの入り口にでも貼っておけ」
「いいねぇ。これを見た先生が、どんな顔をするか楽しみだ」
口々にそう零し、耳障りな嗤い声を上げながら、不良生徒達が退出していく。
携帯を没収されているという事は、GPSで追跡する事も出来ない。恐らくは気絶している間に身体検査もされているだろう。よって、外部に救助を求める事も不可能。つまり、ユウカの救助は絶望的という事になる。
「先生……っ」
その現実に、ユウカは涙し、そう呟きながら気を失った。
ユウカの機転で無事に不良生徒達の包囲網を脱出した先生は、そのまま救援として招集された生塩 ノア達と合流し、急ぎ襲撃された現場へと引き返していた。
しかし、現場に残されていたのはユウカが所持していた銃火器のみで、彼女の姿は何処にもない。
不良生徒達に連れ去られたと判断するのは妥当だろう。急いで生徒達を連れ、周辺一帯に範囲を広げ探し回っているが、一向にユウカと不良生徒達の足取りは掴めずにいた。
携帯のGPSも機能しない。恐らくは回収され破棄されたのだろう。
「先生。少し休まれては……」
「……いや、大丈夫。それよりも、早くユウカを見つけないと」
「ですが、このままだと日が暮れます。ユウカちゃんの事も心配ですが、また襲撃犯に襲われればどうなるか……」
「……分かった。ごめんね。無理を言って」
明らかに疲労の色が見え、更には精神力も相当に擦り減らしている先生を気遣っての言葉だが、焦る気持ちが先行している先生からすれば、一秒でも早くユウカを救出したい気持ちの方が大きかった。
捜索を一時中断し、撤退する。その事がユウカの救出を更に困難にしてしまうかもしれないと分かっていても、今は一度体勢を立て直さなければ、今度は救援に来てくれたノアや他の生徒達にも危険が及んでしまう。
先生は、一時撤退の言葉を伝えるべく通信機に手を伸ばし、電源を入れた。
暫くして、意識を取り戻したユウカ。
散々痛めつけられた全身は重く、傷は痛みと共に熱を帯びている。
部屋にはリーダー格の不良生徒と共に取り巻きの不良生徒が数人。その手には錆び付いた針が握られていた。
「……降ろせ」
リーダー格の不良生徒の指示に従い、取り巻きの不良生徒がユウカを吊り下げたロープを緩め、古びた椅子に座らせた。
そして、リーダー格の不良生徒とユウカの間に同じく古びた机を置くと、その机の上にユウカの手を固定させた。
「早瀬 ユウカ……お前をどうするか一日かけて考えた。お前のせいで先生を逃した。その責任はお前が取るべきだと私は考えている」
「……先生に逃げられたのは、貴女の作戦や指示に不備があったからでしょう」
「あぁ、そうだな。私の指示にも問題があったかもしれない。その上で考えた」
そう言って、大量の錆び付いた針をテーブルの上に転がし、その内の一本をユウカに突き付けた。
「お前には、先生の情報を洗いざらい吐いてもらう。答えなければこれをお前の皮膚と爪の間に刺していく」
「……脅し?」
「そう思うか? 言っとくがお前に拒否権は無い。私は別にどちらでも構わない。答えるも由、沈黙を貫くも由。好きに選ぶといい。だが……」
「ひぎっ!!」
錆びた針の先端をユウカの手の甲に突き刺した。鋭い痛みに、ユウカが悲鳴を上げる。
「先ずは痛みを理解するといい。言っておくが、これから行う尋問は、これ以上の痛みを伴うぞ」
「あ……ぐっ……」
刺した針を更に押し込み、ねじ込まれていく。血管が傷付けられ、血液が滴る。
「はぁ……あぁっ……あぁっ……!」
汗が止まらない。嗚咽し、身体を捩るユウカだったが、それを周りの取り巻き達が押さえつける。
「痛みを理解したな? では始めよう」
「や゛、や゛め……っ!!」
「言っただろう。私は……答えるも由、沈黙を貫くも由……とな。おい、こいつの手を後ろ手にして拘束しなおせ」
「は、はい。了解っす」
取り巻きの不良生徒が、ユウカの手を椅子の背もたれに縛り付け、拘束しなおした。
「では始める。お前が先生を何処まで知っているか、その情報を教えてもらおう」
「わた……ひっ!!」
再開される尋問。リーダー格の不良生徒の手がユウカの指に触れる。弄るように爪を触り、皮膚と爪の間をなぞるように、指の腹を擦る。そのむず痒い感覚に背筋が凍る。
そして、リーダー格の不良生徒は先生に関する情報を得ようとユウカに質問を投げかけるのであった。
しかし、その内容はユウカの知る由もない情報ばかり。先生の身長や体重。先生の好きな食事や趣味など、証明できないものばかりである。
答えても『では、それを証明して見せろ』と悪魔の証明を提示し、答えられなければ、再び痛みを与えられる。
「あ……っ、が……っ!!」
既に右手の指の爪と皮膚の間に針が刺され、その傷を擦られて鋭い痛みがユウカの身体を、駆け巡った。
涙で視界は滲み、その痛みは、ユウカの思考と抵抗を徐々に削ぎ落としていく。
爪の内側は出血で赤く染まり、まるでマニキュアをしているかのように、彼女の爪を染め上げている。
その痛みと尋問による恐怖が、彼女の心を徐々に蝕んでいく。
「次は左手だな」
「も、もう……やめ……」
「……何か言ったか?」
「あぎっ!!」
「質問した内容以外を答えるな」
容赦なく左手の人差し指の爪と皮膚の間に針を刺し、そのまま刺しては抜いてを繰り返す『雀啄』でより深く、より強く、その傷を刻む。
「いぎっ……あ、がっ……あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛っ!!」
「もう一度聞く。お前は先生に関して知っている情報を洗いざらい吐け」
針を持つ手に更に力を込め、もう一本。今度は左の薬指の爪と皮膚の間に針を刺した。
その痛みにユウカは叫ぶ。
「痛いっ、い゛だ……い゛ぃ゛ぃ゛っ!! あ゛ぐぁ゛っ!! あ゛ぁ゛……っ」
「早くしろ。次は小指だ」
「や゛、や゛め……っ……い゛だい゛……あづぃ……!! あぁっ、うぁ゛っ!! ぎぁっ!」
「次は親指だな」
「あ゛、あ゛ぁ……っ。い゛だ、い゛ぃぃ……」
「痛いのが嫌なら早く答える事だ。そうすれば痛みから解放してやる」
「い゛ゔっ!! い゛ゔがらぁ……あ゛ぁ……や゛めでぇ……っ!!」
「早く答えろ」
「あ、あ゛ぁ゛っ!! あがぁ゛っ!!」
結局、先生の有力な情報を得る事が出来なかったリーダー格の不良生徒は、ユウカの両手の指全てに針を刺し終えると、真っ赤に染まった指を眺めながら腕の拘束を解いた。
「う、ぁ……あ゛ぁ゛っ……」
痛みと恐怖で身体を震わせ、嗚咽を漏らすユウカ。爪と皮膚の間に深々と刺さった錆び付いた針。早く抜かないとばい菌が入って化膿してしまうかもしれない。だが、今はそれを抜き取る気力すらも残っていなかった。
「……非常に残念だ。此処まで非協力的とは思わなかったよ。あぁ、非常に……」
リーダー格の不良生徒が、流れるような自然な動きでそっとユウカの手をテーブルの上に置き、静かに拳を振り上げる。
「残念だ」
そして、ユウカが気付くよりも早く、針が抜かったユウカの手に向けて、拳を振り下ろした。
「あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!!」
爪と皮膚の間に深々と刺さった針に、思い切り殴打による衝撃が与えられた事で、その痛みにユウカは悲鳴を上げた。
意識が飛びのきそうになり、それでも痛みで気を失う事すらも出来ない状況に、ユウカは涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら、痛みを少しでも逃そうと身体を捩った
「がっ……うぁ゛……あ゛ぁ゛ぁ゛……っ!!」
「早く答えれば良かったものを、無駄な抵抗をするからこうなる」
衝撃で爪は割れ、裏側を染めていた赤が表面にまで侵食する。文字通り、血のマニキュアを体現させたリーダー格の不良生徒は、取り巻きの不良生徒に、もう一度天井に吊るすよう指示を送ると、食事の用意と、今度は寝かせないように、少しでも睡魔に襲われていると判断したら冷水をかけるよう命令し、その場を後にした。
不良生徒達は痛みを必死に耐えるユウカに、消費期限の過ぎた食パンを一枚無理矢理食べさせ、水で流し込ませると、天井にロープを通し、両腕を拘束させる。
そして、暫く時間が経過すると、痛みは徐々に引いていき、その代わりに疲労からくる睡魔がユウカを襲った。痛みはいずれ引くが、人間の三大欲求の一つである睡魔だけはどうする事も出来ない。
しかし、その度に冷水を頭から被せられ、強制的に意識を戻され、考えが纏まらず、思考力が低下する。
「あ……ぅ……」
「寝るなよぉ。寝たら私達が怒られるんだからなぁ」
「てか、さっきの拷問凄かったっすねぇ。リーダーって昔何してたんすか?」
「さぁ、詳しくは分かんねぇけど、ゲヘナとトリニティに喧嘩売ってたって話を聞いたくらいかな? それで、その後色々あって、学校がなくなったって」
「うはぁ、何すかそれ。どんだけ盛ったらそんな話になるんすか?」
「だから詳しく分かんねぇって。まぁ、この手のやり方に慣れてるとこから考えると、相当やばい学校だったんじゃないか?」
「成程。それは納得っすわ」
取り巻き達が話し込んでいる間もユウカの拷問は続く。
「お、おねが……寝かせて……寝かせてよ……」
「だから寝たら私達が怒られるから駄目だって。反省の色が全然ねぇなぁ」
「反省……って、なん、で……わたしが……あっづぁ゛っ!!」
寝かせてほしいと懇願するユウカの腕に熱感が走る。視線を向けると、一人の不良生徒がユウカの腕に火のついたタバコを押し付けていたのだ。
「ほら、これで目が覚めただろ?」
「うあぁぁ……あぁっ……!」
火傷がユウカの腕を蝕む。そして一人の不良生徒の行いから他の不良生徒も参加し始め、ユウカの身体中の至る所に火のついたタバコを押し付け、根性焼きをしていった。
「あがぁぁぁあっ!! あ゛づ、あ゛づぃ゛ぃ゛い゛い゛っ!!」
「あぁ、もう五月蠅いなぁ」
「リーダーが来たらどうすんだよっと!!」
吊るされて尚、暴れまわるユウカの鳩尾目掛けて銃口を向け、不良生徒の一人が発砲した。
「ん゛ぐゔぅぅぅっ!!」
鋭い痛みに、身体をのけ反らせるユウカ。
「お、良い感じに大人しくなったな」
「いいじゃん。そのまま弾倉空になるまで撃ち尽くせ」
「おっけ~」
そう言って、ユウカの身体に次々と銃弾を撃ち込んでいく。
「う゛ぁ゛っ!! あ゙ぁ゛……う゛ぁ゛ぁ゛っ゛!!」
痛みと熱。そして、身体を穿つ銃弾に、ユウカの意識は混濁し、視界は霞み、次第に何も考えられなくなっていく。
「あ……っ、あ゛ぁ゛っ……あ゛ぁ゙……っ」
「うん。良い感じに弱ってきてんなぁ」
「よ~し、しっかり起こそうか」
そう言って、再び冷水を被せ、強制的に意識を覚醒させる。
「あ……っ、う……あ゛ぁ゛っ……」
「ほら、これで暫くは眠気ともおさらばしただろ? 私らに感謝しろよ」
「あ、うぁ……ぁ゛ぁ゛っ……」
「……駄目だなこりゃ」
「もう良いんじゃね? 取り合えずヘイローが消えそうになってたら水かけて起こせばいいんだし」
「だな。じゃ、後よろしく~」
そう言って、不良生徒達は順番で仮眠を取りつつ、ユウカを監視し続ける。そのままユウカは、リーダー格の不良生徒が戻ってくるまでの間、延々と冷水をかけられ、強制的に覚醒させられ、また冷水をかけられを繰り返され、心身共に限界を迎えていく事になる。
そしてその頃、先生は……。
捜索二日目。
早朝、ノア達と共に改めてブラックマーケットを訪れた先生は、捜査範囲を広げ、廃ビルが建ち並ぶ区画を捜索していた。
無事である事を祈り、ビルの内部をくまなく捜査する。しかし、一つの廃ビルを調べるだけでもかなりの時間が掛かる為、捜索は遅々として進まなかった。
そして、捜索開始から三時間。生徒の一人が先生の下に駆けてきた。
「先生!! これを見て下さい!!」
生徒が見付けたのはユウカの写真だった。それも、身体を拘束され、吊るされた状態のユウカが拷問を受けているような写真。
先生はその写真を何処で見付けたのか生徒に問い質すと、少し離れた区画の廃ビルという事が判明した。
ノア達にその事を伝えると、急いで廃ビルの捜索に駆け出す。そして、廃ビルに到着した先生は、生徒達に入り口を封鎖するように伝えると、ノアと共にビルの地下へと向かった。
ゆっくりと、慎重に、地下施設の部屋を一つ一つ確認していく。そして、最後の一室を前に、ノア含む生徒達が銃火器を構え、タイミングを見計らって突入した。
しかし、そこには誰もいない。ユウカもいなかった。
此方に気付き、ユウカを連れて場所を変えたか、或いは元から此処ではなかったのか。どちらにせよ、手掛かりを失った事に変わりなく、皆の表情から落胆の色が見て取れる。
その場から撤退しようと踵を返したノアたちだったが、不意に室内から声が聞こえて来た。
『思ったより遅い到着ですね。シャーレの先生』
その声に皆が先生に視線を向けるが、視線の先には空のダンボールや使われなくなった機材のゴミの山があるだけで、やはり人の気配はない。
予め此処に通信機材を仕込んでいたのだろう。そして、先生達が此処に侵入するのを見計らい、電源を入れたといった所か。
「……ユウカは何処?」
『さぁ、何処にいるんでしょうね。少なくとも……』
ーこれからいなくなる貴方には関係のない事ですー
『リーダー、このボタンを押せばいいっすか?』
『……あぁ、やれ』
「っ!! 先生!!」
ノアの叫び声。それと同時に轟音が鳴り響き、先生の意識がそこで途絶えた。
離れた廃ビルから先生達の様子を観察していたリーダー格の不良生徒は、遠隔操作で廃ビル内に仕掛けていた爆弾を起爆させると、通信機材の電源を切り、護衛として連れて来ていた取り巻きと共に撤収準備を始めた。
「さっきので、先生は仕留められましたかね?」
「いや、手応えはあったが、勘の良い奴がいたようだ。恐らくそいつが先生を庇ったのだろう」
本音を言えば、遠隔操作でビルの内部を爆破させた不良生徒の言葉がなければ仕留められたかもしれないというのに。ままならぬものだと感じながら、リーダー格の不良生徒は、取り巻きの不良生徒の失態に目を瞑る。
先生は無事だ。部屋の中にいた他の生徒同様、負傷した程度で済んでいると判断したリーダー格の不良生徒は、鼻を鳴らすと取り巻きが持つ通信機材に目を向ける。
此方の情報はあくまでも自身の声と、後ろに控えていた取り巻きの声が少し混じった程度。それだけで特定する事は不可能とは思うが、念には念を入れた方がいいだろう。
「早瀬 ユウカは早めに処分する。それまで、好きに扱うと良い。適当に拷問と暴力で屈服させ、その上で壊すぞ」
そもそも、リーダー格の不良生徒にとってユウカは人質としての価値はない。寧ろ、彼女を人質にする事で、先生や彼に付き従う生徒と接触するリスクの方が遥かに高い。
ならば、ユウカの使い所としては、彼女を壊す事で、先生に精神的苦痛を与える遣り方の方が遥かに有効だ。
「りょ〜かいです。みんな、シャーレの先生には恨みがありましたし、鬱憤ばらしには丁度いいですね」
拷問に関してはリーダー格の不良生徒が、そして、遊び感覚で壊す分野としては取り巻きの不良生徒が。それぞれ思い思いの遣り方でやればそれで良い。
自分を慕う生徒が、手遅れの状態で発見された時の先生を思い浮かべるだけで、取り巻きの不良生徒はニヤニヤと笑みを浮かべるのであった。
ユウカが連れ去られてから三日目が経過した。最初の一日目から一睡も許されなかったユウカはフラフラの身体になりながらも、先生が救助に来るのを待ち続けた。
不良生徒達が屯する部屋の扉が開く。皆の視線が一斉に扉へと集中すると、リーダー格の不良生徒が取り巻きを引き連れ、部屋へと入ってきた。
先生ではなかった。その事実にユウカの表情が曇る。
彼女が来たという事は、また拷問じみた事が行われるのだろう。
今度は何だ?
両手はボロボロ。今度は足か、それとも別の……。
気丈に振舞いたくとも、肉体は既に限界を迎えている。一日二日の徹夜程度であれば、ある程度は我慢できた。しかし、それが肉体に負担のかかる拷問の末、眠気に襲われれば冷水を浴びせられるという苦行を味わえば、精神力だけで意識を保ち続けるのは、そう簡単な話ではない。
今のユウカは、先生が助けに来てくれる事を、只々神に祈り続ける事しか出来ないでいた。
対して、リーダー格の不良生徒は、ユウカの前に立つと、ロープの紐を緩め、地面へと降ろす。そして、取り巻きの不良生徒に壁に磔にするよう命じた。
「今からこいつの事は好きにして構わない。何をしてもいい。やりたい事をやれ。ただし、やるなら徹底的にだ。但し、殺すなよ?」
それは、ユウカにとって死刑宣告に等しい内容だった。
先生に恨みを持つ不良生徒達が、各々の裁量で、先生ではなくユウカを苦しめる為に行動する。
自ら進んでユウカを傷つけ、蹂躙する。それを実行できる者は少ないだろう。しかし、それを上の立場の者が命令したならば、それに従うという形で、その行為を実行する事は出来る。
命令されたから仕方がない。自分たちの意思ではない。そうやって責任を誰かに転嫁する事で、人は悪魔にもなれるのだ。
リーダー格の不良生徒の言葉に、ユウカは恐怖に慄き、しかしそれでも、言わずにはいられなかった。
或いはそれは、正常な判断が出来たユウカであれば、決してこの場でするような言葉ではなかった。
少なくとも、生殺与奪を握られた状況下で、その言葉を発するには、あまりにもリスクが高すぎたのだ。
「……貴女は」
「ん、なんだ? 何が言いたい?」
「そうやって、貴女は狭い世界で生きてきたのね」
「……あ?」
「確かに、貴女達にとって先生は目障りな存在なのかもしれない。でも、だからと言ってこんなやり方をするのは間違っている。先生だったら、助けを求めたら、貴女にだって手を差し伸べた筈なのに……本当に……本当に……」
―可哀想な人―
「…………………………………………っ」
ユウカの言葉に、リーダー格の生徒は目を見開いた。そして暫く棒立ちのままユウカを凝視した後、不意に踵を返し、部屋の隅に転がっていた電球を拾い上げると、再びユウカの元へと戻ってきた。
そして……。
「ん゛ぐぅ゛っ!!」
ユウカの口に電球を捻じ込んだ。
「よく回る口ですね。驚きましたよ。まさか貴女みたいな人に、同情されてしまうなんて」
「ん゛っ!! ん゛ぅっ!!」
吐き出したくとも、リーダー格の不良生徒は電球を喉の奥へと押し込み、吐き出せないように執拗にユウカの口内を犯し続ける。そして同時に、空いた手の拳を強く握りしめ、死角からユウカの顎へと拳を叩きつけた。
「んごぉ゛っ!!お゛ぇ、お゛ぇえ゛……っ!!」
突然の衝撃に、思わず電球を噛み砕いてしまうユウカ。口の中は砕けた電球の破片が口内をズタボロにし、血の味が口の中に広がる。
「あ゛っ……がぁ゛っ……」
ボタボタと口の中から血が滴り落ちる。血だまりの中から破片が吐き出されていた。それでも口の中には破片がいくつも突き刺さり、ユウカは痛みに呻く事しか出来ない。
そんなユウカを冷めた目で見降ろすリーダー格の不良生徒は、ユウカの前髪を無造作に掴み上げると、そのまま右手を振り上げ……。
「あぎっ……」
もう一度ユウカの顔面を殴りつけた。
「おえっ、げほっ!! あ゛ぅ……っ」
その衝撃に破片が幾つもユウカの口内を抉っていく。幾度となく拳を打ち付けられた後、僅かに開いた口に、今度はHGを捻じ込むと、躊躇なく引き金を引いた。
放たれた銃弾がユウカの口内の奥、喉の辺りを穿つ。
「ぉ゛え、あ゛がっ!! あ゛ぁ゛っ!!」
「ほら、もっと味わって下さい。そうそう、吐き出そうとしても無駄ですよ? と言うか吐き出す隙なんてあげませんから」
グリグリと銃口を喉の奥にまでねじ込み、嘔吐くユウカが口の中の異物を吐き出そうとする隙すら与えず、穿ち続ける。
「お゛ごぉ、あ゛ぇえ……」
何発も銃弾を喉に受け、身体を痙攣させながら失禁で下着を濡らし、小水が太腿を伝って床に染みを作る。
「あぁ、汚いですね……まるで獣みたいです」
顔を歪めながらも笑みを浮かべ、リーダー格の不良生徒はユウカの髪から手を離すと、そのまま彼女の腹部に蹴りを入れた。
「お゛ごっ……あがぁっ……」
口から血を流し、身体をくの字に折り曲げながら胃液と体内に放たれた銃弾を吐き出し、項垂れるユウカ。もしも磔にされていなかったら、そのまま床に倒れ伏していただろう。それすらも許されなかったユウカは、そのまま俯いて身体をピクピクと痙攣させていた。
「リ、リーダー……大丈夫っすか?」
流石にやり過ぎたのか、取り巻きの不良生徒が不安そうにリーダー格の不良生徒の様子を窺う。だが、リーダー格の生徒は『ふぅぅぅぅ……』と息を吐き出すと、取り巻きの不良生徒に向き直り、命じる。
「失礼、少し癇に障ったもので……誰か、タバコを持っていませんか?」
「え、あぁ……はい」
取り巻きの不良生徒からタバコを受け取ると、それを咥えて火を点け、紫煙を吸い込み吐き出す。
「ふぅ……ありがとうございます。落ち着きました」
言って、もう一度ゆっくりと肺の中に紫煙を溜め込み、吐き出した後に、ユウカの方へと向き直った。そして、もう一度髪を鷲掴みにして顔を持ち上げると、タバコの火をユウカの頬へと押し当てた。
「っ!! あ゛っ、ぎあ゛ぁぁぁぁぁーーーーーーーーーッ!!」
『ジュゥ……』という音と共に肉の焼ける臭いが部屋に充満する。
「ぎ、あ゛ぁ、あ゛……っ」
そのままタバコを頬から離すと、今度はその先端をユウカの眼球へと押し当てようとし、ギリギリの所で止めた。
「あ……ぁ……」
ユウカの片目に、タバコの火が赤々と映り込む。あと少し、ほんの少し近付けられたら、タバコの火はユウカの眼球を焼き焦がし、その熱で眼球を溶かすだろう。
「目と舌、どちらがいいです?」
「っ……」
言葉の意味を理解し、ユウカは涙を浮かべながら口を開き、ズタズタになった舌を出す。
リーダー格の不良生徒はタバコの先端をユウカの眼球から遠ざけると、そのまま出された舌にタバコの火を押し付けた。
「がっ、あ゛ぁっ!!」
再度の絶叫。タバコの火が押し付けられた舌に焼き付き、その舌を通して口の中が熱によって蹂躙され、鉄の味と痛みを伝えてくる。
「あ゛ぁ、ぁがっ……お゛ぉ゛……お゛ごぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛」
皮膚を焼かれた痛みと舌の痛みに、絶え間なく苦しむユウカ。しかし、この場にそれを助けようとする者はいない。
やがてタバコの火が消えると、リーダー格の不良生徒はタバコを投げ捨て、ユウカから離れていく。
「と、まぁ。こんな感じに、お前達も楽しんでくれ。気にする事はない。これは私達にとって当然の権利だからな」
先程と打って変わり、優しげな笑みを浮かべて笑うリーダー格の生徒に、取り巻きの不良生徒達はある種の恐怖を感じたが、それでも、他の誰にも出来ないような事を自分達はしている。その優越感が、恐怖を上回り、やがてそれは興奮へと変わっていった。
自分達にだけ許された行為。その意味に、不良生徒達は笑みを浮かべながら銃火器を構えて一斉に引き金を引いた。
ユウカの身体を銃弾が穿ち、磔にされた身体が面白うように跳ね上がる。
「あがっ、ぎ、ひぃ゛いぃぃぃい゛い゛ぃっ!! あがぁあ゛ぁぁあ゛あああああ゛あ゛っ!!」
的当ての的が、悲鳴を上げる。何処に当てれば得点となるかは決めていない。しかし、より大きな悲鳴を上げた個所を撃った者が高得点だ。
「いぎゃぁっ、あがっ!! あぎぃっ!! あ゛あぁぁあぁっ!!」
骨を砕くようにグリップの底や床尾を使って全身を滅多打ちにする。その度に、鈍い肉を叩く音と、骨の砕ける音が部屋の中に響いた。
「うぎぃっ!! あがっ、あ゛……あぁぁっ、いぎぃっ!!」
それが、身体を穿たれる痛みなのか。それとも骨を砕かれる痛みなのか。最早ユウカには区別が付かなかった。
部屋の中はユウカの上げる絶叫と、銃声が響き渡る。そして……。
「あ゛っ……ぁ……」
ガクガクと身体を痙攣させながら項垂れるユウカ。瞳は虚ろで何も映さず、半開きになった口からは、ゴポゴポと血の泡を吐きながら、時折意味を成さない呻き声が漏れ出ている。
「おぉ……これは、もしかしてちょっとやばいんじゃないか?」
流石にやり過ぎたと、不良生徒達が眉を顰めてリーダー格の生徒へと視線を向けた。しかし、リーダー格の生徒は特段気にした様子もなく、SGを取り出すと、磔にしていたユウカを解放するように命じた。
「あ、あぁ……了解っす」
その言葉に慌て、不良生徒達が磔からユウカを解放しようと彼女の拘束を解くと、力なくその場に崩れ落ちた。そんなユウカのスカートを捲り、小水に濡れた下着を脱がすと、銃口を秘部へと押し当て、子宮の入り口まで一気に突き入れると、引き金を引いた。
くぐもった銃声と共に、ユウカの身体がビクンッと大きく跳ね上がる。更に二発、三発と続けざまに撃ち込み、ユウカの身体を銃弾が蹂躙していった。
銃身を引き抜くと、『ヌチャリ』と粘性の血液を付着させながら、ユウカから流れ出た血液が床に水溜まりを作っていく。
残弾ゼロとなったSGを床に投げ捨てると、ユウカを仰向けにし、下腹部を強く踏み締める。
悲鳴は上がらない。口をパクパクとさせながら譫言のような声が漏れ出るだけで、次第にその声も小さくなり消えていった。
「気を失いましたか」
「ほ、本当に気を失っただけですか?」
「えぇ、そうですね。私達は身体が頑丈ですから。これくらいで死ぬ事はありませんよ」
そう言いながらも、ピクピクと痙攣しているユウカの身体から足を退ける。
「少し休ませてあげましょう。その代わり、夜は寝かせないように気を付けてください。それから数日間は同じように痛めつけて、最後はこの部屋に閉じ込めたまま放置します。食事は……一食与えるだけで良いですよ」
「あ、わ、わかりました」
こうしてユウカに対する『罰』の時間が一端終了した。
しかし、その後、目を覚ましたユウカは、幾度となく身体を痛めつけられ、精神を摩耗させられ、徐々に徐々に衰弱の一途を辿って行った。
そして、ユウカがリーダー格の生徒の言った『数日間』を過ぎた後……。
「う゛ぁ゛ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!! あ゛あ゙っ!! うぎいぃぃいいぃああぁぁっ!!」
明かりの無い部屋に閉じ込められたまま放置されたユウカは、獣のような悲鳴を上げながら悶えていた。
喋れるようになる程度には身体は回復した。しかし、扉を固く閉ざされ、光の無い部屋に閉じ込められたユウカは、飢えと渇き、そして助けが来ない恐怖に精神を蝕まれていた。
「う゛ぁ、あ゛っ……だず、げで……だじ、で……だじでよ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛!?」
暗闇の中で、ユウカは一人助けを呼び続ける。だが、そんな思いとは裏腹に、時間だけが過ぎ去っていく。そして……。
「あ゛ぁ……だずげて……おにぇがい、だれがぁぁ!!」
床を這いずり回り、漸く見つけた扉を何度も叩き、助けを乞う。何度も、何度も、何度も何度も、何度も何度も何度も何度も、扉を叩き、そしてやがてそれが無駄な事だと分かると、啜り泣くような声を上げながら大粒の涙を流して蹲る。
「あ゛ぁ……なんで、わ゛だじ、ごんなどごろで……」
後悔。悲嘆。憎悪……そういった感情が次々と湧き上がり、ユウカの心も身体と同様に摩耗し始めていた。
「あ゛ぁ……だ、れがだずげで……」
それからもユウカは、その暗闇の部屋の中を這いずり回り続けた。そして、一体何日経ったのか……完全に時間の感覚が麻痺したユウカ。『ヒューヒュー』と掠れた息を漏らし、床の上で朦朧と目を開けているユウカの視界に、僅かな光が差し込んだ。
「だ、れ……? たず、げで……」
全てを諦めかけたユウカには、誰が助けに来たのかを考える事すら出来ない。
光源がゆっくりとユウカのいる部屋に入り込み、その光の中に人影が現れると……ユウカは意識を手放した。
全ては偶然だった。
ユウカの捜索を続けて数日経った頃、もう彼女は見つからないのではと、誰もが諦めかけたその時、ブラックマーケットを捜索していたノアの横を、偶々通り過ぎた不良生徒の声に反応し、ノアは他の生徒と共に不良生徒達を拘束したのだ。
突然の事に驚きを隠せない不良生徒。しかしノアは、そんな不良生徒の一人の前に立ち、問いかけたのだ。
そう、その不良生徒こそ、リーダー格の不良生徒と共に行動していた取り巻きの生徒だったのだ。
廃ビルを爆破する寸前に聞こえた声を、ノアは記憶していたのだ。そして、その記憶を頼りに、偶々取り掛かった不良生徒の声と、記憶の中にある声を比較し、同一人物と判断しての行動だ。
思いの外、不良生徒はあっさりと白状した。しかし、白状したついでに、不良生徒は意地の悪い笑みを浮かべていた。
飲まず食わずで、暴力に次ぐ暴力を加えたのだ。そして、閉じ込めてから既に数日経過している。果たして、今から急いで現場に向かったとして、生きている筈がないと、笑っていた。
そんな不良生徒の笑みに、ノアの脳裏に最悪の事態が思い浮かんでしまった。
ユウカは生きているのか?
それとも……。
不安が過るも、その気持ちを押し殺し、急いで救援部隊を現場に向かわせた。
そして、廃ビルの地下。空き倉庫の扉を強引に開け、ノア達が中へと駆け込むと、そこには変わり果てた姿のユウカの姿があった。
目を見開きながら、恐る恐るユウカへと近寄っていく。幸いまだ生きてはいるが、呼吸をするのもやっとの様子で、声を掛けても反応を示さない。
一分一秒が惜しい。ノアは急ぎユウカを担架で運ぶと、そのまま病院へと搬送するのであった。
そして現在、ユウカは集中治療室で処置を受け、奇跡的に一命を取り留めた。
本当に、奇跡的な生還である。あれだけ身体がボロボロにされていながら、生きていた事は奇跡との事だ。
しかし、身体に刻まれた傷は癒える事はなかった。火傷の後は無論、口の中に傷もそうだし、下腹部の傷もそうだ。
拷問に等しい仕打ちと、極度のストレスに、ユウカは廃人同然となり、まともに歩く事すら出来なくなった。
退院後は車椅子生活を余儀なくされ、ノアやコユキ、先生が声をかけても一切の反応も示さない。
唯一、反応する時と言えば、自身の姿を鏡や窓越しに映った時である。
そう、不良生徒達につけられた火傷や傷痕を、ユウカが認識した時のみだ。
喉が張り裂けんばかりの声量で発狂し、自身の身体を掻き毟り、傷を増やしていく。
ノアや先生の静止を振り切り、ユウカは傷痕を、自分に刻まれた火傷の痕を重ねながら刻み続けていく。
そして、涙をボロボロと零しながら、うわ言の様に『ごめんなさい……ごめんなさい……』と、呪いのように吐き出されるだった。
「ごめ゛ん゛な゛ざい゛……………………ごめ゛ん゛な゛ざい゛……………………」
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