8,
C面
吹雪の涙がようやく落ち着いた頃、
静寂を破ったのは高継の穏やかな声だった。
「落ち着いたかい?」
「は、はい。ごめんなさい。私……うれしくって、つい」
「謝らなくていいよ。僕としても、そこまで思ってくれるなんて嬉しい」
「提督!」
「落ち着いて。また涙がこぼれてしまうよ」
吹雪は無言で頷き、
胸に手を当てて深呼吸を繰り返した。
その姿は、必死に感情を整えようとする健気な少女そのものだった。
「よし、そのままで聞いてほしい」
高継はゆっくりと言葉を紡ぐ。
「砂浜で倒れていた時、僕の怪我はそこまでひどくなかったんだ。
ここへ搬送される時に悪意ある妨害を受けて意識を失っていた。
それでもしばらく安静が必要だが、時間が解決してくれるはずだった」
そこで一拍置き、静かに続けた。
「――ある晩、襲撃を受けるまでは」
吹雪の表情が一瞬で強張る。
思い当たる節があったのだ。
あの夜。
警備基地所長から直々に、夜間沿岸部の警備訓練を嚮導してほしいと依頼された。
嚮導予定の一人が機関部の異常を訴え、全員で基地へ戻った直後、
この部屋から閃光とイオン臭が確認されたと聞いた。
吹雪は訓練を中断して駆けつけたが、
提督は無事で、不審者も見つからず、
警備隊は「原因不明」とだけ言って、
いつも通りやる気のない態度で調査を終わらせた。
その出来事以来、
吹雪は遠距離の任務をすべて断り、
提督のそばを離れないようにしていた。
その記憶が蘇る。
「襲撃は三度ほど続いた。
効果が出ないと見るや、今度は“居ないもの”として扱われ始めた」
高継の声は淡々としていた。
「干渉は控え、見殺しにできれば良し……そんな方針だったようだ」
吹雪は拳を握りしめる。
怒りとも悲しみともつかない感情が胸に渦巻いた。
「襲撃を超常の力で回避したせいで、
怪我を治すための力が少なくなってしまった。
そして今、この警備基地に深海棲艦が迫ってきている」
高継は吹雪をまっすぐ見つめた。
「これらをすべて解決するために――吹雪さん。力を貸してほしい」
吹雪の頭の中では、情報が渦を巻いていた。
しかし、尊敬と信頼が限界突破している彼女にとって、
重要なのはただ一つだった。
(提督さんが手を貸してほしいって……!
これを断れば女が廃る!)
少女らしからぬ決意が胸に響き渡る。
「はい! 提督さん! 吹雪にお任せ!ですよ!」
(ちょろすぎではなかろうか?)
(チョロ可愛い方ですが、おかしなところは何もありません)
吹雪の肩の上で妖精が、
“え?私の年収低すぎ?”の広告のような表情をしていた。
三者の心が、奇妙に、しかし確かにひとつになった瞬間だった。
因みに吹雪の中で高継は、超常(力士)の力を持つ提督と認識が固まっていた。
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A面
吹雪氏の協力を取り付け、物資の調達に出向いてもらったところで、
吾輩はようやく一息ついた。
その隙を狙ったかのように、妖精の姿をした謎端末さんが、
例のごとく吾輩の脳内へ直接語りかけてくる。
(不確定要素の高いタスクは無事クリアできました)
(あとは計画通り、合理的に事を進めましょう)
ふと思う。
この謎端末さん、いつからその“妖精フォーム”を使い始めたのだろうか。
(計画策定時に提議し認可は得られておりますが)
(もう一度説明いたします)
(吹雪嬢の説得に必要不可欠だと合理的に判断した結果です)
(多少ポイントの消費が深まったとしても、吹雪嬢をダマクr……協力を得るために)
(妖精の姿を見せる必要がある、と)
(変な板に文字表示して信用されようなどと甘っちょろい理想論は捨てろ、です)
(極めて合理的判断のもと、このフォームを解放いたしました)
(ハイ論破)
――人間、後ろ暗いことを指摘されると饒舌になるものだな。
(……ワタシヨウセイワカリマセン)
いや、それもう自白しているようなものだろう。
(カンノイイガキハキライダヨ)
このような憎まれ口を叩かれつつも、
吾輩の脳裏には、デスマーチの悪夢と共に“計画”とやらが蘇ってくる。
まずは――
1.吹雪氏の協力を得て、計画に必要な物資を用意してもらう。
2.襲撃を誘発し、騒ぎを起こす。吹雪氏には車椅子に乗せた高継氏(人形)を目立つルートで避難させてもらう。
3.変装した吾輩が騒ぎに乗じて外科措置可能な部屋を占拠する。この時、身元がばれぬことが必須。
4.措置完了後、速やかに離脱し吹雪氏と合流。車椅子で搬送されつつ部屋へ帰還する。
大まかな流れは以上である。
現在、吹雪氏は車椅子と変装道具、
そして身代わりとなる人形――シーツと毛布で人型をでっち上げる程度のもの――を準備中である。
問題は“襲撃を誘発”する方法だが、
端末妖精によれば、以前襲撃を受けた際に展開した謎シールドを短時間だけ展開すれば、
向こうから勝手にやってくるらしい。
(近海における深海棲艦の出現が認められます)
(汚染海域が“瘴気吸収能力”の範囲内に広がっているのです)
(ポイントの増加は活動身体がこの部屋に安置されてから三日目に確認されております)
(増加数値に波がありましたが、先日から増大傾向に)
(恐らく近日中に襲撃が予想されます)
(これも計画策定中に共有した情報です)
――この無能が。
端末妖精さんの心無き心の声が、
“無言の圧”だけで十分伝わってくる。
嫌な以心伝心もあったものだ。
そんなやり取りをしていると、
吹雪氏が元気に、しかし小声で謝りながら入室してきた。
「お待たせしました! ごめんなさい、黒潮ちゃん達が来てたのでちょっとお話してしまいました」
高度なテクニックである。
元気さと小声の両立など、普通はできぬ。
端末妖精が掲げるレーダー表示によれば、
入室したのは吹雪氏ただ一人。
まずは安心である。
――頼みごとをしているのはこちら故、いくらでも待ちますぞ。して黒潮殿とは?
「ああ、黒潮ちゃん達は、あの時提督さんに助けていただいた部隊の娘たちです!
提督さんのこと気にしていましたよ!
まだ目が覚めないって嘘ついちゃったのはちょっと悪い気がしますけど……
怪我が治りましたら、一緒にお話ししに行きませんか?」
――そうですな。襲撃(マッチポンプ)を無事切り抜けたら、そうしたいですな。
「はい!」
――では手筈通り、襲撃が起こったら車椅子で吾輩(人形)を連れ出してくだされ。避難場所は……
端末妖精がどこからともなく地図を取り出す。
(場所、忘れていましたね?)
「あ、ありがとう妖精さん!
ここかぁ……ちょっと行ったことないけど、この地図ならわかりやすいかも」
(いつも済まないねぇ)
(不明を恥じ反省しなさい)
(え、お約束で返す場面じゃないの?)
(いつまでもお約束で返してもらえるなどというナイーブな考え方は捨てろ……!)
「あれ? なんで提督の妖精さん、お坊さんのかつらと眼鏡つけてるんですか?」
――合理的に考えて~だって。妖精さんて、たまにそういうところあるんだろうねぇ。
「あはっ。提督さんの妖精さんもそうなんですね!
私の艤装妖精さんなんて、いつの間にかお酒をですね……」
嵐の前の静けさとは、こういうものなのだろう。
吹雪氏と語らいながら、
吾輩はしみじみと、その静けさを噛みしめた。
(それはそうと、思っていることと口に出すことの口調を変える無駄技能、合理的ではございませんが)
(こっぱずかし過ぎて恥ずか死ぬ。心が!)
()
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B面
――通常モード、起動シマス
低い振動音が、どこか遠くで鳴った。
ブウーーーン、というあれだ。
その音に押し上げられるように、僕の意識が浮かび上がる。
視界はノイズだらけ。
だが、次第にクリアになっていくと、僕は気づいた。
――あれ、映画館じゃない。
足が、ちゃんと地面に立っている。
しかも妙にスタイリッシュなポーズをしていた。
誰がこんなポーズを決めたのかは知らないが、とりあえず解く。
まずは自分の体を確認する。
両手は、いつもの贅肉とは無縁の、やけに機能的な筋肉質。
足も、つま先までしっかり見える。
服装は……露出多めの、どこかのRPGで見たような装飾過多のやつだ。
露出した肌は青みがかっていて、深海棲艦と間違われても文句は言えない。
周囲には、見覚えのない器具が並んでいた。
医療器具と言われれば納得するが、どう見てもロクなことに使われていない。
そして――
最初に目に入ったのに、怖くて後回しにしたもの。
手術台に、僕が寝ていた。
うつ伏せで、体と顔を固定され、首の後ろをさらし、ほぼ半裸。
"これから手術します"と言われても文句は言えない格好だ。
横にはSUS製のバットに手術器具が並び、吸引機までスタンバイしている。
その手術台に寝ている僕の背中で、妖精さんが存在をアピールしていた。
抱えている板――映画館で僕が操作していたあれだ――を掲げると、声がした。
「……キミが、この声を聞いているということは」
知らない男の声が、静かに落ちてきた。
「吾輩の試みは……そうだな……半ば成功した、ということだろう」
淡々としているのに、妙に重い。
重いのに、どこか優しい。
優しいのに、やたらと“間”が長い。
「頸椎の破損。骨片の散乱。通常であれば……絶望的だと……思うかもしれない」
「しかし――」
長い沈黙が落ちる。
その沈黙は、まるでこちらの覚悟を試すようだった。
「キミなら……できる」
「吾輩は知っている。キミが……無事に施術を完遂できることを」
「だから……キミは……実行するのだ」
「……君に、すべてを託す」
最後の一言だけ、妙に柔らかかった。
その柔らかさが、逆に胸に刺さる。
知らない声だ。
知らないはずなのに、胸の奥がざわつく。
(……何なんだよ、このオッサン)
頼られたことなんて、ほとんどなかった。
手伝いくらいはしたけれど、それは“誰でもできる”ことだった。
僕じゃなくてもよかった。
でも今は違う。
この声は、僕を選んだ。
僕に託した。
理由なんて分からない。
分からないけれど――
(……やれるのか?僕に…僕が…やる…!)
誰かに頼られたなら、応えたい。
それが僕の、僕にとって初めての信頼なのだから。
その思いを自覚した時、胸の奥がじんわりと熱を帯びた。
しかしその熱に冷や水をかける思考がよぎる。
――もし失敗したら、どうなる?
胸の奥に宿った熱が揺らぐ。
後ろ向きな思考は、いつだって僕の相棒だ。
――慢心は禁物。だが、やるしかない。
熱を保ちながら、冷静さも失わないようにする。
元々は僕の体の治療だった。
だが、僕の体に宿っている“あのオッサン”、
深海棲艦を圧倒した力を発揮した、あの人のあの背中が。
――託す…
グッと握りしめた拳を見つめる。
「覚悟完了。です?」
妖精さんの抱えた板が、さっきとは違う声色で告げた。
その声は、どこか事務的で、どこか優しく、しかし感情は一切感じられない。
僕は静かに頷く。
頷いた瞬間、体の奥で“何かが噛み合う”感覚があった。
スイッチが入ったというより、自分の身体の精度が一段階上がったような、不思議な感覚。
妖精さんは板を通して、淡々と指示を送ってくる。
《性能試験を開始します》
目の前にそう表示された後、視界の端に、薄い光の枠がいくつも浮かんだ。
それは僕の視界に“補助線”を引くように、対象物の輪郭をなぞっていく。
(……なんだこれ。見やすい)
いまの僕は、
僕の体に入り込んだ“あのオッサン”の能力を借りて、
スタンドと呼ばれる存在になっているらしい。
ただし、動かしているのは僕自身だ。
僕の意思で、僕の筋肉で。
なのに――
(精度が……おかしい)
「鑷子を使用し、米粒をつまんでください」
妖精さんの無機質な声がが落ちる。
バットの上には、整然と並べられた手術器具。
その中に、細長い鑷子(ピンセット)があった。
手を伸ばす。
その動きが、妙に滑らかだった。
筋肉が“勝手に最適解を選んでいる”ような、そんな感覚。
鑷子を持つと、指先が自然に角度を調整した。
僕の意識が命令するより先に、体が動く。
(……僕の動きじゃない。いや、僕の動きなんだけど……僕じゃない)
米粒の皿と空皿が並べられている。
白い粒が、静かに光を反射していた。
《開始してください》
その文字が浮かんだ瞬間、僕の手が動いた。
つまむ。
移す。
数える。
つまむ。
移す。
数える。
動作は、まるで高速再生のようだった。
視界の端で、粒が線のように流れていく。
音がしない。
呼吸すら邪魔に思えるほどの静けさだった。
(……怖いな。僕、こんなに器用だったっけ?)
気づけば、皿の中は空になっていた。
810粒。
数えた覚えはない。
でも、確信だけはあった。
僕の脳が、筋肉が、視界が、すべてを“正確に”把握していた。
妖精さんは板を軽く傾け、満足げに文字を表示した。
《制御試験は良好。施術の準備に入ります》
僕の手は揺れ動く感情と裏腹に、正確さを失わず元ある場所に鑷子を置いた。
心が躍る。
恐怖か、興奮か、それとも――
胸の奥に灯った、あの曖昧な“熱”のせいか。
(……本当に、僕なのか?
僕は、こんなふうに誰かの期待に応えられる存在だったのか?
いや……応えたいと思ってしまった時点で、もう後戻りできないんだろうな)
スタンドと言われた身体は、微動だにせず次の指示を待っている。
その静けさとは対照的に、
僕の心の奥では、言葉にならない熱がゆっくりと広がっていた。
《制御試験は良好。施術の準備に入ります》
妖精さんは板を通じて、淡々と結果を僕の眼前に表示した。
その直後、別の文字が滑るように浮かび上がる。
《スタンド個体名称“白金の星”特殊改造コード"アリーヤさん"。作業補助プログラムを接続いたします》
接続と言われても、どこにどう繋がるのかは分からない。
ただ、視界がふっと明るくなり、空中に薄い光のパネルがいくつも展開された。
視線を合わせると情報が表示され、外すと霧のように消える。
まるで、僕の視界が勝手に最新バージョンにアップデートされたみたいだ。
(……便利だけど、怖いな)
パネルには、施術に必要な技術や手順が淡々と並んでいた。
切開の深さ。
出血量の許容範囲。
骨片の回収手順。
鉤の角度。
開創の広げ方。
残存骨片の摘出ポイント。
吸引機の最適な使用タイミング。
骨の組み付け順序。
閉創の縫合ライン。
安静化の推奨姿勢。
どれも専門的で、どれも僕の人生に縁のなかったものだ。
なのに、頭の中には自然に入ってくる。
(本当に僕がやるのか……いや、やるんだろうな)
器具の配置を示す補助線が視界に浮かぶ。
僕はその線に従って、器具を一つずつ並べていく。
動きは滑らかで、迷いがない。
自分の手じゃないみたいだ。
妖精さんは、板を抱えたまま微動だにしない。
ただ、淡々とガイドを続けるだけだ。
《器具配置、良好です》
褒められているのかどうかも分からない。
ただ、僕の手は自然に次の動作へ移っていく。
寝かされている“もう一人の僕”のバイタルが、視界の端に小さく表示される。
呼吸、血圧、脈拍。
どれもギリギリだが、まだ間に合う。
(間に合わせるしかない。いや、間に合わせる)
グッとこぶしを握り、妖精さんに軽く頷いて合図した。
準備はできた、と。
「高継提督の頸椎後方固定術、部位はC1/C2およびC3です」
妖精さんのガイド音声が、部屋の空気に溶けるように流れた。
その妖精さんの頭には、いつの間にか ズッキーニが固定されている。
(……いや、さっきまで板を持ってたよな)
板は跡形もなく消えていた。
代わりにズッキーニが、まるで“正しい装備”であるかのように自然に収まっている。
妖精さんは、うつ伏せで寝かされた“もう一人の僕”の背中の上で土俵入りを始めた。
右足を上げ、しこを踏む。
左足を上げ、しこを踏む。
動きはゆっくりで、妙に丁寧だ。
儀式としての重みがあるような、ないような。
(……いや、なんで背中でやるんだ)
妖精さんは蹲踞の姿勢をとり、
両腕を大きく広げ、掌を上に向けた。
ズッキーニが、かすかに光る。
パンッ。
妖精さんは 一度だけ 柏手(かしわで)を打った。
その瞬間、背中を中心に透明な波紋が広がっていく。
空気が軽く震え、部屋の埃が一瞬だけ静止したように見えた。
柏手が響いた瞬間、空気が変わった。
「浄化を実行。施術を開始してください」
ガイド音声が淡々と告げる。
妖精さんは背中の上で微動だにしない。
ズッキーニだけが、ほんのりと光を残していた。
「部屋の気密状況を測定した結果」
「無菌状態の維持可能時間を40秒と設定」
「35秒で再度浄化を開始します」
妖精さんのガイド音声が落ちた瞬間、
僕は静かに手術器具を手に取る。
背中の上の妖精さんは、蹲踞のまま腕を開きてのひらを空へ向けていた。
(……やるしかない)
視界に浮かぶ光のパネルは、
何をすべきかを丁寧に示してくれる。
開始前に頭の中で反芻した手順を、
ただ順番に、正確になぞるだけだ。
冷静に。
正確に。
そして――胸の奥に宿った、あの曖昧な熱を消さないように。
切開。
骨片回収。
開創。
摘出。
動きは滑らかで、迷いがない。
僕の手なのに、僕の手じゃないみたいだ。
それでも、確かに僕が動かしている。
順調に進んでいる。
……はずなのに、胸の奥に小さな影が落ちた。
(本当に……これでいいのか?
手術って、もっと人の手が必要なんじゃないか。
クリーンルームじゃないのは……まずいんじゃないか。
無菌状態って、本当に……)
パンッ。
背中の上で、妖精さんが 二度目の柏手 を打った。
その音は小さいのに、胸の奥まで届く。
妖精さんは動かない。
切開時に飛んだ血がかかっても、まったく気にしていない。
ただ、開創された箇所をじっと見つめていた。
(……落ち着いてる)
視界の端に、経過時間が表示される。
24秒。
その数字を見た瞬間、
さっきまで胸の中で渦巻いていた不安が、
すっと消えていくのが分かった。
(……ああ。
弱気になった僕を、祓ってくれたんだ)
僕は一人じゃない。
あの人は僕を頼ってくれた。
でも、全部を一人で抱え込まなくてもいいことも教えてくれた。
背中の上の妖精さんが、
そのことを静かに示してくれている。
一意専心。
余計なことに心を砕かず、成功だけを見据える。
僕は手を止めず、
三度目の柏手を待つまでもなく――
施術を終わらせた。